「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた 「ネコの空中立ち直り反射」という驚くべき謎に迫る

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478109373

作品紹介・あらすじ

猫は、獲物をつかまえるために知性が発達させたが、それと同時に、トラブルに巻き込まれてもたやすく抜け出すための重要なスキルをいくつも発達させた。

その中でも一番よく知られているのが、「ネコひねり」「猫の宙返り」、「キャットツイスト」などといろいろな名前で呼ばれてきたテクニックである。猫は高いところから落ちると、最初にどんな姿勢であっても必ず足から着地するという驚きの能力を持っているのだ。また、たった数十センチメートルの高さから落ちても、何分の一秒かで宙返りしてしっかり着地できるのだ。

「ネコひねり問題」とは、猫の空中立ち直り反射を科学的に説明する問題である。人類は大昔から、この愉快な問題に興味をそそられ、数多くの天才が、物理、光学、数学、神経科学、ロボット工学などのアプローチからその謎に迫った。ときには、ヘビやニワトリやウサギの宙返りを調べたりもした。科学者がこの問題を掘り下げれば掘り下げるぶんだけ、愛すべき猫たちの行動に隠された驚きの事実が次々と明らかになった。

本書は、猫を偏愛する物理学者グレゴリー・グバーが、「ネコひねり問題」の謎をひもといていくサイエンス読み物。この難問をめぐる科学者たちの真摯かつ愉快な研究エピソードの数々を紹介する一冊!

また、ニュートン、アインシュタイン、ハッブルなど猫に魅せられた科学者たちの猫愛も紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 「落下した猫が必ず足から着地するのはなぜか?」

    答えは、「怪我をしたくないから!」などと言うと、チコちゃんに叱られる!じゃねーんだよ、と怒られますね♪

    著名な科学者の面々が、この「ネコひねり」問題に対峙している。
    外力が加えられない限り落下中の物体が回転することはあり得ない。と、ニュートン力学を知っている人は考える。

    猫はおかしい。

    4本の足が全て上を向いていても、そのままだと頭から落ちてしまいそうでも、たいてい足から着地する。
    頭を上にしても下にしても、少し勢いを付けたり回転を付けたりして放り投げても、四つ足で着地する態勢を作る。

    恐怖を感じた猫たちは必死で態勢を立て直しているのだ。
    猫は何分の1秒かで宙返りができてしまう。

    重力を感知し、生命の危険から身を守るという目的を達成するための「反射」反応のなせる技だ。
    相対性理論によると、自由落下中は重力を感じない。
    上下左右の識別はできないはずなのに猫はわかる。視覚に頼っているわけでもないのだ。目隠ししても分かる。

    物理学だけの問題ではない。神経科学の観点からも随分と調べられている。
    どうやら猫は、6秒程前の重力の記憶を頼りにしているらしい。

    1700年の「液体中で泳ぐ物体について」という論文に、猫の落下問題に対する説明が出てきた。
    このころから「ネコひねり」の問題に真面目に言及する科学者が現れる。
    しかし、猫の空中での回転速度があまりに早いので、解析のために高速写真の技術向上を待つことになる。
    1894年、猫の宙返りの連続写真が撮影される。この写真に、フランス科学アカデミーの物理学者が関心を寄せた。
    それでも、猫の宙返りを科学的に説明するのは難しかった。

    現在では、落下するロボット猫の研究も盛んに行われているが、宙返りの詳細に関する見解がいまだに大きく異なっているのに驚く。
    なぜ猫の動きの解明にいまだに苦労しているのか。
    多分一つの戦法ではないのだと思う。
    落下の瞬間に、頭の位置が下がっていたり、少し前後左右に回転していたり、条件が異なる状況の全てにいろんな技で対応しているのだろう。

    ネコひねりは、水泳の高飛び込みでも研究材料になっていて、人間も0.5秒で一回転できるようになった。
    空中で身体をひねる競技は多い。走り高跳びなども猫の宙返りが人間の宙返りの新たな可能性を開いてきているのだ。

    NASAでも無重力で宇宙飛行士が向きを変えるのに役立てるべく研究していた。

    本書は、500ページ弱あって、かなりのボリューム感がある。
    「ネコひねり」以外の話題もかなりあるので、興味がない箇所は読み飛ばしてもいい。

    猫の落下に関しては、高層ビルが出来てから猫の高層階からの落下も当然増えたが、
    不思議なことに8階以上の高い階からの落下の方が怪我の箇所が少なくなることが分かった。
    この理由の解明と考察も面白い。

    落下以外では、猫の水舐め行動。
    舌を水面に少し付けてから素早く引っ込める。すると、空中に細い水柱が立ち上がる。その水柱が落下する前にかじり取る。
    という表面張力を巧みに利用した技も持ち合わせているとは知らなかった。

    最後に、本書の著者からのお願いを書いておきます。

    『どうか、猫を高いところから落とさないでください。』
    ・うまく宙返りできない猫もいるかも知れない。
    ・落とした人に恨みを抱く猫がいるかも知れない。

    くれぐれも、お宅のネコちゃんで落下実験はなさらぬように!

  • そもそも「ネコひねり問題」とはなんぞや、という感じで読み始めたら、ネコが逆さに落とされても、落下中に体を捻って足から着地できることの謎を解き明かそうとした科学者たちがたくさんいた、ということを物理の法則なども交えながら解説した本。

    ネコが普通にやっている、ある種、自然現象に近いことだけど奥深い。

  • 「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた – 猫の泉アーカイブ
    https://bit.ly/3aaDbYb

    「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた | 書籍 | ダイヤモンド社
    https://www.diamond.co.jp/book/9784478109373.html

  • 猫は高いところから落ちても
    (あおむけに落とされても)
    足から着地する。
    それでいいじゃない、怪我しないんだから。

    、、、では済ませない人類の好奇心、
    物理学者の探究心が面白い。
    大勢の研究事例を紹介してくれていて、
    (半分は私には難しくて理解できなかったものの)
    すごく笑えました。

    それと同時に、猫にかわいそうな実験も
    数々やってきたんだな、と黒歴史も
    初めて知りました。

    猫、飼いたくなります。

  • こんなに分厚い本、しかも超一流科学者が考えた内容なんて、ちゃんと最後まで読めるかなーーー???と思いつつまえがきを読み始めたところ、そのまま引き込まれて一気読みしました。

    詳しい科学の内容が理解できたわけではないけれど、「ネコひねり」が写真術から始まって、宇宙やロボットetc.といろんなところへ広がっていくのがすごい。
    いやーーー、科学者ってすごい。

    ネコが愛されているってこともよく分かりました!

  • 物理の話題としては極めて高度な、猫ひねり。それの気づきから始まる物理学上の多くの発見や転換点などが物語となっている。読み応えのある一冊。取り寄せて読まねばと思われる引用文献も多数。スポーツバイオメカニクス研究者は読むべき一冊。

  • 猫が逆さまに落とされても脚から着地する現象、過去の物理学では説明できなかった現象らしく、その研究の歴史とか、関連技術の発展、周辺研究、そこからの応用研究までを分かりやすく紹介してくれる。角運動量保存則、相対性理論、学生時代に習ったことを思い出しながら、面白く読めた。現象の観察に役立った写真や連続撮影技術、自由落下中の無重力環境での体勢の入れ替えが、宇宙飛行士のテクニックとかに応用されていたりと、周辺に波及する事例紹介の方も詳しく書かれているので、都度の脳の情報受け入れキャパを超えてしまい読み終わりに時間を要した、、、巻末の訳者あとがきで、適切に要点を示してくれているので、アジェンダ代わりに先にそちらを読んでからでも良かったかも。

  • 著者は頭の子音を揃えた、原題「Falling Felines & Fundamental Physics」というタイトルがお気に召しているようだけれど、もし書店の本棚にこの背表紙の本が在ったとしても目にとまるか微妙だなと、まず思う。それは米国流のエスプリなんだろうと思いつつ、邦題の少々くどい言い回しの方がより多くの人の好奇心を刺激するだろう(猫だけに)。ただし、本の内容としては原題の方が正確に内容を要約していて、うっかり「ネコひねり」の問題のみ取り上げた本だと思って読み始めると、あちらこちら寄り道するように語られる物理の基礎的な法則に関連する逸話とかが少々余計に思えてしまうかも知れない。でも基本的に著者が目論んでいるのは日常の些細と思える現象に実は物理学の根本に関わるような問題が絡んでいるってことに専門家以外の読者にも気付いて欲しい、興味を持って欲しい、ってこと。

    「ご冗談でしょう、ファインマンさん」で有名な物理学者ファインマンも、自身の研究対象であった量子電磁力学に関する啓蒙書を書いているけれど(そのタイトルはズバリQED。量子電磁理学、Quantam ElectroーDynamicsの略でもあるけれど、もちろん証明終わり、Quod Erat Demonstrandumも意識はしているんだろう)、こういう科学啓蒙書を欧米の科学者は比較的熱心に出版するという印象はあって、なるほどこれもそういう一冊なのか、と読み終えて腑に落ちた。確かに、特に米国では、そういう出版物はポピュラーだしね。

    日本でも講談社がブルーバックス・シリーズを出し続けて、いわゆるポピュラー・サイエンスというジャンルの本はあるにはあるけれど、少々残念なのは、新書ではなく単行本として本格的にそのジャンルを手掛ける専門家が少ないこと。また海外で話題となって翻訳されて日本で紹介される際にも、どうかすると「話題性」のようなものに焦点が先に当たった形で紹介されることが多く、科学的好奇心が喚起されるかどうかは二の次的な感じがしてしまうところ(出版社の責任ではないけれど)。例えば少し前に話題となったカルロ・ロヴェッリの「時間は存在しない」とか、更に遡ればスティーヴン・ホーキングの「ホーキング、宇宙を語る」とか。もちろん、それはそれで専門家が考えていることが広く知られるようになったという意義はあっただろうけど、読んだ人が自分でも考えてみるように仕向けた本というのは、日本では余り人気がないような気がする。ファインマンが「QED」を道端で嬉しそうに読む少年の写真を研究室に飾っていたという逸話を何処かで読んだ記憶があるけれど、そういうレベルで科学に対する啓蒙活動というのがもっと盛んになればいいのにといつも思う。なんて言いつつ、自分も原題通りの邦題なら手に取ってないかも知れないので、他人事じゃないんだけれど。そんなことを考えていて思い出したけれど、ポピュラー・サイエンスの本を何冊も翻訳している青木薫さんの仕事にはいつも感心しているってことは書いておきたい。

    さて、本の内容としては、確かに猫が空中で行うくるり一回転の宙返り(ニャンコ先生は三回転もできるけど)は、どんな力学的な運動として説明できるかということを中心に書かれており、それが思いの他深遠な物理学的難問であることが徐々に明かされていくという筋立て。そういうと何だかハリウッド映画の宣伝みたいな「ストーリー」に聴こえてしまうけれど、実際には、如何に人間が物事をなるべく単純な原理で説明したがる生き物であるかということの裏返しの話とも言える。実際、物事を深く理解すればする程、実態はより複雑であることが解ってくるというのは、きっとあらゆる分野の実務経験者が実感していることなんじゃないだろうか。データ解析の例を取ると、最初は直線回帰で推定することで満足していたものを、より精度よく推定できる関係式を導こうと多次元化、非線形化して推定誤差を小さくしようとするのはよくあること。けれど、それが実際の現象の「正確な」描写なのかは別問題。実は、本書のいいところは、その視点をちゃんと押さえているところだと思う。

    世の中ビッグデータ解析だのマシンラーニングだのと人が単純にイメージできる関係を越えたデータ解析の結果を志向する方向に流れているけれど、現象を再現することと現象を理解することは違うってことがはっきり認識されていないことが多い気がしてならない。理解とは所詮人間の脳が持つ能力で因果関係を見出すということなのだから、ともすればカオス的なふるまいが絡んでくる自然現象の詳細全てを説明することとは自ずと意味が異なっていて当然だ。本書の話で言えば、猫が角運動量や重力場の影響や流体力学を駆使して空中で回転する筈もないけれど、その動きの大まかな必然性を物理の言葉で言うこともできるというのが、本書の提示する「理解」であり、Fundamental Physicsという言葉のニュアンスでもある。一方で、猫は進化の結果得た生物学的能力や個体の経験値(当然、宙返りにだって個体差はある)を基に何気なく宙返りをやってのける。人間の体操選手だってもっと複雑な動きを、訓練で覚え込ませた身体と脳の出力結果としてやってのける。もしも違いがあるとすれば、人なら力学的に分析した結果を運動野ではなく前頭葉でも理解して改善できるってことかも知れないけれど、猫の宙返りの研究を体操選手が参考にしたという話は本書では少なくとも取り上げられていない(ただし宇宙飛行士が宇宙空間に漂う船内でどう姿勢を制御するかに応用したという話は出てきます)。

  • 猫を仰向けにしてそのまま落とすと、空中で体を回転させて脚を地面に向けて着地します。この現象を「猫ひねり問題」と称し、そのメカニズムに迫った過去の科学者の取り組みを通じて、自然科学のいろいろな面を紹介する読み物です。
    内容は19世紀ごろからスタートし、多くの科学者が登場します。マクスウェル、アインシュタインなど超有名どころの名前も。取り上げられる分野は物理学(自由落下、角運動量保存など)、光学(連続写真、高速度撮影)、医学・生物学(反射)、宇宙工学、ロボット工学などなど。
    「落下する猫は重力以外の外力を受けないのに、なぜ姿勢を変えられるのか」という視点は物理学、「猫は自分の姿勢をどう認識しているのか」という視点は医学という具合です。
    宇宙工学では無重量状態の宇宙飛行士が姿勢を変えるスキルとして「猫ひねり問題」のメカニズムが真剣に検討され、「猫ひねり」の再現をロボットで再現するという試みも紹介されています。
    本書後半の幾何学的位相あたりの話ではもう少し図なども盛り込んでもらった方が理解しやすいのではないか(私自身は文章だけではちょっと理解できなかったです)、猫つながりとはいえ量子物理学の「シュレーディンガーの猫」の話まで展開するのはちょっと無理筋という気もしました。
    それらの点を差し引いても、訳の読みやすさ、詳しい数式や理論の掘り下げがない点などを考えると、理系でない人も十分に楽しめますし、自然科学への興味を掻き立てられる内容だと思いました。

  • 可愛い表紙に釣られ、読了。物理の領域になると難しくなるけれど、翻訳もこなれていて読みやすい。何度も落とされたであろう猫たちを気の毒に思いながら、巧妙にひねる写真が出てくると可愛いなと思ってしまう。それでいて、非常に壮大で読み応えのある本。
    『物理学では数式や観察を通じて「物事がどのように作用するか」はとてもうまく説明出来るが、「なぜそのように作用するか」は必ずしも分からない』(p426)
    だからこそ学問があるのだなと思う。私もなぜ本を読んでいるのかと聞かれると正直困る。オススメです。

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