世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480035042

作品紹介・あらすじ

世界史はモンゴル帝国とともに始まった!地中海文明と中国文明の運命を変え、東洋史と西洋史の垣根を超えた世界史を可能にした、中央ユーラシアの草原の民の活動。モンゴルの発展と伝統から世界の歴史を読み直す。

感想・レビュー・書評

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  • 檄文としては面白い。

    ヘーロドトスを始祖とする西洋史も、司馬遷を始祖とする東洋史も、どちらもローカルな個別事情に影響を受けて形作られたものであって、それらを世界史に統合・昇華させるのは無理がある。
    モンゴル帝国こそが西ヨーロッパにも極東にも影響を与え、両者を連結する史上初めての存在であったのだから、モンゴル帝国を軸にして世界史を構築すべきだ。
    したがって、テムジンが中央アジア遊牧民たちの指導者に選ばれ、彼がチンギス・ハーンと名乗り始めた1206年が世界史のスタートである(それ以前の歴史はローカル史に任せる)。

    …という檄を飛ばしている一冊。すごく面白い構想について書いた本で刺激的だ。

    刺激的だけど、ただの宣言である。
    モンゴル帝国が東西ユーラシアに及ぼした影響について自明のこととして書いているのは本書の性質からすれば仕方ないのかもしれないが、予備知識がない立場で読むと、「ゴルフは呉竜府が中国で生み出してイギリスに伝播した」と書く民明書房の本かと思ってしまう部分もある。
    ユーラシア以外を無視しているのはともかく、ユーラシア中央部の遊牧民族たちの歴史を語る部分が退屈というか眠くなるのが一番つらいところだ(そもそも歴史を語り継ぐ性質がない人々であったとするなら、主張の根幹にかかわるとも思う)。

    そのほか、詳しい人が見たらツッコミどころが多いことが予想されるが、繰り返すと「構想としてはとても面白い」(大ぼら吹きと紙一重)。

  • 著者によれば、歴史の書き方にはヘロドトスに始まる、地中海世界の描き方(アジアに対するヨーロッパの戦いの歴史)と司馬遷に始まる中国の描き方(中国の正統を巡る歴史)がある(それしかない)という。その両方に影響を与えその特に中国にありながら中国を超える歴史的存在だったのがモンゴルなのだ、ということだと理解した。ただ結局その先に何があるのか、という展望については物足りなさも残った。

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  • ★★★2021年8月★★★


    世界史はモンゴル帝国から。
    壮大なロマンを感じる。
    地中海史観による西洋史。史記の史観によると中国史。
    それらを通して世界史を見るのではなく、ユーラシア大陸を全体としての歴史はモンゴル帝国より始まる。ロシア帝国をはじめ多くの国はモンゴル帝国の継承国であるという。
    まさに「地果て、海尽きるまで」スケールの大きな話だ。

  • ユーラシアの歴史に興味が出る

  • 2008-00-00

  • さほど読みやすくもない前書きを読み、やっと理解したときにはわくわくした。卓抜な論旨とはこのことかと。でもそこがこの本のピークだったな。学びはたくさんあったけど、そのほぼすべては前書き〜序盤で語り尽くされてて、全体としては竜頭蛇尾といううらみがある。

    ただ。それでも、たしかにこの本には一読の価値はあったと思う。歴史という概念を作り出すことが、人類にとっていかに至難だったか。その結果として、いかに多くの文明が歴史というものを持たずに終わったか。そのわずかな例外が地中海文明と中国文明の2つでしかなくて、しかし双方の歴史文化が相容れないまでに著しく異なっているので、今となっては世界史理解の障壁になっていること。

    だから世界史を理解(叙述)するにはモンゴル史を見よ、という結論に著者は持っていこうとするわけだけど、実のところその必然性については僕は今ひとつよくわからなかった。それぞれにクセのある歴史認識のもとにつづられてきた地中海史があり、中国史があって、その中間地帯にはモンゴル史もあって、その統合的な把握はなかなか難しいよ、ってことだけわかっときゃ充分なんじゃない?べつにモンゴル史に統合しなくってもよくない?

    そのへんの議論の粗雑さ、強引さが、この本の中で「中国人は民族的に資本主義になじまないから先進国に追いつけない」なんて暴論じみた予言を生み、そして華々しくその予言が外れるという失態にもつながったのではないかと僕は思う。(笑)物理の統一理論みたいな見事な世界史認識を持つことはたしかにちょっとした夢だけど、それはモンゴル史への統合ってことではないんじゃないのかな。知らんけど。

  • 「東洋史」=中国を中心とし、歴史は自らの正統性の証明のためのもので変化を認めない。「西洋史」=地中海文明(ギリシア・キリスト教)の歴史は二つの勢力の対立と正義の勝利という変化を描くもの。そもそも両者は全く異なるが、13世紀のモンゴル高原、中央アジアに住む遊牧民の活動(侵略)が、東西の歴史に重要な影響を与えてきたとの考え。
    すばらしくエキサイティングな本。

  • 高校の世界史で挫折(どうしても頭に入らない)して以来、リベンジを繰り返してきましたが、この本のお蔭で、ようやく頭に入るようになりました。
    そもそも「ゲルマン民族の大移動」って、どこから、何で移動してくるの? の疑問がようやく氷解した幸せ……。
    ただ、中央アジアの地理関係を理解しながら読むために、世界地図を広げて指で地名を辿りつつ読まねばなりませんでしたが、それでやっとユーラシア大陸って一つじゃない、という当たり前すぎるのに受験世界史から抜けてた視点が補完されたように思います。
    ついでに……アラル海が半分以上消えてるってこと、今ようやく気付きましたよ!
    本編に比べればオマケのようなボリュームですが、ざっくりヨーロッパ史と、ざっくりキリスト教史も分かりやすくて面白かったです。

  • 歴史は中国と、古代ギリシアからはじまり、モンゴル帝国の誕生をもって世界史の誕生となる。という視点は興味深かった。
    ただ、中国が今後資本主義を取り入れずに発展しないと記述していた点は、時代を感じた。

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著者プロフィール

東洋史家

「2018年 『真実の中国史[1840-1949]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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