円のゆくえを問いなおす: 実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書 959)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066633

作品紹介・あらすじ

欧州危機、ウォール街デモなど、世界玉済は不安定になっている。そうしたなか私たちに最も大きな影響を及ぼしているのが円高・円安という円相場の動きである。円高は「輸出関連企業への打撃がある」「輸入品や外貨建て資産を安く買える」など、目前のメリット/デメリットに目がいきがちだ。しかし、その大本にはデフレと経済成長率の低下という、日本経済の「失われた20年」の根幹をなす問題が横たわっている。本書は、円のゆくえを主軸に、日本経済の過去・現在・未来を、緻密な分析から大胆に総括する。

感想・レビュー・書評

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  • さすがに内容が古びてしまったか。

    第5章を中心に読んだが、結局作者の言ってる事は外れているように思う。残念ながら黒田バズーカも不発で、10年経ってもインフレターゲットは達成されてない。

    円高だけは多少是正されたが、それとて外的要因に負うものが大きいと思う。

    失われた10年が20年になり、もはやそれが恒久的なものになってしまっているのではないだろうか。

    私ごときに処方箋が書けるはずもないが、一人一人のマインドを変える。節約や貯蓄が美徳であり善だという考え方は少し見直す必要があるように思う。

  • 日本経済の長期にわたる停滞の要因は何か。このテーマで書かれた本はきわめて多いが、本書は経済理論の枠組みを踏まえるとともに、可能な限りデータの裏付けを取りながら議論を進めたきわめて手堅い本である。著者の筆遣いはきわめて慎重であり、ついつい結論を急ぎたくなるところも、一歩一歩に議論を進めてゆく。類書ではあまり利用されない歴史データを用いているところも特徴だ。

    経済理論というと、きわめて難解なイメージがあるが、本書でもっとも重要なのは「国際金融のトリレンマ」という考え方(p.85)。すなわち、為替レートの安定化、国際資本移動の自由化、独立した金融政策の3つの中で、同時に達成できるのは2つまでという議論である。この比較的単純な考え方を使うと、歴史的な事象に始まって現在のユーロ危機にいたるまで、急に見通せた気になるから不思議だ。

    本書は4章までに理論、実証、歴史を扱いながら経済分析の枠組みを用意し、いよいよ5章で日本経済再生の処方箋を描いてゆく。その切り口は非常にあざやかで、十分な説得性を持つように思った。

    大学で経済学を教える者は、定評のある入門書のあと、ステップアップのできる中級レベルの本の選択に迷うことが多い。本書は、そういうニーズにも十分応えられる本だと思う。

  • 本書の著書はいわゆるリフレ派のようだ。金融の専門家かもしれないが、実経済について全く触れられていない。経常収支が為替に及ぼす影響、国際競争と硬直的な産業構造が日本の労働環境に与えた影響、金利が上昇した場合の国債金利上昇の懸念、ゼロ金利化での金融緩和がもたらす影響について、全く言及がない。

    実経済を知らない人が机上でソロバンをはじいた空論に見える。実経済を知らない数学者たちが金融工学を駆使し、サブプライムローンを生み出した。サブプライムへのトリプルエーの評価は実経済を反映しておらず、空論は爆発した。

    2013年3月現在、まさに日銀人事が争点となり、政府&日銀が金融緩和へ舵を切ろうとしている。しかし、金融緩和論を唱えている人たちが、実経済の知識がなく、机上でソロバンを弾いて提唱しているのかと思うと、ぞっとする。

    “誤った理論に基づく誤った政策が意図せざる結果をもたらした場合には、意図せざる結果は実施が不十分であるとか、他の効果の存在という形で説明され、危機的状況に陥らない限り、誤った政策が継続して実行されてしまいます。”と著者は言う。金融緩和論が誤った理論だったら、いったいどうするのか?


    <目次>
    はじめに
    第1章 円の暴騰と日本経済
    第2章 円高の原因は何か
    第3章 為替と経済政策を問いなおすー金本位制から固定相場制へ
    第4章 為替と経済政策を問いなおすー変動相場制以降
    第5章 デフレと円高を止めるために何をすべきか

    <メモ>
    国際金融のトリレンマ(87)
    国際資本移動の自由化・為替レートの安定化・独立した金融政策
    このうち2つを取ると、3つ目が犠牲となる。

    マッキノン・大野 「政策の罠」(139)
    誤った理論に基づく誤った政策が意図せざる結果をもたらした場合には、意図せざる結果は実施が不十分であるとか、他の効果の存在という形で説明され、危機的状況に陥らない限り、誤った政策が継続して実行されてしまいます。

    欧州危機の解決策(177−182)
    プランA:
    ・共通通貨ユーロの安定化
    ・ドイツによる積極的財政支援
    プランB:
    ・共通通貨ユーロを部分的に放棄:ギリシャを離脱させる
    ・ギリシャ通貨は暴落し、ギリシャ債権が暴落する。債務減免が必要。
    プランC:
    ・その場しのぎの政策
    ・高い確率でふたたび金融危機が起きる

    為替レートに影響を与えるのは、名目金利、予想物価上昇率、物価上昇率
     →形状収支の言及がない。

    デフレは賃金の減少に加え、失業率の悪化や非正規雇用の増加を通じて雇用環境を悪化
     →???デフレと失業率の悪化とが、なぜ関係があるのか?

    2012.11.20 『「失われた20年」と日本経済』を見つけた時にAmazonがリコメンド。
    2013.02.10 借りる
    2013.02.27 読了

  • うーん。

  • [ 内容 ]
    欧州危機、ウォール街デモなど、世界玉済は不安定になっている。
    そうしたなか私たちに最も大きな影響を及ぼしているのが円高・円安という円相場の動きである。
    円高は「輸出関連企業への打撃がある」「輸入品や外貨建て資産を安く買える」など、目前のメリット/デメリットに目がいきがちだ。
    しかし、その大本にはデフレと経済成長率の低下という、日本経済の「失われた20年」の根幹をなす問題が横たわっている。
    本書は、円のゆくえを主軸に、日本経済の過去・現在・未来を、緻密な分析から大胆に総括する。

    [ 目次 ]
    第1章 円の暴騰と日本経済(「時系列」でみた深刻な円高;「国際的な視点」でみた深刻な円高 ほか)
    第2章 円高の原因は何か(為替レートとは何か;為替レートの3つの指標 ほか)
    第3章 為替と経済政策を問いなおす―金本位制から固定相場制へ(経済政策における3つの手段;経済安定化政策と為替レートの関係 ほか)
    第4章 為替と経済政策を問いなおす―変動相場制以降(円高シンドローム;「強い円が望ましい」という呪縛 ほか)
    第5章 デフレと円高を止めるために何をすべきか(円高や円安は自然現象ではない;金融政策とは何か ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ポイントとなる点は繰り返し説明されるなど、説得力ある(が小さくて読みにくい)グラフと合わせて、非常に理解しやすく書かれている。
    これは新書なので、コスパは非常に良いと思う。

  • 円高は人災であり、だから施策次第で克服できる、という本で、まさに今(ちょっと前?)のアベノミクスの手法を推奨している本。
    実際に円はめちゃめちゃ安くなったからねえ。経済学には完全な門外漢なんで理論的に正しいかどうかはよくわからないし、あの円安株高は一過性のブームかもしれないんだけど、にしてもこれだけの変化をもたらしたってのは、金融政策の威力はかなりあるって考えざるを得ないんじゃないかな。

    ああ、景気良くなってほしいなあ。
    著者の主張が正しいことが証明されてほしいなあ、とそっと祈らされた一冊。

  • 行き過ぎた円高は人災だって。

  • 2012/2/20読了。

    円の為替相場の歴史と、今後取るべき方策を考える上でのエッセンスが詰まっている。この手の本では今まで読んだ中で最もまとまりが感じられ、一つ一つの論証にも説得力があった。
    昨年末までの円高は本当に円高だったのか、デフレの原因は何か、日銀は積極的な緩和をすべきか、アベノミクスで取り沙汰される重要項目を理解するために有益な一冊である。

  • 「円高、そしてデフレは天災ではなく人災なのです。」
    という主張の本。
    久しぶりに大学の教科書みたいな本を読んで、頭がぼーっとしてしまいました。
    世界恐慌やユーロ危機の背景がわかり、その辺りは楽しかったけども…。

    日銀様、どうかデフレと円高から脱却する施作をお願いします!
    まずは、円が強いと国まで強いと考えてる施政者の意識を変えるところからみたいですが。

    Jan, 2013

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