パンツの面目ふんどしの沽券 (ちくま文庫 よ 21-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 443
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424228

作品紹介・あらすじ

十字架上のイエス・キリストの下着はパンツか、ふんどしか、腰巻か。幼少期に芽生えた疑問を心の中であたため続け、長じて作家となった著者は、パンツ・ふんどしをめぐる世界史的な謎の解明に挑むことになる。前人未到の試みとして「ちくま」連載中から話題騒然となり、没後、「最も米原さんらしい本」と評される、抱腹絶倒&禁断のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • お友だちに紹介され、早速読んでみた。なぜここにフォーカスしたのか? 着眼点が秀逸! 面白過ぎてイッキ読みでした。このテーマでここまで掘り下げられるのが素晴らしい。興味・仮説の起こし方がキモだということを突きつけてくれる一冊。

  • 電車など公共の場で読むにはブックカバーが欲しくなる愉快なタイトルの連載エッセイ。でも、シモなネタと軽妙な語り口のカバーを剥がした先に現れるのは、「下着から考察する世界文化史」というすごい本。

    日常生活にパンツが欠かせないのは確かだけど。それが、遊び心に満ちた一人の知識人の無邪気な好奇心によって、こんな軽妙洒脱と同時に重厚な見事な作品に仕上がるなんて!

    著者の米原さんの、ちょっとお下品な内容が軒を連ねる自身の子供の頃の記憶と好奇心に始まったかと思えば。
    何百冊にもおよびそうな古今東西の文献を本気で紐解き引用し、はたまた、連載途中に読者から送られたたくさんのお便りの記述から様々なヒントに着火されてさらに膨れ上がった好奇心を経て、彼女の飽くなき「シモ事情」への考察の旅は続き…。

    もう、何度も繰り返しちゃうのだけど、下品さ・軽妙さ・柔軟さの三重のカバーにくるまれているけど、考察と論理の動かし方、巻末の参考文献のラインナップと数(文庫で8頁分ある)は、もはや論文といえるレベルなのよ…。

    わざわざ太字で記載された、最後のオチには笑ってしまう。行き着くとこ、ソコかーい!

    本書の著者は、ロシア語同時通訳他文筆業で幅広く活躍した米原万里さん(1950-2006)。
    お父様の仕事の関係で、小3〜中2の多感な時期を1960年代のソビエト支配下のチェコ・プラハで過ごしたという異色の経歴の持ち主。

    ウクライナ侵攻の件もあり、2022年2〜3月時点の現在、話題にのぼりがちなロシア。

    彼女の代表作の、ソ連崩壊後にソビエト学校時代の同級生3人を第三国にまで向かって探し歩いた「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(エッセイ)はもちろんのこと。

    彼女の唯一の小説であり、第二次世界大戦前後の凄惨なソビエト時代を必死に生き抜いた人々を描いた「オリガ・モリソヴナの反語法」。

    この二つは徹夜必至の面白さなので、ぜひ多くの人に読んでほしいです。

  • 何度も読み返している一冊。貸した人も大体ハマる、とにかく話の広がりが面白い一冊。

  • 20171211読了
    2008年出版。帯には「『もっとも米原さんらしい本!』・・・と没後に評される抱腹絶倒&禁断のエッセイ。」という文言。解説は井上章一氏。●しょっぱなからさすがのロシアエピソード。そこから話題はあらゆる方向へ広がりをみせ(といっても基本はパンツやふんどしー腰回りを覆うものに関することではあるのだが)、シベリア抑留でトイレットペーパーが支給されなかったのはロシア人にその習慣がなかったからだとか、江戸時代は(農村部は戦後直後までは)男性が全裸で闊歩したり農作業したりしていたとか、近代に入ってどのように羞恥心が形成されたのかとか、アダムとイブのイチジクの葉はなぜ落ちないのかとか、パンツがない時代の生理期間の対処とか、乗馬とパンツの関係とか、盛りだくさん。連載の読者から寄せられた資料も含め、参考資料の羅列が10ページもある!民俗学の領域に足を突っ込んでいるのではと思わされる執念の考察。ご本人としてはまだ道半ばでやり尽くせぬ無念がおありだったろうが、その「言い訳だらけのあとがき」が私はけっこう好きだったりする。

  • 本当になぜ,どこからその発想が湧いてくるのか。不思議でならない。イエスキリストのはいてるものは,パンツかふんどしか,はたまたただの布切れか…。こんなことを疑問に思う著者に感心してしまう。子どもたちが,それぞれの意見をそのまま実行してしまうところなんか笑いを堪えるのが必死。パンツかどうか,それだけで1冊の本になるところは流石です。世の中がちょっとざわついてる暗い時代で、気持ちが塞ぎ込みそうになった時に、何度でも読みたくなる1冊。

  • この本が出版されたのが2005年6月。米原万理が卵巣がんのために56歳で亡くなったのが2006年5月。がんとの闘病生活を続けながら死の1年前まで書いていた本が「パンツの面目ふんどしの沽券」という米原らしいタイトルのこの本である。嘘つきアーニャの真っ赤な真実、オリガ・モリソヴナの反語法などに比べれば、凝縮度は低いかもしれない。しかし死ぬまでの期間に下着の歴史、民俗をここまで追求することができるなんてと感嘆せざるをえない。

  • 読みながら、学生時代に「縫い目が肌にあたるのがイヤだから」と、ぱんつを裏返してはいてる同級生がいたのを思い出しました。
    今頃きっと結婚して子どももいるだろうけど、こどもにも裏返しでぱんつをはかせたかどうか、とても気になってきました。
    そこまで親しくしてなかったので、聞けないのが残念(笑)

    亡くなった祖母は元気な頃、下着は腰巻でした。
    もっぱら畑仕事してたので普段はモンペでしたが、旅行のときは洋服(ワンピース)でしたが、足元は足袋に草履、下着はやっぱり腰巻でした。
    今だったら絶対に止めてるのに、なぜあの頃誰も何も言わなかったんだろう?

    それにしても、ソ連の家庭科の教科書に、パンツの作り方があるだけでなく、実際に縫っちゃう生徒がいたというのに驚きました。
    ロシアになってからは、どうなんでしょうね?

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ロシアになってからは、どうなんでしょうね?」
      ソビエトが崩壊して20年以上経つから、もう無いんじゃないですか?当時は共産主義を標榜するため...
      「ロシアになってからは、どうなんでしょうね?」
      ソビエトが崩壊して20年以上経つから、もう無いんじゃないですか?当時は共産主義を標榜するためのポーズが色々必要だった訳ですから、、、
      2013/03/15
  • https://opac.kokushikan.ac.jp/Main/Book?book_id=TS01170556&q=2&qt=0&qp=0&qv=50&qs=sort_title&qd=0

    ・パンツを毎日取り替えるのは日本人だけ?
    ・日本人の羞恥心は、いつ誕生したのか?
    ・旧ソ連ではパンツは市販されていなかった?
    ・十字架のキリストの身に着けているのはふんどしか?パンツか?
    ロシア語通訳・作家である著者が、「下半身を被(おお)う肌着に関する考察」に挑む!
    聖書からシベリア抑留者の体験記まで、古今東西の資料を幅広く読み込み、検討を重ね、下着にまつわる疑問の数々を解き明かします。
    毎日お世話になっているものが、こんなにも壮大なテーマだったとは!!

  • 「ルパシカの黄ばんだ下端」なんて、衝撃すぎる。
    ロシア人はトイレットペーパーを使わないの!?かの文豪たちもトイレのあとはもしや…ごにょごにょ。
    しかし収容所でも官吏が囚人と同じ粗末なトイレ(と呼んでいいのか?)で用を足すことになんら抵抗感がないというのは、日本人と大きく異なるね!日本軍は階級で使うトイレが違ったって言うし。アメリカなんかも黒人用トイレを置かない店も多かったはずだし。

    ソ連抑留者問題について無私無欲で研究している男性も素晴らしいな…。著作読んでみたい。

    そして全体を通して引用される本の多いこと多いこと!
    満州から引き揚げて来た女性や、国後島の古釜布生まれの女性など、令和の現在ではもう直接お話を伺うことは不可能であろう年代の市井の人たちの話が出てくるのも興味深い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764842

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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