日本の戦略外交 (ちくま新書 1236)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069443

感想・レビュー・書評

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  • 第二次安倍政権の外交戦略(ただし、対オバマ政権まで)の通史。残念ながらシンゾー&ドナルドの親密な関係は時間切れで載っていない。底を補足した「完全版」がでればよかったのだが(欲張りすぎ

    なお、第二次安倍政権以前の日本の外交戦略の推移について、キーパーソンが出てくるのだが、吉田茂、岸信介のあとは小沢一郎、橋本龍太郎、小渕恵三だけであり、中曽根も細川も小泉も出てこないwまあ、わからんではないwww

    それにしても、対ロ外交に成功のめがなかったことは、読み返しても明らかである(涙

  •  新書なのに400頁超であることに加え、章構成は時系列でも完全な国別でもなく、若干読みにくい。ただ、たとえば第1次・第2次安倍政権又は対米・対中外交が密接に関係しているように、こういう構成にするしかなかったのかもしれない。
     安倍政権の外交を、昔の吉田・岸政権と同様、「戦略的リアリズム」と肯定的に評価するのが全体的な論調。「自由と繁栄の孤」、日米豪印連携、靖国参拝の断念、入念に練られた米議会演説や70年談話といった例が挙げられている。同時に著者は巻末で、政権が長期化している現在、世代継承の意識が薄く権謀術数に傾きつつあることや、アベノミクス失敗の可能性をリスクとして挙げている。
     ただ、本書でも挙げられている中韓が70年談話に対しても「歴史カード」を放棄しなかったこと、領土交渉での露の思惑、またトランプ政権の誕生といった事象を読むと、相手国が日本側の予想又は期待の範囲内で動いてくれるとは限らないと強く感じた。

  • 著者曰く、日本を取り巻く外交の<戦略環境>は劇的に変化したと。
    そこで、プロローグとして、吉田と岸の<戦略的リアリズム>からこのお話は始まる。
    戦後外交の起点、サンフランシスコ講和会議、米国が仕掛けた日ソの火種、岸信介の戦後と歴史認識、そして、吉田茂との距離間
    そんな前提を踏まえ、第1章からのお話に繋がっていく。
    第1章 戦略的猶予期間 
     第1節1990年代――地殻変動の中の日本外交
     第2節先取りした価値観外交
     第3節橋本外交と日米同盟再定義
     第4節「価値観外交」ギャップ
    第2章 戦略構想「自由と繁栄の弧」
     第1節「容赦ない試練」
     第2節「自由と繁栄の弧」から「地球儀俯瞰外交」へ
    第3章 地球儀を俯瞰する外交
     第1節ジャパン・ブランド
     第2節ユーラシア戦略
     第3節未開の戦略空間アフリカ
    第4章 海洋戦略「安保ダイヤモンド構想」
     第1節インド再発見
     第2節二つの海――8年目の現実
     第3節インド外交の挑戦「非同盟2・0」
    第5章 外交と安全保障と靖国参拝
     第1節「戦後レジーム脱却」路線の残り香
     第2節日中関係は日米関係である
     第3節中国の安倍孤立化戦略と誤算
     第4節日米和解劇、陰の主役・中国
    第6章 アメリカの歴史認識と弐本外交
     第1節戦後70年の米国外交
     第2節先後70年の同盟深化
     第3節戦後70年首相談話の進化
    第7章 中韓の歴史認識と日本外交
     第1節和解模索の虚実
     第2節動き出した日中関係――安倍戦略外交
     第3節戦後70年談話の裏側
     第4節安倍談話後の日韓関係
    第8章 戦略的リアリズムの真贋――対露外交
     第1節北方領土交渉の戦後史
     第2節ロシア・スクールの盛衰史
     第3節安倍の信念と領土交渉の現在
     第4節北方領土問題の深層――忘れられた安保の視点
    第9章 戦後日本外交の課題と超克の苦悩
     第1節アメリカン・レジーム
     第2節「トランプのアメリカ」とどう向き合うか
    エピローグ<戦略的リアリズム>と「時間の支配」

    という内容ですが、感じたのは、強い国内的基盤がないトップではマトモナ外交が出来ないということです。
    そして、時間をかけて、難問を解きほぐしながら、腹の据わった行政官僚との一体感で初めて、外交の果実が得られるスタート台に着ける。
    深遠な問題でした。

  • 319.1||Su

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著者プロフィール

鈴木 美勝(すずき・よしかつ) ジャーナリスト。茨城県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、時事通信社に入社、政治部に配属され、政局から外交安保まで幅広く取材。ワシントン特派員、ニューヨーク総局長(米国時事社長)、解説副委員長、専門誌「外交」編集長を経てフリーランスに。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。著書に『小沢一郎はなぜTVで殴られたか――「視える政治」と「視えない政治」』(文藝春秋)、『いまだに続く「敗戦国」外交――「衆愚」の時代の新外政論』(草思社)、『日本の戦略外交』(ちくま新書)、共著に『政治コミュニケーション概論』(ミネルヴァ書房、2021年)。日本政治法律学会「報道学会賞」受賞(2020年秋)。

「2021年 『北方領土交渉史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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