たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書 1137)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068408

感想・レビュー・書評

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  • 植物に対するイメージがくるりと一回転する本だ。木や花を見ると癒しを感じる!? 植物自身にとっては、とんでもない話で、植物は常に戦いの日々を送っているのだ。彼らは、とにかく自分のことしか考えていない。結果的に、共生になったり、人間の癒しになったりするが、そんなつもりは全くない。
    ①植物vs植物ーとにかく他の植物に先んじようと必死 
    ②植物vs環境ー雑草は実は弱いので、競争相手のいない厳しい環境の所へ逃れたのだ。
    ③植物vs病原菌ーこの章が白眉。常に病原菌との戦いをしているとは知らなかった。抗菌物質や活性酸素で防ごうとしたり、侵入された細胞が自死したりする。ポリフェノールやアントシアニンは自分が出した活性酸素を除去するためのものなのだ。
    ④植物vs昆虫ー毒を自分で生産して昆虫から守ろうとするが、昆虫はその防壁を潜り抜けようとする。その鼬ごっこなのである。そのせいで、特定の植物を好む昆虫が出てくるのだ。植物がわざわざ作った毒を体内に取り込んで利用するとんでもない昆虫もいる。
    ⑤植物vs動物ー被子植物が進化してアルカロイドという毒成分を持ったことにより、恐竜が滅んだとも言われている。哺乳類は味覚を発達させることで対抗しようとする。
    ⑥植物vs人間ー植物は毒で対抗しようとするが、人間はこれを利用したり、苦みを美味しいと感じたりする。しかし、人間のおかげで栽培が広がったりした。
    あとがきで、著者は、人間はせっせと植物出現前の地球環境に戻そうとしていると言っているが、酸素のない、オゾン層もない地球だからね。皮肉がきつい。

  • たたかう植物 : 仁義なき生存戦略 - 新書マップ
    https://shinshomap.info/book/9784480068408.html

    筑摩書房 たたかう植物 ─仁義なき生存戦略 / 稲垣 栄洋 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068408/

  • 手に汗握る新書って珍しいです。


    まさに果てしなき闘いの日々。

    それぞれの種が得意戦法で攻め、出し抜き、進化し、勝ち残る様子が想像を超えて凄絶。

    さすがに実生活に応用…とまではいかなくとも、物事に対応するにはいろんな考え方がある、というヒントにもなる一冊。

    植物VS植物の同階級戦がやっぱり面白いですね。


    1刷
    2021.1.24

  • コロナ禍以前から、ベランダで花を育てて、華道を習って、植物と親しんできた。植物も生き物なので、いかにして生存競争に勝つかで進化。雑草は踏まれることで、種子を運ばされる。植物それぞれのエピソードが興味深い話だった。

  • 動物と異なり動かない植物にも適者適存、過酷な生存競争がある。植物同士の戦い、対環境、対病原菌、対昆虫、対動物、対人間について分かりやすい記述で語る。

    植物の生存競争に関する本。特に花と花粉に関する進化が有名だろう。花粉を運ぶ役割を昆虫に持たせる共存関係。時に蜜だけを長い口吻で奪う蝶のようなフリーライダーも存在するが。同じように種を鳥に食べさせ遠くまで運ばせる戦略やネズミやリスの習性を利用したドングリ。あまりドングリが豊富であるとネズミ、リスが増えて全て食べられてしまうため、あえて数年おきにのみ豊作となる戦略を取ったという。

    対人間。苦味のあるピーマン、辛みのトウガラシ。動物に食べられないための戦略が、まさか人間が調理に活用するとは植物の誤算だろう。ただし農作物も考えようによっては品種改良の結果、人間が育ててくれるのだから成功した戦略なのがしれない。

    奥の深い植物の進化の世界を堪能しました。

  • 副題の『仁義なき生存戦略』は本当にその通りでした。
    動けない植物の外的との闘い方、繁殖の仕方、どれをとっても考えられて工夫されたもの。普段見慣れている植物の葉や果実それぞれにこれほどまでの知恵が詰まっていたのかと驚かされました。
    面白かったです。

    未来への警鐘が込められた後書きの皮肉さも読後に強く残りました。

  • 昆虫もおもしろいけど昆虫と共に進化してきた植物もおもしろくないわけなかった
    考えてみたらニュースでよく聞く蜜蜂がいなくなってるとか今のままだと10年後くらいに食糧危機になるとか、取りも直さず植物の危機は人類の危機なのね

  • 以下よんで気になったところのメモ・

    - 植物は光を得る競争をしている。競争していく中で、他の植物より早く高い位置に葉を広げようとしている
    - アサガオは、茎に頼らずつるを伸ばし他の植物を頼りにしながら伸びるので早く伸びることができるようになった
    - 「他人に頼れば、苦労せずに早く大きくなれる」 このつる植物の考え方を、さらに進めたのが、寄生植物。
    - 寄生植物は他の植物から栄養分を奪うことで生きている
    - 植物の成功戦略はC・S・Rという3つの戦略がある
    - C戦略は、コンペティティブ(競争型)
    - S戦略は、ストレス・トレランス(ストレス耐性型)
    - 水や光が不足している環境での耐性があるなど
    - R戦略は、ルデラル型
    - 予測不能な激しい環境に臨機応変に対応するタイプ(雑草など)

  • 植物の生存戦略には、CSR戦略というものがある。
    C:競争戦略(弱肉強食の世界で勝つ)
    S:ストレス耐性型(普通の植物がストレスで死んでしまうような環境をあえて選ぶ。ex:砂漠、日陰)
    R:レルラント(変化が激しい環境を選んで、変化に対応して成長する)

    これらの戦略に基づくと、
    ・サボテンが丸い形をして、棘をはやしているのにも理由があるし、バラに棘が生えている理由も物理的な防御という以外に理由がある。植物は、過酷な生存競争の中で生き残るために形を変えてきた、という話が面白かった。

  • 植物の生存戦争を第六ラウンドまで相手ごとに解説。本当に多種多様な戦い方があり感心させられる。

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著者プロフィール

稲垣 栄洋(いながき・ひでひろ):1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する記述や講演を行っている。著書に、『身近な雑草の愉快な生きかた』『身近な野菜のなるほど観察録』『身近な虫たちの華麗な生きかた』『身近な野の草 日本のこころ』(ちくま文庫)、『植物はなぜ動かないのか』『雑草はなぜそこに生えているのか』『イネという不思議な植物』『はずれ者が進化をつくる』『ナマケモノは、なぜ怠けるのか』(ちくまプリマー新書)、『たたかう植物』(ちくま新書)など多数。

「2023年 『身近な植物の賢い生きかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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