ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書 1763)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 262
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480075949

作品紹介・あらすじ

ブッダは平和主義者でもなければ万人の平等を唱えたわけでもなかった?! これまでの解釈を斥け、初期仏典の丹念な読解からその先駆性に迫る革新的ブッダ論。

感想・レビュー・書評

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  • 『ブッダという男』清水俊史
    ブッダは本当に平和主義者だったのか?
    初期仏典を読み解くと実際は暴力や戦争を完全否定はしておらず、女性差別者でもあった。
    当然時代も違うからブッダとはいえ現代の価値観にそぐわない考えもあったという視点が面白かった。
    とはいえ無知を打ち払い煩悩を絶てば輪廻は終局する、極端な楽と苦を離れ中道を歩むなど、現代人の理想とする新しい価値観をすでに見出していたことにやはり心打たれるものがありました。
    仏教については完全素人ですが、思いの外ブッダの言葉に引き込まれた。
    ブッダに興味を抱くきっかけになったと思います。

  • 清水俊史『ブッダという男』読了。「勇者ヒンメルならそうした」ならぬ「覚者ブッダならそう言った」とも言うべき、初期仏教研究における神話的装飾を取り除いたとされる「史的ブッダ」探求の伝統は、現代(後世)の価値観で以てあらまほしきブッダ像を捏造してしまっているとして疑義を投げかけ、比較宗教的な視点から、ブッダの先進性を再検討、評価せんとする一冊。「史的ブッダ」探求の伝統を「史的イエス」探求と比較しながら論じていく件はとてもおもしろかった。
    確かにブッダは平和主義だとか階級差別否定論者だったというのは当時の社会通念から飛躍し過ぎているし、現代人にとって都合がよすぎるな、と。
    その上でそのような"神話的"史的ブッダ解釈が封建的な社会を変革することに寄与したのもまた事実だよなとヒンメル理論を思い出しながら噛み締めた。

  • 著者は著作を巡る盤外の騒動(大御所からの出版妨害)で話題になった人で、私もその騒動で興味を抱いた。

    本書でも先達の研究をバッサバッサと斬りまくっていて、なるほど、これでは怒りも買うだろうなと思った。

    あいにく、私には著者の主張の当否を判断できるような素養はない。が、主張はいずれも仏典に基づいた論理的で冷静なものだし、大筋では「なるほど」と得心した。

    ブッダ(釈尊)の研究は、神話化のヴェールを剥がして人間ブッダを見つめる方向で進んできた。だが、そこには逆ベクトルの神話化があったと著者は言うのである。

    古代インドに生きたブッダが、現代人と同じ価値観を持っていたはずがない。にもかかわらず、多くの研究者が、ブッダを“時代を超越した平和主義者・平等主義者”として理想化する。

    そこには、現代の価値観という鋳型に無理やりあてはめるバイアスが、抜き難くある……というのが著者の主張だ。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1763/K

  • あと書きから著者の悲願の一冊であることが感じられた。

    たしかに、ゴータマ・ブッダを神格化し、現代の時代状況にも適切な価値観を持った人物だと論じるのは無理がある気がする。

    インテグラル理論を学ぶなかで、社会の発達状況が過去と現在では異なり、その時代を生きる人は、その時代の影響を少なからず受けていることは当然なのかもしれない。

    何かや誰かに自分の世界観の投影をしてしまう。人間の性。

  • なぜか図書館で予約していたが、なぜ読もうと思ったのか思い出せない…
    あとがきが1番強烈だったかも。
    アカデミアの圧力にまけずに、研究を続けられていることを祈ります

  • 仏典から神話的要素を排し歴史的ブッダの実像を確定しようとする試みが、近代的価値観をブッタに被せて新たな神話的ブッダを再生産しただけであるという指摘が主。
    個人的には「無記」を否定しているのが気になった。

  • 2024.4.9
    これまでのブッダ論に対する批判が大半を占めていて、著者自身の考えの部分が薄いと感じました。著者の批判が正しい部分もあるのでしょうが、中村元の『ブッダの教え』(スッタニパータ)を読んで、ブッダに惹かれたので、残念に思いました。

  • ブッダをよく理解していないにも関わらず、無意識に美化していることはある。それを否定する意見を表明しにくい空気もある。その空気は圧力に近い。

  • ブッダは、様々に語られて来た。しかし、語る者による願望や理想を免れることが難しい。それを平和主義、六道輪廻、階級差別、男女平等などで提示をされ、それらが妥当性を検証される。結論として「歴史的ブッダ」を導き出すことは難しく、どの語られたブッダも実は「神話的ブッダ」でしかない。しかし、これが無意味かというと「神話的ブッダ」こそが、人々から信仰され、歴史に影響を与えてきたのである。語られたブッダの大事さがここにあるのではにないか。

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著者プロフィール

清水俊史(しみず・としふみ):2013年、佛教大学大学院博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員PD、佛教大学総合研究所特別研究員などをつとめる。著書に、『阿毘達磨仏教における業論の研究――説一切有部と上座部を中心に』『上座部仏教における聖典論の研究』(ともに大蔵出版)がある。

「2023年 『ブッダという男 初期仏典を読みとく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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