- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478115244
作品紹介・あらすじ
世界最大の総合電機メーカーとして栄華を誇ったゼネラル・エレクトリック。カリスマ経営者たちはどこで間違ったのか?
感想・レビュー・書評
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米国の超巨コングロマリット、GE。「1892年の創業以来、GEは単なる企業ではなく、米国そのものを代表する企業であり続けた。何十万もの従業員にとっては人生の当たりくじ、株主にとっては損をする心配のない賭けだった。幹部社員にとってはエリート養成機関であり、そのうちの一部の者にとっては巨万の富に続く道でもあった。GE以外にそんな企業はない。人々はGEに米国西部と同等の信頼をおいた」。そんな歴史ある偉大な企業GE、てっきり社会の変化に上手く適応しつつ好調を維持していると思いきや、うわべを取り繕っていただけで、実はずっと凋落への道を歩んでいたとは‼️ 「人材を適切に管理する会社でも、事業を効率的に進める会社でもなく、規制当局への提出書類や公的声明の中で投資家に嘘をつき、増大するリスクを無視し、リスクを隠蔽するために奔走した」低モラルな企業に過ぎなかったんだな。
見せかけの成長は、GEキャピタルによる巧みなマネー操作と、節操のないM&Aによる規模拡大で得た張りぼてに過ぎなかった。本書からは、実業での地に足のついた着実な成長はが全く見えてこない。
嘘で塗りかためた乱脈経営を招いたトップマネジメント、あまりにお粗末過ぎる。部下に無理筋の目標を掲げさせ、達成できなければ馘(達成できればその手段は問わない)。これって東芝の破綻でもいわれていたことだったよな。目標至上主義、そしてトップに権力が集中し過ぎたためチェック機能が働かなくなって、悪い情報を上げられなくなる隠蔽体質。
IoTビジネスモデルで一世を風靡した「プレディクス」も、実はシステム開発が難航して、絵に描いた餅になってしまっていたようだ。航空機エンジンにセンサーを取り付けてデータを集め、航空会社に効率的な航行方法を指南して燃料費を削減させ、その一部を収益として得る優れたビジネスモデル、お手本として派手に紹介されまくってたけど…。着想は素晴らしかったんだろうけど、やはりネックはシステムかあ。
諸悪の根源たるCEOジェフ・イメルト(ジャック・ウェルチの後任で16年間もGEに君臨した)は、「不都合な真実に気づかなかった楽観的リーダー」、「最後に勝つのは気合いと根性だという、フットボールとコーチのような精神論」の持ち主だったのだとか。極端な贅沢のし放題だった上、退任後も自分の責任を一切認めていないようだが、貴族的な生活が保証された幹部なのだから、せめてノブレス・オブリージュを肝に銘じてもらいたいものだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
GEのことは、仕事の一部が競合することもあって、何かとベンチマークの相手としつつも到底叶わない相手と思ってきたのに、内情はこうだった、と知って、ガッカリすることしきり。
違法ギリギリの会計手法については、JPモルガンがせっせとレポートを出していたので、新しい話ではなかった。やはり、キャッシュフローが大事という当たり前の真実に行き着く。
Oil & Gasの分野のことは、あまり良く分かってなかったので、為になった。
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長らく世界中の企業が経営のベストプラクティスとして認識していた総合家電コングロマリット企業のGE(General Electric)であるが、名経営者として名を馳せたジャック・ウェルチの後を継いだジェフ・イメルト時代から株価は低迷しはじめ、ついにはヘルスケア・航空・エネルギーの分社という結末を迎えた。
本書は主にジェフ・イメルト時代、さらにその後を継いだジョン・フラナリー時代を中心に、GEという企業がなぜ崩壊することになったのかを丹念に追うノンフィクションである。著者はウォール・ストリート・ジャーナルの記者であり、丹念に崩壊の様子を描いていく。
一言でGE崩壊の要因を語るのは極めて難しい。要素としては、偏重した株主至上主義による成長へのプレッシャーと偏執狂なまでにも見える自社株買いへの投資(成長投資を抑えてまで自社株に投資する必要性はどこまであったのか?)、違反とまではいかないものの極めてグレーゾーンな会計処理による利益操作、強すぎるトップダウンによる硬直的な組織風土、特にイメルト時代に行われた内実を伴わないマーケティング・ブランディングへの投資(この虚像が最も表れたのはGEがぶち上げたIndustiral Internetに特化したプラットフォーム”Predix”の無残な結末である)など、枚挙に暇がない。
そして本書が投げかけるのは、GEをベストプラクティスとして賞賛し、その模倣に取り組もうとした数多の企業や経営コンサルティングファームは一体何を得たのか、ということである。日本においてもGEはコングロマリット経営や、徹底したオペレーション力、経営人材の育成方針など、様々な観点でベストプラクティスとして取り上げられてきた。その問いを私自身も突き付けられた気がしている。 -
いわゆる粉飾決済
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アメリカ人ジャーナリストにより、GEの歴代CEOを中心に経営幹部に取材した結果をまとめたもの。GEの盛衰を概略理解できた。ただし、GEの時々の経営実態がデータとしてわからないので、事業の成功・失敗の評価が人の意見の積み重ねでは説得力がない。どの会社のCEOもそうだが、人の評価には賛否両論があり、何らかの定量的なデータが示されないと個人的意見と判断せざるを得ない。残念な書籍。
「(GE誕生の聖地:ニューヨーク州スケネクタディ)この巨大な古い工業の本拠地は空洞化しはじめていた。GEの最盛期には4万人以上の男女が働いていたが、2017年にはその数は1/10になっていた」p6
「GEの生みの親は、トーマス・エジソンではなく、JPモルガンである。モルガンは資金力にものを言わせて、競合する複数の会社を合併させた。エジソンは、会社の財務状況が悪化していたため、買収に応じざるを得なかった。偉大な発明家は、GEの名前だけの初代取締役となり、宣伝のためのお飾りになった。しかも、エジソンが取締役の座にあった期間はほんのわずかだった。失敗に終わる鉱山開発に必要な資金を得るために、GE設立後数年で株を売却してしまい、その後急成長がもたらす利益をつかみそこねている」p20
「(ジャック・ウェルチ)意思決定は各事業に委ねたが、各事業のオペレーションには細かく目を光らせた。中間管理職には、長いメモを書くのをやめさせ、分厚い計画書を捨てさせた。「プラニングはいらないからプランを出せ」と繰り返した。ウェルチの支持者たちによれば、ウェルチはアウトソーシング、国の貿易政策、日本企業の台頭といった、グローバル企業の相貌を変えかねない大問題から目を離さない一方で、会社の隅々から細かい情報を引っ張ってきて系統立てる不思議な能力があったという」p27
「最盛期には、GEキャピタルはGEの総利益の半分以上を生み出していた。米国で最も有名な製造企業は、実質的には、米国で最も大きく、最も謎めいた銀行の一つになっていたのである」p29
「テレビに出るたびに株価のことを質問されて、イメルトは株価が経営者の成功を測る容赦のない基準であることを痛感した」p99
「政治でもビジネスでも「最高のキャラクターの候補者が勝つのではなく、最高の製品を持つ企業が勝つわけでもない。最もシンプルなストーリーを、わかりやすく語った者が勝つのだ」と(大統領選マケイン陣営の)シュミットは言った」p194
「(買収時の評価額)ディールを成立させるためにはブイグを納得させなければならないとイメルトやボルツが決めた後は、バンカーや法務担当の仕事は、妥当な額の計算ではなく、決められた額の正当化に変わった」p288
「ヨーロッパでは、タービン開発プログラムをヨーロッパに残せというベスタガーの要求に屈するかたちで、GEはアルストムの技術をアンサルドに譲渡した。その技術は、最終的には上海電気に渡ることになる」p335
「(大株主の取締役就任)取締役会に参加することでトライアンはGEを深く知ったが、証券取引法上のインサイダーに該当するため、取締役として得た未公開情報を(GE株売買に)利用することができなかった」p408
「自社株買いには賛否両論があり、経営陣に良い方策がないことの表れだと言う人もいれば、株主に現金を還元する第二の配当のようなものだと言う人もいる」p412
「フラナリーが取締役会の刷新と縮小を打ち出したとき、取締役会には現役のCEOまたはCEO経験者が6人いた。ほかに、投資信託大手バンガードグループの元社長、ニューヨーク大学ビジネススクールの学長、さらには証券取引委員会の元委員長などが名を連ねていた。17人の独立取締役は、現金、株、その他の特典を組み合わせて、年間30万ドル以上に相当する報酬を得ていた」p430
「(取締役の仕事)満足に答えられていない疑問や、定時すらされていない疑問を追求し、経営を監視し、致命的な放漫さから投資家を守るのが彼らの仕事なのだ」p455 -
著者の取材力が凄まじい。アメリカのジャーナリズムの気迫を感じる。淡々と話が進むが、読み進めるに連れて気分が重くなっていく。結局、株価や売上目標至上主義で、悪いニュースは無視しがちで、部下が上司に反論できないような会社は、結局隠蔽や不正会計に手を染めるようになり、落ちていく、ということみたい。ただ、コングロマリットが本当に悪いことなのかはよく分からなかった。ファイナンスと製造業という組み合わせは確かに悪そうだけど。
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エジソンはお飾り、J.P.モルガンによる資金力で生まれた
どんなビジネスでも成功させる方法を知っている会社
ウェルチ
マネジメント効率 金融 ランキングによる人員削減
1980から2000年で売上5倍、株価40倍 企業買収
実質 全米7位の銀行 AAAのGEキャピタルと エジソンコンデュイット
利益平準化 本来のCP短期債券発行+GE資産の高値購入
2001年 イメルト
後継者選びを公開 営業力のイメルトへ
エンロン不正会計で 2002年 米国企業改革保成立にて 利益操作不可能に
ヘルスケア、再生可能エネルギー分野の企業買収
保険と再保険会社の売却 損失の可能性ある再保険は残す
オーガニックな成長 =既存事業の強化による成長 マーケティング復活
新たなタグライン Immagination at Work (創造するイマジネーション)
Borg 全社的ハブ機能 (スタートレックの異星人から命名)
中国市場開拓
サブプライム市場への投資
素材部門、GEプラスチックス(→Sabic) 売却
Ecomagination 自然と調和するテクノロジー ハドソン川浚渫
2008年 リーマンショック CP危機
GEキャピタルの鍵=信用のある低調達コストのCPでニッチ顧客へ貸し出し
株価 就任時38ドル→2009年1月12ドル ひと桁まで下落
NBCユニバーサル売却
2010年 ドッド=フランク法 金融システム刷新 政府の毎年のチェック
キャピタルの利益率低下
2015年 GEキャピタル売却 ~デジタルインダストリアル企業へ
GECASは残す 航空機ジェットエンジン リース 発電システムや医療機器融資
工業系事業90%へ 350億ドルの現金取得
GEデジタル 「プレディクス」センサーからのデータ分析
2016年 GEパワー 仏アルストム買収
倒産危機の会社からガス/風力タービン、送電網などの電力事業買収
子会社PSMも併合すると反トラスト法に違反
アルストムの賄賂の罰金、フランス政府の介入により買収額増加
伊アンサルドに売却するがタービン技術は上海電気に渡ってしまう
2016年 コネチカットからボストンに移転 株価30ドル越え
市場シェア獲得優先
GEパワー 将来の利益を見込んだ帳簿の操作によるサービス契約
債権のキャピタルへの売却
1株当たり利益2ドル未達
イメルト 11年間で1億6800万ドルの報酬
2017年 GEヘルスケアトップのフラナリーがCEOへ
独裁者から議論の集団へ
2機体制の自社ジェット機を廃止
世界の開発拠点を米ニスカニアとバンガロールの2か所に集約
介護保険の残滓 規制当局からの150億ドルの準備金の要求 配当金の4年分
2018年 ハーバードビジネススクールのカルプへ
株価7ドルを割り込む 1400億ドルの市場価値が消える
ボトムアップへ
運輸交通事業、石油ガス事業、バイオ医薬品事業、小計機器部門の売却 -
米国には他にもGMなどよくあることではあるが、シンプルな「総合電機」という社名の通り、まさに「帝国」、世界に君臨するコングロマリットとしての評価を欲しいままにしていたGEが凋落していった様子を丹念を描いたドキュメント。
個人的にも米国の留学先にはGEの「ミートボール」のマークがついた巨大な冷蔵庫が鎮座していて「これがアメリカか」と思ったことを思い出した。また、日本の不動産市場への進出についての記載も興味深かった。 -
ウェルチCEO時代、GEという巨大コングロマリットがどのように構築されたか。従業員が受けていた苛烈な業績へのプレッシャー。その裏にあった会計トリック。
イメルト時代の経営方針の迷走。コーポレートガバナンスの欠如。
などなど、名声の裏で機能不全に陥っていたGEの実態を描く衝撃作。
日本のコングロマリット、東芝などに関心のある投資家も必読です。
コングロマリットがなぜディスカウントされるか、これを読めば感覚的にわかると思います。 -
ビルゲイツおすすめというのでTSUTAYA三軒茶屋で購入。東芝ってどこまでもGEをベンチマークしてたからあんなことになったんだなという感想を持ちました。私も企業内教育システムでGEを手本にしたものを受ける機会があってそれはとてもためになった。つまり、ちゃんとしたものも間違える。ということが私は言いたいのか?predixの紹介をしたプレゼン見て全く何がいいのか理解できなかったことを思い出したり。