イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き
- 大和書房 (2019年8月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479797036
作品紹介・あらすじ
「未来を生み出す方程式がここにある。夢×技術×デザインを実現するための知恵がこの一冊に」
ーー安宅和人氏、絶賛!
(慶應義塾大学環境情報学部教授、ヤフーCSO、『イシューからはじめよ』著者)
「メルカリのイノベーションを生み出す思考の源泉がここにある」
ーー小泉文明氏、推薦!
(メルカリ取締役社長)
IoT、MaaS、OMOなど、新しいビジネスの潮流が次々と誕生している第4次産業革命の世界。破壊的イノベーションの時代を、私達はどう生き抜くか。
そのカギは、「ビジネス(B)」「テクノロジー(T)」「クリエイティビティ(C)」を統合するスキルセット=BTCスキルにある!
次世代型のビジネスパーソンやエンジニアに必要とされる思考法を、世界的に活躍するデザインエンジニアの著者が徹底解説。イノベーションを生み出す人材像をクリアに描いた、これからのリーダーのための最新スキルの教科書。
感想・レビュー・書評
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デザイン思考ができる人材に興味があって(になりたくて)、手に取った本。
「これからはビジネスとクリエイティブ(≒デザイン)とテクノロジーの
3領域が分かっている人材が必要」という
著者の主張は、シンプルで、とても分かりやすいです。
(実際、育てるのはとても大変だろうと思うけれど。)
この本の立て付けは、入門書の立ち位置になっていて、
(著者も言う通り)もっと学びたい人は他の書籍やスクールに行ったり、
実践で鍛える必要性があります。
もうすこしその点のガイダンスが巻末などにまとまっていれば、
よりネクストプランが明確でよかったかと思います。
それにしても、著者がデザイナーだけあって、
この本自体がよくデザインされていると思われる。
(自分は素人だから、本当のところはよく分からないけれど。)
読みやすい文章だけでなく、文字の大きさや行間、表紙や挿絵に至るまで、
デザイン初心者が挫折しないようなデザインになっている(ような気がする)。
一点、素人には「??」だったのが、たった200ページほどの本なのに、
なぜかハードカバーになっている点。
(安っぽい本にしたくなかったのかな!?)
(合っているかどうかは別にして)こんな感じで、
本の中身だけでなく、読書体験全体を考えてみると、
よりデザインの面白さが際立つ一冊になりそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
BTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティビティ)の3要素を兼ね備えることで、イノベーションを生み出す人間になるというコンセプトの本。
特に、クリエイティビティ、つまりデザインに関するスキルがこれからは重要になっていくということで、ビジネス人や技術者がどうデザインスキルを身につけていいかということについて書いてあった。
前から思ってたことではあるけど、やっぱりこれからはデザイン的なセンスが求められてくるのだろうなと思う。自分もスキルないと言っているけど、この本に書いてある、「「n=1」のデザインリサーチ」やふせんトレーニングでデザインのジャッジをして鍛えていったほうがいいのかもしれないと思った。
他に、「デザインフィクション」というものが紹介されてあって、これは「目の前にない課題」を疑似的にフィクションの中で発声させ、それを解くためのプロダクトさサービスを実際に検討してみることで新しい発想に至る手法だそう。ようは、想像力を高める訓練なのだろうなと思ったけど、その例示としてでてきた熊本県知事の話が面白かった。隈本知事はくまモンの生みの親でもあるそうなのだけど、著者と話した時に、「県民からいただいている税金を僕はゼロにしたいんです。くまモンが稼ぐことで、それが実現している未来を作りたいんです」と言ったそうなのだけど、そういう考えでくまモンのPRをやってるのかと驚いた。今は海外でも人気らしいけど、本当、くまモンのPR戦略はすごいと思う。 -
著者が東京大学出身でRCA卒業という優秀な経歴を持つ方がどんな考えを持ってデザイン分野の仕事をしているのかが気になって購入した。
主な内容はビジネス・テクノロジー・クリエイティブ(=BTC)の結びつきからイノベーションを生み出していくためのスキルについて書かれていた。
全体的にそれぞれの結びつきの部分に対してフォーカスが当たっている印象で、どの領域に軸があると言うわけではないので、これを読んで実践するのか知識という点では効用が薄いように思えるが、著者含めTakramの企業文化として大事にしていることとして読むには面白いかなと思う。
複数の領域を横断して新たな価値を生み出したい人やTakramのようなイノベーティブな企業文化を構築したい人にとって参考になる本だと思った。 -
私自身はプロダクトデザイナーですが、
近年、感覚的には感じていたが、言語化できていなかった事柄について、非常に理解し易い端的な言葉や章立てで説明されていて、これからの活動の参考に出来る一冊だった。 -
2章 イノベーションを加速する人材像
・「たす人」「みがく人」「ひく人」という説明が分かりやすく、普段から意識をして観点の不足を意識したい。
・“越境人材を育てるシンプルなルール”の中で不得意領域の学習と得意領域の指導を半々に仕事として与えるナレッジチェーンが紹介されており、プロジェクトを通じた人材育成の考え方のヒントになる。 -
イノベーションのお勉強。
BTC=ビジネス×テクノロジー×クリエイティビティ
4Pから5Pの時代へ
BTC型人材の頭の中でも、このような越境的新結合が起こりやすい状態が生まれます。これは、方法論としてのデザインの中に、ビジネスやエンジニアリングと全く異なるアプローチが豊富に含まれるからです。そして、そのデザインのアプローチの大半は「ユーザー視点」と「美意識」に立脚しています。B型やT型のロジカル思考と、それに相反するようなC型のユーザー視点や美意識のあいだを振り子のように行ったり来たりすることで、異種交配、つまり価値創造の打率が自然と高まります。
「エッジエフェクト」
海にも陸にもフィットしないといけない両生類は体の部品も多く、エネルギーも使うし、さぞかし不快な思いをしながら生きていたはずです。しかし、生物の進化の歴史を紐解くと、様々なバリエーションの種が多数発生したのがこの海と陸の境界線だったそうで、これをエッジ・エフェクトといいます。
デザインといえば長年、クラシカルデザインのことを指していました。第1次産業革命によって大量生産が可能となり、世の中に安価で粗悪な商品があふれました。その反動として起きたのがイギリスを機とするアーツアンドクラフツ運動。その過程で生まれたのがデザインという領域です。
アーツアンドクラフツ運動を牽引した「デザイナー」の出自は、アーティスト、工芸職人、建築家などでした。そこでは、これらの作家とも呼べるクリエイター達が、氾濫する低品質の大量生産品のデザイン改善に取り組みました。この運動を起点に、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、カーデザイン、グラフィックデザインなど多様なデザイン分野が生み出されました。
これらクラシカルデザインの各領域が共通して重んじるのは、デザイナーの作家性、完成品の「作品」とも呼べる審美性です。つまり、重きがおかれるのはデザイナーが提示するオリジナルで完成度の高い世界観であり、作品には個人名が紐づいています。こうした個人の力に強く依存するクラシカルデザインの成り立ちを、ここでは「I派(私派)」と呼ぶことにします。
それがコンピュータの時代に入り、それまで「I」だけだったデザインの主語に「We」が加わりました。作り手の個性よりもユーザー視点や客観性を重視して、「We派(組織派)」として、よりよいデザインをしようという潮流のことです。
かくしてヨーロッパ主導の「I派」と、アメリカ西海岸主導の「We派」が併存する状況が生まれました。
俯瞰してみれば、「I派」と「We派」は、それぞれ、物理世界のデザイン(建築、プロダクトデザイン、グラフィックデザインなど)と、デジタル世界のデザイン(UIデザイン、UXデザイン)に対応するために生まれたものです。
先ほどの議論になぞらえるなら、「I派」のクラシカルデザインと、「We派」のデザインエンジニアリングとビジネスデザイン、ということになります。これは「ブランドやスタイルをつくるデザイン」と「課題解決のためのデザイン」の分類と符合します。この整理を頭に入れておくことで、一言でデザイナーといっても2種類の人種が存在しているということが理解できるようになります。つまり、デザイナーと接する際には、その人間が、どちらの側のデザイナーなのかを見極め、コミュニケーション作法を作り替える必要があるということになります。
デザイン界の中でも、このふたつの流派は、あまり混じり合うことがありません。そればかりか、互いの欠点に指を指すような論争もさかんに行われています。 -
BTCという言葉を知らなかったが、言われてみれば世の中の企業はCの部分に力を入れ始めている。こういった背景があるという新しい気付きになった。
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2020/11/20 読了
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Business、Technology、Creativityの分野を越境する一歩が分かる。個人でフルスタックを目指すことよりも、エッジエフェクトを生み出すチームメイキングが肝心だと考えており、まずはそのためのリテラシー獲得を目指したい。
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90分ほどで読めた。
デザインといっても、独特の感性を持った一握りの人が生み出すものではなく(そういう領域もあるが)、ユーザーをよく観察し、困りごとに寄り添い、技術とビジネス上の要求を満たすような試行錯誤を「粘り強く」繰り返すプロセスであるという点には共感できた。
人材育成についても、どこかに放り込んで武者修行的な経験を強いるのではなく、本人の得意分野と不得意分野が半々になるようなテーマを選び、不得意分野にはサポートできるメンバーを揃え、成長段階を考慮しつつ、壁に当たったら適切な言葉をかけるといったように、人を大切にする姿勢が感じられた。
この手の本にありがちな「これから××をしない人間はダメだ」感がないだけでだいぶ楽になる。