- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480074324
作品紹介・あらすじ
魚が鏡を見て、体についた寄生虫をとろうとする!? 「魚の自己意識」に取り組む世界で唯一の研究室が、動物の賢さをめぐる常識をひっくり返す!
感想・レビュー・書評
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小さな熱帯魚の鏡像実験をとおして魚類の認知能力や自己意識を探る。実験の結果は魚が顔認識によって他人(魚)を区別していることを教えるだけでなく、1gにも満たない脳しかもたない魚がどうやらヒトと同じように自己を意識しているらしいことをうかがわせる。ヒトの顔認知様式は複雑な社会生活に応じて獲得したとするようなヒトの優位性・人間中心主義を否定し、ヒトの感覚器官や認知能力の多くは魚類の時点ですでに獲得されていた可能性を示唆する。
実験の経過が丁寧に説明されていて、どのような理由で魚の高い認知能力を認める結果にいたったのかが理解しやすい。「確認行動」を含め、魚が鏡に映った姿を自分だと認める過程はまるで人間の子どものそれのようで親近感さえわく。また著者が指摘するように、動物の関心に合わせた実験の手段に留意することで、ほかの動物への今後の実験結果の更新に期待させられる。実験以外にも、掃除魚のホンソメワケベラが"お客さん"の前では仕事に精を出したり、家庭内不和の調停をするような、魚の高い社会性を示すエピソードなども興味深い。
研究そのもの以外では、論文への投稿や発表の過程をユーモアをまじえて伝えたり、ときには自虐もするような砕けた要素も取り入れていることが特徴だ。ときには関西弁も交えつつ、実験結果に否定的な権威ある類人猿研究者をネタにおどけるようなオーバーな演出には著者の人柄を垣間見せる。また、著名な教授だけではなく研究に参加した多くの学生の名前が挙げられているのも目に付くポイントである。
「魚にもこころがある」と仮説を唱え、「「こころ」の起源は、魚にまで遡る可能性がある」ことを示唆する本書を読んでいると、もしも転生があるのなら魚になっても何ら不思議ではないと思える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「魚にも自分がわかる」。今まで原始的とされてきた魚類は、他を区別でき、自己認識もあるという驚くべき研究成果を示した一冊。とにかくタイトルに惹かれ読み始めたが、ページを捲る手が止まらない。読み始めた読者は「魚なんて馬鹿だ」という認識から始まるのが大半であろうから。万が一、魚だって…と少し斟酌して読み始めたとしてもそれ以上の、期待以上の結果が待っているのでただただ、素晴らしいとしか言いようがない。
筆者は論じていく際の構成がとてもお上手で、特段笑わせにくる研究者のタイプでもなさそうだがこの論説をずっと読んでいたい、と思った。ギャロップ教授の難癖レベルの大反論を喰らってしまったところは思わず笑ってしまったが。
筆者が基本として教科書は絶対に押さえるが、教科書どおりかどうかより自己の目で見たものを信じろ、としている。皮肉にもギャロップ説が教科書どおりだとしたら、今までの研究者はその域を出なかったことになる。そこを徹底的に持論を遵守し大いなる発見をされたこと、難癖(?)をことごとく論破されたことに対して敬意を表したい。
人間だけが決して優秀な生きものではないこと。
少しでもその「選ばれし高度な生物」という表現に違和感を覚える方に、この本をおすすめしたい。更に研究が進んで、すべての生きものとは人間と対等であることを証明できるように。 -
にわかには信じられないタイトルが気になり、読んでみた。ここ10年ほどで進んでいる分野の研究が紹介されていて、確かに魚が「自分がわかる」ことを示している。魚が頭の中で、言語を使って色々考えを巡らせている、と言う訳ではなく、「自分がわかる」「他社を見分ける」種類の魚がいると判明したということ。
仮説を証明するには、対象物とカギをどうやって選ぶか、それには日頃から、広い範囲で物事をよく観察することが大切であることが、本書からわかる。一見、関係ないと思えるようなことが、どこかでつながっていく、そんな事例もある。そして、実験では、どうやって否定性を潰しながら、肯定性を確実に押さえていくか、導かれる結果の曖昧さを消すためには、どういう手順が必要か、本書で示されている手順の数々が、とても興味深い。
ことは、近世哲学の祖として、「我思うゆえに我あり」で知られるデカルト(1596-1650)にさかのぼる。彼は動物にも知能はあるとしていたが、動物が自己やこころを持つことはない、動物は刺激に対し反射的に反応するだけで意識もない機械と同等な存在とまでみなしていた。これを覆したのは、ゴードン・ギャラップ教授が、チンパンジーが鏡で自分を認識すること、すなわち鏡像自己認知を証明した1970年だった。これにより、動物が自己認識すること、自己意識を持つことを示した。そして、今世紀に入り、イルカ、ゾウ、そしてカラスの仲間のカササギでも、自己認知が確認された。そして、魚にも自己認知が確認されれば、脊椎動物全体の自己意識を認めることになる。
という背景から、著者たちが論文を発表した時には、チンパンジーの研究者から、激しい反論があったという。中にはいちゃもんか?というレベルの指摘もあったようだが、それを丁寧に反証していくようすが、また面白い。
アフリカのタンガニイカ湖は、種多様性が高く、多くの捕食者が常に狙っている生息地。これが、社会性が発達する要素になっている。確かに、縄張りや群れという社会性を持つなら、何らかの方法で、その魚たちは個体を見分けているはずで、その先にある自己認識の可能性が高まる、ということなのか。 -
魚に自意識!?と思って手にとって読み始めた。
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魚の研究についての本。
内容は、タイトルのとおり「魚にも自分がわかる」について、理論や実験のことが書かれている。
第五章「論文発表後の世界の反響」で、批判に答えるために実験をして、見事自身の論文の正しさが証明されたときの興奮が、文章から伝わってきて、ああ研究ってこういうことだよな、いいよなと思った。
会社の同期とやっている読書会の課題図書。真面目な同期もいるものだなぁと思うけれど、普段の生活では出会うことがない本に出会える読書会って、貴重な機会だ。 -
「魚にも自分がわかる」と言うタイトルを見て、東スポの見出しか、エイプリルフールのネタかと思ってしまう。
しかし、研究結果から導き出されたものだった。魚の脳はヒトと同じ構造だったことが明らかになっている。
魚の「自己認識」に取り組む著者の研究は、今までの常識をぶっ壊す。魚がバカなんて人間の思い込みに過ぎなかったのだろうか。
魚からすれば、分かりもしないのに勝手に知能を判断されて迷惑だったのかもしれない。その気持ちは魚に聞いてみないと分からないが。
魚が顔で他の魚を認識するなんて思いもしなかったので、ビックリした。それこそ人間の上から目線の発想だな。穴があったら入りたいなあ。
著者は面白い研究をするための三原則として以下の点を挙げている。
1.自分の専門の教科書はきちんと勉強しておけということである。
2.自分が見たことと教科書の記述が違う場合、もう一度観察や実験をする。
3.自分が不思議だと思うことや気になることは、いつまでも考え続けることだ。
簡単なようで、続けるのは難しいなあ。
研究は時間が経てば、新しいことがいろいろ出てくる。昔、学校で習ったことで満足していると社会から取り残されそうだ。 -
いやあ、これはもう度肝を抜かれた。こんなことが分かってきているんだ。もう、大変な発見の場に立ち会っているようで、わくわくドキドキさせられた。そして、いまも研究は進行中とのこと。おもしろい。実におもしろい。魚とヒトとで脳から出ている神経の数が同じだとか、魚食魚と藻食魚の顔の違いを認知している小魚の話とか、最初から興味深い話題満載なのだが、ホンソメワケベラのマークテストがもう最高である。もう人に話したくて仕方なくて、まずはパートナーに、次は中2、たぶん明日は中3そして明後日小6と続くだろう。どれくらい興味を持ってくれるか。中2の1人は「その本いくらですか?」と聞きに来た。さて、そのわくわくの中身をほんの少し。ホンソメのからだの直接は見えない場所に寝ている間に茶色いマークをする。ホンソメはいつも他の魚に付いた寄生虫をとって食べている。その寄生虫に見えるマークだ。あらかじめ、鏡に自分の姿が写っていることを認識させている(これだけでも大変な実験なのだが)。そして、自分のからだに付いたマークを鏡で見つけるとどうするか。泳いで行って下にある石か何かにこすりつけて取り除こうとする。そして、ここが最高なのだが、もう一度鏡の前にもどって取れたかどうかを確認している。擬人化してはいけないのだがなんともかわいらしい話ではないか。それを何度も繰り返すのだ。チンパンジーの話は前に読んだことはあったが、魚が同じことをするとは。その上、ホンソメは鏡に映った姿が自分であるということを、その動きによって確かめているのではなく、どうやら自分の顔を見て認識しているようなのだ。すごいことが分かってきたものだ。ところがそれらをサイエンスなどの専門誌に掲載しようとすると、待ったがかかる。それも大御所から。自分たちも若いころびっくりするような研究をしてきたはずなのに、次の世代の新しい取り組みの芽をつぶそうとするとは。そういった裏話もまたおもしろい。こうなってくると、イカやタコなどはすでに研究がありそうだが、は虫類ではどうかとか、昆虫はどうかとか、もっともっと研究が進むことが期待される。ぜひぜひ、本書で興味を持たれた若い世代は、おもしろい実験をデザインしてやってみてください。
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ペラペラと見出しと少しの文章だけ
要再チャレンジ