世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478103944

感想・レビュー・書評

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  • 借りたもの。
    西洋美術史をヨーロッパ社会の世界情勢とそれに伴う大衆の価値観の変化から解読してゆく。
    私も西洋美術史を学んだ身だが、忘れていた“視点”を思い出させてくれた。

    それまで「画家が時代を反映してどういう作品を遺したか」という“画家中心”の視点から、「画家たちを支えたパトロンやひいてはその需要を生み出した社会」という”社会から見た美術”という視点だ。

    今まで読んでいた本との視点の違いを強く意識させたので、☆5。

    古代ローマの市民――それは大衆ではなく奴隷ではない自由人――の美の追求から始まった“アート”は、キリスト教の台頭から宗教対立、王制が斃され市民が政治に関わるようになってから、その役割と表現方法が、それらを反映して変容してゆく……
    そして「何を描くか」から「どう描くか」の印象派が生まれてゆく。
    最後は現代アートの話よりもアメリカン・マネーによるコレクションの構築、個人コレクションを美術館に寄贈すると受けれる控除制度など社会的要因によって高い質の美術館コレクションが構築されたことを解説。

    美術史の全てではないが、要点をしっかり押さえている。

    アートを見る審美眼よりも、そこから見えてくるのは西洋の歴史であり、その価値観の変容こそが今に通じる価値観のベースである。
    その価値観を知っているか否かで、西洋の人々との会話が弾むか、理解が変わってくる。

  • 内容は悪くない。古代ギリシャの彫刻から(本格的に美術史を学ぼうとすると原始人の壁画から始まるが、そこが必要ない点をこの本は押さえている)アメリカが美術収集大国になるまでの変遷を、大雑把にだが非常に分かりやすくまとめてくれているので楽しい。キリスト教と絵画のかかわりは知っていたが、印象派云々の部分は知らないことが多かった。ただ、あくまでビジネス書なので文章に出てくる絵画の写真は小さく、モノクロ写真なので物足りない。また、タイトルに若干の恥ずかしさを感じるのは私だけだろうか。

  • 本日読破。教養とは一冊の本を読むことで得られる表面的な知識ではなくて、徹底的に向き合って、行動して、経験してはじめて得られるような何かなのではないかと思った。そういうものじゃないとあまり意味ないのではと。

    この1冊で効率よく美術を知って、教養を手に入れようとした自分が甘かったですわ。でも当時の社会と関連させた面白い記述もあったし、美術への興味は増したからもっと向き合って、勉強する。推しメンはエドゥアール・マネです。

    美術館めちゃ行きてえ。一緒にいける女友達欲しいな。

  • 美術も社会や経済などの仕組みに寄り添うものだってことが、過去からわかりやすく認識できる。作品的にはエドゥアール・マネの「フォリー=ベルジュール劇場のバー」か印象に残った。しかし、ビジネスエリートが身につけるべきってタイトルが、電車の中で読んでると、いけすかない感、もしくはお前ビジネスエリートちゃうやろ感を醸し出してんじゃないかと、ヒヤヒヤしてしまった。

  • 教養として西洋美術史を知っておくことの意義を感じた。古代ギリシア美術から現代アートまで、時代背景も理解しながらの美術史の旅はとても楽しいですよ。

  • 美術の歴史を紀元前から現代まで網羅。美術の背景にはその時の時代・政治・経済・風俗が大きく影響している。

  • 西洋美術が体系的に学べて勉強になった。原田マハをきっかけに美術に興味を持ったが、やはり美術は歴史の背景や画家の人間性など学んでから見るとより面白い。元々、印象派がやはり好きだかロココ絵画も面白いなぁと。その他にはロマン主義のドラクロワも見てみたい。印象派はやはりルノアール!でもマネの絵も最高です。とにかく2021は美術館に行こう.!

  • 教養という単語にひかれて購入。
    ビジネスエリートってデカデカとかかれると、別にグローバルな仕事をしていないのに意識高い系かと思われそう。

    西洋美術はキリスト教と切っても切り離せない。
    各国の宗教をめぐる対立や政治的な思惑と絡み合って複雑そう…と尻込みしていたけど、体系立てて書かれているので、理解しやすい。
    絵がモノクロなものも多いが、世界でいちばん素敵な西洋美術の教室はフルカラーかつこれも古い時代からの作品から掲載されているので、カラーで絵を見て、これを読んで時代背景を理解するのがわかりやすくてオススメ。

    ●古代ギリシャ…アテネを中心とした美=善という考えの文化。ギリシャ神話の神々も美を好むとされ、皺NG。男性は体を鍛えるのが一般的。休戦のために開かれたオリンピックは4年に一度男性のみ参加可能で、裸で競技を行い、優勝者の全身像が作られ神殿に奉納される。(AC394キリスト教の国教化により廃止)

    アルカイック(BC600~BC480)~エジプトの影響を受けた男性の裸体彫刻クーロス

    クラシック(BC480~BC323)~西洋美術の規範となる。都市国家アテネが文化・学問の中心に。アテネ対スパルタの対立による緊張の反動か、優美さが際だつ。8頭身やスレンダーな体系が好まれる。感情を出すことは慎むべき論から表情は乏しい。
    クラシックの代表作…パルテノン神殿

    ヘレイズム(BC323~BC27)~マケドニア・ギリシャ連合軍のペルシャ遠征(BC344)でギリシャ文化圏がオリエント、エジプトまで拡大。多様な表現が増える。
    ヘレイズムの代表作:ミロのヴィーナス、サモトラケのニケ

    ●古代ローマ…すべての道はローマに通ずといわれる大帝国。公共建築が得意。元々は質実剛健で質素がローマ風だったが、ギリシャを支配下に置いてからはギリシャ文化の影響を大きく受ける。
    (ギリシャ神がラテン名を持つ、エリート階級はギリシャ語が共通言語、ギリシャ彫刻の大量コピーなど)

    エルトリア(BC700~BC600)…トスカーナ地方に存在した独自の風俗、生活様式。死後の世界を信じ、死者のための町(ネクロポリス)として立派な墓を作る。ブロンズなど金属加工に優れる。半円アーチの建築も特徴。

    五賢帝時代(AC96~180)時代に勢力図は最大になり、ギリシャとローマが融合した独自の美術誕生。先祖崇拝の習慣から、頭部、胸部の彫刻が流行る。皺は威厳ある老人と見なされた。
    代表…コロッセオ(AC80)、テルマエ、凱旋門、パンテオン(AC128)

    初期キリスト教美術…AC313にミラノ勅令で信仰の自由を認められるまで、地下の共同墓地(カタコンベ)の葬礼美術がキリスト教美術とされる。
    AC392にローマ国教となり布教のために目で見る聖書として宗教美術が肯定化される。
    絵が平面化&誇張。偶像崇拝禁止から彫刻が衰退。

    バシリカ(4~7世紀)…まだローマっぽい
    ビザンティン(5世紀)…ドーム型の屋根が特徴

    ●ロマネスク(11~13世紀)…北ヨーロッパのフランク王国分裂により修道院や教会は郊外に建てられ、教会様式の建築美術が発達。木造から石造へ、壁が厚く窓が小さい。半円アーチがロマネスクの特徴。

    ●ゴシック(12~)…11世紀に行われた十字軍遠征による聖遺物がヨーロッパにもたらされ、12世紀以降、聖遺物崇拝が強くなり、巡礼ブームが起こり、宗教美術が発達。フランスで政治的思惑からゴシック建築(イタリア的にはゴート=野蛮人)を奨める。高さを出し、尖塔アーチが特徴。ステンドグラスで聖書のシーン等を表し布教を分かりやすくする。西が入り口で、祭壇が東の光を取り込める配置が多い。
    代表…シャルトル大聖堂(1144)、礼拝堂サント・シャペル(1248)

    ●国際ゴシック(14世紀)…北の伝統とイタリアの伝統が融合
    ゴシックの高さ競争が終息し、神から自然世界へ注目が集まる。貴族達の見栄で装飾が豪華になっていく。
    代表作…ベリー公のいとも豪華なる時祷書(ランブール三兄弟)

    ペスト大流行
    イギリス対フランス100年戦争

    ●ルネサンス(14~16世紀)…イタリアを中心に古代ギリシャ、ローマの学問や芸術の再生(ルネサンス)が活発に。ラテン語の習得や神話文学の教養の重要化。
    代表作…スクロヴェーニ礼拝、ユダの接吻(ジョット・ディ・ボンドーネ)

    ●北方ルネサンス(14~16世紀)…スペイン領ネーデルラント、フランドルの絵画技術。中世、ゴシック的な神中心の精神世界に写実性の高い室内描写が特徴。シンボリズムが発展する。正面向きは聖なる存在のみなので、一般の肖像画は3/4向き。

    代表作…アルノルフィーニ夫婦像(ヤン・ファン・エイク)

    ヒエロニムス・ボス(1450~1516)…人間社会の風刺、宗教問題を暗示する絵を描く。快楽の園

    ピーテル・ブリューゲル(1525~1569)…ブルジョアなのに農民の生活を多く描き農民画家と呼ばれる。バベルの塔、死の勝利、ネーデルラントの諺

    ●盛期ルネサンス(15世紀)…イタリアで美術家たちの複数の分野における活躍した芸術家の地位が向上。絵だけだと職人扱い。
    代表作…
    ミケランジェロ・ブオナローティ(1475~1564)…ダヴィデ像、最後の審判、システィーナ礼拝堂の天井画
    レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)…モナリザ、最後の晩餐
    ラファエロ・サンティ(1483~1520)…ヒワの聖母、システィーナの聖母

    サンドロ・ボッティチェリ(1445~1510)…ヴィーナスの誕生、プリマヴェーラ

    ●ルネサンス衰退(16世紀)…ルターの宗教改革以降、プロテスタント台頭。1527のローマ劫掠で多くのローマ人が殺され、画家達も散り散りに。

    ・ローマ:マニエリスム様式…画家の個性や特有技法が強調され、インテリ層メインの知識や教養がないとわからない知的な画が多い。
    ジョルジョ・ヴェザーリ…ゲッセマネの祈り

    ・ヴェネチア:政教分離の国のため、混乱を免れ、安全かつ貿易で豊かな生活。感覚的に訴える色彩豊かな表現&世俗的、官能的、享楽性高め。油絵をカンヴァスに描く技法発見。
    ジョルジョーネ…眠れるヴィーナス
    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ…ウルヴィーノのヴィーナス、フローラ

    ●バロック(16世紀末~18世紀)
    聖書主体のプロテスタントに対抗するため、カトリックの教えを分かりやすく広めるために、宗教美術を用いたメディア戦略を取る。
    ラファエロ的古典派と、カラヴァッジョ的改新派に分かれる。

    ・イタリア
    カラヴァッジョ(1571~1610)…明暗を用いたコントラストが得意。「聖マタイの召命」「ダビデとゴリアテ」
    ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598~1680)…彫刻、建築家。「サン・ピエトロ広場」「聖テレジアの法悦」

    ・オランダ、フランドル…1633~1637チューリップ・バブル。1648スペインから独立。宗教要素薄く、市民たちがお金を出しあった集団肖像画が流行る。
    ピーテル・ハウス・ルーベンス(1577~1640)…宮廷画家。王達の画家にして画家達の王の異名をとる。工房を持ち、沢山の依頼をこなす。フランダースの犬のネロが憧れた人。

    レンブラント・ファン・レイン(1606~1669)…浪費癖ある光と影の魔術師。「夜警」←集団肖像なのに少人数が目立つため怒られたらしい。そして昼の話らしい

    ヨハネス・フェルメール(1632~1675)…市民の日常生活を描く。そのため貧乏だった。残っている作品が少ない。光を表現するためにカメラを用いた。「真珠の耳飾りの少女」「牛乳を注ぐ女」

    ・フランス…バロックは流行らず、ルイ14世の絶対王政の元に、ヴェルサイユ宮殿で貴族も生活する。政治と美術が中央集権化し、王権とフランスの威光を高める様式が増える。1648パリにそのためのアカデミーも設立。
    ニコラ・プッサン(1594~1665)…フランス美術を確立した人物。均整のとれた構図や調和の取れた絵を重んじる。重んじ過ぎてたまに人体の構造が矛盾することも。「アルカディアの牧人」「ソロモンの審判」

    ●ロココ(18世紀)…フランス内で発生した優美で女性的、色彩豊かな美術。髭剃り文化、男性の趣味も女性的に。絶対王政の反動か、不倫跋扈する享楽性高い貴族社会が多く描かれる。

    フランス市民革命(1789)
    ナポレオン台頭(1804即位)

    ●新古典主義(19世紀)
    ポンペイの遺跡発掘もあり、再び古代ローマにスポットが当たる。ナポレオンが皇帝を名乗り、ローマをイメージした凱旋門を作るなど帝国を意識した建築や美術でイメージ戦略を取る。
    ジャック・ルイ・ダヴィッド…ナポレオンお抱え画家。「ホラティウス兄弟の誓い」「アルプスを越えるナポレオン」「皇帝ナポレオンの聖別式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠式」

    ●ロマン派(19世紀)…新古典派がデッサン重視なのに対し、人間の本質的な内面を自由に表す。中世の歴史物語(ロマンス)に由来。シェイクスピアの作品やアーサー王の伝説等が好まれる。また、一般市民の事件を歴史事件として扱い、センセーションを起こす。
    テオドール・ジュリコー(1797~1824)…一般市民の事件を描く。「メデュース号の筏」
    ウジェーヌ・ドラクロワ(1798~1863)…「民衆を導く自由の女神」「キオス島の虐殺」
    フランシスコ・ゴヤ…スペインのロマン派。「サバーサ・ガルシア」「1808年5月3日」

    ●写実主義(19世紀半ば)…アカデミーの伝統に背き、ひたすら現実的な人々や日常を描く。アカデミーに背いているため当時は評価されずらかった。
    ギュスターヴ・クールベ(1819~1877)…個展を初めて開催し、初めて女性の性器のどアップを描く。「世界の起源」「石を割る人」

    エドヴァール・マネ(1832~1883)…近代画家の父。2次元を強調。浮世絵のコレクター。何を描くのかからどう描くのか、へ。「鉄道」「オリンピア」「笛を吹く少年」「フォリーベルジュール劇場のバー」

    ジャン・フランソワ・ミレー…生活の為にヌード画を描いていたが、農民を描いて評価一転。「落ち穂拾い」「種をまく人」「晩鐘」

    ●印象派(19~20世紀頭)
    フランスのアカデミーの古典的な規範のみを良しとする芸術方針に嫌気が指している人達で、美の反逆児と呼ばれる。マネにかなりの支援を受けていたが、マネは個展に出展せず印象派ではないらしい。自分の視覚に忠実に瞬時性を記憶し、表現する。光の表現に筆触分割法を用いる。

    エドガー・ドガ(1834~1917)…マネの友人で生粋のパリジャン。踊り子シリーズと呼ばれるバレエの絵を良く描く←近代化の裏で売春や踊り子が男達の「商品陳列扱い」されているパリの闇もかいま見えるが、何も知らないアメリカで大ヒット。「エトワール」「アイロンをかける女たち」「アブシンラを飲む人」

    クロード・モネ(1840~1926)…原田マハのジヴェルニーの食卓で彼の娘から見たモネの姿がわかる。子沢山。ジヴェルニーの町に家を買い睡蓮や藤を植えるなど日本好き。「印象・日の出」「睡蓮」「ルーアン大聖堂」「ラ・ジャポネーズ」

    ピエール・オーギュスト・ルノアール()…女性画が多い。ふくよかな女性を多く描くが、個人の好みらしい。「ムーラン・ド・ギャレット」「水浴」「舟遊びする人々の昼食」

    ●ポスト印象派(1880~)…印象派内での内部対立が目立つようになる。それぞれの影響を受けて、独自の造形性を発展していく。

    フィンセント・ファン・ゴッホ…「ひまわり」「タンギー爺さん」

    ポール・ゴーギャン(1848~1903)…「タヒチの女」

    ポール・セザンヌ(1839~1906)…「大水浴」「サント・ヴィクトワール山」


    後に
    ピカソ
    クリムト

  • 教養として身に着けておくべき美術史ということで、美術ではなく、美術史になる。絵画の解説ではなく、歴史を学ぶ本。
    ギリシアでは美しさが善とされ、裸でオリンピックがおこなわれる。
    美術と歴史が結びついていることはわかる。

  • ふーんとただ感心だけして、流してきた美術館や、その展示の画
    感性なんて偉そうなものもありません・・・ そのときいいと思ったかどうか・・。

    美術史、なんてたしかに勉強することもなく、それぞれの画、時代も断片的に語れるか・・・いやひとの話にそんな時代だろうなぁ・・・と相槌を打つ程度だったでしょう。

    本書をひと通り読んで、どれだけのことが、頭ん中に残るかわからなうのだけれど、これからいろいろなところで、絵画に出あうにしても、ちょっとちがう変化を与えてくれたような気がします。

    途中でてきた、絵画ジャンルのヒエラルキーも興味深かったです。

    話がそれちゃいますが、本書に出てきたオランダの アントウェルペン という街に行ってみたくなりました。

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著者プロフィール

1966年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業。専攻は西洋美術史。ロンドン・サザビーズ美術教養講座にてWorks of Art修了。講演、セミナーなど開催多数。著書に、『名画の言い分』(ちくま文庫)、『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(ダイヤモンド社)、『名画は?をつく』シリーズ(ビジュアルだいわ文庫)などがある。

「2019年 『カラー新書 ゴッホとゴーギャン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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