サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
- ダイヤモンド社 (2018年10月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478105528
作品紹介・あらすじ
アドビ、ネットフリックス、コマツなど、あらゆる業種でサブスクリプション(継続課金)シフトが加速しており、これらの企業はS&P500社平均の9倍のスピードで成長を遂げている。なぜ今サブスクリプションなのか?このモデルに移行するには? この分野の世界No.1企業Zuoraの創業者兼CEOが明らかにする。
感想・レビュー・書評
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『サブスク』という言葉で色々なサービスが提供されつつある日本。日本ではサブスク=月額課金と受け取られがちだが、本書ではそれが大きな間違いであることを指摘している。
悲しい事に日本では言葉だけが独り歩きし、結局は中身は以前と変わらず、そして目新しいと思われた言葉が数年後には鎮撫化してしまうというのがよくある話。
原書は2017年、翻訳版の本書は2018年。そこそこ増刷を重ねており淘汰の激しいビジネス書の中では息の長い本書である。つまりは世の中の消費者がサブスクを支持し、提供する側の会社もなんとかそれに追従している現れの一つなのかもしれない。
著者はアメリカのズオラの創業メンバー。日本よりは変化の激しいはずアメリカににおいても、サブスクのビジネスモデルが、従来のビジネスモデルと財務的にも戦略的にも考え方が大きく違い、会社の仕組みなりビションの共有の浸透などには相当の苦労があったようだ。
読めばなるほどと思える内容だが、実行はかなり困難。というのはビジネス書あるある。
しかし、モノからコトへ。所有から消費や体験へ。というのは、身の回りにはそれなりに浸透しているのは実感できる現代。
心して本書の考え方を取り入れていかないとホント未来はないかも。
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最近、サブスクリプションモデルが新しい事業成功モデルとしてもてはやされている。
NetflixやSpotifyはまさしく巣部スクリプションモデルの典型である。YouTubeも広告モデルだけでなく、サブスクリプション型のYouTube Premiumを開始した。また、本書の中でも成功例として大きく取り上げられているAdobeのビジネスモデルの大転換もサブスクリプションモデルの有効性を示す実例だ。ネットワーク機器ベンダのシスコもサブスクリプションモデルへの移行を進めている。
さらに今まさに大きな流れとなりそうなMaaS (Mobility as a Service)も移動手段のサブスクリプションモデル化と言うことができるだろう。自動車会社でもダイムラーが先鞭を付け、トヨタもその方向での構想を示している。乗合自動車サービスのUberもまた一部地域でサブスクリプションモデルを提供し始めている。
著者のティエン・ツォは、SaaSモデルを世に広めたセールスフォースの初期メンバーとして成功し、その後ズオラ社を創業したサブスクリプション・エコノミーの申し子である。ズオラ社は企業のサブスクリプションビジネスの推進をサポートする。彼らは、製品が提供するサービスのレベルについて契約することで、すべてのサービスはサブスクリプション化可能である、という。たとえば、冷蔵庫ではなく、冷たい食品を、掘削機ではなく一定量の土砂の掘削を提供するのである。日本の会社でもズオラ社はコマツが建設サービスをサブスクリプション型で提供するためのサポートをしている。
サブスクリプションの肝は、単純な定額モデルではない、と理解することがまず必要である。
サブスクリプションモデルにおいては、顧客を理解し、顧客との循環的でダイナミックな関係を構築し、それを製品や組織に反映するというものである。サブスクリプションモデルに移行することは、製品中心から顧客中心への移行である。そのためには顧客一人一人の顔を企業は認識しておかなければならないのである。そして、デジタル化とIoT化(コネクション)によって、製品でなく結果を売ることが可能になり、ますますサブスクリプションモデルへの移行を促進するのである。
重要なのは、サブスクリプションを「顧客をサブスクライバーに変える」ことと捉えて、ビジネス面からは、その関係性から「定期収入(リカーリング・レベニュー)」をもたらす構造を築くことにある。本書ではこの構造をサブスクリプション・エコノミーと呼んでいる。そして、サブスクリプション・エコノミーを維持するためにも、絶え間なきアップデートとそれを支えるアジャイル開発が企業にとって必要なカルチャーとなっていく。「アジャイル・ソフトウェア開発宣言」と呼ばれる次の4つの価値提案はサブスクリプションサービスにも適用できる原則として重要である。
①プロセスやツールよりも個人と対話を
②包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを
③契約交渉よりも顧客との協調を
④計画に従うよりも変化への対応を
今では無料であるというパーセプションもあるオンラインニュースだが、北欧ではノルウェーの15%を始め、高い加入率を誇っている。ニューヨークタイムズも有料化モデルを進めて成功している。著者は、広告に頼るビジネスモデルから安定したサブスクリプションの定期購読による収入に立脚したものになるべきだと主張する。
そういう意味で、サブスクリプションモデルの成功の鍵は、当然ながらプライシングである。安くすればよいというものではないし、ましてや無料にするというのが解とは限らない。キャンペーンも含めて、柔軟なプライシングをシステム的にも機関決定としても可能とするようになっていることが必要となる。プライシングには多くのパラメータがあり、利益創出のためにも重要であり、顧客獲得にも重要であり、顧客との間の実フィールドでのテストを通じて常に微調整することが求められている。
マーケティングの4Pの中で、ProductがServiceに変わったとき、他の3つのPもその価値を変える必要があるのである。プライシングはアップグレードを含めたパッケージングとの関係が重要なポイントとなり、広告は経験に代わる。市場調査は顧客から直接得られるデータにその場を譲るのである。
また、サブスクリプションビジネスにおいて重要なのは会社の財務関連の対応である。財務指標について、一時的な利益の落ち込みを受け入れて、将来的な安定的収益を想定した投資を行う必要がある。そのために、著者は継続的に入るであろう収入と1回ごとの個別収入を分けて考えることを可能とする新しい財務指標の導入を提案する。ARR (年間定期収益: Annual Recurring Revenue)と呼ぶ数値に焦点に当て、四半期ごとにこの数字の成長率などを管理する。新規ARRを獲得するために必要な獲得コストや、ARRを押し下げる解約率を低減させるためのコストをARRをベースに議論することを可能にする。また、これまでは費用と算定されていた営業費用を今後数年に渡り収益をもたらすためのコストとして、将来の収益を産む資産への支出(たとえば設備投資)のように考えるべきだと指導する。財務指標をサブスクリプションモデルに合わせることは非常に重要であることがわかる。
最後にズオラ社が提案するPADREと呼ぶ8つのシステムについても紹介しておこう。
①P: Pipeline - 自社と市場をつなぐパイプライン管理
②A: Acquire - 顧客の獲得を管理
③D: Deploy - サービスの迅速な導入を管理
④R: Run - サービスの継続的利用を管理
⑤E: Expand - 顧客の契約継続や成長を管理
また、ズオラ社が提供するサブスクリプション採用企業の計数的成長をまとめたSEI (サブスクリプション・エコノミー・インデックス)の簡単な解説も現時点でのスナップショットとして重要だろう。これらの数字が電子書籍ではアップデートしてくれればよいのに、と思ったりする。電子書籍も単なる定額読み放題といった形ではないサブスクリプションモデルを採用してくれればよいのだが。
「世界の中心が製品からサービスに移行しつつある」ー サブスクリプションとは、自社のサービスを使ってくれている顧客に成功してもらうことであり、それを自社の収益に変換することに他ならない。
通信事業者は、サブスクリプションエコノミーにどこよりもよくフィットする業態であるようにも思う。ARPA (Average Revenue Per Account)や解約率(Churn Rate)、顧客獲得コスト(Subscriber Acquisition Cost)といった指標はずいぶん前から使用されている。
そういえば、うちの会社も「顧客を最もよく知る会社になる」と言ってるなあ。
※ ChrunchyRollがサブスクリプションモデルの例として取り上げられているが、海外180か国で視聴者がいるらしい。すごいな。 -
ストックをフローへ変えるビジネスモデルに転換させることは念願です。とくに、継続的な投資と回収を繰り返すアプリケーションソフトのようなモデルでは。ハードウエアプラットフォームをふくめて、サブスクリプション化ができるSaaSモデルでは、他にない得られないサービスであれば、実現ができるのかもしれません。
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サブスクリプションがどういうものか,またこれからどのように企業の中で活かされていくか,分かりやすく書かれていた.
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サブスクリプションモデルで提案中なので概念や事例の勉強のため読んだ。
■サブスクリプションは、単なる課金形態の変更では無くビジネスモデルの変革
・製品をアップグレードしながらチャーン(解約率)をさせないようにする。
・いつでも解約できる
・価格は物理的な製品につけるのではなく、得られる価値に対してつける
・プライシングによる顧客増加
・パッケージングによる機能追加
・ストーリテリング(状況→価値→製品)
・プライシングでは従量課金制が最も顧客思考
・サブスクリプションはプロダクト思考では無く、圧倒的な顧客思考→顧客を中心に添える -
今や当たり前になりつつあるサブスクリプションモデルについて書かれた良本。これとカスタマーサクセスはセットで読むべきだと思います。
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サブスクリプションの事はひととおり書かれている。
デジタルだけでなく物にも触れてはいるものの、具体例とまではいかない。
私の会社の事業でもサブスクリプションの話題が尽きない。サブスクリプション化の参考になる。 -
サブスクリプションがもたらす変革の要素を、様々な点から訴求している。サブスクリプション支援サービスを展開するZuoraの創業者であるということから、少し今どきのスタートアップにありがちな誇張や押し売り感が目立っているのが残念。少し構成が冗長な点も気になった。
サブスクリプションの理想形をうまく表現しており、これを体現するサービス運営が出来れば(当初の構築コストはともかく)、最高の顧客体験を提供できるのではないかとワクワクさせる。
最近になってZuora日本法人も立ち上がり本格的に始動していくところで、Zuoraを導入すればこの本に書いてあることが実現できるのか、と思いきや、実は現時点ではコンセプトプロダクトだそう。是非、SaaS提供を開始し、スモールスタートできるような体制を構築してほしい。楽しみである。 -
サブスクという言葉で浸透してきたが、ブームというものは数年後に真贋をはっきりさせる残酷なものでもある。
成功例は多いが失敗例から学ぶことも重要。企業がどう模索してきたかも理解できた。
改めて供給者目線のビジネスを続けてきた企業は篩にかけられるのだろう、自分の会社もそのリスクは大いにある、と自戒した。 -
サブスプリクションとは、どういう事か。今後、各業界にどのようにサブスプリクションを取り入れていくか。日本で勘違いされがちなサブスプリクション=月額制ではない。