問い続ける力 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072207

作品紹介・あらすじ

「自分で考える」と言うが何をどう考えればいいのだろうか? 様々な分野の達人9人の問いのたて方、そして問い続ける力を探り出す。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、問いって何なんだろうと考えている。
    問いには視点がある。
    問いには質がある。
    どう問うかで、そのものが持っている本質みたいなものが、見えてくるような気がする。

    対談形式の本なので、全編に亘る問いの在り方というのは、残念ながら私は見出せなかった。
    でも、人が考えていく過程を一緒に辿ると、自分にも新しいアイデアや感覚が湧く。
    レストラン経営者の松嶋啓介さんとの話を読んでいると、ベタな話だけど、ご飯を美味しく食べたくなりました(笑)

    「トップに立つ人は、どこかに楽観的な希望の部分を持ってないといけない。……だから、悲観的なところで止めちゃったら、仕事を途中でやめてしまうことになるという意識が自分にはあります。」
    「希望は見ようとしないと見えてこないものですから。悲観的な結論は分析の問題なんですよ。でも、楽観的な結論は意志の問題なんですね。」

    長沼伸一郎さんの言葉から。
    後に、別の人が、自分の職場をブラック化しているという話もあって、自分の仕事の仕方を考える。

    容量の少ない自分が仕事に求めるものは何で、そのためにどんな働き方が出来るのかなー。

    「視点は一つで『これは面白い切り口だな』というもの。視野はもうちょっとブロードに全体を眺めるもの。それをもっと上から俯瞰すると視座になる。」

    御立尚資さんの言葉。
    言葉の違いを知っていることは、物事の捉え方、考え方に影響する。面白い。

    「楽天のサイトでは、楽天から直接ものを買うのではなくて、生産者や店舗から買うという感覚が強い。(ユーザーと店舗さんの距離がすごく近い。)一方でアマゾンは、完全にものだけを運ぶという世界です。(安く大量に届ける。まさにキリスト教的な経済がそのまま形になっている。)」

    寺西重郎さんの言葉。()は筆者。
    日本とアメリカの消費文化、そこに商人がどう介入するか、また仏教とキリスト教的な考え方にまで至っていくのだけど。
    生産者と消費者の距離の近さ。
    これは日本の地政学的にもそれが可能だからなんだろうけど、すごく面白い。

    と言いながら、私は楽天の雑然感が好きではなくて、amazonの機能的シンプルさに行ってしまいがちなのだけど……。

    冒頭、グランド・チャレンジの話があった。
    数学の「未解決問題」なんかは、有名と思う。
    問いを立てるのは必ずしも自分でなくてもいいのだな、と思える。
    そして、立てられた問いを理解することは、やっぱりその世界の本質に触れることなんだと、繰り返してみる。

  • イノベーションに一番重要なのは、学ぶではなく忘れること
    コンセプトを見つけるために、旅をする。それに加えて自分の人生が毎日旅だと思うこと
    キリスト教的消費と仏教的消費は違う
    キリスト教は神様と自分、仏教は周りと自分。
    Amazonは直接注文。楽天はWebのお店で選ぶイメージ

    上記が心に残りました。

  • 情報収集の手段としてスマホしか発想できず、ウィキペディアを平気の平左で引用するあたり、学者として誤っていると感じた。

  • そこかしこから醸し出される著者の”ホントは自分が一番大好き”感がちょっと鼻につくものの、インタビューの相手方が多岐にわたり興味深い人物ばかりで、一冊でまとめて読めるのはありがたかった。いぬのみみしていない人の対談もなかなかいい。


    P021 ブラジルの奇跡 ”拡大予防するためにはどうすればよいのか”ではなく”誰一人患者を見捨てないためにはどうすればいいのか?”という常識に反する問いをたて、タダで治療を行った。病院に人を集め予防知識を広めてもらうことによって復活を果たした。

    P024 科学の世界では「問い」が「問い」を呼ぶことで、当初の思惑を超えて思いもよらぬ展開になっていくことがよくある。

    P028 例外を例外として切り捨てるのでなく、そこに本質が現れているかも?という姿勢は、科学だけでなくビジネスや社会変革などあらゆる分野で応用可能だ。
    (非常に貧しいのに栄養状態が良い子供)

    P035 クオーク・リーの問い「なぜ初めて月に到達した生物が人間だったのか?」
    P050 梅原大吾の問い「負けた時の悔しさというのは、いったい何に対する悔しさなんだろうか」

    P053 考えるとは何か?をプロセスで分解
    ①いかにして考え始めるのか
    ②いかにして考えを進めるのか
    ③いかにして考えをまとめるのか

    P054 Whyという問いかけを突き詰めるとWho(神様)に行きつきやすい。それゆえ科学はWhatから問いはじめそれをHowという形式に変えて考えを進めまとめていく。

    P068 「人生を因果ととらえるか、あるいは因縁としてとらえるか」人生を因果としてとらえるとは、成し遂げたい明確な結果をイメージしながらその原因を意識しながら生きるということだ。山や谷はあるだろうかおおよそ直線的な人生になるのだろう。
    その一方人生を因縁(ネットワーク)としてとらえるとは、どこに向かうかわからないが出会いというご縁をたどっていくといつかどこかには着くでしょうという発想だ。飽きっぽく大した目標を持たぬ人間は「人生は因縁である」ととらえたほうがはるかに生きやすいのではないか。

    P077 戦略家の仕事って、重心を発見することなんですよ。ここを攻めればいいじゃないかという一点を見つけ出したら、後のことは参謀幕僚に任せてしまう。

    P082 一つ一つの周期的な関数には、固有振動数があります。天才というのは、生まれつき、こういう固有振動数みたいなものがうまい形で頭に入っている人のことなんじゃないかと。AIはしらみつぶしに全部を計算しなければならないけれども、天才は頭の中にある4つ5つの固有振動数の波形を組み合わせて、それに近いものを作ってしまう。

    P88 楽観的なことをいうためには精神的な体力が必要なんですね。悲観的な結論は分析の問題なんですよ。でも楽観的な結論は意志の問題なんですね。(長沼伸一郎)

    P098 時代というのは、長波、中波、短波という三つの波が合わさってできているというのがプロ―テルのモデルです。長波も中波も、個人の人生ではさほど変えられない。だから運の要素が大きいわけです。時々、運は引き寄せられるとか、運を味方につけるとか、アホなことをいうおじさんやおばさんがいますが、そんなもんやないでと。隕石が落ちたら人間の力ではどうしようもありませんからね。ダーウィンの運と適応が全てです。(出口治明)

    P146 宗教的な違いからそれぞれの生産者・消費者の態度・行動が生まれている。楽天のサイトでは楽天から直接物を買うのではなくて、生産者や店舗から買うという感覚が強い。一方でアマゾンは完全にものだけを選ぶという世界です。安く大量に届ける。まさにキリスト教的な経済がそのまま形になっている。(寺西重郎)

    P172 結局ビジョンというのは共感じゃないですか、でも反対する人のいないものは共感する人もいないんです。あるテーマについて共感を得ようと思ったら、やはり敵の存在が必要ですね。(岩佐文夫)

    P209 アブノーマルだとされている欲望を持ってしまった人は、どうすれば人に迷惑をかけずに自分の欲望が果たせるかまじめに考えなければいけない。そして一般にノーマルとされている欲望の持ち主のほうがセックスのリテラシーにかけていて、自覚なく他人を傷つけているケースも多い。なぜならノーマルだとされている欲望は、本人の欲望ではなく社会から押し付けられて持たされてしまった欲望の場合もあるからです。[中略]性的な欲望の本質は非日常であって太陽の光の下にはない。セクハラの卑劣さが気持ち悪いのは、コソコソしているようでいて実は<社会の内>の力を利用して行われているからなんです。

    P222 幸せや快楽のためにやっているはずのセックスで、なぜ人が傷つくことがあるのか。社会が<良い社会>であってもすべての人が<正しい恋愛やセックス>で満たされるとは限らない、それはなぜか。

    P224 あらゆる人間が成長の過程で傷つき、その傷の形は多種多様です。その傷の蓄積がその子の人格を形成します。そして一人一人が、それぞれの性的な嗜好、恋や愛やセックスの闇の営みで、心の傷を癒そうとする。<正しく>育っている人間なんてこの世にはいないんです。(二村ヒトシ)

    P257 ロイヤルの三つの問い「証拠から何がわかるのか」「何を信じるべきか」「何をなすべきか」は区別しなければいけない

    P260 あちこちにはびこっている「エビデンスに基づいている」といういい方は、「統計的なP値(有意確率)を用いて正しいかどうかを判断しました」という形で使われていることが非常に多いと思うんです。[中略]いままでP値ベースで議論が進んできたけれど、その通りの再現実験ができないといったことが学者の間で大きな問題になってきたことが一つの背景としてあると思います。(松王政浩)

  • 本質的な問いを立て、長期にパフォーマンスを維持する究極の手法を提示する名著。

  • 出口治明さんとの対談で、出口さんの「大局観」に改めて恐れ入った。何冊も読んできた魅力がそれだったんだとやっと腑に落ちた。出口さんの本をもっと読みたくなった。

  • インタビューの対象者が結構幅広く、学者はもちろん、AV監督まで、結構面白い

  • ■著者が扱っているメインテーマ
    自分で考えるとは何をどう考えればよいのか?

    ■筆者が最も伝えたかったメッセージ
    決まったパターン以外を認識する力を養うために、制約を与えて考えてみたり
    与えられた条件以外の視点を取り入れて考える。

    ■学んだことは何か
    考える状態に持っていくために、疑う姿勢と定量化されていない部分を見る姿勢
    また、大を小に分解する力、白か黒にとらわれないオープンな心が大切。

  • 読み応え抜群。巷に溢れるライフハック本が束になっても敵わない深く根底のところから生き方と考え方を学べる本だった。これ一冊あれば、他の本はいらないのではないか?と思えるほどに。内容が濃すぎて、問いが立てられるたびに立ち止まり考えたこともあり、読むのに1年かかりました。面白いからこそ、読むのに時間がかかったのは初めてです。

    以下、自分的に感銘を受けたキーワードのメモ
    ・×答えを求める「では派」◯自問し続ける「とは派」成果を出すのは後者
    ・正しく問うことの重要性
    ・例外と例外として切り捨てることなく、そこには本質が隠されているかも?という姿勢が社会変革を多数生んできた(いい意味での例外)
    →予防医学の事例「非常に貧しいにも関わらず栄養状態がいい子供の共通点の調査が革新的な解決策となった」
    ・イノベーションとなる適切な問いは「大きな視点」と「小さなディティール」
    ・信じることの大切さ
    ×カルト宗教などを極端に信じるとかいうことではない
    ◯世の中には自分が想像すらできないような真実があり、自分はまだそれを知らない と信じる
    ・直接的アプローチより間接的アプローチ
    ・ロイヤルの3つの問い
    ・内的動機→外的動機→内的動機
    以下略…

  • 何を考えてよいかわからない。問が進まない。そんな時は問の立て方が悪いか、そもそも知識が不足しているかである。だからこそ、日々知識を増やすと同時に、イシューを具体的に特定することを忘れないようにしていきたい。また、書中で登場する著名人に共通するのは、その分野の歴史に詳しいことであった。時間軸×空間で思考することが重要と説かれているが正にその通りである。「本を二冊、三冊読んで、仕事に役立つとか、人生に役立つとか、そんな簡単なもんやったら人生楽ですよね」という出口さんの台詞はすごい刺さった。

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著者プロフィール

予防医学研究者、医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念進化論など。近著は、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。

「2022年 『むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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