プラグマティズムの思想 (ちくま学芸文庫 ウ 16-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089625

作品紹介・あらすじ

9.11以後、アメリカの思想は変貌してしまったのか。ピルグリム・ファーザーズから現代まで、弛まず築き上げられてきたアメリカの伝統思想は、さまざまな人種の移民により形成されてきた社会ゆえに、一つの原理によって統一する一元論ではなく、相互に違った価値観を認めあう多元主義であった。それは、「体系を排すること、眼前の事実を重視すること、物事の理由を権威にたよらず独力で探求し、結果をめざして前身すること、定式をとおして物事の本質を見ぬく」プラグマティズムである。パース、ジェイムズ、ミード、デューイ、モリス、ローティーなど、その思想の展開とこれからの可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • プラグマティズムを扱った入門書は初めて読みましたが、非常にわかりやすくまとまっていました。
    アメリカの独立に遡った「アメリカ思想」の基盤に関する説明に始まり、ジェイムス、パース、ミード、デューイ、クワイン、ローティと、多くの思想をコンパクトで平易な文章で掴めるので、プラグマティズムの系譜を確認して今後の読書の道しるべにするには最適かと

  • 相互依存論、非実在論、多元論、相対主義、非決定論、過程論というのが最近の私の世界観なのだが、こうした認識と現実的な判断、意思決定との関係はどう考えればよいのかな、ということを考え始める。

    で、ふと思いついたのが、いわゆるプラグマティズム。なんか、便利そうな思想ではないか。

    という軽い思いつきで読んでみるが。なかなかに深い思想である。

    プラグマティズムは、科学哲学とも相性がよいようだし、記号論とか、脳科学とかともつながっている。その辺が、多元論に立ちつつ、科学的な知識との統合の必要性についても感じている自分の感覚ともフィットする。

    で、このプラグマティズムも、そういう実証科学、行動主義的なところから始まるのだが、ローティーになると、もうジャック・デリダなみの非決定論、脱構築論になってしまう。

    面白いね。ローティーとクワインもそのうち読んでみることとする。

  • 評価することができないくらい、よくわからん(笑)
    哲学ってどの本を読んでもぴんとこないのだけれど、センスがないのか。

    「軍人どもはプラグマティストだ、憶測じゃ動かない」
    っていう某漫画の中にあったセリフで興味を持った「プラグマティズム」である。
    …まぁ難しくてよく分からなかった。哲学とか思想とか、全然飲み込めない。

    本の始めのほうにあった、体系的、伝統的な観念にしばられることなく、眼前の事実を直視し、結果をめざして前進し、定式をとおして環境の本質を見抜く事によって環境を変えていく、という思考がプラグマティズム、と理解した。
    開拓民から生まれた、との言葉で、納得。

    第15章の最後がよかった。
    アメリカ、それでも今でも生きていると思う、この考え方は。先日、アメリカに小学生の頃に引っ越して、もう向こうに根っこのある若い子が、南米で貧しい子のために村を作った番組を見たんだけれど、この年の子がこういうことをできる世界なんだ、アメリカはと、衝撃を受けた。日本では、なかなか難しいんじゃないのかなぁ。

  • (仮説)
    自己を掘り下げていくと宇宙を掘り当てることがある。

  • 生き生きとした言葉から時代の熱気が伝わってくる。アメリカは夢が実現できる国でもあった。多様な人々が共存するところにアメリカの強味がある。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/04/blog-post_20.html

  • 2007-08-15

    教育関係でデューイ周りの話もあり,プラグマティズムはもう少し学ばなければと思っていたので,渡りに船でした.

    この本は,なかなか良いです.

    パースの話は,ともすると記号学関連の流れの中で読むことが多いのでしょうが,
    プラグマティズムの中で見た方がスッキリすることは確かかもしれません.

    しかし,プラグマティズムの中でもジェイムズ,パース,デューイなどがそれぞれにどの様な揺らぎを持って物を考えていたのかも,
    よく書かれていました.

    さらに言えば,本書はプラグマティズムの発露をアメリカへの入植の民族的原体験からひもといて行くので,おもしろい.

    ちなみに,今,世界でユダヤ人はイスラエル以上にアメリカにいるそうですね.しりませんでした.


    プラグマティズムはアメリカの中期(?)にあって,ヨーロッパの学術的伝統にすがらず,アメリカだってシッカリ学問できるんだ!
    っていう,気概を育んでいったというところが在るようです.すばらしい.

    しかし,現在のアメリカからはその魂は薄れ,より薄っぺらいものになりつつあるような気がしますね.


    プラグマティズムを生んだアメリカの元々のアイデンティティは多様な民族を受入れ,「人種のるつぼ」としてのアメリカの誇りと理想.
    その中で,共有できる価値を見出そうとする実験科学への志向性,宗教への寛容.


    個人的には,本書での発見はG.H.ミードが面白そうな事を発見したことでしょうか?

    なかなか,よさげです.ちょっとまた勉強してみます.

    ミードの「社会行動主義」がワトソンの「行動主義心理学」と全然違うんだってことも,知ってホッとしました.

    知能研究で記号を扱うものにとって,
    「行動主義心理学」は○○○(任意の悪口)ですから.


    あと,ちょっとしたことですが,よいセリフがあったので,メモっときます.

    デューイの所ででてきたんですが

    教育(education)の語源って,
    ラテン語のeducoで意味は

    「引き出す」

    って意味らしいですね.

    子供から何かを引き出す.それが教育らしいです.

    今,抱かれる教育のイメージって,むしろ

    「押しつける」

    って感じですが.



    学問思想的にはヨーロッパ気取りな私でしたが,

    最近は,<実践知(phronesis)>求めて,基本的にプラグマティスト化が進んでいます.

    気付けば,アメリカ人の本をよく読んでる.

  • 未知のフロンティアをアブダクションを使って開拓してく過程に興味があればパースの章はオススメ。

    「知りたい!」「知を愛すること」の哲学的、科学的な態度/習慣のヒント。

    私の場合、これを読んで後に、リーンスタートアップやTDDがやろうとしていたことの理解が一歩進んだ。

  • プラグマティズムの特徴は、思考を行動(もしくは行為)およびその結果との関連においてとらえる点にある。p192
    思考とは、それにもとづいて行動できる信念を形成するプロセスであり、信念は行動への前段階であった。

    《まえがき》p11
    [哲学的方法の特徴 by トクヴィル]
    ①体系を排すること
    ②眼前の事実を重視すること
    ③物事の理由を権威にたよらずに独力で探求し、結果を目指して前進すること
    ④定式をとおして物事の本質を見ぬくこと

    C・S・パース以来の「可謬主義」→「実在仮説」p13
    ローティ「反体系主義」

    [文化的多元主義]
    「人種のるつぼ」「サラダ・ボウル」「人類のオーケストラ」by H・M・カレン p31

    【「超越主義」(transcendentalism)by エマソン、ソロー】p33
    思想的バックボーン:コールリッジ、カーライル
    →カント的な意味を拡大解釈して、人間精神には、実在把握にかんして感覚的な経験を超越した詩的で内在的な能力があるとする立場。

    【エマソン】p34
    「知的独立宣言」@ハーバード大の講演「アメリカの学者」
    [エマソン思想の核心]p37
    ①自然と人間の魂が同一の根をもつものであり、自然にたいする探求と人間の魂にたいする探求とは結局おなじことであること。
    ②ひとりひとりの人間が「神聖な魂(Divine Soul)」(彼はこれを「大霊(Over-Soul)」と呼んでいる)によって命をふきこまれていること―すなわち人間を超越したものの存在を認めると共に、それによって命を与えられた個人の尊厳と、個人の国家に対する優位を認めること。
    ③思考と行為が密接な関係にあり、思考は行為の一部分であること。
    ④人間の生活が思想の基盤であること。など

    ダーウィン「進化論」、クラウジウス「エントロピー増大の原理」→「19世紀の悪夢」p52
    イギリスの生物学者ハクスリー「物質と因果性の領域を拡大することによって、人間の思想の全領域から、いわゆる精神と自発性を徐々に追放してしまうのではないか」

    晩年マーク・トウェインのペシミズム

    C・S・パース「プラグマティック・マクシム(プラグマティズムの格率)」p58
    ウィリアム・ジェイムズ「唯物論と有神論のどちらの仮説をとるにせよ、仮説から帰結する結果にかわりがないとすれば、両者の論争はまったく意味のない無駄なものであることがわかるだろう」
    プラグマティズム=科学と反科学の「両方の要求を満足させることのできるひとつの哲学」であるという。
    パースのマキシム「私たちの概念の対象が、実際的なかかわりがあると思われるどのような結果をおよぼすかと私たちが考えるか、ということをかえりみよ。そのとき、こうした結果にかんする私たちの概念が、その対象にかんする私たちの概念のすべてである」p64
    →概念の意味はつねに「実際的なかかわりのある結果」とむすびつけて考えられる。→嚆矢「論理実証主義(logical posivitism)」「論理的経験主義(logical empiricism)」Cf. 「意味の検証理論(the verification theory of meaning)」

    パース論文「私たちの観念を明晰にする方法」:「思考の働きは、疑念(doubt)という刺激によって生じ、信念(belief)が得られたときに停止する。したがって信念をかためることが思考の唯一の機能である」
    「探求(inquiry)」:「疑念が刺激となって、信念に到達しようとする努力」Eg. 1枚の500円コインと、5枚の100円コインのどちらを券売機に?
    英国の心理学者・哲学者アレグザンダー・ベイン『もろもろの感情と意思』による信念の定義:「人がそれにもとづいて行為する用意のあるもの」
    パースのマキシムの着想源泉:カント『純粋理性批判』「超越論的方法論」仮言命法(ア・ポステリオリ)p79
    [探求の4つのパターン]p81
    ①固執の方法(the method of tenacity)
    ②権威の方法(the method of authority)
    ③先天的方法(the a priori method)
    「理性にかなう(agreeable to reason)」と思われる命題を基礎にして、そこから体系的な信念を固定する方法。Cf. デカルトの方法論
    ④科学の方法(the method of science)
    実在(reality)、実在物

    【思考の記号性】p98
    「したがって認識できる思考があるとすれば、それは記号のうちにある思考(thought in signs)にかぎられる。ところが認識できない思考というものはありえない。それゆえ、すべての思考は必然的に記号のうちにあることになる」

    【パースの人間記号論】 p101
    [3つの記号の関係]
    ①記号は、何らかの思考によって「解釈」される。
    ②記号は、思考によってその記号と対置されるある「対象」の代理をする。
    ③記号は、ある「側面」またはある性質において、その対象と関連する。
    ※①〜③はそれぞれ、記号過程における三項関係を構成する解釈項、対象、記号について。
    [3つの特性]
    ①記号だけに所属し、記号のはたらきとは直接的な関係のない性質、すなわち材質(the material qualities)。たとえな、「人間」という言葉がふたつの文字からなるということ。
    ②純粋な指示作用(the pure demonstrative application)。たとえば風見鶏のように、対象である風と直接的に関連するか、あるいは絵画のように、連想によって対象である風景と間接的に関連するかのいずれにせよ、記号とその対象との実在的で物理的な関連。
    ③思考によって、ある意味(すなわちもうひとつの記号)を表示するものと解釈されることを可能にする表示機能(the representative function)。
    [3つの種類と対象]
    ・「イコン(icon)」
    ①「イメージ(image)」
    ②「ダイアグラム(diagram)
    ③「メタファー(metaphor)」
    ・「インデックス(index)
    ①「指示記号(designation)
    ②「反応記号(reagent)
    ・「シンボル(symbol)
    [解釈項の種類]
    ①「直接的解釈項(immediate interpretant)」
    ②「動的解釈項(dynamic interpretant)
    ③「最終的解釈項(final interpretant)」
    さらに
    a. 「情緒的解釈項(emotional interpretant)」
    b. 「努力的解釈項(energetic interpretant)」
    c. 「論理的解釈項(logical interpretant)」
    CF. 外延と内包

    【知識の拡大と誤謬の可能性】p117
    パースによれば、あらゆる推論は次のように分類される
    推論→分析的(→ディダクション)または総合的(→アブダクションorインダクション)
    総合的の方では常に可謬の可能性を免れない

    「推論の3つのタイプについて」by パース
    「アブダクションは、説明のための仮説を形成する過程である。それはなんらかのあたらしい観念を導入する唯一の論理的な操作である。というのは、インダクションは、真偽の値を決定するだけであり、ディダクションは、たんに仮説の必然的な帰結をみきびきだすにすぎないからである。
    ディダクションは、あるものがこうでなければならない(must be)ことを証明し、インダクションは、あるものが現にこうである(actually is)ことをしめし、アブダクションは、あるものがこうであるかもしれない(may be)ことを暗示する。」p119

    現象を理解するために、私たちはまずアブダクションによってそれを説明する仮説をつくり、ディダクションによってその仮説をもっともテストしやすいかたちに変形し、そこから予測される有限個の事実をたしかめることで、インダクションによってその仮説が正しいことを推定するのである。したがってアブダクションは科学的探求の第一段階であり、ディダクションは第二段階、インダクションは第三段階である、ということができる。

    【可謬主義(fallibilism)とパースの哲学】p122

    【可謬主義と連続主義(synechism)】p124
    :「存在する一切のものは連続的である」とする主張。
    「一切の事物は、不確実性と不確定性からなるもろもろの連続体(continua of uncertainty and indeterminacy)のなかにうかんでいる」(連続性の原理)

    【「規範学」の理論】p126
    哲学→現象学(phenomenology)、形而上学(metaphysics )、規範学(normative science)→論理学、倫理学、美学
    探求とは、規範学としての論理学と倫理学にみちびかれながら、自己制御された思考と行為をくりかえすことによって、現存する事物(現象)のなかから、普遍法則の具体的な把握にちかづいていくという進化過程を実現することである、といえよう。そしてこうした進化過程の実現こそ、最高善にほかならない。

    「知識の実在性にたいする固い信仰」と、「さまざまな事物を発見したいという強い欲求」という二つの要素をもつ探求は、連続主義とむすびつくことによって、信念は行動への前段階であるとする心理学的な規定のほかに、以上のような「規範学」による基礎付けを必要としたのである。p128

    [パース「プラグマティシズムの論点」]p141
    「いかなるシンボルであれ、そのシンボルのもつ知的な(intellectual)意味内容のすべては、あらゆる可能なさまざまな状況と意図にもとづく条件のもとで、そのシンボルをうけいれることから結果する理性的な(rational)行為のあらゆる一般的な(general)様式の総体にほかならない」

    [ジェイムズによるプラグマティック・マクシムの拡張]p142
    ①その観念の対象に操作をくわえ、あるいは実験をおこなうことから予測される経験だけではなく
    ②その観念を信じることによって得られるさまざまな結果
    もふくまれていた。
    [二つの真理]
    ①実証的な真理
    ②限定的真理
    Cf. 宗教的ななぐさめ(religious comfort)→「特殊な経験」
    以上のようにジェイムズの真理観は、一方では真理とは「検証(verification)」もしくは「検証可能性(verifiability)」であるとすることによって、科学的探求の立場にたつと同時に、他方では「その限りにおいて真」なる観念、すなわち限定的真理をみとめることによって、宗教的な思考に道をのこそうとするのである。

    <7章 ジェイムズと宗教>p150
    ジェイムズ「信じる意志」

    フランシス・ニューマン
    神は地上に「一度生まれ(once-born)」と「二度生まれ(twice-born)」という二つの系統の子をもうけられた。
    ジェイムズ「健全な心の持主」と「病める魂の持主」『宗教的経験の諸相』

    そもそも宗教とは「私たちは、宗教をこういう意味に理解したい。すなわち宗教とは、孤独の状態にある個々の人間が、たとえなんであれ、自分が神的な存在と考えるものと関係していることをさとるかぎりにおいて生じる感情、行為、経験である、と」『前掲書』

    【意識の五つの特徴】p171
    ジェイムズ『心理学原理』の9章「思考の流れ」
    ①個人性
    「自然における最も絶対的な孤絶」→多元論(pluralism)
    ②変化
    ③連続
    「意識の流れ(stream of consciousness)」あるいは「主観的生活の流れ」
    ④志向性
    ⑤選択

    「根本的経験論(radical empiricism)」
    彼はまず世界のあらゆるものを構成する素材がただ一つだけ存在するという仮定から出発し、この素材を「純粋経験(pure experience)」と名付ける。
    Cf. 西田幾多郎『善の研究』

    <第9章 ミードの「社会的行動主義」と言語論>p188~
    社会的行動主義(social behaviorism):人間の集団内における記号、すなわち身振りを媒介にした相互の協力という社会的な現象。このような社会的な行動によってはじめて個人の意識が形成されるのであって、ミードは外から内へ、すなわち集団内における観察可能な社会的行動から、個人の内面的意識に向かう。→科学的方法へ

    【ミードの可謬主義】p201
    世界には、常に予測不可能な、前例のない、「新奇なもの(novelty)」が出現する。この出現をミードは「創発(emergence)」と呼ぶ。

    <第10章 ミードと自我論>p213~
    Cf. 『精神・自我・社会』「役割とりいれ(role taking)」「一般化された他者(generalized other)」「共有意味世界(universe of discourse)」

    【「I」と「me」―自我の構造】p221
    「・・・他者の態度を取り入れることによって、私たちは『me』を導入し、それにたいして『I』として反応する。・・・『I』とは他者の態度に対する人間の反応であり、『me』とはその人自身が想定する他者の態度を組織化した体系である」
    [人格およびその多重性]p223
    さらに「I」は「me」に対する反応であるばかりでなく、「me」というまとまりを与えるのも「I」であるから、「『I』と『me』を合わせると、両者は社会的経験のなかで現れる人格(personality)を構成する。自我は、本質的にこのように区別できる二つの側面を持って進行する社会過程である」

    「I」と「me」の融合―高揚感=ナショナリズム?

    <第11章 デューイの「道具主義」と教育論>p234~
    ジェイムズの影響により、デューイは次第にヘーゲル主義から離れて「実験主義 Experimentalism」あるいは「道具主義 Instrumentalism」への方向をとりはじめる。
    :心や知性(intellect)の働きは、環境のなかで困難な状況のなかに置かれた有機体としての個人を、そうした問題状況を解決することによって環境に適応させることであり、心が形成する観念は、問題を解決するための実験的な仮説であり、道具である、という考え方。
    →「考えるということは、環境をコントロールするための道具である。コントロールは行為によってもたらされるが、その行為は、複雑な状況を確定されたもろもろの要素に前もって分解したり、それに伴って様々な可能性を予測したりすることなしには―すなわち考えることなしには―実行に移されない」『論理学説研究』

    【3 実験主義的教育論】
    彼の教育信条によれば、「教育は経験の継続的な改造であり、教育の過程(process)と目標(goal)は一つの同じ事柄である」『学校と社会』
    Cf. シカゴ大学付属実験学校

    《第12章 デューイの真理と宗教》p251~
    【反省的思考の五段階】『思考の方法』
    ①疑念が生まれる問題状況
    ②問題の設定
    ③問題を解決するための仮説の提示
    ④推論による仮説の再構成
    ⑤実験と観察による仮説の検証

    【真理対応説と真理整合説】p258
    前者はアリストテレス『形而上学』correspondence theory of truth
    後者 coherence theory of truth

    [宗教と想像力]p262
    G・サンタナヤ「宗教と詩は、本質において同一である。...詩は、それが人生の内面に入り込むとき宗教といわれ、宗教は、それが人生の表面にとどまるとき、詩以外のなにものでもないとみられる」

    [想像力と全体的自我]p264
    デューイ「私たちの観察や反省という限定された世界は、想像力による拡大によってはじめて宇宙(the Universe)となる。それは認識によってとらえることができず、反省によって理解することもできない。他方また、観察も、思考も、全体的活動も、一つの全体と称される自我の完全な統一に達することはできない。全体的自我(the whole self)は、一つの理念であり、想像力によって投影されたものである。こうして宇宙と自我との徹底的な、深く根を張った調和という観念は、...想像力を通じてはじめて可能となる」

    <第13章 デューイと善と美>p268~
    デューイ「習慣が自我を構成する」『人間性と行為』
    「成長、改良、進歩」こそが善である。p271

    <第14章 モリスの思想とクワインの思想>p283~
    【モリスの記号論(semiotics)】p285
    ①記号として働く「記号媒体(sign vehicle)」
    ②記号が指示する「指示対象(designatum)」
    ③記号を解釈するものに対する効果としての「解釈項(interpretant)」
    ④記号を解釈する「解釈者(interpreter)」

    【人格を構成する3つの要素】『人生の道』p288
    ①「ディオニュソス的要素(Dionysian component)」:欲望を満たすにふさわしい対象があれば、ためらうことなくそれに熱中する傾向
    ②「プロメテウス的要素(Promethean component)」:欲求を充足できるように世界を操作し、再構築しようとする傾向
    ③「仏教的要素(Buddhistic component)」:世界の再構築よりもむしろ自分の欲望を抑えることによって自我を規制しようとする傾向
    ⇒「人格型(type of personality)」

    【デュエム=クワイン・テーゼ】p299
    「外界についての私たちの命題は、個々別々にではなく、一つのまとまり(a corporate body)としてのみ感覚的経験の裁きを受けるのである」

    <第15章 ローティーのプラグマティズム―全体を振り返って>p310~ 1. 認識論から解釈学へ

    【3つの転回】p312
    ①「認識論的転回(epistemological turn)」
    ②「言語論的転回(linguistic turn)」
    ③「解釈学的転回(hermeneutic turn)」Cf. ハイデガー、デリダ

    【プラグマティズムの現代的意義】p333
    ①有限の存在である私たちの意見あるいは信念は常に誤りを含むものであることを認める可謬主義。
    ②他の人の権利を侵害しない限り、全ての人の信じる権利を認める多元主義。
    ③しかし、探求の彼方に実在を捉えることができるという実在仮説に基づく、探求ないし会話の継続。

  • 可謬主義と実在把握に向けた探求。そのような生きた哲学を目指すのがプラグマティズムということかな。とりあえず、パースとローティの著作はちゃんと読んでみたい。本書は丁寧で真っ当なプラグマティズムの入門書であった。

  •  ジェイムズ以外は自分が消化不良だった。デューイとミードってイマイチ興味持てないんだよな。。。クワインとローティの部分は比較的分かりやすかったように思う。

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