チームの力: 構造構成主義による”新”組織論 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068309

感想・レビュー・書評

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  • 本書は「ふんばろう東日本震災支援プロジェクト」で中心的役割を果たされた、西條氏のチームマネジメント手法を中心に展開していく。新しい組織マネジメトの方法論として提起される構造構成主義の概念は、本書で初めて聞く考え方であった。

    構造構成主義は次の三つの基本原理に基づく。
    1)価値の原理:すべての価値は、目的、関心、欲望に応じてたちあらわれる
    2)方法の原理:方法の有効性は、目的、状況によって決まる(変化する)
    3)人間の原理:人は関心に応じてたちあらわれた価値を欲して生きている

    我々が実施してきた過去の多くの組織運営においては、経験に基づく知恵の体系化により、多くのマニュアル、ガイドライン、ルールを制定し、行動の規範とする場合が多かったと考える。 また、組織内の情報伝達も各階層を通過して、収集、判断、実行が行われてきた。予測できる範囲の変化とスピードに対しては、これら経験の蓄積も有効であった。

    しかしながら、予想を超えた大災害時にはマニュアル、ガイドラインのみでは不十分であり組織内の情報伝達ルートが途切れても、自主的に判断し自立的にフレキシブルに動くことのできる組織論が求められる。
    この方法論そのものは新しいものでもなく、民間レベルでの企業活動でも多く用いられてきた”現場力”の一つであろう。

    フレキシブルな組織を運営していくために、組織に参加するメンバー間に、共通の価値を達成する目的、ビジョンが必要である。
    状況の変化に応じ目的が達成されたら、新たな価値を求めるために、組織も自ら変化し消滅していくことを是とするなど、ああそうかと気づかされるところも多い。

    組織内での人を生かすという意味での”適材適所”も人は関心に突き動かされ動いていくという原理の視点に立つと、チームの有効性につながる運営も可能と気づかされる。

    ふむふむ、とうなずくところも多く、平常時ではあるが、多様な人材と日々変化する状況に対応せねばならない組織運営を新たな視点で見ていこうと思う。

  • 組織論を扱った本としては、非常に内容が洗練されていて濃い。
    常に原理を優先させていれば、誤った方向には行かないのだ。
    全ての行為は目的を達成するための手段である、など至言の数々。
    前著「すんごい仕組み」が実践編かつ、レポート的位置付けだったので、それらのエッセンスを完結にまとめてくれた本書の方が構造構成主義的アプローチについての理解はしやすいであろう。

  • 構造構成主義による「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の運営を丁寧に説明していて、なるほど構造構成主義とはこういうものかとある程度分かりました。
    しかし、構造構成主義というツールを使ったからといって、著者のような家電プロジェクトや重機プロジェクトを思い付くわけがないと感じました。つまり、構造構成主義を勉強しても素晴らしアイデアが出てくるわけではない、著者の発想力や閃きが日本最大級のボランティア団体を作ったのだと感じます。

    信念対立の解消には、お互いの立場に基づく関心から出発すれば良いと言いますが、この件がどうも引っ掛かります。本書や前書を読むと、『○○という前提(関心)があるなら××になる』というような定式化・アルゴリズム化している感じを受けます。
    信念対立については幕末の動乱期を思い浮かべます。幕末志士達は、己の信念によって、攘夷/開国、尊皇/佐幕/公武合体だったりと、様々に分けられます。それらについて、著者は『前提となる関心が異なるから対立が起こる』と言っているので、『じゃあ関心が同じだったら信念も同じになるのか?』と疑問を持ちます。それはさすがに言い過ぎでしょうが、なんかそんなニュアンスを受けます。ただ、相手の背後にある関心に注目するのは瞠目です。
    あと、『信念の対立は和解できないことがある。それは相手を認め合い尊重する姿勢が大事である』という終盤の開き直りにはちょっとガッカリでした。それを言ったらファイヤアーベントの『何でもアリ』で良いじゃん!って思いました。
    僕の評価はA-にします。

  • 構造構成主義、興味深いです。
    価値の原理、方法の原理、人間の原理からの考察。

    ここまでシンプルに絞れるのか、と思いました。
    そしてこれを自分たちで実践するのは、簡単ではないな、とも。

    信念対立についての考察も、日常的に出会うところなので、確認の意味でも参考になりました。

    私たちが価値判断を行う時、それは自らの関心に影響を受けている。そしてその関心には根拠となる物語がある。

    お互いを認め合うことができれば、それでいい、という落とし所もいいな、と思いました。

    自分の現場でも、構造構成主義を活用していこうと思います。

  • 「きっかけ(契機)によって、何らかの関心を持つようになり、その関心に応じて物事の価値判断をするようになる。」

    自分のチームメンバに、どのような価値観を持っていて、何に関心があり、それはなぜか?をヒアリングしてみようと思う。
    それから、「できるだけその人の関心と能力にみあった仕事や役職を与えること」でチームをより良くしていきたい。

  • 副題の「”新”組織論」に偽りなく、現時点で最先端をゆく組織論と感じました。
    本書は、著者が立ち上げた「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を、改めて論理的に振り返った組織マネジメント論です。マネジメント分野で最も高度で難しいとされる非営利活動のボランティアマネジメントに関するヒントが多数盛り込まれており、すぐに役立つ内容になっています。
    組織論の本は、自分の専門だけに、数多く読みましたが、これまでの組織論の常識を覆す要素が複数ありました。プロジェクト型業務が増加する中、非営利活動の実践者に留まらず、営利活動のビジネスパーソンにも是非お薦めしたい一冊です。

  • 物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

  • 構造構成主義に基づいたチーム運営を理解できる。提唱している内容自体は巷のビジネス書に書かかれていることと大きく変わらないが、哲学的な原理に基づいているので説得力がある。だからこそブレずに実践できるのだと思う。

  • 本書は「目的に応じたチーム、ひとりではできないことを達成するためのチームをどのように作ることができるか」というテーマについて、構造構成主義に基づく3つの原理(価値の原理、方法の原理、人間の原理)を元に説明している。
    3つの原理に通底するのは、関心相関性原理、言い換えれば「物事の価値や意味は関心に応じて立ち現れる」という原理である。少し単純化してまとめれば、チームが掲げるビジョン、追求する指標、方法の選択、人選といった物事を、チームの目的に即して決定することが肝心である。これが本書から得られる知見である。
    ところで本質に即したチームの目的という関心と、人間的な自己保存の関心は表面的なところではときにせめぎ合う。例えば、職場で管理職を担う人は、ときに自分が目的を見失っていたとは認めたくない。また、自分のやり方を否定されたくない。あるいは自分への責任を免れるために前例に則りたい。
    したがって、もし自分が組織を運営する立場になければ、本質に即した関心に応じてチームを変えるために説明と説得を試みる必要がある。そしてこれが難しい。
    本書のチーム論のよいところは、「ふんばろう」という著者自らがリーダーを務める新しいチームの事例を中心に紹介しているにもかかわらず、既に走っている組織を底辺から変革するニーズにも答えていることである。本書によれば、本質に即した変化を起こすことが管理職(チームの運営権を持つ者)の関心にとっても有利であることを示せばよい。
    また、本書は目的に即してどのような行動を取るべきかというレベルで関心が食いちがうときの考え方として、契機相関的観点を示しており、こちらも現場レベルで有効な道具であり、場合によっては自らの関心を修正することを可能にしてくれる。
    ふだんは、自分が選んだ組織に明確な「目的」が不在だったとすれば、不運と自分の見る目のなさを恨むしかないのではと思いがちだが、本書のチーム論を自組織で活かせる可能性もあると信じたい。

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