責任ラバウルの将軍今村均 (ちくま文庫 つ 13-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421517

作品紹介・あらすじ

陸軍大将今村均はラバウルで敗戦を迎えた。やがて始まる軍事法廷で次々と裁かれる将兵たち。不充分な審議のまま戦犯として処刑されてゆく部下たちの姿を目のあたりにした今村は自らの意志で苛酷な状況の戦犯収容所に入り、やがて自身も戦犯として服役生活を送る。一人の軍人の姿を描くことで戦争と人間の真実を問うた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 目次 ラバウル戦犯収容所
    太平洋戦争勃発まで
    太平洋戦争開戦
    ジャワ裁判始まる
    晩年
    あとがき
    解説――保坂正康

    みごとな責任の取り方であります。
    昭和の時代、日本の置かれた歴史的環境の中で、図らずも軍人となってしまった今村均大将。
    陸軍幼年学校卒ではなく、旧制中学から陸士・陸大へと進んだ経歴の持ち主。
    そして、年少の頃に親しんだ、キリスト教の教え、その後出会った「歎異抄」との出逢い。
    大将の奥深い人生に対する心構え、価値観、人の道・・・
    100%神仏にはなれないが、限りなく神仏の教えに近い考え方の持ち主。
    軍人としての立場で、あくまでも戦争を評価する。
    そして、軍人としての行動基準は絶対ではあるが、キリスト教・仏教の教えを基準とする今村大将の生きざま。
    これほどまでに事故に厳しく責任を全うする大将。
    著者は、その当時の日本の置かれた状況を勘案しながら、今村大将のとった行動、心の奥底をすばらしく推察している。
    今村大将の行動、そして、その動向を客観的視点で描いた著者。
    今の時代、色んな人に改めて読んでいただきたい本だと思います。

  • 手術後、練習に参加できないときに九州の合宿所で読んだ。当時責任ある立場であった筆者が責任の取り方を学んだ本。数ヶ月後、自らが招いた最悪の結果を縦容として受け入れられたのは本書の影響が大きい。今後社会人として責任ある立場となった今も座右の書としたい。

  • 敗戦記念日迄に読み終えたかったので一気に読んだ。
    軍律には従いつつ、部下の死を最小とし、被支配地民の恨みを買わず、敗戦後も「戦犯」とその家族を救う為に毅然と優しく行動する姿は、仁将そのものであり、こういうリベラルな帝国陸軍軍人もいたのかと、驚きを持った。
    今村大将(や山本五十六)を以ってしても開戦を防げず、あるいは早期講話が成らなかったのは無念だが、一般に言われるように、軍閥が戦争を先導したのではなく、国民が望んで戦争に突き進んだ面もかなりあるのだろう、という気がする。

  • 帝国陸軍の将官。
    インドネシア占領後の理想的な軍政。
    米軍も避けて通った地道な鉄壁の防御。
    敗戦後の身の振り方。
    何れを取っても

    この人こそ、尊敬できる。

    この作品を世に残した
    角田房子も、偉い。

  • 日本の軍人についてはもっと研究されてもよいと思う。
    旧軍は、明治以降、多くの優秀な人間が集まったのだから、まだまだ紹介されてよい人はたくさんいるはずだ。

  • 昭和の日本陸軍にも、このような将軍がいたということを初めて知った。
    救われる思いがした。
    今年読んだ本の中でも屈指の、すばらしい著作。

  • 本書はほんとうに読み進めるのが大変でした。
    解説にもあるように、熱心な著者の読者が、それならば今村将軍について書くべきだといわれて編まれたとのことである。
    それを書き上げるというのはとてつもなく大変なことだと思う。
    そしてまさにこの内容、このような責任感のありすぎる指揮官は、いまの世でも企業でも、政治家でもそうはいないだろう。
    戦争に対する考え方も考えさせられる。もとより誰しもが好き好んで戦争に突き進むのではないだろうが、結果的にはこの書に登場する人々のような経験をする可能性があることを肝に銘じておかなければならない。
    折しも、かの東ヨーロッパの地では、本当の理由はわからないまま戦争が行われ、またそこに関わるひとびとがいる。彼らはその行く末、勝ち負けがはっきりしようが、しまいが、この書にあるような人々と同じような経験をすることになるかもしれない。
    戦争について考えるときには、このような書に立ち戻って、みるべきだと思う。

  • 2018年1月読了。『組織の不条理』でジャワ軍政の「成功」事例が紹介されていたのでその派生として読んだ。
    ジャワでの融和政策やそれを生み出した今村の思想の背景についての紹介あり。500ページを超える文庫本としては大部なものなので少々読みつかれる。

  • 日本帝国陸軍にもこんな人がいたということを知ると少しは救われた気分になれる本。
    「不合理な組織の中で、自らの合理性を守るためにはどうすればよいのか」が学べる、日本のサラリーマンにとって参考になる。

  • 筆者も後書きに書いていたけど、「多くの若者を死地へ投じたのだから、自分は一生騙されてゆかねば」の台詞には心打たれました。
    陸軍という大きなうねりの中でここまで人を思いやる人がいたなんてって感じです。

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