医療幻想: 「思い込み」が患者を殺す (ちくま新書 998)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067067

作品紹介・あらすじ

日本医療の実態とは、どのようなものなのか?「点滴は血液を薄めるだけ」「消毒は傷の治りを遅くする」「抗がん剤ではがんは治らない」「健康診断に熱心な人ほど早死にする」…。本書は、こうした驚くべき実態に迫り、医者と患者の間にある壁の正体を明るみにする。医師会・厚労省・マスメディアなどの生み出す幻想の実態を晒すことから、これからの日本医療のあり方を問いなおす。ベストセラー作家でもある医師による、渾身の日本医療論。

感想・レビュー・書評

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  • 文字通り「医療幻想」について医者の立場から書いた一冊。

    著者は医師であるし海外赴任など様々な経験をしているので説得力がある反面、特にガン治療においては懐疑的すぎないかと思った。
    もちろん、治らないガンもあるだろうし、治療した人とそうでない人の生存率を割り出すこと自体難しいのはよくわかるのだけど。

  • 日本の医療のモノの見方が広がりました。

  • 「老いて温まりたいものは、若いうちに暖炉を作っておけ」と西洋の諺を挙げているが、本書を手にしていない者にこそ、この言葉を投げかけたい。

  • ☆なかなかおもしろい本。ゼロリスク幻想がかえって危ないとも言える。

  • 70年代、共同幻想という言葉が流行った。権力による規制があたかも自分たちによって規制されているかのように幻想させられている。その若者たちが老人になった時、回復見込みがないのに薬や治療を求める。それは病院に行けば治療してもらい回復するはずだと思い込んでいるからだ。筆者はこれも幻想だという。老人になると薬を飲んでも治らない。リハビルをしても回復しない。それが現実だと書いている。
    認めたくないが現実はいつも直視しなければならない。

  • 医師にして作家でもある久坂部羊氏が、日本の医療に蔓延する「幻想」を明らかにし、医療の在り方を問い直した著書である。
    ◆薬は効くという幻想・・・新薬の認可のための治験(患者でその効果を試すこと)には限界がある。多くのサプリメントは論理的に効くはずがない。対症療法の薬は自然な治癒力を弱めかねない。。。
    ◆名医幻想・・・医療者から見たいい医者と患者が思ういい医者には往々にして大きな隔たりがある。エリート医師の集まる大学病院などでは、臨床よりも研究が重視される。。。
    ◆診断幻想・・・正常と異常を分ける基準値の変更により、それまで正常だった人が病気に分類される(高血圧が好例)。認知症患者の多くは老化現象が加わっているが、その境界など見極めがつくはずはない(老化現象をことさら早期発見して、医療の治療をしても意味がない)。。。
    ◆厚生労働省が増進する幻想・・・厚生労働省は「健康増進法」に基づいてがん検診を推進するが、がん検診にはメリット・デメリットがあり、日本以外の国ではがん検診は推奨されていない。厚労省が進めるメタボ検診の基準も疑問。人間ドックに人気があるのは日本特有の現象。
    ◆高齢者の医療幻想・・・老化現象による身体機能の衰えを医療で治そうとしても無駄。終末期医療はなかなか理想的にはいかない。。。
    ◆医師不足幻想・・・巷で騒がれる医師不足の要因は複雑。医学部の定員を増やすだけでは医療の質が低下する恐れがある。医師の自由を制限する(選択する専門や勤務地に制限を設ける)、患者がコンビニ診断の自制、病院の遠方化、医師以外による医療行為を受け入れることにより解決できる。。。
    ◆マスメディアが拡げる幻想・・・マスメディアでは、奇跡の治療の良いところばかりを宣伝し、副作用の危険や実際の治療を受ける困難さなどのマイナス面は公正に説明しない。。。
    更に著者は、こうした多くの幻想の生まれる最大の要因について、2009年に東大病院でがん患者とがん治療に関わる医師を対象に行われたアンケートで、望ましい死を迎えるためにという質問に、「病気と最後まで闘う」と答えたのは、がん患者では81%、医師ではわずか19%だったことを引用して、医師は治療の実態を知っているのに対し、患者は「治療は良いことだ」と思い込む、情報格差にあるという。
    そして、「その状況を少しでも改善するには、患者と医療者がわずかずつでも歩み寄るしかない。患者はむやみに医療に期待せず、ふだんから老いや死をある程度受け入れる。医療者は、がんの終末期医療や延命治療など、医療現場の悲惨を積極的に世間に伝え、無駄な医療で儲けるのを控え、できるだけ患者に親切にする」しかない、と結んでいる。
    (がんを中心とした)病気の治療や薬、検診の是非等については、近藤誠理論やそれへの批判を含む多くの本が出ているが、本書は医療の制度や業界にスコープを広げてその実態を明らかにしている点で有益な書と思う。
    (2013年5月了)

  • 日本人は幻想を受け入れやすいだろうなあ。
    病院を信じて行けば必ず治るんだって人はもうそれでいいかと。今更変えられないよ。

  • 問題点は、諸々の幻想を否定するために依拠しているのが、ほとんど主観に基づくものだってところ。もちろん、医療従事者から見た医療の現場は、一般人よりも的を射ているのは当たり前。だから、マスコミとか政治に対する主観は、概ね的確な指摘だと思う。ただ、諸々の医療行為とか治療に関する部分は、科学的に検討する必要が当然ある訳だけどそれがなされていない、ないしはその記載がない。ただ、実は本文中にその断りがさりげなく出てくるんだけど、流し読みだと見逃しそう。でも、メディアを批判する論拠がメディアから得たもの、じゃいかんでしょう。という訳で、科学的な部分:3、主観的な部分:4で四捨五入して☆4つ。

  • 船橋図書館
    たしかに医療、医薬品に関するEMB(エビデンス・ベースド・メデシィン)は一般人の判断基準からすると、「それで改善と云えるの?」というもの。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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