心づくしの日本語: 和歌でよむ古代の思想 (ちくま新書 929)

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 88
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066268

作品紹介・あらすじ

「心」「日本語(言の葉)」「和歌」。これら三つは密接につながっている。日本語が発展したのは、和歌のおかげである。日本人の世界認識の根源には「歌をよむ」という営為があるからだ。「心」は日本の伝統文化のエッセンスであり、この叡知を定着させたのは和歌である。しかし、近代以降、西洋文明の獲得と引き換えに、日本語が培った叡知を私たちは失いつつある。その喪失を偲ぶとき、王朝文化における和歌の卓越が明らかになるだろう。本書は、近代文明を相対化する視点をはぐくむものとして、古代文学を捉えなおす試みである。

感想・レビュー・書評

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  • ツベタナ・クリステワ氏の名前を、度々目にするようになった。
    最初は『高校に古典は本当に必要なのか』で、必要だとする説が良くて、納得させられた。その後、『「竹取物語」から「かぐや姫」へ』という本も面白くて勉強になったのだが、その時に筆者の恩師として出てきたのだった。

    心を謳う和歌の重層性、清音と濁音を書き分けないこと等による多様な解釈こそが、日本語の「あいまいさ」の根源を為すものである。
    そこにあるのか、ないのか、どちらかではなく、どちらでもある可能性。真ん中というよりは、多元的と言っても良いのかもしれない。

    面白かったのは助動詞「ぬ」が、完了か打消か。
    どちらか一つを解釈と限定するのではなく、どちらである可能性も残してみてはどうか。
    なるほど、先程挙げた竹取論で、「うつくし」は「可愛い」なんだと断定せず、「美しい」である可能性を見出だそうとした、その姿勢と確かに同じだなぁ。

    確かに作られた和歌を、読み手が再度作り上げていくという不思議なコラボレーション。
    そこに揺れがあるからこそ、きっと面白い。

  • 日本語に内包されている自然、優しさ、心…もっと学びたいな

  • 新しい観点で竹取物語や和歌を読み取ることができる。
    それだけ私たちは和歌を読み解けていない。
    古文を少し学んでいないとちょっと頭に入りにくいが、目指す世界の曖昧さ観点は日本人とは違う視点からの入りが参考になる。

  • 「平安女子は、みんな必死で恋してた」あとがき記載本。「枕草子」「とはずがたり」のブルガリア語翻訳者。

  • 「心」こそ日本古典文学のエッセンス

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=B12787

  • [ 内容 ]
    「心」「日本語(言の葉)」「和歌」。
    これら三つは密接につながっている。
    日本語が発展したのは、和歌のおかげである。
    日本人の世界認識の根源には「歌をよむ」という営為があるからだ。
    「心」は日本の伝統文化のエッセンスであり、この叡知を定着させたのは和歌である。
    しかし、近代以降、西洋文明の獲得と引き換えに、日本語が培った叡知を私たちは失いつつある。
    その喪失を偲ぶとき、王朝文化における和歌の卓越が明らかになるだろう。
    本書は、近代文明を相対化する視点をはぐくむものとして、古代文学を捉えなおす試みである。

    [ 目次 ]
    第1章 『竹取物語』―限りのない美と限りのない心
    第2章 タブーと自由―人の心を種としたやまと歌
    第3章 「月の影」とその彼方へ
    第4章 「あいまいさ」の今昔
    第5章 「月やあらぬ」とその英訳
    第6章 日本語の限界と無限の表現力
    第7章 外縁からのまなざし
    第8章 助詞・助動詞のマジック・ミラー

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 和歌や日本語の美しさ、奥ゆかしさ。
    他の言語との差異等々を哲学的、言語学的にいろんな観点から書かれているとても面白い本でした。

  •  和歌の研究でありながら、著者さんが東欧系の名前だというのが気になって手に取ってみました。

     和歌を題材に、平安時代あたりまでの日本の思想を読み解く趣旨の本ですが、アラビアやギリシャといった、他の文化圏との対比が特に面白かったです。
     哲学だけでなく、言語学的な観点からも差異や類似点を挙げられています。

     そしてなにより、和歌の技法や解釈を説明するために紹介されるたくさんの和歌!
     今まで、31文字のリズムの良さは声にしてこそだと思っていたのですが、あえて濁点を用いないことで同時に正反対の意味を帯びてくることなど、文字で表現する奥深さというのがとても新鮮でした。
     和歌には唯一無二の訳があるわけではなく、その「あいまいさ」ゆえにたくさんの解釈や、想像を広げていく余地があるそうです。
     著者さん自身の解釈もとても素敵でした。
     わたしも、歌とじっと向き合って、自分なりの意味を拾い上げていけたらな、と思います。

     哲学も言語学も学問の中では個々の思考回路によって大きく姿を変えるたぐいの厄介なものなので、読んでいて頭で理解できなくなることもあります。その点で、この本は「難しい」と言えます。
     しかし、和歌、日本語の素晴らしさ、奥深さ、現代と通じるところを知る素敵な一冊だと思います。

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著者プロフィール

国際基督教大学教授。【専門分野】日本古典文学の詩学、日本文化の意味生成過程、文化・文学理論 。主要編著書に、『涙の詩学―王朝文化の詩的言語』(名古屋大学出版会、二〇〇一年)、『心づくしの日本語 和歌でよむ古代の思想』(ちくま新書、二〇一一年)、など。

「2014年 『パロディと日本文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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