武士の起源を解きあかす――混血する古代、創発される中世 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071781

作品紹介・あらすじ

武士はどこでどうやって誕生したのか。日本を長期間統治した彼らのはじまりは「諸説ある」として不明とされていた。古代と中世をまたぎ、日本史最大の謎に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 武士の起源は何だろう?そんな疑問に正面からぶつかっている意欲作です。僕が学生の頃「生産力の向上で富の余剰が蓄積されると、その奪い合いの争いが起こる。その中で地方の富裕な農民、中でも年貢の納入を請け負う名主が荘園の中で成長し、土地や財産を自衛するために一族で武装し、武士になった。彼らは律令国家の諸矛盾の中で草深い田舎に生まれ腐敗した中央の貴族政治を克服して中央社会を切り拓いた」こう習いました。しかし、ここに書いてあることのほぼ全てが嘘だと著者は述べています。その時点で本に引き込まれました。またある学者は「都の衛府から生まれた」と言いますがそれも違うと論じてます。では武士の起源はどこにあるのか。それを紐解くには、時代背景を知らなければならず、時代というのは繋がっているので奈良時代から遡り解説されてます。京都の貴族社会、地方社会様々な角度から検証されてて勉強になりました。推測が多いと批判的なコメントもありましたが、僕は多くの文献を読んだ上での推測なので一定の価値があると思いました。

  • 武士の誕生プロセスについて書かれているが、古代郡領輩出集団の歴史の表舞台からの「消え方」について関心がある人も興味深く読めると思う

  • 批判した自身も非論理的で構成も悪くオチだけの本

  • 武士の起源について、実ははっきりした答えが出ていない。古代から中世にかけてさまざまな史料や従来の研究成果を読み込み、なぞに挑む。巻末の参考文献、注で史料の出典を明記することで学習の助けになるよう工夫。

    2022年3月・4月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00542108

  • MY4a

  • タイトルも文章も挑戦的で、さぞ突拍子もない仮説が飛び出すのではと変な意味で期待して読み始めたのだが、実際のところそこまで極論には落ち着かず、これまで研究者がざっくり述べていた論をむしろ補強するような丹念な史料研究という感じだった。好意的な意味で、タイトル倒れかもしれない。

  • 9世紀には坂上とか伴といった軍事氏族が活躍するのに、10世紀以降の戦争シーンに登場するのは源平藤原とその一族ばかり。古代日本は軍事国家だったが全て武装解除されて平和な平安時代がやってきました、と考えるのはやはり不自然で、古代と中世の軍事力は繋がっていると見るべきだろう。筆者はその2つを、有閑弓騎、蝦夷俘囚、そして古代軍事氏族をキーワードに繋げていくのだが、その大胆で時に強引な論証はなかなか面白い。

    もう一つ、荘園公領制の成立論もなかなか。荘園による土地の囲い込みは平和裏に進んだのではなく京進物資の強奪から始まった、というのはなかなかにリアル感がある。そこに登場するのは虎の威を借る王臣子孫や王臣家人たち。地方統治は空洞化し、群盗の横行を取り締まる役所も機能しない。秩序が危機に陥ったからこそ、地方武力は貴種を旗頭に組織化され、それを中央貴族が活用する時代が幕を開ける。

    将門の純友の乱後、中央と結びついた武家貴族が急成長していく。そこを語らずに将門が滝口の武士だった論を論証しようとするのはどうかとも思ったけど、この本はあくまで律令制末期の武士成立論にフォーカスがあり、その後の武士成長論は例えば元木泰雄著『河内源氏』などを読めば良いということなんだろう。

  • 序章では巧みな導入だったが、第1章から11章まではやや詳細過ぎて斜め読みになった.終章でのヨーグルト(納豆)の例えが面白かった.武士の存在の背景に中央と地方の合体があることは、我が国の文化的神髄に通じるものがあるように感じた.

  • 日本固有の武士の成立過程をわかりやすく描いている。日本には武士が力を持っていた故に、元寇、大航海時代、幕末と、海外から征服される可能性があった危機を乗り越えることができた。その武士は、本書にあるように、王臣子孫と地方の郡司豪族層の統合から生まれた。必然ではなく、様々な条件がもたらした結果であった。では、インカ帝国のような南米になくて、日本にあったものは何か。武士を生み出した源たるそれは、地方に軍団が割拠できるほどの生産性の高い豊かな土壌と、中国由来の思想や弓射術なのかもしれない。

  • <目次>
    序章   武士の素性がわからない
    第1章  武士成立論の手詰まり
    第2章  武士と古代日本の弓馬の使い手
    第3章  墾田永年私財法と地方の収奪競争
    第4章  王臣家の爆発的増加と収奪競争の加速
    第5章  群盗問題と天皇権威の転落
    第6章  国司と郡司の下剋上
    第7章  極大点を迎える地方社会の無政府状態~宇多・醍醐朝
    第8章  王臣家子孫を武士化する古代地方豪族~婚姻関係の底力と桎梏
    第9章  王臣子孫を武士化する武人輩出氏族~「将種」への品種改良
    第10章  武士は統合する権力、仲裁する権力
    第11章  武士の誕生と滝口武士~群盗問題が促した「武士」概念の創出

    <内容>
    かなり挑戦的な本である。武士の活躍は日本史に書かれるが、肝心の武士の起こりがあいまいなままごまかされていると。本書は、平安初期の王臣家の暴走とそこの治安を守り、国司の簒奪を避けたい郡司層、そこで地方で行きたい王臣家の子孫、国司の横暴を避けたい郡司層のつながりを呼び、武士のが生まれたとする。
    大筋は従来の説と変わらないが、しっかりと証拠を上げて論破している点が素晴らしい。

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著者プロフィール

桃崎 有一郎(ももさき・ゆういちろう):1978年、東京都生まれ。2001年、慶應義塾大学文学部卒業。2007年、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(史学)。現在、武蔵大学文学部教授。専門は、古代・中世の礼制と法制・政治の関係史。著書に『平安京はいらなかった――古代の夢を喰らう中世』(吉川弘文館)『室町の覇者 足利義満――朝廷と幕府はいかに統一されたか』『武士の起源を解きあかす――混血する古代、創発される中世』(ちくま新書)』『「京都」の誕生―― 武士が造った戦乱の都』『平治の乱の謎を解く――頼朝が暴いた「完全犯罪」』(文春新書)などがある。


「2024年 『平安王朝と源平武士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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