米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ

制作 : 船橋 洋一・序文 
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478103319

感想・レビュー・書評

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  • トゥキディデスの罠という単語を最近何度か目にしたので、その元になってる本書を読んでみました。アメリカ人から見たアジア(特に中国)の描写が面白かったです。ただ、戦争回避の提言のところはあまり響かなかった…

  • 米中戦争の発生メカニズムとその回避法を知るため、読みました。
    戦争要因は、国益、不安、名誉です。台頭する新興国の夢とプライド、挑戦を受ける覇権国の恐怖と自信の揺らぎ、の間のパワーシフトがはらむ深刻なジレンマ「トゥキディデスの罠」が大きな要因になります。
    以下の4つの中核概念を理解することで、米中戦争を回避できる可能性があります。
    ・重大な利益を明確にする
    ・中国の行動の意図を理解する
    ・戦略を練る
    ・国内の課題を中心に据える
    中国がアメリカに並び、追い抜くのは遠くない未来に実現すると思われます。両国の指導者が、大きな衝突を回避することを強く望みます。

  • トゥキディデスの罠と言う考え方を軸に、歴史の事例を振り返りながら米中関係の危機を考える書。読みやすく、また歴史を整理するうえでとても勉強になった。特にTheodore Roosevelt大統領の時代を中心に、米国も新興Superpowerとして強引なことをしてきたのではないか、と言う視点は興味深かった。

  • アメリカのと中国の新興国・超大国の覇権戦争がおこるのか?
    本書のすごい点は、中国の能力を高く評価したうえでそれに対して冷静に見ている点、アメリカの国際社会に対する振る舞いを批判的に見ている点である。

    リアルパワーではアメリカは中国に勝てなくなる日が来る
    (人口動態及び人口数から)
    だがソフトパワー(基本的人権の尊重、リベラル的な価値観、多様性の尊重)は中国に圧倒的に優位に立つ。

  • 著者は、ハーバード大学ケネディスクール初代院長で、レーガン〜オバマ政権の歴代国防長官の顧問を務めた国際政治のエキスパート。

    古代ギリシャで、スパルタに挑んだアテネの脅威が、スパルタをペロポネソス戦争に踏み切らせた。
    そのことから、著者は、新興国の台頭が覇権国を脅かして生じた構造的ストレスが、新旧大国の衝突に至る事象を、歴史家トゥキディデスの名に因んで「トゥキュディデスの罠」と呼ぶ。
    ドイツ対イギリス(第一次大戦)や日本対アメリカ(第二次大戦)など、過去500年の新旧大国の衝突16ケースをひもときながら、現代における米中戦争の可能性と回避の方策を論じる。

    トゥキディデスは、対立構図を戦争に発展させる大きな要因は三つ、「国益」「不安」「名誉」だと言う。
    それにしても、本書内で論じられる、100年前のアメリカと今の中国の類似性には驚かされる。
    セオドア・ルーズベルトなんて、世界史の教科書で名前を知っている程度の人物だったが、米西戦争、モンロー主義の徹底、パナマ運河、アラスカ国境問題などでの傍若無人ぶりは習近平顔負けだ。

    16のケースには日本がらみのものも含まれているが、16のうち戦争突入を避けることができたのは4ケースしかないと言う。
    読んでいて、戦争に至るか否かには、地理的な近さが重要ファクターなのでは、という気がした。
    イギリスとドイツの対立が第一次世界大戦に至った例など、近接しているが故に、直接的な攻撃を受ける脅威を現実的に感じられたからこそなのではないだろうか。
    著者は、小競り合いから全面戦争に至るリアリティあるシナリオを展開するなど、米中対決の可能性が低くないことを示しているが、米中が地理的に離れていることをどう考えるべきか。
    米国が太平洋覇権の維持コストとリスクを考慮して少しずつ覇権を諦めていけば、最悪の核戦争は避けられるのではという気もする。
    もちろん、そうなった時に一番困るのは日本なのだが…

  • 大局的な視点で国際政治を考え国益を守ることの重要性を考えさせられる。足元の貿易戦争をことごとく予見している。中国が世界一の大国になることが不可避の中(PPPベースGDPでは既に米国を上回る)、米国、日本はどう振る舞うべきか。数十年、数百年単位での戦略を考える中国の凄み。

    ・トゥキディデスの罠。アテネの台頭とスパルタの不安。新興国が覇権国に取って代わろうとした16件のうち12件が戦争になった。
    ・2011〜2013年に中国が製造・使用したセメントの量は、アメリカが20世紀全体で製造・使用した量より多かった。
    ・習近平の野望の中核には、中国を世界の中心と見なす中華文明の伝統的な考え方がある。中国語で中国とは、真ん中にある王国という意味だ。真ん中にあるとは、天と地の間にあるすべての中心という意味だ。
    ・20世紀の初めに西半球からイギリスが撤退したように、アジアに超大国が生まれた以上、アメリカもアジアから去るべきだというのだ。

  •  本書の主題は著者の造語の「トゥキディデスの罠」だが、米中戦争が不可避とまで断定しているわけではなく、原題の「Destined for War」は少し言い過ぎかもしれない。しかし中国の台頭と米中衝突の危険性に関し、非アジア専門家による分析は新鮮だ。
     過去のケースの分析で、19世紀末以降の日本が、中露次いで米との戦争に一直線に向かっていったかのような記述には違和感がある。他方、著者は繰り返し、指導者が必ずしも望んでいなかったのに結果的に緊張が高まりまた戦争に至った事例を挙げている。「トゥキディデスの罠」とはすなわち「戦争をもたらした構造的要因」であり、日本もそれに嵌まったということだろう。
     米中衝突があるとしても、限定的なものに留まらず大規模戦争に発展する可能性を専ら挙げていることや、尖閣諸島を巡る日本の「挑発」が火種となるシナリオを挙げていることには若干首をかしげる。しかし、非アジア専門家はありそうな最悪のケースとしてここまで考えているということだろう。
     結論部で著者は、1)重大な利益を明確にする、2)中国の行動の意図を理解する、3)戦略を練る、4)国内の課題を中心に据える、の4点を戦争回避の努力として挙げている。うち1と4からは、アジアへの米の関与を減らすべきという主張が行間から透けて見えなくもない。

  • 254p:コンロンブスは……島の福王の称号
    →コロンブスは……島の副王の称号
    277p:冷戦集結
    →終結

  • 東2法経図・6F開架 319.5A/A41b//K

  • 覇権を持つ国と新興国の間の緊張の高まりが戦争に至ってしまった事例と、戦争を回避した事例をあわせて提示。現在の米国と中国が、どうすれば衝突を回避しうるかを論じた本。一方で、衝突が起こりうるシナリオについても詳述。

    アジア太平洋地域と欧州の地政学リスクを考えるためにとても参考になった。

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著者プロフィール

一九四〇~。ハーバード大学ケネディ行政大学院教授。政治学者。専門は政策決定論、核戦略論。ハーバード大学卒業後、オックスフォード大学で修士号、ハーバード大学で博士号取得。一九七二年から現職。クリントン政権時代に国防総省スタッフとしてウクライナ、ベラルーシなどの核兵器廃棄政策に関与。一九七一年に刊行した『決定の本質』は政策決定論の必読文献。他に『核テロ』、『日・米・ロ新時代へのシナリオ』(共著)。

「2016年 『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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