- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478112250
作品紹介・あらすじ
「投資家の思考と技術」が経営の次元を引き上げる。戦略コンサルタント出身でアジア・ベスト・ファンド賞の投資家が語る経営戦略。経営者だけでなく、従業員と株主も金銭的に報われ、アクティビストから身を守れる「みなが豊かになる経営」とは? あまたの経営者が耳を傾ける投資家の思索と提案。楠木建絶賛!
感想・レビュー・書評
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第1章読み切ったぐらいで読むの止めようかなって思ったけど中盤ぐらいから面白くなった
経営視点としても投資の視点からみても勉強になる
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投資家の考え方を学ぶのに良い本。一方で、提案がハイリスクを取ることや投資家を経営に迎え入れることなど、どこまでいっても投資家目線なので、事業会社にいる身としては、その結果にまで責任を取ってくれるのかと突っ込みたくなる箇所も多い。
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個別株投資をしている自分としては、面白い内容がいくつかあった。
成長している会社において、規模型事業と分散型事業の見極めは重要であるように思った。
売上や規模は拡大しているものの、収益率も悪化していき、一向に会社価値が上がらない状態が続き、将来的に売上拡大が頭打ちを迎えるケースをよく見るからだ。
ROEやROAの指標は、投資会社ではかなり重要視されているのだと感じた。 -
事業経済性による分類
規模型事業=規模の経済が働く。紳士服業界
分散型事業=小規模乱立、規模の経済が働かない。総合食品卸業界
特化型事業=特定の領域では規模の経済が働く。医薬品業界、外食産業
手詰型事業=誰がやってももうからない。コモディティ、紙パルプ
業界の中では儲けの出方が決まっている。共有コストと固有コストの割合による。共有コストが多ければ規模型事業になる。規模型事業の終着点は手詰り型事業。多角化が効くか否かの判断材料。
製品の差別化は、外で食べるランチ。ただでは手に入らない。差別化のためには、コストがかかる。
差別化して高く売れても、そのためのコストが見合わない場合もある。自動車、電化製品、航空会社など多くの業界で起こっている。
ブランドも障壁にならない。競争優位性はまれにしかない。ブランドもコストがかかる。利回りの点では優位とは限らない。失敗したブランド化投資も多く存在する。
素晴らしい商品、マーケットシェア、業務執行、経営陣、は罠。短期的には利益を生むが、新規参入があれば失う。
コスト優位か、顧客の囲い込みがあるか、囲い込みと規模を組み合わせているか、の3点だけが、利回りを確保できる。需要面の障壁のほうが長持ちする。規模との組み合わせが最強の一手。顧客の囲い込みとセットする必要がある。=小さな池の大きな魚、になる。
「優れた製品は壁にはならない。短期的な利益を生むだけ。事業を守る壁はほかにある」
フィービジネスは人件費をかける。
金融不動産はリスクテイク。
卸売りビジネスはコストもリスクもかからないが、規模の経済が働かない。
障壁ビジネスはリスクとコストがかかる。恐怖心に打ち勝たなければ障壁は築けない。大塚商会=新聞販売店なみの販売網。参天製薬、トラスコ中山=在庫投資
外食産業が規模の経済が働くようになったのは膨大な投資があったから=ロイヤルの例=規模型。
吉野家やマクドナルドは特化型の例。
常識には仮説がない。事業仮説を持つ。
ガバナンスは、所有と経営の分離度合いで3つの段階がある。
自らが大株主→大株主は経営に参加しない→株主が分散。最後は大企業病になりやすい
創業経営者が障壁を作ると後継者はリスクテイクしなくなる=勝者の呪い。CEOに強大な権限を与える+取締役会がCEOを監督のセットで乗りきる。
オムロンの車載部品事業が日本電産に譲渡した話。CEOの決断で利益が出ている事業を将来性を考えて切り離した。
指名委員会等設置会社はリスクテイクのためにある。
2番目の勝者の呪いは平均回帰。
勝者は、現在の利益率が高いゆえにそれ以上の利益率の高い投資機会がなくなる。ROEが下がる投資しかない。=自社株買いまたは借り入れでレバレッジを掛ける方法。
経営者と投資家は、思考は対極的だが機能は同じ=社長の仕事は、ポートフォリオマネージャーと同じ。 -
『#三位一体の経営〜経営者・従業員・株主がみなで豊かになる』
ほぼ日書評 Day603
内容はかなりオススメ(タイトルのみ、ダメ出ししたい)。とまれ、変に教科書的な理屈っぼさ無しに、経営戦略とファイナンスの融合を学ぶことができる良書。
著者は、"はたらく株主"をモットーとする、みさき投資の代表。厳選投資先を独自の観点で見極める、そのためのノウハウの諸々が、地に足のついた感を醸し出す。
印象に残ったフレーズを幾つか。
What business are you in? ではなく、What "kind of" business are you in? を論じることで、ビジネスを抽象化する。著者がコンサル時代に叩き込まれた教えだそうだが、投資家として企業を見る際に肝となる考え方だという。
「儲け」が生まれるメカニズムを表す二軸。
縦軸にリスク対リターン、横軸にコスト対プロフィットを取り、組み合わせる。呆れるほどのコストもしくはリスク、あるいは両者の組み合わせを投じることで、逆サイドの「儲け」を大きくすることができる。
その他、著者独自のフレームワークが複数紹介されて、それぞれに実企業での例示もあるため、非常に納得感が得られる。
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コンサルから投資家に転身した著者は長期投資家の目線こそが持続的な企業の成長に必要としています。また、日本型経営の良さを活かすために、経営者、投資家、従業員の三者が力を合わせることで皆んなが幸せになれる。企業が抱える問題を分かりやすく具体的に分析して、解決策もしっかり提示しているので、どの立場の人にも有用な優れた本です。
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アウトプットを再投資に回すことで追加的なリターンを得ていき、これを高い水準で長期間持続させることによって、投下資本そのものが増殖していくことを狙う。
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日本的な経営者心情にも配慮しつつも、投資家、ファイナンスの論理、思考を平易な言葉で解説されており、読みやすい。経営者と投資家の新たな関係性は勉強になる。
一方、三位一体の一角のはずの、従業員のポジションは薄く感じた。最近叫ばれる人的資本の関係から、企業における従業員、人財の重要性を聞きたかった。本書籍を最も読むであろう従業員の立場からすると、必死に働くわりに豊かになる方法は、自社株を買おうでは少し説得力に欠ける。特に障壁を築く覚悟のない経営者の下の従業員にとっては。 -
2022年26冊目。376ページ、累計7530ページ。満足度★★★★☆ 約20年の経営コンサルティング業の経験を経て、2005年投資業界に飛び込み、今では「アジア・ベスト・ファンド賞」を受賞するなど優れた成績を残す存在となった、みさき投資株式会社の社長が著者。
経営者・投資家双方がお互いの良い点を取り入れることで、より高い次元に昇華できる。本書には、そのヒントが満載。
良い経営者は良い投資家になれるし、逆も真なりと思う。
なお前著も面白い。