身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質

  • ダイヤモンド社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478103814

感想・レビュー・書評

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  • 元トレーダーで確率の研究者であるナシーム・ニコラス・タレブ。
    投資家が書いた本だから投資に関する内容に期待するのでしょうが、期待通り『本書でも』投資手法や理論に関する実践的な内容は皆無ですw

    毎度のごとく、世の中の出来事を確率論と合わせた哲学本に近いですね。今の俺の知識と読書力では、感覚的に60%ぐらいしか理解できないと思う。
    よって☆3の評価としました。1年後とかに読み直すと、また違ったものが見えてくると思いました。


    あまりネタバレになるので詳細は書きませんが、本書で言う『身銭を切れ』とは簡単に言うと『それ相応のリスクを負え』という意味です。

    メディアの情報やその受け取り方、自分の中での判断まで、違和感だと思っていたことを『身銭を切っているか』で解説してくれています。

    たとえば現代ポートフォリオ理論を語る際も、本人は期待リターンとリスクの2標準偏差から自分が耐えられる損失を計算している『つもり』なのだが、実際に自分が計算して構築したポートフォリオで損失を被ったことがない。
    なぜそう断言できるのかと言うと、大多数の人は自分が計算したポートフォリオの推定損失は『相場が並み以上の時』でしかない。
    ましてやTwitterやブログでそのような計算結果を提示していても、それは相場が『割と良い時』なのである。つまり、その主張にはポートフォリオで損失=『身銭を切る』体験をしていない。
    だから自分では損失の確率を計算している『つもり』でしかないのであって、確率の考え方が理解できていないのである。

    昨今の新型コロナウイルスを例にすると、感染拡大を防止するために行政や親族までもが『外出を自粛せよ!』と言う。
    それはもっともな意見です。では質問したいのが、『自分が飲食店を経営し、且つ、従業員を雇っている立場でも、同じ主張ができるか?』ってこと。
    これもまた、身銭を切ってるかどうかの違い。

    人生観を磨く良い1冊でした。
    読んで面白いと思えるかは、本人の価値観と読書スキルによると思いますね。

  • かの有名な「ブラック・スワン」の著者だとは露知らず、不確実性を一貫したテーマとしたシリーズの最新作。

    前作からの用語や思想を前提に構築しているところもあり、今作から仲間入りした私には少しとっつきにくいところはあったが、こんなにも歯に衣着せぬ物言いをする人だとは想像していなかった。むしろ好印象なのだが。

    身銭を切っていない高みから理論だけを振りかざした正論なんてものは、信用に足らない。世の中の非対称性や少数決原理という考え方は、個人的に新しい観点かな。大多数の意見よりもモノ言う数人の意見に、物事が決定してしまうなんてざらにあるという実感。

    提示される用語が若干専門的かつ数学理論に基づいているので、著者の意見の裏づけまで理解するに及ばないが、上澄みだけでもなんとかくみ取れたか。テールカーブの外れ値のようなリスクを何回でも繰り返せば、そこにあるのは破滅という見解。外れ値を度外視している主張は言語道断と、われらがスティーブン・ピンカーを目の敵にしている姿勢は新鮮だな。

    つまりあなたの意見はアンサンブル確率と時間確率の不一致で非エルゴードだよね、なんてしたり顔で言えるようになることが目標。

  • 世の中に蔓延っている非対称な関係性について非難を投げかけている本なのかな?経済学でいうモラルハザード、エージェンシー問題とか情報の経済学的な視点。

    言いたいことは割とシンプルだと思うんだけど、神話とかの話を執拗に引用したりして無駄に難解にしている気がする。正味400ページを費やして語る内容ではないのでは?と思った。

    ただ主張自体は納得する部分が多かった。(現代のエリート的な立場の人は自分の仕事のパフォーマンスと賞罰が直接連動してないケースが多くて、この非対称な関係はまず倫理的に問題だし、世の中を蝕んでる的なことだと思う。)

    この本からの一番の学びは、読書はそもそも読んでいて楽しくなきゃっていう大前提ですね。読むのが苦痛でした、グッバイ。

    • ともひでさん
      >神話とかの話を執拗に引用したりして無駄に難解にしている
      翻訳本あるあるだわw
      >神話とかの話を執拗に引用したりして無駄に難解にしている
      翻訳本あるあるだわw
      2021/03/09
  • 前著「反脆弱性」が面白かったので読んでみた。ひねくれたノリなので、真面目にお勉強するようなテンションで読むと疲れる。各人の興味あるところを拾い読みするとよい。
    【面白かったところ】
    ・不寛容な少数派が全体を制約する少数決原理(よい効果になることもあると思うが、創価学会が国政に影響を与えているような悪い例を見ると暗澹たる気分になる)
    ・「重要なのは、何を持っているか、持っていないかではない。何を失うことを恐れているかだ。失うものが多ければ多いほどその人間は脆くなる。」(本筋とは異なる部分だが…)
    ・「(ベトナム戦争で感じたように)ほとんどの人にとっては、ある行動方針がバカげていると薄々感じていたとしても、やめるよりは続けるほうが楽だった」
    ・破滅の問題と繰り返しリスクに身をさらす行為、その両方が存在する場合には、”統計的検定”や”科学的な命題”はほとんど意味をなさない。(ロシアンルーレットの例)

    あと、モンサントが繰り返し出てくるのが笑った。モンサントの悪徳ぶりは別書で読んでみようと思う。

  • 45歳になる勤め人です。
    自分の人生と重ねながら読むと、自分の人生は自己責任というか、自分の取り組みが今の人生やポジションになっていると「腑に落ちる」「腑に落とされる」本でした、特に前半。
    後半も世間や世界の見方について示唆に富んでいて、読み応えのある一冊。別のを挟んで2度目読みますね、多分。
    2400円+税 出せるサラリーマンならお勧めします。

  • いつも通りのニコラスタレブの本。とても良い。金融市場における破綻リスクを書いたブラックスワンから、人類や世界というシステミックの破綻にまで論理が拡張されているが、考え方は全く変わらない。人間が確率を正しく理解しにくいこと、確率を正しく理解しない政策の下で人間が生活している事に警鐘を鳴らしている。ほとんどというか、完全に哲学の世界になっている。素晴らしい議論。長期での資産運用を考えている人は、金融の専門家の話を盲目的に信じず、自分で受け入れられる損失が幾らかを理解して。なぜならアドバイスする人達はあなたに損が出ても痛くも痒くもないから。

  • 「身銭を切れ」、すなわち何か行動する際には損害の一部も背負い、それがうまくいかなかった場合には相応のペナルティを支払うべきである。『ブラック・スワン』『反脆弱性』の著者が、不確実で予測不可能な世界で生きる術を説くとともに、リスクをとらずにリターンをとる(政治家や経済学者など)自称“知識人”を強く批判する。


    第1部 「身銭を切る」とは何か
     プロローグその1 アンタイオス、殺(や)られる
     プロローグその2 対称性の簡単なおさらい
     プロローグその3 『インケルトー』の肋骨
    第2部 エージェンシー問題入門編
     第1章 自分で捕まえた亀は自分で食べよ――不確実性に関する平等
    第3部 例のこの上ない非対称性
     第2章 もっとも不寛容な者が勝つ――頑固な少数派の支配
    第4部 犬に紛れたオオカミ
     第3章 合法的に他人(ひと)を支配するには
     第4章 人に身銭を切らせる
    第5部 生きるとはある種のリスクを冒すこと
     第5章 シミュレーション装置のなかの人生
     第6章 知的バカ
     第7章 身銭を切ることと格差の関係
     第8章 リンディという名の専門家
    第6部 エージェンシー問題実践編
     第9章 外科医は外科医っぽくないほうがいい
     第10章 毒を盛られるのはいつだって金持ち――他者の選好について
     第11章 不言実行
     第12章 事実は正しいが、ニュースはフェイク
     第13章 善の商品化
     第14章 血もインクもない平和
    第7部 宗教、信仰、そして身銭を切る
     第15章 宗教を語るヤツは宗教をわかっていない
     第16章 身銭を切らずして信仰なし
     第17章 ローマ教皇は無神論者か?
    第8部 リスクと合理性
     第18章 合理性について合理的に考える
     第19章 リスク・テイクのロジック
    エピローグ リンディが教えてくれたこと

  • 頭固くなっていない?この人

  • 自ら手を動かし、リスクを取らないと物事を正しく評価できないということでしょうか?机の上の計算だけでは、世の中がうまくまわらないと、このエッセイでは批判しているように感じました。身銭を切らないと、現実を謙虚に評価できなくなる可能性が高くなり、結局大失敗、不祥事やその隠蔽に行き着くのかと思いました。
    ちなみにこの本を最初図書館で借りようと思いましたが、この本のタイトルからしてそれは駄目だろうと思い、ちゃんと買いましたよ。

  • 有名な著者ということで読んでみた。金持ちが政治家などになることと、インテリが金持ちになることの違いが興味深く、トランプ大統領が誕生した理由などがわかった気がする。

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