- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478105412
感想・レビュー・書評
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実務に役立ちそう。普通の理論書やと、書いてある理論を理解するだけで終わってたらあかん。そっから実務に繋がるように自分で噛み砕いて、ネットかなんかでケースを探して分析してみるとかせんとホンマに必要な実戦感覚は多分得られん。
ただ、この本の場合理論と実務の橋渡しを紙幅に収めてくれてる。本来自分で発展させなあかん部分を教えてくれるイメージ。ROIがすこぶるええ。
あともう一つ、筆者が思う投資銀行の価値はマーケットに対する深い見識だと。バリュエーションとかファイナンス理論なんて理解してて当たり前で、日々生き物のように動くマーケットと対峙することこそコーポレートファイナンス戦略である、と書いてある。確かに、でも投資銀行の人ってわりとマーケットに疎い。キャピマ以外の人間でもマーケットの動きに敏感にならなあかんな〜という意識を得た。
ええ本やったけどワイくらいの理解度やと一回じゃ吸収し切れんかった〜何回か読まなあかんわ〜めんどいけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆感想
資本コストやDCFに関する知識を復習しようと思った。本書はそれらに関する説明がかなりわかりやすく、網羅されている感じもあった。
ROICの話も非常に興味深いが、BS上の勘定科目だけ見ても実際の事業でどのように使われているのかイメージし辛い。
このことも踏まえると、ファイナンスをスキルとして定着されるには、実務経験を重ねないと、難しいと思う側面もある。
(例えば:ROICの項目の分解の深さや、事業計画のKPIの分解の仕方など。)
☆引用・まとめ
・Life of a company
1.会社のキャラクターと事業特性
○会社のキャラクターは、「収益性」「生産性」「安定性」「成長性」の指標にて大別可能。
⇒前者二つについては、ROAにて判断することが可能
*営業利益ROA=営業利益率x総資産回転率
⇒上場企業の平均は、ROA=6%x0.8回=5%
○株式市場のバリュエーションは、「収益性」と「成長性」のファクターに対するPERの相関が大きい。
○税引き前ROIC=営業利益率x事業投資家資産回転率
・この両辺をそれぞれブレークダウンしたのがROICツリー。バリュードライバーを明らかにしてくれる(P91)
・運転資本は、”流動資産-流動負債”である。前者については、売掛金や在庫が大きくなることで、運転資本が増加してしまう。
・眼鏡チェーン店の同業比較をした分析P93以降。
2.資本コストとDCF
○資本コスト
・WACC(加重平均資本コスト)=<株主資本コストx(E/(D+E))>+<有利子負債資本コストx(D/(D+E))>*(1-実効税率)
*負債コストには税効果が乗る。
・株主資本コストの一般的な算出法である、CAPM=リスクフリーレート+(マーケットリスクプレミアムxβ)
・レバレッジを高めるとROEの振れ幅が当然大きくなるが、ROAがデットの金利を下回る場合にレバをかけると、ROEが下がる。
○DCF(基礎前提と定義)
DCFでは「事業価値」を計算し、「非事業価値」を足すことで、「企業価値」を求める。企業価値から「有利子負債(債権者価値)」を引いて、「株主価値」を求める
⇒上記の簡便化すると、「時価の事業価値」=「時価ネット負債」+「株主時価総額」である。DCFは、左辺を求めることで、「株主時価総額」を算出する。
*DCFでは非常行資産以外の価値を算出するのと同様に、ROICの計算においては分母にて事業用資産を使うため、それぞれが対応している
*のれんとは、買収時の「事業価値」と買収対象のBS上の資産の差額であり、通常はBS上の資産簿価より事業価値が上回るので、一定ののれんが発生する
○DCF:FCFの算定
・FCFの算出式(P/Lから):営業利益-税金+減価償却費-設備投資額-運転資金増加額
EBIT x (1-t) + Non cash expense (Depre + Amort) - CAPEX - Change in (Current Asset - Current Debt)
*英語では、有形固定資産の減価償却はDepreciation、無形固定資の償却費はAmortizationと呼びます。CAPEXは、成長用と設備維持用の両方を含む
・業績計画の立て方
予想P/L:売上高をKPIで分解、売上原価、販管費、その他営業外損益、利払い(予想借入金に金利を乗じる)
予想B/S:固定資産残高(CAPEX算出に使う)については、簡便法としては、予想売上高に対して設定した資産回転率を乗じる。
⇒事業用の資産・負債は、売上高に対して一定の割合を置き、そのほか非事業資産・負債については横置きとするのが一般的。
⇒予想借入金については、不足分補う形にするとP/Lと循環参照になる(利払いの部分)。先に決めてしまい、余剰現預金でB/Sを調整する。
・こうしてできた業績計画について、ROICを算出してクロスチェックが簡単に可能。
○DCF:WACC(補論P215)
・エクイティコストの算出、デットコストの算出、資本構成(D/Eレシオ)の検討、の三つのステップ。
・資本構成については、実務上は、類似企業をベンチマークとして用いる。
⇒本来のD/Eレシオの定義からすると、将来の予想D÷「株主価値」で算出するべきだが、「株主価値」を求めるためにDCFしているので、ベンチマーク法をやむおえず使う。
・ベータは回帰分析を使った強引な統計に過ぎないため、実務上は予想ベータ(実績ベータx2/3+1/3)を使う。
・さらに別の方法として、類似企業数社の群集団のベータをとって、それぞれを「unlevered化」したのちに、DCF対象企業の資本構成に応じて「レバード化」する(P223)。
○DCF:ターミナルバリュー(TV)
(10年目のFCF10を基準にする場合、永久成長率gとおくと)TV=FCF10x(1 + g)/(WACC - g)
・永久成長率は、通常0-1%程度とおく。
・FCF10は、安定成長期に入っていること前提なので、過度な設備投資を見込まない(P196)⇒したがって、税引き後営業利益から、運転資金増加額のみ引く。
○そのほか
・求めたFCFとTVについては、対応する年月分の割引率(WACC)で戻して、現在価値を算出。
⇒これが「事業価値」であるため、「非事業価値」の加算と「有利子負債」を引くことで、「株主価値」を算出。
・感応度分析においては、WACCや永久成長率をパラメータとして、縦横に軸で感応度を見たりする。
・実際の株価との乖離要因である流動性ディスカウントは、コントロールプレミアムが乗っていないため割安になっている、とも言いかえられる。
・予想B/Sをきちんと作ることで、予想P/Lで進んだ場合のキャッシュの残存を確かめる。
3.M&A
○シナジー・買収効果
・割安に放置されているが故の買収時のコントロールプレミアム(=流動性ディスカウント)は、株主である売り手は受け取るべきと一般に考えられる。
・一方で、根源的には、事業シナジーによる価値は買収者側が受け取るべきであり、買収価格に上乗せされるべきではない。しかし、実務上は、当該プレミアムも上乗せされることが多い。
・買収後のEPS:稀に減るケースがある。例えば、のれんの償却、借入金利、そもそもの発行株の増加。
・TOB価格:30%ぐらいのプレミアムを付すという考えが一般的。しかし、直近1年などの値動きやそのVWAPなどを加味して、売り手(過去買った投資家)にとって魅力的な水準をクロスチェックする。
○LBO
・LBOは、グロースと利益率の向上のほか、レバレッジ効果が収益の源泉。後者は、売却時に買収時デットを大幅に返済することで、EVがあまり変わらなくても株主価値が大きく向上することに起因する。
・キャッシュフローが安定していないとなじみににくい。それゆえ、日本のLBOは衣食住ビジネスが多いし、ソフトバンクでも社会インフラになりうるようなものをLBOしている。
・上場企業であれば、買収時にまずはLBOで大型の調達をして、後からエクイティファイナンスをするケースは多々ある。スピードの問題で、最初からエクイティファイナンスをしたくても間に合わない。
4.株主還元
○配当
・TOPIXの20%程度の会社は、余剰金の処分を株主総会ではなく取締役会議で済ませている。
⇒会社法の規定では、株主決議とすべきなのだが、例外規定としてガバナンスがしっかりしている場合(監査設置会社?)は取締役会決議とできる。
・日本では30%程度の配当性向がかなり多いが、欧米では0%とそれ以外で二極化している(平均は40%程度)
⇒成熟企業で見ると、日本の会社の配当性向は、グローバルの投資家が求める水準より大きく低いとも言える。
・配当は株主にとって価値中立的(P343)
株主にとってはインカムゲインが得られる。一方で、その同額、BS上のキャッシュが減る⇒EVが減少⇒株主価値が減少。理論上は株価が下がる。
・同様に、自社株買いもEVの減少を起こすが、株数も減るので、理論上は株価に中立。
⇒実態としては、買い需要の創出とアナウンスメント効果で、株価は上がる。また、EPSの上昇も大きいが、その分将来のキャッシュの創出力が落ちているともいえる。
・また、フリーキャッシュフローをすべて有益な投資案件に使えるとは全く限らないので、一定の現金を蓄えている企業ならなおのこと、増配や自社株買いが株価向上の材料になる。 -
覚えておく数字: ROA5%, 営業利益率6%, 資産回転率 0.8回, ROE10%, EBITDA8x,PER15x
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これまで縁がない&とっつきにくそうと思っていたコーポレートファイナンスが実務で必要になったことをきっかけに読み始めました。
初心者のため、はじめから完璧に理解するのは難しいかなと思い、ざっと斜め読みした後にその都度知りたいカテゴリやキーワードをKindle検索。該当箇所をじっくり読んで理解を深めるといった、辞書のような使い方をしています。
企業の誕生から成長過程でどんな試練があり、どんな対処が必要になってくるかがわかりやすく図で表されていたり、対象企業のキャラクター(強み弱み)の捉え方と他社比較方法、企業価値評価の算出方法と算出結果をもとにした他社比較方法のほか、代表的な指標の目安になる値を示していて、対象企業の算出結果と照らし合わせてざっくりとした評価ができたりと、初心者の実務者が知りたいと思っている情報を惜しみなく提供してくださっているなと感じました。
理論だけでなく、各カテゴリで算出した結果をもとに今後の企業活動に活かしていくかといったことをコーポレートファイナンス初心者にもなるべくわかりやすく示してくださっていて実務にすぐ使えそうだなと思いました。
今は実例の試算を試しているところです。
もう少し理論の詳細について理解を深めたい場合は同じ著者の方の別の書籍「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」が有用なのかなと思い、そちらも今後読んでいこうかなと思っています。(積読中です)
まずは実務で使えるように本書を引き続き読み込んでいければと思います。 -
まず分かりやすい。教科書というより実践の書。
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一つ一つに背景/意図が添えられててわかりやすさ◎
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コーポレートファイナンス 戦略と実践
はじめに
コーポレートファイナンスこそ、キャリアアップへの近道
理論はわかって当たり前。ファイナンスの真髄は「市場との対峙」にある
第1章 ファイナンスの全体像:Life of a Company
01 事業戦略と財務戦略は車の「両輪」
誕生 ひたすら生き抜く(目安として設立後5年まで)
成長 ビジネスの拡大(株式上場まで)
成熟 さらなる成長への資金ニーズ(M&Aや市場での資金調達を活用)
第2章 ファイナンスに必要な会計を理解する
01 ファイナンスと会計の関係は「原因と結果」
02 P/Lはフロー、B/Sはストック
03 キャッシュフローとは? 利益とキャッシュフローの違い
04 利益は「意見」、キャッシュは「事実」
05 キャッシュフロー計算書に登場する3種類のキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフロー
06 キャッシュフローを見れば企業のライフステージがわかる
07 運転資本とキャッシュフローの関係性
第3章 会計をファイナンスに生かすためのキャラクター分析
01 会計は会社のキャラクター(個性)を知るための最強の武器
02 ROAに隠された「収益性」「生産性」からわかる会社のキャラクター
03 キャラクター分析のお作法
04 株式市場はキャラクターをどう評価するか
05 ROEより重視すべきはROA
06 ROAと投下資産利益率(ROIC)
07 ROICはバリュードライバーを明らかにする
08 ケーススタディ:上場企業をやめてしまったメガネトップ
3社の税引前ROIC推移
第4章 ファイナンスの1丁目1番地「現在価値」
01 現在価値の概念:1年後の100万円より今日の100万円
02 現在価値の求め方:「複利計算」という基本的な約束事
打ち出の小槌の値段
03 リスクとリターンは振り子である
第5章 資本コストをマスターする
01 資本コスト(割引率)を計算する
資本コストは「投資家の期待」で決まる
加重平均資本コスト(WACC)の概念
株主資本コストとは
CAPMは投資家の思考プロセスを反映したもの
ベータ(β)は個別銘柄のリスクを表す
デットとエクイティでは、どちらの資本コストが大きい?
デットとエクイティの最適バランスは?
02 事業リスクと財務リスク
03 補論:財務レバレッジとROE
第6章 DCF法による事業価値の算出方法(超実践版)
01 DCF法の全体像
DCF法によるバリュエーションの流れ
企業価値は「非事業価値」と「事業価値」で構成される
事業価値は、ビジネスが将来生み出すフリーキャッシュフローの現在価値
なぜ、ファイナンスの世界ではROICが重宝されるのか?
DCF法の3つのステップ
コラム 用語の使い分けについて
02 フリーキャッシュフローの予測
フリーキャッシュフローは営業利益からスタートする
予想財務3表の作り方
事業計画の立て方
前提条件の設定
ケーススタディでDCF法によるバリュエーションを実践する
予想財務3表を作るための前提条件
予想P/L
予想B/S
予想B/S上の必要手許現預金と余剰現預金について
予想フリーキャッシュフロー
予想投下資産
予想ROIC
03 WACCの算定
株主資本コストの推計
リスクフリーレート
マーケットリスクプレミアム
有利子負債資本コストの推計
資本構成の検討
WACCの算出
04 ターミナルバリュー(永続価値)の算定
ターミナルバリューの考え方
ターミナルバリューの留意点
コラム 100年後にもらえるポルシェの価値は?
05 事業価値・企業価値・株主価値
06 感応度分析
07 バリュエーションと株価
08 補論:DCF法によるバリュエーション詳解
事業計画策定上の注意
1 買収先へのコミットメント
2 複数シナリオを用意する
3 予想B/Sと予想C/Fも作成してキャッシュが回るか確認する
予想P/Lと予想B/Sの循環
WACCを設定するための目標資本構成の循環問題
株主資本コストを求める際に悩ましいベータの取り扱い
レバードベータとアンレバードベータ
DCF法の算定結果はほとんどがターミナルバリューだから意味がない?!
09 6社クイズ B/SとP/Lには業種ごとの“型”がある
第7章 株式市場での同業他社の評価
01 株式市場がどう評価しているのか理解するのがComps
Compsの手順
EBITDAマルチプル
PERとPBR
02 PERもEBITDAマルチプルも成長性と収益性に応じて高くなる
03 カレンダライズ(Calendarize)
04 眼鏡業界のEBITDAマルチプル
第8章 M&Aにおける買収金額の決め方
01 買収金額の相場
グローバルM&Aの買収金額は上昇傾向
買収にはクールな判断が必要
02 シナジー効果と買収金額
03 買収効果を測る指標
買収効果を何で測るか?
買収スキームや資金調達方法で買収効果は変わってくる
04 のれん償却への対応
05 上場企業の買収におけるTOB価格の決定
06 LBOへの発展
LBOのスキーム
PEファンドの儲けのカラクリ
07 PEファンドが買収するのは「衣・食・住」ビジネス
08 教科書通りのファイナンス戦略を実践するソフトバンクグループ
09 株式会社マイネットによるLBO案件と資金調達スキーム
コラム 買収形態について
第9章 株主還元政策
01 過小評価されている配当の重要性
02 ペイアウトの全体像
配当政策
横並びの日本企業、成長戦略とのバランスで決める欧米企業
現金を貯め込むだけでいいのか?
コラム 行き過ぎた業績連動報酬も考え物か
株主還元にもダイナミズムを!
コラム 配当性向を100%にしたアマダ
03 配当について
配当は株主にとって価値中立的
機関投資家の配当に対する期待
04 自社株買いについて
05 配当 v.s. 自社株買い
06 株主優待をどう考えるべきか
07 ペイアウトケーススタディ
08 補論:リキャップケーススタディ
第10章 IR戦略
01 IRの前提知識
02 誰を対象とするのか
03 機関投資家 v.s. 個人投資家
04 日本の株式市場の大株主は誰か
05 マーケットを司る超重要要素としての流動性
06 ストラテジストという存在
07 どの投資家にアプローチするか
第11章 ベンチャーファイナンス
01 ベンチャーファイナンスについて
VCなどリスクを取る株主が得られるものとは?
出資金額と持分割合の関係
02 未上場企業の株価はどうやって決めるのか?
PER以外でベンチャー企業の想定時価総額を求める方法
出資時の時価総額が決まって、発行する株数も決まる
コラム 業界平均PERを求める際はどこまでを業界の銘柄として含めるべきなのか?
03 上場までの株主構成をどう考えるか(資本政策)
04 クラウドファンディング
資金調達のみではないクラウドファンディングの役割と効果
クラウドファンディングの課題と波及効果
第12章 ビジネスパーソンとしてざっくり知っておくべき主要数字一覧
あとがき
ダイヤモンド社「コーポレートファイナンス 戦略と実践」 2019年4月 -
コーポレートファイナンスの基本書としてはベスト。
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Life of a company(コーポレートファイナンスの羅針盤)を基に企業の成長ステージに合わせたファイナンス理論を解説。初級~中級向けとしては決定版といっていい内容ではないだろうか。とかく無味乾燥になりがちな理論を、実務的にはどう扱い、実務と理論上どう乖離しているのか、どうマッチさせるのか、論点は何か、非常に分かり易く解説されている。特に実践面が詳細で素晴らしい。企業価値算出でここまで丁寧に分かり易く説明している書籍は珍しいのではないだろうか。コロナ前の書籍なので、最新情報を反映した改訂版も読んでみたい。