変異する資本主義

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478114803

作品紹介・あらすじ

「覇権戦争」と「パンデミック」がもたらす「変異資本主義」とは何か?この一冊で、凶暴化する世界の「深層」がわかる。

感想・レビュー・書評

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  • 現在の世界情勢を把握するための最適のブリーフィング。文書交通費を使って全ての国会議員に配布すべきだ。

  • 新型コロナウィルスのパンデミックと中国の軍事的、経済的台頭を総合的、理論的に解釈・説明するとともに今後のあるべき経済政策の姿が述べられている。主張をサポートする海外の知識人のコメントが豊富に引用されており、説得力のある内容となっている。特に気になったのは、最終章で外国人労働者の規制緩和は難しくなるだろうと述べられている点である。一方、現実は規制緩和の方向で動いていくことが報道されている。この期に及んで、今だに新自由主義的な政治を行うのか、この本の言及する"社会主義"的な政治を行うのか重要な分水嶺であると思われるため、現在の政治を評価する上での貴重な一冊であると考えられる。

  • 変異する資本主義
     序

     第1章 静かなる革命
       バイデン政権の画期的な「経済政策」
       「新しいパラダイム」の出現
       「新自由主義」の終焉
       「緊縮財政に逆戻りしない」という意志
       経済政策の「静かなる革命」
       サマーズとクルーグマンの「論争」
       リーマン・ショックが経済にもたらした「深刻な後遺症」
       公共投資による「高圧経済」が、経済成長を可能にする
       「巨額のコロナ対策」と「財政の持続可能性」
       イエレンの出した「答え」
       「超」低金利下においては、政府は”Big act"をすべき
       「アメリカ経済の再建」と「財政政策」
       「財政政策」の復権
       2010年代に進んだ「パラダイム転換」
       日本こそ「積極財政」に転ずべき理由
       経済学に起きた「科学革命」

     第2章 「長期停滞」論争
       なぜ、先進諸国は「長期停滞」に陥ったのか?
       ローレンス・サマーズの「仮説」
       サマーズが「構造改革」を否定する理由
       「生産性の低下」と「長期停滞」
       失われた「社会的条件」
       「セーの法則」を否定したサマーズ
       「長期停滞」が経済学に突きつけたもの
       主流派マクロ経済学の「根本的欠陥」
       「信用創造」についての根本的な誤解
       「積極財政」の根拠は「低金利」ではない
       「赤字財政支出」が「民間貯蓄」を生むメカニズム
       「対GDP比の政府債務残高」に意味がない理由
       財政運営の指標は「インフレ率」である
       「財政健全化」のパラドクス

     第3章 自滅する「資本主義」
       「長期停滞」と「社会的な力学の変化」
       資本主義経済に内包される「停滞のメカニズム」
       「軍事的緊張」と「経済成長」
       低成長を招いた「停滞政策」
       経済政策の「政治的循環」とは?
       「金融化」によって経済は停滞する
       なぜ、「イノベーション」は衰退したのか?
       株式市場は「価値抜き取り」の制度である
       企業組織の「行動原理」の変質
       ビジネススクールを通じて流布されたイデオロギーとは?
       「イノベーション」から「投機」「操作」へ
       「グローバリゼーション」と「イノベーション」
       「金融化」がもたらした世界経済の歪み
       「持続可能性」を欠いた金融資本主義
       「非伝統的」金融政策の誤謬
       「異次元の金融緩和」がもたらしたリスク
       もはや「経済」の問題ではなく、「政治」の問題である
       世界経済の「構造的な問題」
       リーマン・ショックで強化された「歪み」
       なぜ、「基軸通貨ドル」がアメリカにとって「法外な重荷」なのか?
       「国家」間の問題ではなく、「階級」間の問題である
       画期的な「G7首脳コミュニケ」
       自滅へと向かう「資本主義」

     第4章 21世紀の富国強兵
       リーマン・ショック後も生き延びた「新自由主義」
       何が「新自由主義」に打撃を与えたのか?
       「戦争」と「経済イデオロギー」
       第二次世界大戦によって、「ケインズ主義」は支配を確立した
       「二つの戦争」がもたらした階級間のパワーシフト
       「第四次中東戦争」と「ヴェトナム戦争」
       「冷戦終結」が招いた新自由主義の台頭
       「新型コロナウイルス」と「戦争のメタファー」
       パンデミックが「財政政策」にもたらした衝撃
       中国という「地政学的脅威」
       「経済政策」と「安全保障戦略」は密接不可分
       地政学的な現実を無視する「経済学」
       「経済」と「安全保障」の関係が見失われた理由
       「新自由主義」から「経済ナショナリズム」へ
       「財政政策」は「安全保障政策」の一部である
       「産業政策」の復活
       「ナショナリズム」で「新自由主義」を打破する
       「グローバリゼーション」に対する反省
       わずか5年で激変したアメリカ政策担当者の認識

     第5章 覇権戦争
       「リベラリズム」と「リアリズム」
       派手な失敗に終わった「リベラル覇権戦略」
       すでに崩壊した東アジアにおける米中の「パワー・バランス」
       「覇権安定理論」が示す冷酷な現実
       ミアシャイマーの恐るべき「洞察力」
       アメリカの「楽観論」と中国の「戦略思考」
       「中国に敗北する」と報告したアメリカ国防戦略委員会
       無視された「警鐘」
       自衛隊を圧倒するに至った「中国の軍事力」
       決定的な「誤り」を犯した日本政府
       「リベラル覇権戦略」の無惨な失敗
       かつてない「危機」に直面する日本
       「覇権戦争」を回避する三つの方法
       日本にとって、背筋が凍るような「戦略」
       21世紀型「覇権戦争」は、すでに始まっている

     第6章 ハイブリッド軍国主義
       「総力戦」「冷戦」とも異なる「現代の戦争」
       「幻想」と「ハイブリッド戦」
       安全保障体制の「死角」
       「超限戦」という概念
       アメリカの不可解な「後退」
       「軍事」「超軍事」「非軍事」
       「平和」と「戦争」のハイブリッド
       アメリカが「脆弱」である理由
       転換点を超えた「尖閣情勢」
       中国が狙いを定める日米安保の「死角」
       「シャープ・パワー」という政治戦
       SNSを活用した「情報戦」
       「民主主義」の弱点を突くシャープ・パワー
       「楽観」がもたらした「危機」
       リベラリズムの「誤算」
       エコノミック・ステイトクラフト
       「分断された国家」は脆弱である
       他の手段による「戦争」
       中国の三つの「戦略目標」
       偽装された「政治経済システム」
       WTOが中国経済を規律できない理由
       中国固有の特異な「思考様式」
       「ハイブリッド軍国主義」の脅威
       「非対称性」を巧みに利用する中国
       すでに始まっている「覇権戦争」

     最終章 来るべき世界
       アメリカの「錯覚」、中国の「戦略」
       「階級」と「戦争」
       世界の「残酷な現実」
       不透明な「未来」
       「パンデミック」がもたらす革命
       拡大する「財政支出」
       メディカル・ナショナリズム
       「覇権」の交代
       日本の選択肢
       「統治能力」を高めるか、「衰退」するか

     あとがき
    ダイヤモンド社「変異する資本主義」 2021年11月

  • 新自由主義とは、自由市場が経済更生を高める最良の手段とし、政府の経済介入を極力減らすべきとするイデオロギー。この新自由主義では、パンデミックをコントロールできないし、景気対策にも財政出動が必要で、ざっくり言うと「大きな政府」が求められる。

    米中覇権争いを切り口に考えてもそうだ。何事も軍事利用が可能な中国に対し、国防と経済が分離したままでは太刀打ち出来ない。ハイブリッド戦争に備えるならば、民事介入が必要となる。所謂、国防動員国家に対し、野放しの自由主義では歯が立たない。本著の示す一つのシナリオとして、各国の社会主義かは、果たして進むだろうか。どうも、そうした政府介入を強める前に、コロナムードは緩和しつつある。結局日本は、ロックダウンを経験せぬまま、できる事は、北のミサイルで緊張感の無い避難訓練の繰り返し程度だ。

    唯一の救いは、米国が中国に対抗できる事。台湾有事がエスカレートしない程度には、まだ抑止力が効いている。中国が軍事に絡めて市場コントロールをしてくるならば、いずれ、その外圧によって、呑気に資本主義は続けられなくなるだろうと。確かに。

  • 中国の台頭によって、資本主義の在り方が変わってきているのが、よく分かった。

  • 経済や世界史をある程度知っていないと読みにくかった。大半がアメリカの話で占めている。また再挑戦したい本。

  • 第1章 静かなる革命/第2章 「長期停滞」論争/第3章 自滅する「資本主義」/第4章 21世紀の富国強兵/第5章 覇権戦争/第6章 ハイブリッド軍国主義/最終章 来るべき世界

  • 第1章 静かなる革命
    新しいパラダイムの出現
    新自由主義の終焉
    巨額のコロナ対策と財政の持続的可能性
    経済学に起きた科学革命
    第2章 「長期停滞」論争
    生産性の低下と長期停滞
    セ―の法則を否定したサマーズ
    赤字財政支出が民間貯蓄を生むメカニズム
    財政健全化のパラドックス
    第3章 自滅する「資本主義」
    軍事的緊張と経済成長
    金融化により経済は停滞
    企業組織の行動原理の変質
    もはや経済の問題ではなく、政治の問題
    第4章 21世紀の富国強兵
    地政学的脅威
    産業政策の復活
    第5章 覇権戦争
    リベラリズムとリアリズム
    覇権安定理論
    アメリカの楽観論・中国の戦略思考
    第6章 ハイブリッド軍国主義
    シャーㇷ゚パワーという政治戦
    最終章 来るべき世界
    メディカル・ナショナリズム
    統治能力を高めるか、衰退するか

  • バイデン政権の経済ナショナリズムへの政策転換を丁寧に説明しつつ、中国の(経済・軍事などの)ハイブリッド軍国主義の台頭から、今後の世界は新自由主義・小さな政府から、社会主義(生産過程の運営を何らかの公的機関に委ねる制度。あくまで経済学的な定義)・大きな政府に向かうであろう。
    というのが本書の趣旨。

    経済を軸に、地政学、外交、軍事などの要素も考察しながら論じられており、何度か繰り返して読まないとこの結論に至る理由が完全には理解できませんが、「本書で定義する社会主義」に向かうであろう。とする予測は、本書が出版された2021年11月以降、ロシアのウクライナへの侵攻によって、ますます強まっているようにも思います。

    また、小さな政府を追求した日本は、骨太な国の政策を議論できる国体ではなくなっているという指摘は、非常に重たいです。

  •  昨年11月に発刊されたものであるが、現在読んでも充分新しい。現在の国際的な政治や経済の動向がとてもよく分析されており、とても腑に落ちる本である。
     日本人の多くは、未だにアメリカが日本を守ってくれると思っているが、もはやアメリカの首脳部は東アジアの地域覇権は既に中国が握っている事実を認めている。台湾有事は時間の問題だろうが、アメリカがそれを阻止できるわけがないのである。
     それにしても、この10年間で中国のハイブリットな国力は増大した。日本やアメリカは戦争しているという意識はなかったが、中国は総合的なハイブリット戦争をひたむきにやっていた。気づいた時には経済力でも軍事力でも全く敵わない中国となっていた。

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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