統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ (ちくま新書)
- 筑摩書房 (2020年10月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480073495
作品紹介・あらすじ
労働の実態、高齢化や格差など日本社会の現状、賃金や社会保障制度の変遷などを多くの統計をもとに分析し、それをもとに未来を予測、高齢者の働き方を考える。
感想・レビュー・書評
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主に2010年頃以降の、物価、賃金トレンド、高齢者の動向など、驚くほど包括的なデータが、わかりやすくパッケージングされていて、この値段ではすごくお得感がある。内容は決して難しくはないのだが、全部を俯瞰してみれるようになろうと思うと、3回くらい再読する必要がありそうだ。
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新書なのに、280ページを超える分量があり、読了するまでなかなか時間がかかりました。
著者は、豊富な労働データ等を用いるとともに、グラフや各種計表を効果的に織り交ぜながら、今後の日本の高齢者労働の在り方について論理的に述べられていて、納得できる内容でした。
高齢者が働けるうちは、できる限り細く長く働けば、今の日本が抱える年金問題や労働問題がすっきり解決するという主張には、共感を持てました。
日本の将来に明るさを感じられる良書です。 -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/638385 -
参照元のしっかりしたデータをもとに、悲観的でも楽観的でもない、事実から予測されるに未来と、その未来をより良くするための現実的なソリューションが提案されている。
私たちの生き方のデザインをし直さなければならないと感じた。キャリアは積むだけでなく、おろすものでもあること、昭和、平成の高齢者のライフスタイルは幻想であり、新たな生き方を推し進めないと、日本の財政は立ち行かないこと。この辺りが良く理解できた。 -
労働に喜びを感じる価値観は、勤勉と倹約を尊しとする儒教的影響がある。為政者には都合がよい。
中堅男性の価値創造機能が相対的に低下したために、賃金が低下した。
野党はどこの国でも格差の広がりに焦点を当てる。
非正規につく理由は人それぞれ。消極的な理由ではなく積極的な理由の人もいる。
ジニ係数は近年は改善している。
格差関連指標は、高齢化とともに上昇するのが一般的。2010年以降は格差問題の進行が落ち着いている。
非正規、所得格差、未婚問題は同時並行で進んだ。
非正規労働は、障害未婚と貧困を生む。
経済財政諮問会議は、規制緩和を主導した。
子育て世代や高齢者にとっては、非正規は魅力的。
生活保護は長期的に増加傾向にある。高齢者が占める割合は50%以上。
家計調査は記入負担が大きいので、共働きが抜け落ちる傾向がある。
給与が上がっても、社会保障費と消費税の負担が重くなっている。
マクロ経済スライド制で、5年ごとの検証が始まった。100年安心の年金制度ができた。所得代替率が53%から50%に下がる予定が、デフレで上昇した。
年金額が減って、自主的に支給開始年齢を繰り下げる。その分働くようになる。
労働市場の自浄作用はまだうまく働かない。当局の監視も人手不足で行き届かない。使用者と労働者の政治力のバランス。経営側を縛り付けるルールはできにくい。
フリーランスは働き方は収入が途切れるリスクを取れる人でないと選べない。
AI化で保険金融の営業職が減る。不動産営業は高度なため増えている。
運搬従事者、ビル建物清掃員は不足している。
仕送りシナリオか、就業延長シナリオか。 -
豊富な統計データだけでなく、それを極めて冷静、端的に分析されていて、とても説得力のある内容でした。長ーくのんびりと働き続けられるよう、少しでも楽しみながら働けるようにしたいです。
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経済学的な観点からデータを交えてシニアの現実的な働き方について論じた一冊。経営学、または心理学的には納得しがたい部分もあるかもしれませんが、経済学的に読めば納得できます。
マクロ的には社会経済や雇用、ミクロ的には年金プラスアルファをどの程度稼げば良いかという家庭の経済学的な観点について、多様なデータを用いて説明してくれています。