テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478108864

感想・レビュー・書評

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  • 「テクノロジー思考」とは、テクノロジーが支配的な立場として世界に強い影響力を与えている事実に焦点を当てた思考アプローチのこと。この本は筆者が普段実践しているテクノロジー思考を持って世界を眺めるプロセスをまとめたもの。
    テクノロジーが世界に与えてきた影響、米国・欧州でのデータ資本主義に対する議論、インド・中国のテクノロジー革命とスタートアップ育成の動向がきれいにまとまっている。

    ・「イノベーションか、死か」、「テクノロジーか、死か」そういう時代を今、我々は否応なしに生きている
    ・イノベーション至上主義と過剰流動性によってスタートアップブーム、ユニコーンブームが生じた
    ・地方の都市化よりも早く、テクノロジーが地方に行き渡る。世界のテクノロジーリーダー達は、地方が都市化されるよりも前に、自ら地方に出向いて行ってその経済圏を獲得する競争(テクノロジーの地方革命)をしている。
    ・世界の優良企業はテック/ノンテックに関わらず、軒並みインドでR&Dとイノベーション探求に着手している。
    ・世界がグローバリズムとテクノロジーの二輪駆動で成り立つ現代社会において、マネジメントで最適化された人種はインド人。これは、インド移民の人的ネットワークとインドのテクノロジー教育によるもの。
    ・地理的意味において、米中印はその他の国とは別格。大国かつプライメイトシティを持たない国家というのは地球上でこの三大国の他にない。
    ・目的を持たないものを人はテクノロジーとは呼ばない。目的という抽象と、法則性と再現性を獲得した物質や物理現象という具体の融合こそがテクノロジー。

  • 基本的には資本が多ければ、研究費も多い。
    都市に人が集まれば、市場は活発になり、資金の流動性も上がる。

    インドと中国。
    この二つの国は、今まさに資本が入り、都市に多くの人が流入している。
    何も考えなくとも、普通に年月が流れれば、
    成長しかない国だろうと感じた。

    未来年表では2025年には東京の人口も減少していくという。
    日本という国でも、地方というフロンティアに技術で橋がかけれれば、
    もう一度世界と戦うことができると思った。

    そしてもう一つの未来を考えてみる。

    これまで地方から都市という移動だったかもしれない。
    この事実を線形伸ばすだけで、
    これからは国から国への移動がより活発になることが容易に想像できる。

    さらに非線形で考えれば、
    国の移動ではなく、
    現実と仮想の空間を行き来するのも十分あるなと思った。

    (以下抜粋)
    ○いまからたった60年前には、世界の人の7割が地方に住んでいた。
    それが徐々に都市に流れて行き、2007年には都市人口と地方人口が均衡した。そして今後たかだが40年で、中国やインドやアフリカなども含めて全地球上の人の7割が都市に住む世界になる。(P.65)
    ○フェイスブックが解決している問題とは何か、それは端的に言うならば、豊かになった現代人類が世界共通にさいなまれる二大プロブレム、すなわち「暇」と「孤独」である。(P.228)

  • 中国の存在感、、

  • イノベーションの取り組むものは失敗を量産すべきである
    失敗のコストが極小化している

    ケンブリッジ・アナリティカ マイクロターゲティング

    ヤンフィリップアルブレヒト GDPR 起案者

    マルグレーテベスタエアー デンマーク デジタル規制分野

    セブンシスターズ
     元はギリシャ神話のプリアデスという7人姉妹
     国際石油資本 ロイヤル・ダッチ・シェル、テキサコ、BP、シェブロン(ガルフ石油)、そしてスタンダードオイル
     新セブンシスターズ GAFA microsoft アリババ テンセント

     スタンダード・オイル 34に分割 そのごエクソン(NJ)とモービル(NY)となる

    インドの印僑、中国の客家、ユダヤ人、アルメニア人をして四大移民

    世界最大の電気自動車メーカはテスラでない、中国のBYDである

    ドローン 深センのDJI
    深セン ファーウェイ、ZTE OnePlus

    アリババの城下町 杭州の猛攻

    人間は具体と抽象により成り立つ

    ビルゲイツ
     我々はいつも、この先2年間に起きるであろう変化を過大評価しすぎる。そしてこの先10年間に起きる変化を過小評価しすぎる

    ハイブサイクル理論
     新しい技術が世に注目を浴びてから、社会に浸透するまでには、バブル的な過度な期待と、その後の失望を経てから、消えてなくなるものもあれば、着実な評価を得て社会に広く適応されていくものだ

  • 特にアジアのスタートアップ業界に造詣の深いキャピタリストである蛯原さんの著書。
    日本にいて新聞や雑誌の記事を読んでいるだけでは培えないような視点を提供してくれてありがたい。
    ・インターネットの中で最も革新されたのは広告業界
    ・LiBと2G方式という2つの異なる技術の組合せが革新を生み出した(LiBの原型は1983年に開発済み)。技術が進化していることと産業・社会が大きな問題を抱えていることの両方が革新に必要
    ・2017年に東南アジアのスタートアップが調達した資金は合計で9,000億円程度だが、そのうちの85%はユニコーン企業4社が調達
    ・VCはスタートアップの主役ではない。アーリーではまだ主役の一角ではあるが、レイトステージでは脇役。上場と未上場の境界があいまいになり、アーリーステージの投資家にはレイトステージがエグジットとして機能する時代へ
    ・世界中の都市が発展し、中心部は新興国も先進国も変わらない時代。一方、地方との格差は拡大
    ・Facebookの計算しつくされたタイムラインは、ユーザをいかに長く画面に滞在させられるかを考えている
    ・2016年の全米オンライン広告費における前年からの伸びの99%をGoogleとFacebookだけで占めた。Facebookは圧倒的に広告の投資効果が高い
    ・Facebookは本人より本人を知り尽くした、地上最も優れた個人情報の収集装置。それ故に巨大な影響力を持つ
    ・ザッカーバーグは、法的な争いで勝てても社会的に負けてしまうことに気づき始めた
    ・米印中は一級都市を10以上有する。そのような国はこの3大国を除いてない。プライメイトシティを有さない
    ・中国におけるスタートアップの中心は深圳ではなく北京
    ・太平洋戦争において各国が奪い合ったのは石油だが、現代の国家が奪い合っているのはテクノロジー
    ・強制技術移転により成長を謳歌してきた中国企業は、中国企業であることのディスアドバンテッジがアドバンテッジを上回る局面になってきた
    ・Facebookが解決している問題は、「暇」と「孤独」
    ・ビルゲイツ「我々はこの先2年間に起きるであろう変化を過大評価しすぎる。一方、この先10年間に起きるであろう変化を過小評価しすぎる」

  • 素晴らしい本だった!なにより基礎的な考え方から理論がまずあり、後半に向けてオンゴーイングな米中テック冷戦や、GDPRを巡る欧州 VS GAFAの今日的地政学のホットイシューに焦点がスライドしていく構成が気持ちよかった。

  • 内容は再読するほどでもないものの、所々に「ああ、これこれ。」というようなワード、表現がありました。インターネットの中と外。なぜモビリティやヘルスケアがDXの激震地になるのか、など。主に前半に気になる記述がありました。

    後半のインド中国考察などは参考程度。

  • テクノロジー思考そのものについて論じられているのは、最初と最後の数ページのみであった。むしろ、全体を通して著者の「テクノロジー論」、ファクトに対する分析が述べられていたのではないかと思う。
    そういう観点で読むと、現在のテクノロジー産業を俯瞰して捉えることができたのが良かった。

  • 1.持っている課題と、この本を読んだ理由--------------------------------
    【課題】テクノロジーに関する仕事をしている中で、歴史や未来への思考について整理が必要

    2.得た知識・気づき----------------------------------------------------
    ★・DXの定義、組み合わせの概念
    ★・3つのネクストフロンティア:①DX、②地方革命、③ソーシャルインパクト革命
    ★・失敗のコストが極小化しており、それを回避することによって生じる機会損失の方が相対的に大きくなった。

    3.ひらめき・アクション------------------------------------------------
    ・失敗の回避に対しての機会損失を念頭に行動する

    4.新たに持った疑問----------------------------------------------------
    なし

    5. 以下メモ------------------------------------------------------------

    ▼序:テクノロジー思考とは
    ・【テクノロジー思考】:近年において世界のあらゆる事象、組織、そして人間にテクノロジーが深く関与し、また支配的な存在として強い影響を与えている事実に焦点をあてた、新しい思考アプローチ
    ・本書においてテクノロジーの在り方を正しく理解するとはすなわち、テクノロジーの歴史やそこから演繹される未来、あるいはテクノロジーの人間社会に対する可能性や適用手法、インパクトを正しく理解することである。

    ▼1.テクノロジー産業の現在
    ・テクノロジーとは進化の道具。それを使いこなす者は進化し、そうでない者の時計は止まっている
    ★・増え続ける莫大な投資資金はどこに向かっているか。A.「インターネットの外」。医療、交通、物流、教育、製造業等々、リアルでフィジカルな世界をテクノロジーによって再定義する競争が既に始まっている、一般にDXと言われるものと同義と考えて差し支えない。
    ・「インターネットの外」の産業はデジタル完結するインターネット産業と違い、タフでシリアスで、時間がかかるビジネスである。タックル戦とする産業の構造、実情を深く理解してなければならない。インターネットは最終消費者のみ向き合っていればよかったが、複数のステークホルダーと真摯に向き合わねばならず、適切なコミュニケーションコントロールを行う必要がある。ステークホルダーには行政や地方自治体など一筋縄ではいかない相手も含まれ超制能力も必要である。
    ★・【DX】:既存産業のテクノロジーによる革新、置き換え、再定義のこと。これを論じるにあたり極めて重要な概念がある。それは「組み合わせ」である。産業の確認とは常に、2つのものの組み合わせによって起きる。①にある技術と別の技術の組み合わせであり、②に技術と市場の組み合わせである。市場という言葉は、ニーズ、問題という言葉に置き換えてもよい。
    ・社会に解決すべき問題や、産業や社会に何らかの負の構造、あるいは圧倒的にセクシーなウォンツがなければそれに対するソリューションはそもそも不要であるし、また一方で、それが求められていても高度に実現可能な技術が実用レベルで確立されていなければ無意味なのである、
    ・DX活況の背景は、①各分野のテクノロジーが実用に耐えうるレベルの進展を見せているということと、②社会の構造変化に伴いあらゆる産業やインフラにガタがきつつあるがゆえの「メジャーアップデート要請」この大きな2つの理由に他ならない。

    ▼2.イノベーション至上主義と、スタートアップ全盛時代
    ・そもそも人類の歴史は常に技術と共にある。技術史=人間史。テクノロジー革命によって人類は自らの生存の確立と期間を飛躍的にこうじょうさせ、また富の生産性を指数関数的に向上させてきた。
    ・このように強烈なテクノロジーが、“ コンピューティング”であり、加えてその力をエンハンス(拡張)する翼であるところの“ 情報通信技術(インターネット)”。さらにインターネットの外でのDX
    ・このような世界においては、「社会の変化のスピードとインパクトよりも自らの革新が速く、大きければ価値、逆に遅く小さければ負け」、これがルールとなる。このルールがイノベーション至上主義という現代社会のドグマを生んだのである。
    ★・イノベーションに取り組む者は失敗を量産すべきである、という命題。失敗のコストが極小化しており、それを回避することによって生じる機会損失の方が相対的に大きくなった。失敗を取り込みながら成功する、成功するまで失敗のマネージを続ける。これがイノベーターの新しい常道である
    ・将来収益の成長性に基づいた投資スタイルを“ グロース投資”、現在の価値に着目したそれを“ バリュー投資”という

    ▼3.次なるフロンティアはどこにあるのか
    ・インターネットの外に広がってる以外にもう一つのフロンティアが“ 地方”
    ・地方革命を論じるにあたり重要な概念、世界人口の都市化(地方⇒都市への大移動)、アーバナイゼーション
    ・これによって何が起きるのか、地方が都市化していくよりも早くテクノロジーが地方にいきわたる。今や世界のテクノロジーリーダーたちはこの競争に躍起になり始めた。40年かかって起きる都市化の前に、自ら地方に出向いて行ってその経済圏を獲得する競争、それがテクノロジーの地方革命である。
    ★・3つのネクストフロンティア:①DX、②地方革命、③ソーシャルインパクト革命、この3つはよく似ている。(別の顔をした同じ取り組み)
    ・地方は相対的に年寄り貧しい、ゆえに地方に対するエンパワーメント(手助け)はそれ自体がソーシャルすなわち社会貢献的な意味合いを帯びる
    ・例;アグリテックは①農業のDXであり、②地方をエンパワーメントする革命であり、③相対的貧困層に対する社会貢献を実現

    ▼4.データ資本主義社会
    ・個人データとはだれのものかという問いを尽きつめると、誰のものでもないというのが正しい答えになる。しいて言うならば個人データとは社会のものである。
    ・データを管理することによってたっせいされるべき目的
     (1)プライバシーの保護 (イデオロギー論争(正解はない):尊重される人権vs利便性の享受)
     (2)データの独占による不当に偏った富の独占の排除
     (3)データの独占による不当に強大になった、あるいはなり得る社会的影響力の排除

    ▼5.欧州という現代のデータ十字軍 VS データ中央集権企業群
    ・【GDPR】:欧州で活動する企業に対して、データ主体すなわちデータを集められる個人の同意を得たうえで、データの収集や処理を進めることを厳密に義務付けた法律。違反した場合の罰金は最大で全世界の売上高4%。

    ▼6.インド - 復権するテクノロジー大国 -
    ・数学は文明の基礎であり、テクノロジーの基礎である。インドは理工系の高等教育に力をいれており3000項以上あり毎年150万人以上卒業。これは日本の全大卒者の3倍である、そして日本の場合その圧倒的過半が文系である。
    ・インドをい未だにオフショア拠点、BPOのターゲット国として見ているならば、それは非テクノロジー思考による事実誤認。インドはイノベーションの産地、先端技術開発、上流工程の地である。

    ▼7.米中テクノロジー冷戦とは結局のところ何か
    ・冷戦とは、文字通り火力すなわち武力によらない国家間の衝突ないしは利害対立の事
    ★・テクノロジー冷戦の最大のイシューはフィジカルなそれではなく、バーチャル上で起きている。サイバーセキュリティである。データとネットワークにまつわる国家人民の安全保障が驚かされている。
    ★・いまネットワークの中では「第一次世界サイバー対戦」という状況にある。毎秒無数のクラッキング、DoS攻撃のトランザクションが世界中で飛び交っている。そこで先制攻撃をするものはロシアや北朝鮮や中国のような国家や、米英などのいわゆるファイブアイズと呼ばれる国家諜報機関等であるが、そのような国家のみならず非政府組織、しなわちハッカー犯罪者集団や、テロリスト集団、ラジカルなナショナリスト集団らもまたそこに参戦している。それらがバトルロワイヤルで各国の政府機関や金融機関、電力・航空・鉄道網の機関システムをアタックしている
    ・【技術移転】:国際社会において先進国が新興国に対して対外直接投資を行うことにより、当該投資先国家に対してさまざまな技術・ノウハウが移転することをいう。その結果、当該国が経済発展することでひいては国際経済全体が潤うことを目指すものであった。それこそがODA(政府開発援助)

    ▼8.テクノロジー思考の実践に向けて
    ・我々が学ぶべきは、何らかのテクノロジーが現れたとき、その具体(素材や物理現象)と抽象(目的の有無及びその高度さ)に注目するということは、そのテクノロジーの発展段階や人間社会に対するインパクトを洞察するために決定的に重要ということである。
    ・テクノロジー思考では、社会問題・ニーズと、個々のテクノロジーのレベルにおける目的を分けて考える。前者を「大目的」、後者を「使用目的」と言ってもよい。
    ★・「ソリューションとは何か」という問いは、「それが解決している問題は何か」という問いと同義である。

  • そっか、そういうモノの見方あるよね。と納得させられることがある。
    それは身近な人でも何かを通しても同じ。
    テレビ然り 、動画然り、本やツイートでも。
    その当たり前の反応を起こすためには、発信者の中に思考のパターンが
    ある程度あって、それが当たり前のこととして、言語化できる程度の
    理解をしている時に起きやすいように思う。

    では、今の世の中で、それらを持つ人はどんなふうに考えているのか。
    テクノロジーを理解している人にとっては、
    日常で触れている人は、意識している人は。
    理解のレベルによって、知識も考え方も変わるだろうし、
    人が同じでも時と場合によって変化していくだろう。

    その思考を分かりやすく言語化して、本にしてくれているものがあれば
    すごく面白いのでは。と思っていた。
    本という形はある程度のまとまった情報量であるがゆえに、
    固定化しやすかったり、話の背景までも理解することで解像度を上げることが出来、
    誤解しにくくなる。
    情報はあればあるだけいいわけでもない。
    けれとある程度はないと、勝手な解釈だけで理解した気持ちだけを持って、
    自身にはちゃんとしたものが残らない。

    この本の話に戻るとしよう。
    変化について行くのが大変なくらいの現代。3年前に書かれた本である。
    しかもテーマが鮮度に左右されるものである。
    それでもここを起点に考えと情報をアップデートすることで楽しめそうだ。
    と思える本でもある。
    それは一過性の情報の塊ではなく、思考としてのソフトのバージョンアップが
    可能なものであるからではないかと思う。
    世にたくさんの本がある中で、見方を教えてくれる本は数少ない。
    この本はそんな良書のひとつではないかと思う。
    少なくとも私の知識レベルではそう思った。

    反面、本を情報として答えを求める人には物足りないかもしれない。
    そこに自身の読書に対しての求めるものの違いは浮き彫りになるように思う。
    どちらが正しいとかではなく、何を求めるかを的確に自身で判断し、
    それと合うか合わないかの話だけで、書は書として変わらないので。
    2022.01.22

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