遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」

著者 :
  • ダイヤモンド社
3.57
  • (19)
  • (24)
  • (17)
  • (11)
  • (4)
本棚登録 : 845
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478115411

作品紹介・あらすじ

この書籍は、
「自分の考えって浅いなぁ...」
「考えているはずなのに考えている気がしない」
「自分のあたまでしっかり考えた感覚がほしい」という、
深く考えられない悩みがある人のためのものです。
そんな人でも、遅考する(ゆっくり考える)方法を身につけることで、論理的思考力だけでなく発想力も高められます。

<「遅考」の5大メリット>
・ 思考の間違いが起こりやすい場面を理解できる
・ 思考に誤りがある可能性に、恐れず向き合える
・ よりよいアイデアや仮説を粘り強く考え続けられる
・ さまざまな思考ツールが使いこなせる
・ 想像力と創造性を発揮して、いろいろな可能性を吟味できる

<「遅考術」とはどんなもの?>
1.マイナスをゼロに→思考にエラーが発生しやすい状況や場面を知り、注意できるようになる
2.ゼロからプラスへ→思考をうまく先へと進め、適切なアイデアや妥当な仮説を導き出すためのコツや方法
認知の「バイアス」が、1の主なターゲットです。2は「思考ツール」とも言えます。本書では一般的な思考ツールに加えて、科学で用いられる基本的な手立ても、日常的な場面でも使える効果的な思考の道具として紹介します。応用的な話題として、非科学・反科学・陰謀論といった現代的なテーマも扱います。詭弁とジレンマを扱ったレッスン4と7を挟み、飽きずにじっくり頭を働かせられます。

<本書の特徴>
その1【豊富な「問い」】
実際に問題に取り組むと、思考にエラーが発生しやすい場面を実感を伴って理解できます。
その2【対話形式】
問題がすぐに解けずとも、対話がヒントになり、限界の少し先まで自力で思考できます。この対話は、実際の遅考プロセスを再構成したもので、その過程や誤答も参考すればさらに思考力が高まります。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「頭の回転が早い」「仕事が早い」というと一見有能な感じもするが、これらの早さには思考のショートカットが伴う。それは、経験に基づくヒューリスティックな判断によるものだったり、単に好き嫌いや決めつけ、場合によっては、理屈で説明できない直観による。

    速読と遅読を考えると分かりやすいだろうか。速読は、脳内で音声変換しない事によるものと、私が多用するのは、著者の論理や解説が想定できる場合(例えば、リンダ問題を説明しているパラグラフ、何度も他の本で読んだ)、それを目線で追うだけで、次の文章と意味的に繋がる箇所までショートカットする。遅読は、ページを戻る事も厭わないし、ネットで検索したりと本以外の媒体も使うという読み方。

    本書は、ここでいう「早さ」の危うさについて警鐘を鳴らし、陥りがちな思考エラーを予防するためのテクニックを披露する。解説が分かりやすいし、なぞなぞのような設問が楽しい。この設問を解き、考えることにより、思考エラーやバイアスに気付いていく仕掛けだ。

    ネタバレになるので、設問については記さないが、解説から引くなら、例えば「ゼウスが好色であることが原因で、人間との間に子供をたくさん作ったということではなく、権威付けの目的として自らの祖先が最高神ゼウスであると言いたい人間がたくさんいた。そのため、ゼウスが人間との間に子供をたくさんもうけたと言う神話が数多く創作され、ゆえにゼウスは好色だという性格が設定された」みたいな話が盛りだくさん。教養も深まる。

    そして、最後の設問は良かった。私なりに答えを考えたが、正解はどうなのだろう。

  • 人の思考には2つのプロセスがある。1つは、狩猟時代から培ってきた直感的なプロセス、もう1つは最近になって取得した熟慮的なプロセスだ。この本では、2つ目の熟慮的なプロセスに焦点を当て、それを遅考術として、具体的な方法が紹介されている。

    直感的な思考は大変便利なのだが、エラーも多い。そこで遅考術が必要なのだ。

    因果関係と相関関係、ジレンマとその対処方法、疑似科学や陰謀論までわかりやすく解説されている。

    普段の生活の中にも取り入れていきたい考え方であった。

  • 要は、クリティカル・シンキングについての本。ジレンマからの脱出(誘導尋問からのエスケープ)、あるいは相手をジレンマの罠に嵌めるいやらしい質問についての件が、クリシン本のなかでは、やや目新しいかもしれない

  • 「深くじっくり考える」ために必要なのは『考える型』。この本でトレーニングすれば、思考のクセを知りエラーを回避することと、多様な考えを生み出し思考の質を上げることができるようになるというものです。

    ・基本は①いったん否定する②条件をなん度も確認する③あれこれ仮説を粘り強く考える
    ・人間の思考には「直感/熟慮」の2つのモードがある。モードの切り替えや発動条件を把握しておく必要がある。
    ・はやとちりにはバイアスが関わっている。特に代表性バイアス(代表性ヒューリスティクス)と利用可能性バイアス(思い出しやすいものを優先する)に注意。
    ・言語の罠に注意し、意味を区別すること。特に言葉の多義性や曖昧さを悪用した「詭弁」にも注意。
    ・単なる「相関関係」を因果関係を混同しがち。2つの結果を生み出す「共通関係」が背後に存在する可能性に注意。ジンクスや確証バイアスにも注意。
    ・因果関係を正しく捉えるには対照実験が有効。また実験や調査の精度を高めるためにはサンプルも考慮する。
    ・擬似科学や陰謀論はバイアスの影響や反証回避などがある。思考術を活用することで見破ることができる。

    上記は各章のまとめですが、まずこちらでこの本の流れを掴んでから詳しく読むことで、より理解しやすくなると思います。

    わたしは自身の「はやとちり」や思考の浅さを気にしてこの本を読んだのですが、なるほど、バイアスの話が出てきてちょっと意外。でも思い返せばたしかにそうでした。。。

  • 論理的な考え方、分析の仕方の入門書の様な本。
    類似の書籍を読んだ事がなく、とても新鮮だった。

    また、遅考術、というネーミングセンスが良い。

  • 深く考えるプロセスの勉強と練習ができる本。ビジネス書とも、哲学の入門書とも言えると思う。
    考え方のコツが練習問題・詳しい解説とともに対話形式で書かれている。本題の性質上サラッとは読めず、考えながら読むのには少し時間がかかったが、それでいて飽きたり眠くなったりもせず、最後まで楽しく読むことができた。

    個人的に仕事などで使えそうだと思ったのは、序盤で出てきた「一旦否定してみる」方法。思いついた答えなどに対し、「〜ではない(のではないか?)」と否定してみることにより、他の答えの可能性を探ることができる。否定や疑いの気持ちが生じるか否かと関係なく(そもそもそれが正しいと思い込んでいると否定や疑いが思いつかない)、一度強制的に否定の文を作ってしまうのが有効だと感じた。また本書では「勘違い」を引き起こす認知の仕組みの解説もあったため、それらへの警戒と組み合わせて実践していきたい。

  • 最終章のあとに続くあとがき的な章の最後に、本当の最終問題があります。でも、最初に見ちゃダメ!
    うわー、やられたー!って感じ、著者の遊び心とこの遅考術の本質が伝わってくる秀逸な締め方なので、絶対、読み通してから最後に解きましょう。

  • 【before】この本を読む前の私は、これらのことを知りませんでした。
    ・「あえて否定してみる」とは非常に負荷のかかる認知課題である。
    ・「熟慮」は消耗しやすい。「注意力」は、限られた貴重な資源である。
    ・他の動物も持つ「直感」に対し、人間のみ可能な柔軟な思考→「熟慮」
    ・道徳的な良し悪しには、感情を含んだ「直感」が真っ先に働く。
    ・「犬を食べる」と聞くと、多くの人は危害が生じているのと同等に認知する。
    ・直感は、強制がなくても自動的に働く。熟慮は「自然に逆らって意識的に神経を集中させないとできないから、苦痛を伴う」アリストテレス
    ・繰り返し練習して熟慮の習慣化に成功したら、快になる。(努力や緊張も同じ)
    ・リスクが関わると思考にエラーが起こりやすい。9.11後の米で、飛行機をやめて車で出張する人が増加した。→死亡リスクが22倍高いが、その事実に気付きにくい。
    ・自分がした貢献の方が、利用可能性(記憶から簡単に呼び起こせる)が高い。
    ・容易に思い出せないだけなのに、他人の貢献度を低く見積もってしまう。
    ・↑のせいで(共同生活の)相手は全然やってくれない、と不満が溜まる。
    ・鳥居があったら「祟られる?」とポイ捨てしない。→直感に働きかけている。
    ・言葉の意味を、自分に都合よく意図的に変化させるのが詭弁の常套手段。
    ・「文書の黒塗りをやめる」と言って「白塗り」に変えるなど。
    ・「帝国は滅んだ方を意味していた」→必ず当たる予言、多義性を悪用した詭弁。
    ・反証主義によれば、非科学的な主張の特徴は「反証が不可能なところ」にある。
    ・科学には、原因の特定を課題とする側面があり、さらにテクノロジーは物事の制御を目指しているから因果関係の正しい理解に立脚している。
    ・因果関係の正しい把握により起こった出来事が説明でき、予測も可能になり、望む方法で現象が操れるようになる。
    ・因果関係に関して直感が特に間違えやすいパターンは「相関関係との混同」
    ・共通原因のせいで単なる相関関係が因果関係に見えてしまう。→「疑似相関」
    ・どんな因果関係を想定するかは「この世界をどう捉えているか」と直結する。
    ・古代希語の、2つ(ジ)の過程&命題(レンマ)に由来=2つの選択肢。
    ・「選択を迫られている」という前提を崩し、選択を中止する対処法もアリ。
    ・ジレンマに見せかけて、本当は別の選択肢もある→「偽りの二分法」
    ・禅は固定観念の打破を目指す。自分で作った問題状況に囚われていないか?
    ・対照実験の理解は科学的思考に必須の要素。条件は変数、パラメータとも呼ぶ。
    ・生まれ月によっては1歳くらい違う→交絡要因(変数、因子)と呼ぶ。
    ・モラルジレンマ(例、特効薬を盗んで救命)に正解を出せる見込みは低い。
    ・↑オート(直感)とマニュアル(熟慮)で出す答えが違うからジレンマに陥る。
    ・どんな母集団サイズでも、400人をサンプルとして調べれば結果は信頼に値する。
    ・ドリンクを飲む、飲まないではなく「飲むのがドリンクか、生理食塩水か」プラシーボ効果は生理食塩水を飲んだだけでも発生、時間の経過も考慮する。
    ・「効果を心から信じることも必要」←仮説が反証されないようになっている。
    ・新三種混合ワクチンと自閉症に関連がないことは明らかになっている。
    ・人は、荒唐無稽なストーリーであっても何とかその意味を理解しようとする。
    ・人に優しい陰謀論→物事の深い真実を理解した気にさせてくれる。
    ・陰謀論者への反証は難しい。縁のなかった市民の関心をも集め、拡散が進む。
    ・反証の可能性は、仮説や理論の品質保証。修正機能があることが強みである。

    【代表性バイアス】
    思い浮かびやすいものほど、その数や起こりやすさも大きく見積もってしまう。
    【連言錯誤】
    例「イランの核攻撃」が単なる核攻撃より「確率が高い」と見積もられること。
    【利用可能性バイアス】
    記憶から簡単に呼び起こせるものほど、起こる確率・件数→大と捉えてしまう。
    【反証可能性】
    仮説の誤りを示すことが、原理的には可能であること。
    【反証主義】
    反証可能性を、仮説や理論が科学的であるための条件とすること。
    【確証バイアス】
    自分が信じている事柄(信念)についてはその確証(正しさを示すケース)にばかり注目する。一方で、その誤りが示されるケース(反証)は無視する傾向にある。
    【トートロジー・同語反復】
    今のままではいけないと思います。だからこそ、今のままではいけない。
    【対照実験】
    実験群と対照群で条件を1つだけ変え、結果に差が出たらそれが原因だと分かる。

    【疑似科学・科学否定、陰謀論などの信奉者に見られる典型的な特徴】
    ・何を信じるべきなのかはあらかじめ決まっている。
    ・仮説や理論と合致しない証拠、実験、観察や調査の結果を無視する。
    ・証明の責任を、その仮説や理論の支持者にではなく懐疑派の方に負わせる。
    ・真偽の決定は、特別な能力を有するとされる権威者に依拠する。
    ・隠された真実を「自分たちだけは知っている」と思っている。
    ・専門的な訓練を受けていない/それゆえにこそ、通説や公式見解を批判する。

    【気づき】この本を読んで、これらについて気づきを得ました。
    ・思考の進み具合を言語化すれば、よりじっくりと丹念に考えられる。
    ・信念=現実ではなく、あくまで仮定。切り離して理解する能力(認知的デカップリングの技能)は様々な分野の研究者が重要と支持している見方である。
    ・知識は、他の無数の知識と結びついたネットワーク構造(連想マシン)である。
    ・「熟慮」を使いこなせるよう、慣れるまで意識的に訓練する必要がある。
    ・基礎比率を無視して、確率や可能性に直感的判断を下しがち。(宝くじ等)
    ・コイントスにはランダム事象の典型的イメージがあるが、表裏のどちらが出るかは毎回1/2(独立事象)そろそろ裏が出るだろう→「ギャンブラーの誤り」
    ・記憶から容易に呼び出せる情報が、誤りではなく真理である保証はない。
    ・自身のことや自分の経験は、利用可能性が高いのでバイアスも発生しやすい。
    ・曖昧な言葉づかいでも、文脈が十分あれば意味を間違えずに理解できる。
    ・意見や主張に説得力があるかは「前提や文化的背景の共有」に強く依存する。
    ・途方もない話でも、聞けば一応「どういうつもりだったか」は理解できる。
    ・ジンクスのある場所を訪れたカップルもまた必然的に一定の割合で別れる。
    ・ギリシア神話では、戦争や災害を「神の企みによる」と説明(前近代的)
    ・原因を「全部奴らの意図や計画通り」と考えれば済むというのは実に簡単。

    【TODO】今後、これらを実行していこうと思います。
    ・気をつけないと間違える場面、多様な可能性を考慮すべき場面では熟慮する。
    ・自分自身の思考そのものにも注意を払う。
    ・思考の誤りの発生源である、様々な認知バイアスの克服を目指す。
    ・思いついた考えをまずは一旦否定する。「〇〇ではないのではないか?」
    ・直感的に思いついた考えを一旦切り離し(デカップリング)熟慮に移る。
    ・連図は思考ツールとして頭脳に組み込んでおく。
    ・容易に手に入る、既に手元にあるものに不釣り合いな重きを置かない。
    ・人の働きを評価する時、利用可能性バイアス(思い出しやすさ)に注意する。
    ・曖昧な言葉(複数の意味を持つ、多義的)は明確にする。
    ・変な意図や動機に基づいていても「行動が起こせること」を賢く利用する。
    ・自分の反応を事前に見越し、予め自分の行動に制限を課す手を打っておく。→事前工作、事前制約と呼ばれるセルフコントロールの方法。

  • オーディオブックにて。こういった会話形式のストーリー仕立ての本はオーディオブック向きで良い。素直に面白かった。もっともらしい言説の論理のおかしさを見抜く思考法を説明している。

  • 遅く考える表現しているが、一般には深く考えるノウハウを伝える本。正解が1つに定まらない社会人の問題に対して、浅い答えに甘んずることなく少しでもmore betterを追求するために重要。理解しやすくするために対話形式を取っているが、そもそも論として思考の体力というフィジカルが不可欠であることは無視されているので、テクニックだけ身に付けても遅く考えるを実践できる人は案外少ないと思う。テクニックとかネットでよくみるレベルの心理学であったり統計であったりそんなもの。
    また遅く考えることを熟慮、反対を直感と言い直しているが、人間の直感は存外正しい。熟慮すると脳が疲れて誤った判断を下しやすいため。
    否定されることに過剰に拒否反応がある、言い換えると客観的にプライドの高い人や頑固な人、イメージ的にはおっさんは読んでおいていい。
    後書きによれば学生と一緒に作ったようなあったり、著者の専門分野であったり、本書のしつはさそう高くない。少なくとも自分にとって目新しい情報はなかった。序盤⭐️4くらいのつもりだったが、最終的に人に薦めるほどでもなく⭐️2。

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

植原 亮(うえはら りょう)
1978年埼玉県にうまれる。2008年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術、2011年)。現在、関西大学総合情報学部教授。専門は科学哲学だが、理論的な考察だけでなく、それを応用した教育実践や著述活動にも積極的に取り組んでいる。
著書に『思考力改善ドリル』(勁草書房、2020年)『自然主義入門』(勁草書房、2017年)、『実在論と知識の自然化』(勁草書房、2013年)、『生命倫理と医療倫理 第3版』(共著、金芳堂、2014年)、『道徳の神経哲学』(共著、新曜社、2012年),『脳神経科学リテラシー』(共著、勁草書房、2010年)、『脳神経倫理学の展望』(共著、勁草書房、2008年)ほか。訳書:T・クレイン『心の哲学』(勁草書房、2010年)、P・S・チャーチランド『脳がつくる倫理』(共訳、化学同人、2013年)ほか。

「2022年 『遅考術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

植原亮の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×