戦略思想史入門 ――孫子からリデルハートまで (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074430

作品紹介・あらすじ

六人の戦略家――孫子(孫武)、マキャベリ、ジョミニ、クラウゼヴィッツ、マハン、リデルハートの思想を解説。古代から現代まで戦略思想の流れがわかる入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 孫子、マキャベリ、ジョミニ、クラウゼヴィッツ、マハン、リデルハート、それぞれのエッセンスが市民講座風にコンパクトに紹介されているが、面白みはそんなにないかな。

  • ■本の概要
     歴史の本を読む際の手がかりとして、これまでの戦争を通じてどのような戦略思想が生み出されてきたのかがわかり、それらがどういった評価を受けてきたのかをコンパクトに学べる本。軍事戦略に基づいた思想本は珍しいらしい。

    ■読もうとした背景
    ・明確にあるわけではなく、何となく戦略という物を学んでおきたかったため。というのも、日々の生活や仕事を一生懸命しつつ自分が健康に過ごしていくにはどうしたらよいか、という問題に関心を持っていてそのインプットとなれば良いなと期待している。

    ■読んでみて
    ・軍事戦略家の思想は、置かれている時代や環境に影響を受けていることがわかった。つまり、偉大な戦略家はその時代・状況に合わせて頭をひねって答えを出してきた、ということが理解できたので良かった。
    ・斜め読みをしたので偉そうなこと言えないけど。

  • 孫子、マキャベリ、ジョミニ、クラウゼヴィッツ、マハン、リデルハートという6人の代表的な戦略家の著作と思想のエッセンスを紹介。それに加えてこの6人がある命題に対してどのように回答するかということもシミュレーションしており、それも面白い。例えば政軍関係、戦争と倫理、攻撃と防御、核戦力について等。

  • 戦略といってもビジネス戦略ではなく軍事戦略の本。とはいっても、孫子やマキャベリなどはビジネス本にも取り上げられる事も多いので、そういう意味では軍事戦略が大本になっていると言えるだろう。本書では6人の思想家が紹介されており、各々のエッセンスを把握するには手頃な一冊となっている。
    最終章でまとめとして6人の共通点と相違点が述べられているが、共通点が殆どないことは意外であった。これは各々が生きた時代や仕えた国家に依存するものなので当然と言えば当然なのかもしれないが、それにしてもこれでは「歴史に学ぶ」ことは不可能なのではないかという気さえしてくる。共通点としては戦争は政治目的であることと(核戦力も含めて)軍事力を否定しないことぐらい。という意味では日本で議論されている内容がいかに的外れなのかがわかる。また、昨今ではロシアのウクライナ侵攻に対して「どうすべきか」といった議論がアレコレとされているが、本書を読むとそういう議論に関しても正しい答えなどないことがわかったのはひとつの収穫ではあった。かといって目前で展開される戦争に対して途方に暮れるわけもいかず、先人たちの知恵を参考にしつつ、現代に生きる人間が状況を見据えて自分たちで考えていくしかないのだろう。

  • はじめに
    「戦い」が消えた戦略
    歴史を知るための戦略思想
    古代から現代までの戦略思想
    第1章 孫子
    1孫子の戦略思想①ー戦わずして勝つ
    古代の戦略思想家「兵家」
    天下に知られた『孫子』
    大戦略から戦術まで網羅する『孫子』
    政治と軍事の関係
    「戦わずして勝つ」の戦争観
    武力による百戦百勝は否
    事前のシミュレーションを重視
    戦争は経済を疲弊させる
    武力戦ならば短期戦
    2孫子の戦略思想②ー武力戦の極意
    攻勢はどこで戦うべきか
    守勢は必ずしも不利ならず
    武力戦に共通する原則ー相対的な優勢の確保
    分散と集中の迎用の条件
    目標は敵野戦軍
    高等戦術を要求
    情報活動を前提とする戦略思想
    幅広いインテリジェンス論をめぐって
    組織マネジメントとリーダーシップ
    非情な運用方法による「勢」
    武力戦のあり方の要旨
    目標は戦争終結へと
    3「孫子』とその時代ー群雄割拠と弱肉強食
    古代の独特な戦争様相
    戦争のルールに変化
    孫武の出自とキャリア
    孫武の登用への賭け
    楚の攻略に功絞
    『孫子』の評価
    孫武の限界
    第2章 マキャベリ
    1マキャベリの戦略思想①ー性悪説に基づく権力観
    中世から近代ヘー軍事の変造
    傭兵隊の存在
    ベースにある性悪説
    権力装置「ステート」という考え方
    狐と獅子の性質を求める『君主論』
    君主は「運命」を引き寄せねばならない
    ギリシャやローマをモデルにした『ディスコルシ』
    国防のために宗教も手段として利用
    『戦争の技法』で用いた手法
    市民軍の創設を主張
    マキャべリの戦争観と戦争目的
    財力だけでは国防は成立しない
    同盟のあり方と依存について
    2マキャベリの戦略思想②ー指揮権の統
    戦争は短期戦での主力決戦を
    進撃して敵の領土で戦うか、自国で迎え撃つか
    兵制を直視する考え
    指揮権の統一について
    訓線・規律・統率のスタンス
    決戦の条件と指揮官への助言
    3マキャベリとその時代ー傭兵隊から市民軍へ
    マキャベリとその時代
    シャルル八世のイタリア侵入
    傭兵軍団の実態
    ピサ戦役の失敗
    市民軍創設へ
    マキャベリの失脚とその後
    マキャベリの総括
    マキャベリの評価
    第3章 ジョミニ
    ジョミニの戦略思想ー戦争をいかに遂行するか
    変わりゆく戦争様相
    傭兵隊から常備軍へ
    兵学理論の構築を重視
    ジョミニの著作と影響
    戦争の政治目的の類型
    それら武力戦に伴う性質
    政治と平事の関係―政治指導者と軍事的指尊者
    「皇帝」に求められる資質
    ジョミニの「戦略」定義/
    サイエンスかアートか
    ジョミニの戦略思想②—内線作戦
    不変の戦争術の原則とは
    内線作戦について
    作戦の型式について
    拡大する作戦地帯
    作戦基地・戦略要点・決勝点・目標とは
    欺賜や奇襲について
    情報・インテリジェンスに対する態度
    3ジョミニとその時代ーナボレオンとともに
    幼少から軍事に関心
    フランス軍の大佐として
    ナポレオンのジョミニ評価
    制限戦争の時代
    王朝国家の軍隊
    高コストから戦闘回避
    フリードリッヒ大王の軍事改革
    その戦争の限界
    ナボレオンの戦争
    政治と軍事のトップを兼務
    目標は敵野戦軍
    ナポレオンの限界
    ジョミニの評価
    第4章 クラウゼヴィッツ
    1クラウゼヴィッツの戦略思想①ー絶対戦争とは何か
    比較的知られるクラウゼヴィッツ
    『戦争論』は未完
    観念上の絶対戦争
    制限下の現実の戦争
    政治と軍事の関係
    両者の衝突について
    純軍事的視座の問題
    戦争の合理的な見積もりは可能なのか
    戦争の三位一体
    2ラウゼヴィッツの戦略思想②ー摩擦とは何か
    摩擦と障害
    攻撃と防御の関係
    短期戦による勝利
    軍事的天才という考え
    欺盛・奇襲・情報について
    戦争の形態について
    第一種の戦争と第二種の戦争
    3クラウゼヴィッツとその時代ープロイセン、ロシアでの活躍
    クラウゼヴィッツの出身
    シャルンホルストとの出会い
    イエナの敗北
    フランスで捕崩として
    軍事改革への取り組み
    ロシア軍に入る
    士官学校長として
    クラウゼヴィッツの評価
    クラウゼヴィッツの「後継者」モルトケ
    モルトケの戦略的包囲
    外線作戦の使用
    弟子を自称したモルトケ
    もう一人の後継者シュリーフェン
    第5章 マハン
    1マハンの戦略思想①ー海上権力とは何か164
    海洋の戦いの歩み
    近代海戦「黄海海戦」「日本海海戦」
    海軍の戦略思想とマハンの登場
    歴史における科学的な基本法則
    シーパワー•海上権力という概念
    『海上権力史論』の構成と緒言
    海上権カ・シーパワーの構成について
    マハンの戦争観
    政治と軍事の関係
    2マハンの戦略思想②ー艦隊の戦略
    マハンの海軍戦略ー海軍の存在理由と通商破壊
    海軍の集中の原則
    艦隊は攻勢的要素か防勢的要素か
    戦略地点について
    海外遠征について
    要塞艦隊主義と現存艦隊主義
    3マハンとその時代—帝国主義と日露戦争
    マハンが培った宗教観
    アナボリス卒業後
    海軍大学校校長へ
    退役後のマハン「大佐」
    帝国主義へ
    中国の存在を意識
    日本への警戒心
    マハンと秋山真之
    日本のマハン
    マハンの評価
    第6章 リデルハート
    1リデルハートの戦略思想①ー間接アプローチ戦略
    ドイツ帝国の宿命
    第一次世界大戦期の戦略思想家
    「間接アプローチ戦略」のリデルハート
    「大戦略」(高級戦略・グランドストラテジー)とは何か
    国家レべルの「英国流の戦争方法」とは
    政治と軍事の区分について
    政府の目椋変更について
    「軍事戦略」(純戦略)の鍵は目的と手段の調整
    2 リデルハートの戦略思想②—機甲戦珊論
    具体的撹乱方法について
    牽制と代替目標
    交通線の遮断
    前進の柔軟なあり方―麻痺への追い込み
    「機甲戦理論」研究と心理的撹乱
    ゲリラ戦争について
    「保守主義的国家」の大戦略とエンドステート
    3リデルハートとその時代ー激戦の原体験
    リデルハートのあゆみ
    戦術より高い次元に
    知名度が高まるリデルハート
    第二次世界大戦中の言動
    クラウゼヴィッツ批判の妥当性について
    リデルハートの評価
    終章 戦略思想の共通点と相違点
    1核抑止の戦略思想
    核兵器の戦略思想
    大量報復戦略という考え
    相互確証破壊の成立
    2戦争とは何か
    戦略思想家六人による「円卓会議」
    戦争とは何か
    戦争と倫理の関係についてー孫武、リデルハート、クラウゼヴィッツの立場戦争と倫理の関係についてージョミニ、マハン、マキャベリの立場
    3政軍関係
    政治と軍事の関係についての見解
    政治と軍事の最裔権力は兼務可能ージョミニ、マキャベリの立場
    政軍権力は組織的に区分ー孫武、クラウゼヴィッツ、マハン、リデルハートの立場
    戦争と経済について
    4いかに戦うか
    戦争の手段をどう考えるか
    武力戦中心のアプローチと限界
    合理性の価値
    戦争の期間について
    攻勢と防勢(守勢)、攻撃と防御について
    大戦略レペルの攻勢と防勢について
    敵をどこまで追い込むべきか
    壊滅戦に疑義を呈する孫武とリデルハート
    核戦力をどう考えるか
    戦争の終わらせ方について

  •  流し読み。孫子から6人の戦略思想を分かりやすく抽出。それぞれの生きた時代背景も合わせ紹介しているのがいい。
     ただ、本書の範囲を超えるだろうから仕方ないのだが、各思想が近現代戦にどう使える又は使えないのかという点が、マハンと最終章にわずかある程度で、自分には不足だった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1615/K

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著者プロフィール

西田 陽一(にしだ・よういち)
1976年北海道札幌市生まれ。ワシントン州立大学経済学部卒。鉄鋼専門商社勤務を経て、現在(株)陽雄代表取締役。航空・陸上自衛隊幹部学校部外講師(指揮幕僚課程・幹部高級課程)、海上自衛隊部外講師(航空学生課程)、明治大学リバティアカデミー講師をこれまでに務め戦略思想・防衛学国防論・国際関係論などの科目講義を担当。日本クラウゼヴィッツ学会理事。戦略研究学会会員。著書『「失敗の本質」と戦略思想』(共著、ちくま新書)、『孫子がわかれば、中国がわかる』(共著、ダイヤモンド社)、訳書『孫子とクラウゼヴィッツ』(M.I.ハンデル著、共訳、日経ビジネス人文庫)。

「2021年 『戦略思想史入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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