ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069399

感想・レビュー・書評

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  • 子供の虐待のニュースが出るたびに一緒に名前の出る児童相談所。どういう組織なんだか、どういう仕事をしているのか、実態がよくわからない。虐待を阻止できなかったと非難されることがよくあるが、阻止した事例も相当数あるんじゃないだろうか? 

    読んでみて、大変な仕事なのだと改めて認識した。人手は足りない。相手となる虐待する親は普通ではないが、強引に保護することは簡単ではない。法律のバックアップも十分ではない。わけのわからない法律を作っている暇があったら、こっちなんとかしろよと思う。

    欧米の事例が知りたいと思った。子供をホテルに放置すると逮捕されると聞いたが、そのあたりの法律的なバックアップはどうなっているのか。児童相談所に相当する組織はどのように動いているのだろう。

  • 図書館で借りました
    一気に読み終えました

    児童相談所を叩く風潮や偏見は いつの時代も同じで 私はいつも疑問に思っています

    この本は偏見なく冷静に描かれていました
    とても良い本◎

    どこのどんな職場でも 少人数ではあるかもしれないけど高い志を持って働いている人は必ずいます
    反面 変な人がいるのも事実。
    これは今の社会の仕組みだから 変えることは難しい

    児童相談所は とにかく忙しいのではないでしょうか
    人も足りてないと思う 

    『一時保護委託』という制度。
    私も この制度はとても重要だと思う
    ここでの判断が子どもの将来を左右される要であると思う
    この制度をもっと充実させていくことが 著者と同じで 最重要課題だと感じました


  • 堺や明石の件
    一方的な児相叩きをあおるような報道に疑問を感じて手に取りました

    おおよそ、疑問に感じたことが本書によって、「そうだよなー」と納得できました
    決して、どちらか側に偏らず、満遍なく取材をしている良書だと思います。

    一時保護は躊躇いなくするのが良い。これは間違いない。子の命を守るために
    その後に第三者機関で妥当性を早急に判断する
    児相の人員の確保と、施設や里親への一時保護委託を増やすことが課題

  • 親の虐待や貧困、犯罪などで面倒を見てもらえなくなった子どもたちは児童相談所が管理する「一時保護所」で保護されることになる。その名の通り一時保護であるが、身寄りのない子どもにとって、すがるべき施設であり、重要な教育の場でもある。その保護期間中に子どもの自宅や親戚宅、里親など受入先が決められる。

    著者はいくつかの一時保護所を訪問し、時に宿泊もして、日本の一時保護所の実態と親と離れた子どもたちの生活について記す。

    本書を読んで一時保護所の一番の問題点は子どもの人権を無視した運用だろう。1人の人間を隔離し、衣食住を制限し、その終了日も明確にされない。しかも、その強制力の法律的根拠も薄い。逆らわない子どもといえど、こんな扱いでは将来に影響するだろう。とはいえ、子どもを野放しにするわけにもいかないし、一時保護所の人員や予算は限られている。

    著者はその解決案として一時保護委託を提案する。子どもを住む場所から遠く離れた一時保護所に送るのではなく、近隣の施設やボランティアなどに預けることだ。

    そんなの性善説に頼りすぎている、シロウトに子どもを受け入れさせるのは危険、と批判するのは簡単だ。しかし、高齢化社会での貴重な子どもを守り、教育することは社会全体の義務だろう。何かあれば、児童相談所に責任をかぶせておく時代じゃない。

  • わかりやすかった。児童相談所にくる子たちは悪いことしたわけじゃないのになって思う。親の影響で子どもが理不尽に苦しむという構図は「カルトの子」で書かれていたことと同じように感じた。

  • 講演会の講師となる慎氏の著作です。
    本人がライフワークの一つとしている、子どもへの支援の観点から、綿密な取材によって児童相談所(一時保護所)の実態を紹介しています。

    母子支援施設や児童養護施設などのほか里親などの社会的養護の下に入る前に、子どもたちが暮らすのが児童相談所に隣接している(ことが多い)「一時保護所」ですが、そこではさながら刑務所のように管理され抑圧されて暮らしている子どもが多く(もちろんすべての施設で、ではありませんが)、彼らがどのような暮らしをしているか、ということはあまり知られていません。

    児童福祉の観点から、
    ・どのような問題があるのか
    ・その原因は何か
    ・解決のために何が必要か
    の三点について、一般の読者にもわかりやすく解説されています。

    私自身の立場から、すぐに生活を変えてこの社会的な課題の解決のためにできることはほとんどないかもしれません。それでも、こういった「問題がある」ということを知り、その解決のために何が必要かということを考えることは「大人」として必要なことだろうと感じます。

  • 多くの取材、それも内部からの視線であるのは納得しました。
    学校の協力は重要とする。子どもが家庭の次に多くの時間を過ごしているのは学校であるから。これは説得力のある意見だ。

  • 著者は社会的養護下にある子どもの支援に取り組む非営利活動法人Living in Peace代表理事。児童相談所以上にその実態が知られていない一時保護所に焦点を当て、一時保護所経験者の声を集め、自ら施設に泊まり込みもしてまとめられている。貧困や虐待のデータを示した偏らない主張と行政等への具体的な提案に説得力。以下、備忘。
    ・一時保護所の処遇内容は地域差が大きく、元教護院など保護所の歴史が影響している。
    ・目を合わせてはいけない、私語禁止、私物不可、ルール違反に懲罰部屋等々極めて抑圧的な保護所も。一時保護所が耐えられず、虐待されても家庭復帰を選択する子どももいるなど、子どもの保護を第一にした場になっていない。
    ・鳥取県の取り組み。
    ・非行、被虐待、精神障害の3種類の子どもが処遇される管理上の難しさ。職員不足。
    ・処遇決定のフロー(大変参考になった)
    ・児相職員の訪問が家庭を追い詰めている?
    ・家庭支援と家庭介入を同時に児童相談所が担う矛盾。敵対しつつ支援は困難。アメリカでは第三者機関が保護決定をし、相談所は家庭支援に専念。
    ・児相の人事改革、児童福祉士の増員、児相に比べ一時保護所の職場内地位が低い現状の改善、児童相談所への外部監査。
    ・市区町村や地域との連携。大阪「こどもの里」、平塚の取り組み。

  •  著者は社会起業家だが、これは本職のノンフィクション作家顔負けの見事なルポであった。日本の児童相談所の実態を、併設される「一時保護所」のことにフォーカスして描き出したものだ。

     著者自らが全国10ヶ所の一時保護所を訪問し、そのうち2つには住み込み、子どもたち、親、児相職員ら100人以上にインタビューを行ったという取材の厚みが素晴らしい。

     従来、この手のルポは、児相側か親側のどちらかに偏りがちだった。とくに、一方的な「児相悪者論」の本が目立った。それに対し、本書はどちらにも偏らず、「児相のいま」を中立的な視座から浮き彫りにしている。

     児相が疲弊しきっている現状を明らかにしたうえで、改善策を細かく提示している(このへんは社会起業家らしい)点も好ましい。

     児童虐待や「子どもの貧困」の問題を考えるうえで、必読の良書である。

  • 児童相談所がそんなひどい所だったとは……。もちろん、そんな場所ばかりではないことは、この本にも書いてあるし、日々頑張って働いている職員がたくさんいることも書いてある。けれども、ひどい場所ひどい職員がいることも事実だ。

    家庭にも恵まれず、保護された場所にも恵まれず、そんな状況で育った子どもはどうなるのだろうか。

    そこで働く人も言いたいことはいっぱいあると思う。本にも書かれていたが、児童相談所にはいろいろな子どもが来るので、優しくするだけでは管理できない面もあるだろう。だからといって、監獄のような生活でいいというわけではないだろう。

    まずは、職員の増員が急務だ。

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著者プロフィール

1981年日本生まれ。朝鮮大学校法律学科卒業後、早稲田大学大学院ファイナンス研究科に入学、修了。大学院在学中からモルガン・スタンレー・キャピタルで働き始め、同社のグローバル不動産投資ファンドの運用における財務モデルの作成や負債管理システムの構築などに従事。2010年からはユニゾン・キャピタルに投資プロフェッショナルとして入社し、投資の実行、売却、負債リストラクチャリング他、数多くの投資プロジェクトに従事。金融プロフェッショナルとしてのキャリアの傍ら、2007年に認定NPO法人Living in Peaceを設立し、機会の平等を通じた貧困削減のために活動。2009年には日本初となるマイクロファイナンス投資ファンドを企画。国内では、親と暮らせない子どもの支援に従事し、これまで二つの児童福祉施設の新設に関わる資金調達支援、退所後の子どもの就学資金支援、政策提言活動などを行ってきた。2014年7月に五常・アンド・カンパニー株式会社を創業し、2015年10月時点で、カンボジア、スリランカ、ミャンマーにある子会社を通じて現地の貧困層にマイクロファイナンスを提供している。

「2015年 『ランニング思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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