1968[1]文化 (筑摩選書)

  • 筑摩書房
3.17
  • (1)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 70
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016614

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1968年、半世紀前へのブック・タイムトリップは今年も続いています。編者の四方田犬彦の「ハイスクール1968」という新書をずいぶん前に読んだこと、思い出しました。彼の1968年に対するこだわりは、自分が担当したグラフィックスの結びの文章で「1970年代から現在に到る物語をめぐっては、人はこれまで、驚くばかりに安易に、饒舌を重ねてきたのではなかったか。〈1968〉の文化を語るときの難しさは、それ以後を語るときの容易さを前にしたとき、いっそう際立ってみえる。だがこの時代を孤立した、隔絶された時代として切り離さないためにも、われわれが今後「発掘」しなければならないものはあまりに多い。」と決意表明に現れていると思います。パリ五月革命とシンクロするように多発するグローバルな1968を「政治の1968」とすると、そのコインの裏表の「文化の1968」はとてもローカルであり、嵐のように去るものではなく深く染み込んでいるものなのだ、と感じました。そして、それは丁寧に「発掘」していかなければならないものという主張にはとても共感しました。例えば、漫画。昨年は小学館のビッグコミックの50周年で記念の展覧会を見に行ったりしました。もちろん、同じ時代に生まれた「ガロ」も「COM」も一応は展示してありましたが、もちろん、それは添え物。本書で雑誌の項を担当する上野昂志は「さて、この年、小学館から『月刊ビッグコミック』が創刊されるが、これについては、とくにいうべきことはない。というのも、それは先に記したように、『ガロ』と『COM』の成果を、メジャー出版社が取り込んで一般化したものだからだ。」とバッサリ。たぶん、出版史としては1968はビッグコミックや少年ジャンプが創刊された年、が正史になりそうだけど、そこで止めずに「ガロ」の青林堂や「COM」の手塚商事の業績を掬い上げる、という意志を感じました。このシリーズ、(2)の文学も読んでみます。

  • [private]<blockquote>に抵抗する文化。これを「カウンター・カルチャー」と呼ぶなら、この思想がアングラが抬頭する60/70年代には根を張っていたことは間違いない。サブカルチャーという下位(従属)文化が幅を利かすようになったのは1980年代になってからである。サブカルチャーは消費社会の波に乗って、一挙に商品化された。いわば「毒を抜いたカウンター・カルチャー」がサブカルチャーを縮めた「サブカル」である。アニメやグッズは急速に市場を開拓し、やがて世界に進出するようになる。アングラはその流れを拒むように、多くの者達はあえて国内に留まった。肉体を伴う言葉は翻訳不可能であり、上演を支える演劇空間は移動不能だったからである。それ故、アングラは「世界化(グローバリゼーション)」されることに疑問を呈した。(P.169)</blockquote>[/private]

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

四方田 犬彦(よもた・いぬひこ):1953年生れ。批評家・エッセイスト・詩人。著作に『見ることの塩』(河出文庫)、翻訳に『パゾリーニ詩集』(みすず書房)がある。

「2024年 『パレスチナ詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

四方田犬彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×