昭和史講義【戦前文化人篇】 (ちくま新書)

制作 : 筒井清忠 
  • 筑摩書房
3.64
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本棚登録 : 99
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072405

作品紹介・あらすじ

柳田、大拙、和辻ら近代日本の代表的知性から谷崎、乱歩、保田與重郎ら文人まで、文化人たちは昭和戦前期をいかに生きたか。最新の知見でその人物像を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 思想家や作家など色々な分野から戦前日本の文化に貢献した人の短い伝記集です。

    各伝記は短いながら、きちんとした学術的資料に基づいて執筆されており、かなり良心的です。ただし、一人の人物につき15ページ程度で紹介されているため、詳しい内容は十分に書かれているとはいい切れず、詳しく学びたい場合は「さらに詳しく知るための参考文献」という書籍が各人物ごとに紹介されているため、そちらも合わせて読む必要があります。

    本書の特徴として、マンガ家の田河水泡や作家の江戸川乱歩など通常文化史では無視されがちなサブカル分野からも人物が紹介されている点にあります。こうした人物(特に田河水泡)は、十分な伝記を探すことは難しいため、そうした人物に関心のある人は読んでみるといいのではないでしょうか。

    【こんな人におすすめ】
    戦前日本の文化に興味がある人
    下記の一覧で示した人物に興味がある人

    【目次】
    石橋湛山 言論人から政治家へ
    和辻哲郎 人間と行為の哲学
    鈴木大拙 禅を世界に広めた国際人
    柳田国男 失われた共産制を求めて
    谷崎潤一郎 今の政に従うは殆し
    保田與重郎 偉大な敗北に殉じた文人
    江戸川乱歩 探偵小説四十年という迷宮
    中里介山 戦争協力の空気に飲まれなかった文学者
    長谷川伸 地中の紙碑
    吉屋信子 女たちのための物語
    林芙美子 大衆の時代の人気作家
    藤田嗣治 早すぎた越境者の光と影
    田河水泡 笑いを追求した漫画家
    伊東忠太 エンタシスという幻想
    山田耕筰 交響曲作家から歌劇作家へ
    西條八十 大衆の矜情のために生きた知識人

  • 日本の近現代史の大疑問として、「なぜ日本は勝ち目のないとわかっているアメリカとの戦争を始めたのか?」というのがあるわけだが、このシリーズは、最新の研究成果を踏まえつつ、多様な視点を提示しつつ、現時点での答えをだしている感じ。

    そうしたなかで、文化人、知識人はなにをやっていたのかという話し。

    たくさんの文化人(いわゆる思想家や小説家だけでなくて、音楽や絵画、漫画などの分野の人もカバーしている)が紹介され、各人の戦前、戦中、そして戦後がごく簡単に整理されているわけだが、人物ごとに著者が違うのもあって、あまり全体としてどうなのかはよくわからなかったかな?

    面白くはあったが。。。

    日本人って、やっぱ世の中の空気というかに影響されやすいんだろうな。あるいは、そういう状況のなかで、違和感を感じつつも、苦しんでいる普通の人々がちょっとでも元気になれるよう、結果として、国のプロパガンダに協力してしまうんだろうな。

  • おそら好評なのであろう『●●史講義』のうち、「軍人編」。「昭和史講義」だけでも1~3があって、さらに人物編、軍人編、戦前文化人編、と続いている。

    読んで思った第一の感想は、昭和の軍人、軍事に関する研究は、回顧や伝聞に相当依拠しているのだな、ということである。もちろん執筆者たちもその点は注意深く史料批判をしているのだけど、根本には戦前の公文書、なかんづく陸海軍の文書を片っ端から焼却してしまったという事実が大きな影を落としていると改めて感じる。

    また軍人に関して「信頼できる研究者が少ない」(p.13)という編者の指摘は印象的。今後の研究進展のための、人材育成やプラットホームづくりが大事なのだろう。

  • 田河水泡ののらくろ読みたい

  • 210.7||Ts

  • <内容>
    戦前の文化人を読み解く、あまり前例のない歴史本。一つ一つは短いが、戦争にどう向き合ったか、どちらかというと協力した系の人が多く載る。また、山田耕筰や西条八十のように、評伝的にあまり知らなかった人が面白かった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1421/K

  •  文化人と言っても色々だが、やはり大衆派の人物を取り上げた章が読みやすくまた面白い。思想家や哲学者の章は、中身のみならずその章の著者の文体自体も読みにくい。
     より大衆に近い人物の方が、明らかに戦争にも密接に係わっていた。徴兵を経て『のらくろ』を描いた田河水泡。従軍作家となった吉屋信子や林芙美子。『支那の夜』『同期の桜』を作詞した西条八十。同時期の谷崎潤一郎が書いていたのが『源氏物語』現代語訳や『細雪』だったのと対照的だ(尤もこれらも戦時下では時局に合わないと軍に睨まれたのだが)。ただし編者は冒頭で、林芙美子と、エリート官僚の家に生まれそれ故に庶民への関心がなく戦争を鼓舞・肯定する文章を書かなかった永井荷風を対比させ、「戦争への態度は重要ではあるが昭和前期文化人の評価のすべてではない」と書いている。

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