上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!

制作 : 田房 永子 
  • 大和書房
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本棚登録 : 1532
感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479393320

作品紹介・あらすじ

日本の何が問題なのか?

母娘問題、セクハラ、結婚・恋愛・子育て、団塊世代と大学闘争、性暴力などについて徹底的に語り合った7時間!

・日本の女が大変なワケ

・世代でくくると見えてくるもの

・結婚、恋愛、ナメんなよ!

・子どもを産むのは親のエゴイズム

・オヤジは再生産される!?

・性暴力は女性ではなく男性の問題

・私たちは山ほど洗脳されている!



<著者について>

上野千鶴子(うえの・ちづこ)

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクショネットワーク(WAN)理事長。

専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間、教育と研究に従事。

著書に『家父長制と資本制』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(朝日文庫)、『ケアの社会学』(太田出版)など多数。



田房永子(たぶさ・えいこ)

1978年東京都生まれ。漫画家、ライター。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ

『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)がベストセラーに。主な著書に『ママだって、人間』(河出書房新社)、

『キレる私をやめたい?夫をグーで殴る妻をやめるまで?』(竹書房)、『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』(大和書房)など。

感想・レビュー・書評

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  • 会社で女性活躍推進の研修ビデオみたいなものを見せられたことがあった。
    講師の女性が、産休後に社会で活躍するためには、育休中に各自で仕事に役立つような勉強をしておくことが大切だ、と話していた。
    その時に、女が社会で活躍するには、男より余分な努力をしないといけないのか、と思った気持ちが、この本を読んだら新鮮な憤りとなって蘇ってきた。
    人間を産むという大仕事をしてるのに、なんで男社会のペースに女が全面的に合わせないといけない?

    本書で言われている通り、今の「男女平等」は、「女を男並みに働かせて使い倒すためのもの」であると思う。
    「弱者が弱者のままで尊重される」社会には、どうやったらなるのだろう。
    会社にちらほらいるムカつく男までを調教してやる体力まではない私ですが、しっかり分かり合いたい夫とは、「一人一殺」の心で、諦めずに違和感について対話バトルしていきたい。 

  • フェミニストで東大入学式祝辞でも話題になった上野千鶴子さんと、「母がしんどい」の田房永子さんの対談。
    田房さんが質問し、上野先生が答えるという形式をとっている。この田房さんの質問がまた絶妙。
    上野先生の答えも明解。

    母親がどんな時代背景の中を生きたかということが、娘の人生にも大きく影響を与える。分かっているつもりでも、文字になり、文章となり、きちんと説明を受けるとぼんやりしていた物が、ハッキリとした枠をもって浮かび上がる。

    正面から見えるものだけでなく、その裏側を知ることや、そこに至るまでの経緯を知ることの大切さを改めて感じた。

    2020.12.26

  • 田房永子さんが、上野千鶴子さんに質問していくかたちでフェミニズムについて学べる一冊。良書だった。
    私自身、フェミニズムって日本で広まったのは伊藤詩織さんの事件や#MeToo運動などからで、海外に触発された思想だと思っていたのが無知すぎて恥ずかしい。
    上野先生が青春を過ごしたいわゆる全共闘時代から、学生運動に参加していた女性たちも性差別を受けていたし、それに対してずっと毅然と闘ってきていたんだ。
    女は男によって選ばれるものであり、当時の日本では女性が大学に進学すること、ましてや未婚であることは規格外だった。
    田房永子さんは毒母に苦しめられてきた経験を著作にしているけれど、上野先生とほぼ同世代のお母さんも性差別の真っ只中を生きてきたんだ。
    「母になったらすべての母は抑圧的になるのよ。抑圧者であると同時に犠牲者でもあるのよ」という上野先生の言葉にハッとした。

    1960年代後半から70年代初頭にはウーマンリブという、新しい女性解放運動の波が広がった。
    「個人的なことは政治的なこと」として、ある女性が受けた個人的な差別や価値観の押し付けは、すなわちそのまま政治的な問題であるということだ。
    中絶に関してもそう。日本は中絶天国と呼ばれるほど中絶を簡単にできる国だったそうだが、それだけ望まない妊娠も多かった。コンドームでの避妊が主流で、女性主体の避妊法はまだまだ全然すすんでいない。女性用避妊具もピルも婦人科を受診しないと手に入らない。

    私はこれまで自分が受けてきた性被害を、性被害として認識していなかったんだと気づいた。上野先生を始めとするフェミニストがやってきたのは、「あれはセクハラだ」とか「あれはDVだ」って名付けをしてくれることだった。
    私は多分それを分からないままで、受け入れなければならないものとして、ただ生きてきた。
    しかも男性に性被害を理解してもらおうとするとき「もし自分の彼女、妻だったら」という例え方をするのも甚だ間違いだと気づいた。その例えで男が感じるのは、女はあくまでも男の付属品としたうえで「自分の付属品を傷つけられる」ということだけだ。女性そのものの痛みではない。

    フェミニズムって、なんだか仰々しい響きで、賢くて意識の高い女性たちだけがやっているものだと思っていた。
    でもそうじゃなかった。個人的なことは政治的なことで、フェミニズムは常に「わたし」から出発しているんだ。
    女が女であることを愛し、受け入れる思想のことをフェミニズムと呼ぶ。女は弱い。弱いことも自分自身で受け入れる。
    その弱さを隠したり否定したり(ウィークネスフォビア/弱さ嫌悪)すると、ホモソーシャルの社会に同一化して同性でも敵対することとなってしまう。
    ミソジニーという言葉があるが、その言葉の本当の意味は男にとっては"女性蔑視"。でも、女にとっては"自己嫌悪"。

    「自分の中にあるミソジニーと闘い続けてきた人をフェミニストと呼ぶのよ」
    「フェミニズムは女にとって、自分と和解するための闘いだもの。」
    と、凛として話す上野千鶴子さんがとても素敵だ。

    時代を先に生きて切り拓いてきた女性がいてくれたから、私たちは今こうして曲がりなりにも男女は平等であるとして生きていくことができる。
    そのことを決して忘れずに、次にできることはなんなのかを考えていきたい。そしてできるならそれを積極的に吐き出してみたい。
    フェミニズム、という大きな思想を前に、決して恐れない女性でありたい。

  • 上野千鶴子氏に聞いた「美しい人に『美人』と言ってはいけない理由」|NEWSポストセブン
    https://www.news-postseven.com/archives/20211225_1715622.html?DETAIL

    「後ろを向いたら誰もついてきてなかった。若い世代の変化が心強い」上野千鶴子×田房永子、フェミニズムの現在地を語る | ハフポスト
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e5f3c46c5b63aaf8f5f1999

    上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください! - 株式会社 大和書房 生活実用書を中心に発行。新刊案内、書籍目録、連載エッセイ、読者の広場。
    https://www.daiwashobo.co.jp/book/b482126.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ゆづか姫が上野千鶴子氏の〝ルッキズム論〟に異議「美しくなろうとする者の努力を否定することになる」 | 東スポのニュースに関するニュースを掲載...
      ゆづか姫が上野千鶴子氏の〝ルッキズム論〟に異議「美しくなろうとする者の努力を否定することになる」 | 東スポのニュースに関するニュースを掲載
      https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3888962/
      2021/12/26
  • 子育てをする上で、フェミニズムについて知っておきたいと思って読んだ。

    『フェミニズムは決して女も男のように振る舞いたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想です。』

    なるほどと思った。性別に限らず、マイノリティ側にしか見えない世界があるんだろうなぁ。






  • (2024/03/07 2h)


    田房さんの漫画『母がしんどい』は以前Kindle Unlimitedで既読。

    ゼロから〜と冠しているものの、田房さんは真っ更な状態じゃなくってフェミ系雑誌の責を負ってたりしてかなり身内寄りな気がした。

    純粋に上野千鶴子から教えを賜るって言うよりも、田房さんの毒親談も絡めた対談で、読む前に思っていたよりも対等な形式。


    ちょっと強めの意見や「それは過激すぎでは…わたしの考え方とは違うな〜」って反発を感じつつも、新鮮な気持ちで読めた。

    強い言葉には心がささくれるというか、泣きそうになったりもした。強い女性2人の意見にトゲを見出してしまった。



    わたしはフェミニズムをなんとなく嫌悪していて、
    自分のことをミソジニー寄りの人間だと思っていた。

    最後の上野さんの言葉には救われたかも。
    女である自分を受け容れるためのフェミニズムという考え方はいいな!

  • 上野千鶴子さんは団塊の世代で、田房永子さんは団塊ジュニア。
    だから幅広くいろいろな世代の人たちについて書かれています。
    私、自分のことは「え、私そんなつもりないのに」と思っても、自分と関係のないところでは「そうなの!?」と信じて面白がって読んでしまいますね。

    田房永子さんの本はすでに3冊読んでいるのですが、彼女自身はもっとたくさん出していると、初めて知りました。
    それらを読んだら、この本ももっと楽しめたかも。

    上野千鶴子さんの本は2冊読んでいて、一冊は鼎談。
    そのとき対談鼎談にするより一人のものが良いと書いていますが、今回もそう思いました。
    雑談にするとわかりにくくなってしまう気がします、私は。

  • 東大の入学式の式辞で物議を醸した上野千鶴子先生と、『母がしんどい』で有名な田房永子氏の対談。

    始めの何章かは結構しんどい。
    毒親の話は、なかなか体力がいる。
    私の母は毒親ではなく、むしろ尊敬している(とは言えやはり人間なので大きな欠点もあるが、それも含めて好きだ)けれど、それでも鈍い痛みが襲ってくる。
    それは私の母が、ではなく、私自信が、毒親ではないか、と言う恐怖から来るものだ。

    そこを何とか元気な時に読んだら、フェミニズムへ。
    「オヤジは再生産される」(126頁)は良くわかる。
    職場で歳の近い男性社員と話すと、「嫁」と言う単語が何度も出てくる。
    ねえ、「妻」じゃダメ?
    朝早くから出てきて、夕方は19時過ぎまで頑張る皆さん、ねえ、お子さん、小さいんじゃなかった?
    専業主婦かも知れない、育休中かも知れない、でも、早く、帰ってあげてよ。
    飲み会、社内のつながりも大事かも知れないけれど、毎週やらなくちゃいけない?
    そしてそれに乗っかれない私の評価は低い。
    私の能力の問題もある、お喋りばっかりに見えるのかも知れない、でも、それは、男性の視点からしか見ていないんじゃない?
    「見えるように仕事しろ」は一方では正しいかも知れない、だけど私の生きてきた女の世界はちょっと違う。
    見えないところを一生懸命やってきたの、ずっと。
    あなたたちが当たり前だと思っている、整った環境作りを、ずっと。

    感想よりも愚痴ばかりになってしまった。
    でも、これが全部じゃない。
    自分に期待して、自分に裏切られ、自己嫌悪と自尊心の間で揺れながら、家事も育児も仕事もプライベートをも闘いまくって、こなしていく。
    言いたいことはたくさんある、そのほとんどは腹の中。

    「自分の中にあるミソジニーと闘い続けてきた人をフェミニストと呼ぶ」(183頁)
    そう、満身創痍でも、自分と戦い続ける。
    モヤモヤを溜めるな!吐き出せ!

    上野先生の授業を受けたい。
    そして議論してみたい。すべてが正しいとは限らないけれど、あなたの元気玉に触れてみたい。

  • タイトルどおりの一冊。戦後から現代までの女性のあり方の変化やウーマン・リブや大学闘争のことから夫との関係までもやもやとしていたあれこれがクリアになった。
    本筋ではないが第2章のエレベーターの件、わかるなあと思った。誰かが必死の思いで戦って勝ち得たものをひょいと横取りしてさも当然という顔をしている人がいる。お前も戦え、と言ってやりたい。

    夫婦関係の件もそうなんだよね、言葉を尽くして伝えていかなければいけないんだよね、と思いつつ、でも、特に産後、先生の言葉を借りるなら「生もの」が目の前にいて、24時間体制で生きるか死ぬかの思いで世話をしてる最中に夫に対して全力でぶち当たる体力気力のある女性はかなり少数派なのではないか…と最近では思う。
    しかし男は自発的に変わらないよと本書でなんども念押しされると、あ〜また戦わなきゃなあと思った(まだ思っただけ)。
    第5章は読んでいて『傷を愛せるか』(宮地尚子 / 大月書店)を連想した。「弱さを抱えたままの強さ」をぜひ併せて読んで欲しい。それから『かわいい夫』(山崎ナオコーラ / 夏葉社)も。

    以下覚え書き。

    第2章
    ・The personal is political=個人的なことは政治的なこと(60〜70年代のウーマン・リブの標語)
    それまでの「よりよい主婦」、「よりよい母」(=「男性や社会にとってのよりよい女」)を目指した運動とは異なり、「一人の人間」を主張した。
    ・ほとんどの駅にエレベーターがついているのは障害者の方が運動した結果。それなのに健康な人たちがわが者顔でエレベーターを占領している。かつてそういう人たちを罵倒したかもしれない人が、恩恵を被っている。

    第3章
    ・一人一殺=夫を変化させる
    夫に訴える=男社会に訴える
    ・女の人生の選択肢は増えたが、それに対応するように男の育て方は変えられていない。男には既得権益があり、男ボーナスがあるので男は自発的には変わらない。
    ・夫に反論したり意見するのをあきらめるのは関係をあきらめること。
    ・手を抜かない交渉を続けないと夫婦関係は変わらない。

    第4章
    ・強者というのは弱者に対する想像力を持たずにすむ特権を持っている人たちのこと。
    ・男にとって妻は他人、娘は分身→娘が性被害にあったら…という想像の仕方⇄なぜ単純に自分の身に置き換えない?
    ・おっさんにとって、「女はどこかの男に属している付属品」→セクハラ研修:「取引先の娘さん、上司の娘さんかもしれませんよ」=男性間の権力関係に配慮しただけで、相手の女性を尊重したことにならない。

    第5章
    ・男にとってフェミニスト=男みたいになりたい女、男社会を乗っ取りたい女=男の敵、男が支配していると自覚してるよね⁈
    ・フェミニストとは男になりたい女ではなく、ありのままの自分でいたいだけ
    ・男と一緒に戦争に行くのが男女平等ではない。
    (男も男社会が辛いならフェミニストと一緒に戦っていいのに)
    ・フェミニズムは女が女であることを愛し、受け入れる思想
    ・右翼女性は弱さ嫌悪=ウィークネスフォビア、女が弱者だということを嫌悪して、ホモソの社会に同一化した女の人たち。男に過剰同一化して男から承認を得ることを期待する。

  • わー、めちゃくちゃ面白かった!最高の入門書!
    生きてることが当事者運動、みたいな私にとってはとても勉強になりました。笑 自分自身をフェミと思ってないけど、居心地よく感じるのは「フェミとは多様性。一人一派かそれ以上ある」世界だからだと気づいた。
    20代半ばくらいでこの本に出会えていたら(出版されてないけど笑)、あんなに怒ったり悩んだりしなくて済んだだろうなと思った。
    かの有名な上野千鶴子さんの東大祝辞、「フェミニズムは弱者が強者になりたいという思想ではありません。弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」これは当事者運動全てが主語にあてはまるものだなあと思った。
    またフェミニズムの標語「個人的なことは政治的なこと」もしっくり。人間同士の分断は、もとを正せば政治に原因がある、ほんとその通り!仕事も同じ。忙しい人同士で仕事押し付けあってカリカリしてるけど、そもそもそんな体制で仕事させてる組織の責任は?っていう。
    ・前回読んだ本に引き続き、性的な部分にはまるで興味がないんだけど、フェミの歴史を語る上では切っても切れない部分なんだということは理解した。
    ・活動の歴史を知ることはとても大事。フェミニズムにも歴史があるように男性の既得権益にも歴史があることも、マイノリティがかつて世間に叩かれながらも手にした権利を、叩く側のマジョリティーが我が物顔で使っていることも知らないでフェミの活動するとどうしてもうまくいかないことが出てきちゃうと思う。
    ・私、苦手な男性のタイプ「A面で権力ある・苦労してない」人だ…!笑 私はB面にいるのでA面だけを知って偉そうにしてる人には一言言いたくなっちゃう。私もこれからもドリルで穴開けてやるぜ!

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上野千鶴子の作品

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