同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。

著者 :
  • 大和書房
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本棚登録 : 91
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479392675

作品紹介・あらすじ

マジョリティーは本当に安全か?不思議な生物の宿命。自由に生きるためには自分の頭で考える。ちょっとぐらい「変」なほうが生きやすい!

感想・レビュー・書評

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  • 「日本で最もラディカル(根源的)なリバタリアン」と自認する池田先生が、様々な話題について語り、同調圧力なんかに屈するなと呼びかける本。社会政治思想としてのリバタリアニズムについて私はどうも賛同しかねるが(「強者の論理」と思えてならない)、この本はそれについて述べることを主眼としたものではないので、それは措く。書かれていることに全面的に賛成というわけでなくても、世の中で幅をきかす大きな声に惑わされず、違う角度から物事を見ることの大切さをあらためて教えられる。

    本書の最初の方で、リバタリアニズムの原理についてこう書かれている。

    「単純に言えば、人は誰であれ、アホなことをする権利、他人を愛する権利、他人をバカにする権利などを持つが、他人に愛される権利とか、他人に褒めてもらう権利とか、他人に理解してもらう権利などはないのだ」「逆に、あなたがどんなに不快であっても、理解不能であっても、他人の恣意性の権利を阻止する理由はないのだ」「誰であれ、他人の生き方を統制する権利などはないのだ。こういうリバタリアニズムの基本原則が分からないと、民主主義は簡単にマジョリティがマイノリティを抑圧する制度に転落してしまう」

    これについては異議なしだ。この後で、タバコバッシングについて触れられているが、私もあれは実にイヤな感じだと思う。そりゃあ傍若無人に煙草を吸うヤツは嫌いだが、いくら少数派だからといって今の仕打ちはあんまりだろう。池田先生が言う「このままいけば酒も飲めなくなる」というのがあながち大袈裟でもないような気さえする。「正しいこと」を言っていると思うとき、そしてそれが多勢であるとき、人は簡単に居丈高になるんだなあとそら恐ろしい。

    「小谷野敦氏の秀逸な表現を借りれば、インターネット時代の最大の特徴は、『バカが意見を言うようになった』ことである。もちろんバカにも意見を言う自由はある。同じように私にもバカを軽蔑する自由がある」

    今やネット上にとどまらず、政治家の発言やヘイトスピーチデモなど日常の空間でも、無知に基づいた憎悪を露骨にむき出した物言いが頻繁にされている。「良心的」な人というのは、そういうヤカラと同じ土俵に立って罵倒の語を返したりしないものだが、こうしてあえて不謹慎な言い方がされていると、ある種の爽快感を感じてしまう。
    (私は大阪府民なので、テレビニュースでしばしば橋下市長や松井知事の下品な妄言を聞かされていて、これは実にストレスフルだ。松井は橋下ほどあれこれ言われないが、本当にバカで品性下劣な発言が多い)

    「人間は同調圧力に従って生きながら、人と違うことをやりたいという特性も併せ持っている。この相反する特徴が交じり合って、文化は徐々に変容していくのだ」

    これも同感だ。一面的には語れないのが人間のありようで、個人も社会も、相反する面がせめぎ合いつつ次の局面に向かってゆくのだろう。

  • 池田清彦さんらしいというかw
    昆虫や、チンパンジーの話が出て来て、
    あれ?
    同調圧力の話は?
    人間の話は?
    などと思いながら、読み進めた。
    脱線しつつも、学びを得られるのが、
    池田先生の本の面白さなのかなw

  • 全体が同調圧力になんらかの形で関係している文章だが。もっともきになる日本社会のそれは全体として分量は多くない。それを期待したのだけど。

  •  「同調圧力」というのは、おそらく生物学用語なのだろう。そのあたりはよくわからない。まあ、そのカギ言葉で、「社会を見れば」というのが基本コンセプト。
     別に生物学のお話ではない。ぼくは「ヘンテコ動物」の話を期待して読みはじめたのだが、「ヘンテコおやじ」の社会批評というわけで、少々がっかり。
     もっとも、「まえがき」の最後に「とりあえず、戦後最悪の安倍政権を倒すことだ。若い人の健闘を祈る。」何いう啖呵を切って始めているわけで、大笑いしながら読み終えたのだけれど、2015年に書かれた時から、もう4年も「安倍」という人頑張っていらっしゃって、「もう一回やろうかな。」とかいってらっしゃるらしくて、「ヘンテコおやじ」の啖呵も空回りしっぱなしなのは、ちょっと笑っていられないかもしれない。
     何故だかよくわからいけど、生物学系の、特に昆虫系と猿系の学者さんはおしゃべりが上手い。自然科学研究の話はともかく、経済学や社会学の話題だと思い込んでいる現象に平気で嘴を突っ込む。共通点は人間の現象を生き物の現象へ次元変換するところ。審級をかえて見せる面白さ。
     あんまりやりすぎると、金太郎飴になっちゃう退屈さも、共通している。本書もそれを避けることができなかったようだ。残念!

  • 学者は論文を書くのが大切な仕事だが、最近では論文に名前を連ねることも重要な仕事になっているようだ。
    業績を評価するということは、つまりその研究の重要性を研究の当事者以外の他人が判断するということだ。

  • 良書

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著者プロフィール

池田 清彦(いけだ・きよひこ):1947年東京生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。早稲田大学、山梨大学名誉教授。専門の生物学分野のみならず、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野で60冊以上の著書を持ち(『構造主義科学論の冒険』 講談社学術文庫ほか)、フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」等、各メディアでも活躍。

「2024年 『老後は上機嫌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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