平成デモクラシー史 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071194

感想・レビュー・書評

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  •  基本的には平成の政治史・政局史だが、党や派閥が強かった頃から、一直線ではないが、自民党政権・非自民政権ともに一貫して「政権交代と首相主導を両輪とする平成デモクラシー」に向けて変化していく様子が分かる。90年代の政治改革と橋本行革がその「ハードウェアの整備」で、小泉政権以降が「ソフトウェアの試行錯誤」という説明がすんなり納得できた。現実には、野党分裂により政権交代の可能性は現在小さいのだが。
     第2次安倍政権は、小泉政権と比較すると、党の反対論を強硬突破する形は好まず、内閣と党の「穏健な二元化」。他方、官邸直轄の内閣官房で重要政策を決める「首相主導」であり、閣僚をも巻き込んで官邸の意向を内閣全体に浸透させようとした小泉政権の「内閣主導」とは異なるとの分析をしている。
     政局史の観点からは、派閥の影響力低下もさることながら、折々での小沢一郎の存在感とその低下、という観点でも見ることができる。

  • 小泉政権を挟むものの旧態依然のシステムに頼り、徐々に瓦解していく自民党政権▶政権奪取したものの、理想に走り実を伴わず内部闘争に明け暮れた民主党政権▶二度と政権を譲らない覚悟で清濁併せ呑む安倍政権

    大まかに言うとこういう流れがよく分かります。
    つくづく思うのは小選挙区制である以上対抗できる野党が日本には必要だということでした。

  • 英国流の議院内閣制からいえばインフォーマル?な、この本で言うところの政党・官僚内閣制から、議院内閣制への一元化、政治主導の確立への道のりを平成デモクラシーとして描写する。

  • 平成を駆け抜けた政治のダイナミズムを臨場感たっぷりに楽しむことができた。
    「事実は小説より奇なり」とはいうものだが、まさにこの30年間の政権を巡る争いは、非常に興味深く、そこには確かな必然性を帯びたストーリーがあった。
    改革に向けて、制度が変わり、個性的なプレーヤーが入れ替わっていく。いまの自民党政治体制に至るまでなにがあったのかよく理解できた。

    そしてなりより小泉純一郎のリーダーシップに強く惹かれる。しがらみや前例にとらわれず、自分の信念に従って、時に犠牲を払いながらも、突き進む姿は、自民党のみならず、族議員が跋扈した前時代の「政治家」をすべてぶっ壊したのかもしれない。

  • 「平成デモクラシー史」清水真人
    政治ドキュメント。オーク。

    政治とは制度の上で繰り広げられる駆け引きである、という視点から、平成の政治史を大きな転換期ごとに描いたドキュメント。

    80年代後半生まれの僕にとって、平成の政治とは、派閥争いであり、権力と汚職であり、演出された劇場だった。
    中学校の公民の授業で習う、議院内閣制や三権分立の理念と、日々ニュースで流れてくる『政治屋』の人々の言動に、つながるところを感じないまま大学生になり、社会人になり…、会社の組織の構造に馴染んでもなお、社会と政治の構造には疎いままだった。

    ようやく30代(!)にして、この国の(少なくとも骨組みは)どうやって決まっていっているのかを見、その骨組みの全体像を知るために手を取った一冊。
    政治家の自著は数多あれど(『私は闘う』『老兵は死なず』(野中広務)と『美しい国』(安倍晋三)だけ読んだ)、社会の動きに紐づいて、政治の舞台とその流れを緻密に書き起こしており、教科書で習った政治制度と現実世界の政治動静をつなげる良書。

    なお、デモクラシーであり、政治ドキュメントでありながら、密接不可分に語られているのが、「官」の世界だ。
    まさに制度の代名詞としての官僚構造と、それを現実に動かしている個々の官僚と政治家の蠢きには、報道には出てこない生々しさを感じる。
    出版は2017年12月。このあとに、森友問題とそれを巡る財務省と文書管理を揺るがす国会論争、立憲民主と国民民主の完全分離路線、そして安倍晋三の3選と、政官とも大きな動きが起きた。改版での追補にも期待。(5)

  • 【この時代を画するキーワードは「政権交代」と「首相主導」である】(文中より引用)

    55年体制の崩壊に加え、2度の政権交代も実現した平成時代の日本政治。膨大な証言や記録を紐解きながら、政治組織体や統治機構がどのような変化をたどったかを考察した作品です。著者は、日本経済新聞の記者として派閥の取材にも当たった清水真人。

    多くの党や人物が表紙を飾った平成期の政治を振り返る上で大変参考になる作品。権力の在り処とそれをめぐるゲームのルールがどのように変化を重ねたかがよくわかる一冊です。ジャーナリスティックな記述もあり、読んでいて飽きがこないような書きぶりになっている点も高評価。

    ハードカバーにしても良かったんじゃないかと思わせる充実ぶり☆5つ

  • 衆議院選挙に小選挙区比例代表並立制を導入した政治改革をはじめとする統治構造改革がもたらした「政権交代」と「首相主導」をキーワードとする「平成デモクラシー」という枠組みに立脚して平成の日本政治史を叙述。
    平成の統治構造改革が日本政治に大きな変容をもたらしたことを、小沢一郎が主導した政治改革の始まりから橋本行革、小泉「革命」、民主党政権の実験と失敗を経て、現在の「安倍一強」の状況までを振り返ることで示している。そして、現在の「安倍一強」状態の安倍政権は、政権選択を実質的に封じ込める狙いで解散権を行使しており、政権選択と首相主導という「平成デモクラシー」の両輪のバランスを揺るがしていると指摘している。
    本書を読んで、「平成デモクラシー」という概念のもと、平成の日本政治史を構造的に理解することができた。「ゲームのルール」としての「制度」の重要性を感じた。著者は歴戦のジャーナリストだけあって、文章自体も読ませるもので、非常に読み応えがあった。

  • 312.1

  • 丸山真男が、日本のジャーナリズムには、政局報道はあって、政治報道はないと喝破されているが、
    新聞によっては、どの政治家とどの政治家が、会食して、どーのこーのと批評、評論をベースにしない、実につまらない記事に遭遇する事がある。
    最後まで読むと、著者は、新聞記者であったようだ。
    新書ではあるが、アカデミックや学問的とは少し違った、読み物として面白い本となっている。
    官僚主導から政治家による政治主導の政治へのチャレンジを基調に、統一感がある感じで、政治家の肉声を交え、つまらない政局報道とは画した形で、平成の権力を巡る人間ドラマが、読みやすい形で提供されている。
    非常に大分であるが、スラスラ読めます。
    この本を読んで理解した事は、小選挙区制による選挙制度は、もはや不可避であるということと。
    比例区と小選挙区との配分も、概ね正しいということだ。
    そして、僕は、一点張りでの政策選択選挙は支持しないのだが、覚悟の決め方、やると言ったら、どうやってもやる意思の強さ、時に見せる非情さ、小泉純一郎元首相は、立派な政治家のプロだという事が、よく理解できる。

    三浦 瑠麗(国際政治学者・東京大講師)の2018年の3冊。
    平成の政治改革をドライブした権力闘争のダイナミズムが示される。

    やはり、政権交代があると、政治のダイナニズムを感じる。

  • 平成を中央政治の観点で振り返るとこうなるのか。

    既に退場した人たちの名前がたくさん出て来るが、今の安倍政権と小泉政権を除けば、小沢一郎に振り回された印象が強い。

    当事者の思いに関わらず、小選挙区導入によって衆院選が政党選択選挙となり、一旦は民主党に政権が移ったものの、内閣主導政治にうまく対応した自民党が政権を独占する結果になった。

    少数分割している限り、野党にできることは与党の揚げ足取りしかなく、今の不毛な政治状況は当分続くのだろう。

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著者プロフィール

日本経済新聞編集委員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業、同年日本経済新聞社に入社。政治部(首相官邸、自民党、公明党、外務省を担当)、経済部(大蔵省などを担当)、ジュネーブ支局長を経て、2004年より現職。著書に『平成デモクラシー史』(ちくま新書)、『官邸主導』『経済財政戦記』『首相の蹉跌』(いずれも日本経済新聞出版社)、『消費税 政と官の「十年戦争」』(新潮社)、『財務省と政治』(中公新書)、佐々木毅氏との共編著に『ゼミナール現代日本政治』(日本経済新聞出版社)がある。

「2022年 『憲法政治 「護憲か改憲か」を超えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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