自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067494

感想・レビュー・書評

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  • ASDと定型発達の特性の違いが詳細に理解できた。やはり社会性という観点から考えるとASD特性は不利に働くことになるだろう。ASD特性を差別ではなく特徴、個性と認められる事を理想としているが実際は難しく思う。やはり障害者として配慮され庇護されながら生きていくことになるだろう。あとは本人がそれを認めて自己肯定していけるかが問題である。定型発達症候群というワードは初めて聞いた。多数派だから聞き慣れないが少数派のASDからしてみれば少し奇異に映るのだろう。

  • 人口中の98%程度が「定型発達症候群」の診断にあてはまる?
    障害は個性と社会の接点に現れる現象

  • 古本屋で購入。読了しました。

    自閉症スペクトラムの基礎研究をしている科学者の立場から書かれた発達障害(特に自閉症スペクトラム)に関する本でした。おおよそこういうことを伝えたいのではないかと読み取ったことを3つ書き出してみます。

    ・精神医学や心理学だけじゃなく色んなアプローチから研究が進んでいるし、当事者の声もしっかり反映されている今もの凄く進歩している研究分野だよ
    ・非定型発達のメカニズムについては
    「脳の働き」と「遺伝」
    が関わっていることははっきりしてきたけど、定型発達とは違う脳の働きや遺伝子を持ってるからと言って必ず発症するわけじゃないし、環境の要因がどこまで関わってるのかはまだ分からないことが多いよ
    ・発達障害って言っても社会によって「何が障害か」は変わるし、逆に「魅力ある個性」「天才」になることだってあるよ。そして何より、発達障害を持っている人を理解して共存できるような社会に変えていくことが今もそしてこれからも大事だよ

    私には「なんだ、そんなこと別に読まなくたって分かるよ」という内容にも思えました。ただ、自閉症スペクトラムについて最新の動向も含めよく分かってない人、偏見を持っている人はまだまだいるし、そういう人には学びの多い本かなと思います。もちろん、どれだけ自閉症スペクトラムに偏見を持っているかor理解を深めているかを確認する意味では私にも読む価値はありました。
    とにかく、とても誠実かつ謙虚な姿勢で、ごくまともなことを読みやすい書き口で示してくださっているなというのを読んでいて感じます。ADHDやLD等自閉症スペクトラム以外の発達障害についてはこの本では専門外ということで扱われませんし、具体的にどう支援したらいいか(有り体に言えば、どう付き合ったらいいのか)についても教えてくれる本ではありません。そのことはしっかり本文中で断ってあります。ちゃんと断った上で、発達障害に対する考え方が今後どう変わっていきそうか、それに合わせて支援のあり方がどう変わって行きそうかの方向に関しては、興味深い研究やいくつか紹介されていたように思います。

    私にあっては発達障害の診断を受けている友人がいるので、その人との付き合いをどうするかも含めて考える材料はいくつかもらえました。

  • 発達障害に興味がある人は、まずはこの本から読むべきだとお薦めできる良書です。
    特に最終盤、いわゆる「健常者」に『定型発達症候群』という”レッテル”を貼ることで、『定型発達症候群』の人々が如何に奇妙な行動を取っているか指摘する下りは、つまり「自閉症スペクトラム」は圧倒的大多数の『定型発達症候群』の人々で構成された社会では、困難を伴う”個性”の持ち主なだけであるというアンチテーゼは、心に留めておきたい。

  • 自閉症の基礎研究者による本。
    自閉症研究の流れを紹介し、障害と環境について言及している。
    支援者の本にありがちな押し付けがましさがない。

  •  基本的なことをわかりやすく丁寧に書いてある。心の動き、脳とのかかわり、発達からみる自閉症、社会とのかかわりから見る自閉症、自閉症という「鏡」映るもの、個性と発達障害。鏡の中ででてきた定型発達者に満ちた現代社会の特徴など・・・。

  • 自閉症とは他者との関わり、社会との関わりに困難さを抱える障害であり、スペクトラムとは連続したものという意味。境目がぼんやりしたまま連続的に分布する症候群と考えられている。発達障害の基盤となっている脳の働き方、心の働き方それ自体は良いものでも悪いものでもなく個性の一つにすぎない。ところが発達障害の場合、その個性が社会参加を妨げるハードルとなり、日常生活や学業などに困難さを齎す。個性は発達とともに変わるものであり、本人の努力や環境とのめぐり合わせ次第では様々な職業に繋がる才能として開花する可能性がある。時代や場所によって、また科学技術の進展により人間を取り巻く環境は大きく変わっていく。どのような個性が役に立つかのかも変化するということである。自閉症やADHDに伴う行動について本人の我が儘と切り捨てるのではなく、背景にある脳の働き、心の働きを理解し、有効な介入方法を開発するなど、適切な支援に繋げていくことが肝要となる。社会環境を整え社会参加を容易にすることは発達障害を抱えた本人だけの問題ではない。多様な個性が共存し、才能を開花できる社会制度や社会環境を整えることは社会全体に大きな利益となる。発達障害者が社会から保護される存在ではなく社会の一員として参加し、新たな価値を生み出し、自らの可能性を存分に実現する社会。そういう社会が実現すれば、これらの個性を発達障害と呼ぶ必要はなくなる。

  • 自閉症スペクトラムに関する入門書、という感じ。身近な家族のために基本的なことが書かれている。

  • 自閉症の「弟・妹研究」は初めて知った。自閉症児の弟妹の10-20%は自閉症となるため、彼らを研究することで、3歳以前(自閉症は3歳くらいにならないと診断できない)に見られる自閉症に特徴的なものはないか探る研究。

  • 自閉症に関して知っておきたい知識がわかりやすくまとまっている最新の本。これから勉強したいという人には今なら間違いなくこれをおすすめすると思う。

    ※ただし、筆者がいわく、「発達支援の現場に明日から使える」といった、いわゆる”役に立つ”本ではないかもしれません。

    DSM-5という米国精神医学会が2013年に出版した新しい診断基準に対応しているところもポイント。「対人コミュニケーションや対人行動の困難さ」と「限局的、反復的な行動や興味のパターン(こだわり)」という二つの診断基準に沿って、それぞれの背景にあるかもしれない心の働きについての客観的な研究結果をわかりやすく紹介してくれている。その他にも、遺伝子とか脳とか文化とか、自閉症をとりまくさまざまな知見や議論もきちんと抑えてある。

    千住先生の本は、「社会脳の発達」も「社会脳とは何か」もそうだったけど、とにかく文章がわかりやすくて、話の展開がスムーズなので本当に読みやすい。専門用語をなるべく使わず、使うときにも丁寧でかつすっきりとした説明しているところが毎回すごいなあと思う。

    これくらい自分のことばできちんと説明できるようになりたい。

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