- Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015754
感想・レビュー・書評
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想像していた以上に面白い本だった。数学の、数学が求める「正しさ」への探求の歴史を、小難しい数学の話を使わず、平易な文で教えてくれる良書。
1cm四方の正方形は書けても、その対角線の長さは無理数で正しくは書けない。そういった矛盾にぶつかった時、当時の人達はどう考え、後の人達がどう解決したのか、など「正しさ」を求める数学の世界の面白さを感じる事ができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
証明を中心とする西洋の数学は、計算を中心とするほかの地域の数学から見たら、例外的存在なのか。知らなかった。
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【目次】
目次 [003-006]
第1章 背理法の音楽 009
音楽と数学/「流れ」/「流れ」の自己相似性/論理的推論/三段論法――最小の入れ子構造/論理と流れ/音楽的な数学/背理法/背理法による証明の例/仮定の〈後出し〉/虚構の推論/間接証明/背理法の音楽/人間と数学
第2章 見よ! 041
ソクラテスと僕童/無邪気な信念/「見る」ということ/普遍的〈正しさ〉と証明/証明の決済としての「見る」/「無邪気な信念」の是非/「代数語を話す」という前提/正しさの認識における三要素
第3章 数を観る 066
円周率/素朴な計算法/その歴史/日本人の寄与/建部賢弘の計算/数を「観る」/「注目すべき事実」/証明のない〈正しさ〉
第4章 儀式としての証明 087
「証明する」ということ/『ユークリッド原論』/議論の形式化/「見る」の排除/厳密性の基準/明証性のコペルニクス的転回/ピタゴラスと神秘主義/ピタゴラスとピタゴラス学派/オルフェウス教の影響/見ることへの忌諱/ギリシャ的明証性の根底にあるもの
第5章 見えない正しさ 119
線分と数/形相か質料か/数と量/弦の長さの比/対角線の長さ/無理数/ピタゴラスの定理/通約不可能性/背理法による証明/見えない数への恐怖/計算と論証/複合的要因
第6章 無限に対する恐怖 152
数学の時代性・地域性/「1」は〈数〉か?/エレアのパルメニデス/「真理の道」と「臆見の道」/背理法の起源/様式化された正しさ/「運動」の否定/矢の逆理/競技場の逆理/二つの逆理が示すこと/〈無限〉に対する恐怖
第7章 無限の回避 188
円の面積/アルキメデス『円の計測』/アルキメデスの公理/正多角形による近似/アルキメデスによる証明/証明の構造/取り尽くし法/「アキレスと亀」の逆理/計算と論理
第8章 伝統のブレンド 215
現代数学への道/古代文明の数学/古代中国数学/古代インド数学/「0」の発見/中世の中国とインド/アラビア数学/数学の算術化
第9章 無限小算術 250
十二世紀ルネサンス/幾何学と代数学/近代西洋数学の成立/微分積分学の勃興/無限小算術の「基盤」/ゼノンの再来/論理的不整合
第10章 西洋科学的精神 275
西洋数学の十九世紀革命/極限概念/問題の回避/数学の解放/自然科学と数学/対象を〈作る〉/理性と信仰/「奇跡は起こっているのだ!」
エピローグ(平成二十五年四月 熊本にて 加藤文元) [301-304]
参考文献 [305-307] -
知的好奇心が刺激される。面白い。
本書は数学における<正しさ>の本質を考察している。まず初めに著者は、数学と音楽との類似性を挙げて「基盤・流れ・決済」という構成要素を明らかにする。そしてピタゴラス学派の演繹的論証の崇拝、哲学の厳密性導入、無限や無理数に対する本質的恐怖心、宗教や歴史的背景を以って、数学の<正しさ>とは何かを論じる。
特に<正しさ>を、演繹的証明で扱うギリシャ数学と、算術的計算で扱うインド・アラビア数学との融合は興味深い。それがあってこそニュートンやライプニッツが微分積分を体系作られたのである。
本書は当方のような素人にも理解できるよう平淡且つ体系立てた文章で構成されており、時々難所はあるものの、全体的にとても読みやすい。とはいえ娯楽性が高いながらも数学的アレルギーから幅広く受け入れられにくいのかもしれない。しかしながら筆者がエピローグで数学と音楽とのもうひとつの共通点として語る「流れが決済される気持よさ」、この感覚を多くの人に味わっていただければと思う。 -
「正しさ」とは、どうやら自明ではないらしい…
数学ってホントおもしろい。 -
加藤文元氏の数学に関する啓蒙書はほとんど購入して読んできたので、本書も発売後ただちに購入