ヨーロッパ文明の正体: 何が資本主義を駆動させたか (筑摩選書 67)
- 筑摩書房 (2013年5月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015730
感想・レビュー・書評
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ヨーロッパ文明の正体: 何が資本主義を駆動させたか (筑摩選書)
(和書)2013年12月07日 10:45
下田 淳 筑摩書房 2013年5月13日
朝日の書評に載っていたと記憶している。図書館で借りられたので読んでみた。
もっと重厚な内容を期待していたけれど違いました。拍子抜けしたけれど最後まで読むことにしました。
ウォーラーステインの周辺・亜周辺とかあると思うけれどそこが棲み分けというキーワードで書かれている。
結局この人は対抗運動というか格差の解消としての平等と支配からの自由としての哲学を真剣に考えているようにみえない。 -
・理系型資本主義
・ナショナリズム
この二つが現在の諸問題の根元、と著者は喝破している。 -
★2.5。
ちょいと手厳しく言えば素人の主張と変わらん、って気がする。「棲み分け」というツールに完全に目が眩んでしまっていて、じゃあ何故ヨーロッパにだけ「棲み分け」が起きたのか?についてほぼ説明を放棄している(する気がないのかも)。若干、地理的要因を述べていて、詰まるところ「自然の力」なの?と聞きたいところだが、その先に踏み込んでこない。
これではダメだと思います。繰り返しですけれど、素人の持論開陳なら文句は言いません、十分面白いかと。でも研究者の手になる著作ですよね?本書は。 -
筆者は今西の棲み分け理論を基に分析。
数字をベースにする理系資本主義から文系資本主義への転換を説いている。
ただ、これが「理系・文系」に対する誤解なんだよな。 -
・・・・・・っということで、イスラム文明との対比として前回【近代ヨーロッパの覇権】を読んだが、今回も目的は同じ。
タイトルの「ヨーロッパ文明の正体」は歴史に興味のある人なら必ず持つテーマだから、名前負けしないように書いたんだろうな?という暗黙のプレッシャーが筆者にかかっている。
残念ながら、その期待には応えられていない。
筆者の力量不足というより、歴史を記述するにはあまりにも「情緒的」なのである。
筆者は「棲み分け」がそのカギだと主張する。
この棲み分けという言葉を何度も何度も繰り返すので、殆どの読者が途中でウンザリしてしまったことだろう。
この言葉が総てを解く鍵だと主張すればするほど説得力を失ってしまっている。
辛抱して読み終えても、納得できないままである。
だからこの本はダメと結論付ける人はたぶん多いだろう。
だが、ぼくはこういう情熱を持って書く人は嫌いではない。
あえて自分の理論を振りかざして大きなテーマに挑んだ、その心意気を評価したいのである。
「棲み分け」じゃなく、「合理化」と置き換えてもいい箇所は沢山あるはずだ。
ぼくがヨーロッパ人の特性として挙げる「多機能」より「単一機能」を喜ぶとしても、たぶん筆者は頷いてくれるだろう。
筆者の主張する「棲み分け」論が正しいと仮定しても、結局のところ、はぜヨーロッパなのか?には答えられていない。
人間の性格を特徴付けるものは、やはりDNAレベルまで遡る必要がある。
モンゴル力士が日本力士より強いのは、そのDNAを形ち作ってきた長い歴史があるからだ。
すると、ヨーロッパ人は何故棲み分けができたのか、合理的なのかを考えたとき、普通に「アングロサクソン」が出てこなければならないはずである。
アングロサクソンを辿ればゲルマン人が出てくる。
ゲルマン人といえばローマ文明に憧れ強く影響を受けて、現在のような立派な(?)ドイツ人に進化した。
現在は理科系社会だと筆者は嘆くけれど、ゲルマン的社会だといってもいいはずだ。
ローマ帝国は明らかにヨーロッパを支配し、国家を運営するための多くの遺産を残したはずなのに、筆者はローマ帝国の果たした役割には全く関心を向けていない。
もっと辿ればローマ人が憧れていたギリシャ文明に辿り着くだろう。
ヨーロッパ人のバックボーンを成す19世紀に芽生えた民主主義の原型はギリシャ文明にその種子を見出せるはずだ。
ヨーロッパ文明の特質を探るなら、そこまで論じなければ片手落ちどころか、そもそも話しにならない。
読者はそこを期待して読み始めるはずだ。
それ抜きに棲み分けこそヨーロッパの特質だと説得されても、全く頷けないのである。 -
タイトルは「ヨーロッパ文明の正体」だが、むしろメインは副題の「何が資本主義を駆動させたか」にあるような気がする。空間的棲み分けと時間的棲み分けというモデルを用意したうえで、適度な距離で市場が散在するヨーロッパの自然環境が資本主義=貨幣交換ネットワークの前提にあったとする。
さらに「自給自足しきれず貧しかったから外に出て行く」という観点から、ヨーロッパにおける資本主義の成長を見いだしている。そのうえで資本主義が全面化するポイントには、ヨーロッパでは農村内に分業(棲み分け)が成立することを挙げ、分業しているからそれぞれの人間には不足が生じ、貨幣交換が発達するという。ただ、なぜ農村内分業がヨーロッパに生じるのかは、「13世紀イングランドから端緒がみられた」「自生的にそうなった」ということになっているが、「自生的にそうなる理由」というのが何なのか、気になった。
しかしそれにしても壮大な歴史像を提示していて面白かった。資本主義の駆動といえば、マルクスかウェーバーかというところが、向こうを張って資本主義発達の歴史を描こうとするのはすごいと思う。
ちなみに付論で「なぜ日本は資本主義化に成功したのか」もある。ただ、これはヨーロッパの説明と矛盾するところがあって(「ヨーロッパの自然環境とは明らかに異なる」と作者もいう、p.258)、「棲み分けの日本的特徴」とするなど説明に苦慮している印象。近世の資本主義的経済の様相に関する分厚い研究を、まとめ上げる作業が必要なのだと思う。それだけの力量を持った人が、果たして居るかどうかは、わからないけれど。 -
現代版「文明の生態史観」といったら語弊があろうか。西欧文明の特殊性の究極の原因を平野部の広さによる人口の分散(本書では「棲み分け」)に求めている。口では環境決定論的思考を否定しているが、実際は限りなく環境決定論に近い。
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なぜヨーロッパが世界の覇権を握ったのか、資本主義の発展の経緯が「棲み分け」によって説明されている。また世界史を学び直したくなった。教科書読み直したらまた読もう。
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生物の今西錦司の「棲み分け」理論を用いて、時間と空間、気候と疫病、権力と戦争、植民地、科学技術の観点から棲み分けを考えた上で、最終章の6章で、資本主義=ヨーロッパ文明に生まれた理由を解説している。補章では日本文化についても言及している。
本書の感想としては、多くの社会や歴史の分析の本を引用しつつ、棲み分け理論を展開しているが、本当にその通りかといわれると、私は一つの論のレベルかなと思った。本文中の引用にも出てくるジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」のような分析もあるので、その意味でのインパクトはない。棲み分け理論に納得するか、納得しないかは読者によるのではないだろうか。
最後に理系の資本主義と総括している面があるが、文系・理系の二項対立で考えるのもどうかなと思った。もう少し高度な考え方の方がよいような気がする。
でも、もう1度読んでみてもよい本ではないかと思った。引用される多くの大著について、筆者はこのように読んでいるのかと考えながら読めるので、その意味では通史を読んでいるようで楽しかった。