薬物依存症 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 315
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071729

作品紹介・あらすじ

さまざまな先入観をもって語られてきた「薬物依存症」。第一人者が、その誤解をとき、よりよい治療を探究し、提示。医療や社会のあるべき姿をも考察する一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 薬物依存症の話。「依存症の本質は快感ではなく苦痛にある」つまり、苦痛を緩和させるために薬などを使い、その緩和がやめられない。苦痛を別の苦痛に変えている。

    やめたくてもやめられないという人に、「辱めと排除」では意味がないとわかった。また、孤独が良くないという事もわかった。

    自分も薬物依存症の人に対する偏見があったと思う。たまたま図書館で借りた本だったが、考え方を広げることができたため、読んで良かったと思う。

  • 薬物依存症患者は居場所を求めている。

    罰ではなく治療。

    自己治療仮説に基づくと、自分の欠落を埋めるために薬物をやっている。快楽目的ではない。

    クスリやりてぇと素直に言える場にいることが、再発させない治療のひとつ。

    書いている内容は興味深いのだが、表現が少々回りくどく、似たようなことが延々と書かれているように感じる。要旨がわかりづらい文章である。うまく絞れば3分の1の分量に収まってくれるのではないだろうか。

    抗不安薬、睡眠薬、アルコールへの依存についても知りたかったが、メインが覚醒剤だったので記述は少なかった。

    本書の主題は孤立である。なぜ人は孤立になり、薬物に頼り、さらに孤立になっていくのか。繋がりを求めて始めたはずが、強い拒絶にさらされてしまうのは皮肉である。

    なぜ薬をやったのにもかかわらず、足を洗えたものと、そうでないものが混在するのか。足を洗えなかったひとは、孤立していて、薬に依存するほか無くなっていたのだ。

    ダメ絶対のスローガンは一般層にはよく効いており、一定の効果はあると思う。しかし、薬物をやるのは自由だと答えた一割には、依存症は治療が可能なもので、回復できるものであることの啓発が必要。また、根底には孤立があって、それをどうやって克服していくかを一緒に考えていく必要がある。

  • おせっかい焼かれた方の人が有意に自殺を思いとどまる。快適な環境のネズミはモルヒネを溶かした水を飲まない。

    めっちゃ勉強になりました。

  • 備忘録。

    薬物依存症の自己治療仮説。薬物依存症の原因は、「もっと快感を」という正の強化ではなく、苦痛の緩和という負からの脱出にあるというのは、納得感のある仮説。だから、薬に対する規制を強化するだけでは、依存症問題は解決しない。欧米の大麻などの違法薬物取締緩和のベースにある考え方だと思うが、薬物依存が広がってきたら、日本でも緩和の議論が必要になるのかもしれない。

    ネズミの楽園の実験。独房のような檻に入れられたネズミ16匹と、仲間と自由に交われる楽園におかれたネズミ16匹。独房ネズミはモルヒネ水を飲み、楽園ネズミは水を飲む。でも、独房ネズミを、楽園に移すと、モルヒネ水じゃなくて、本当の水を飲みはじめる。

    社会的動物である人も、孤独に追い詰められて、モノでその孤独を癒そうとする訳ですが、移される楽園があれば、モノで孤独を癒そうという行動が減るかも。確かに、そうかもしれない。

  • 長年薬物依存症と向き合ってこられた著者の実体験や各種データから論理的に導き出された、依存症患者に対して望まれる対応策などがまとめられている。
    この本を読むのと読まないのとでは、以降の依存症患者に対する認識が変わると思う。
    長めだが分かりやすいので、薬物に興味を持ち始めるような年齢の子供たちにも読んで貰いたい。

  • 我が国の第一人者による一般向け著書であるが、専門家が読んでも十分に読み応えがある。著者の本が優れているのは、臨床現場に即した記述がされており、それが、依存症者の姿をリアルに映し出すと同時に対応の工夫も具体的に考えやすいところである。偏見が強い薬物依存症者の理解に役立つ好著であり、これまで著者が発信してきたことの集大成と思う。最後に、先進国の認識を示して筆を置きたい。「アディクションは孤立の病であり、その対義語はコネクションである」。本書はこの精神であとがきまで貫かれていた。

  • 読んでて本当に胸が苦しくなる。あの甲子園の大スターで、西武時代はキラキラ輝いていた清原が、今はどん底でもがいている。観衆の大歓声を浴びてホームランを打つというのはなかなか経験できない快感なのだろうが、それを失って、彼の繊細な心や「男とはこうあるべき」という理想の高さがあいまって、このような結果を招いてしまったのか。
    それでもなお、薬物で逮捕された有名人でここまで人気が高く、同情の声が多いのも彼ならでは。
    この本を読んでも、彼を犯罪者として見る気持ちにはならず、正直に胸のうちを語って苦しんでいる姿に、同情や共感の心しか出てこない。
    薬物の欲求としっかり向き合いながら、高校野球の指導者として、返り咲いてほしいと願わずにはいられない。

  • 薬物問題は自己責任論では解決にならない。痛みを抱え孤立した「人」に向き合い、つながる機会を提供する治療・支援こそが必要なのだ。医療、そして社会はどのようにあるべきか。薬物依存症を通して探求し、提示する。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40272465

  • 薬物依存症とは「孤立の病」

    専門分野に関する本の割に、とても読みやすい。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50115599

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著者プロフィール

医師、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所依存症研究部長。
主な著作に『自分を傷つけずにはいられない―自傷から回復するためのヒント』二〇一五年、講談社。『誰がために医師はいる―クスリとヒトの現代論』二〇二一年、みすず書房。『世界一やさしい依存症入門; やめられないのは誰かのせい? (一四 歳の世渡り術)』二〇二一年、河出書房新社。『依存症と人類―われわれはアルコール・薬物と共存できるのか』C・E・フィッシャー著、翻訳、二〇二三年、みすず書房。ほか。

「2023年 『弱さの情報公開―つなぐー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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