幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102480

感想・レビュー・書評

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  • この本が残酷な所は、これから、個人が、
    「好きなことで生きていく」「得意なことで生きていく」ことが、
    「正しい生き方」であると、言っている点だと思います。

    少し前の、日本では、それらの価値観は、「正しくない生き方」とされ、
    全否定されていました。

    強者以外は、それらの言葉を口にはできませんでした。
    「そんな人生甘くないよ」、「もっと現実をみろ!」というのが、
    その価値観を否定する、もっともスタンダードな反応です。

    しかし、ここ十数年で、
    日本と日本人を取り巻く環境がガラリと変わってしまいました。

    相変わらず、政府は、経済成長、経済成長と言っていますが、
    成長できる資源は、日本は、どんどん減少しています。

    多くの識者が指摘していますが、日本の国際競争力は、
    もはやかなりの分野で、失われています。
    これから、競争力をつけるといっても、その担い手である、
    人材の絶対数が著しく減少するので、
    今の状態を維持するのも、やっとだと思います。

    また、上場企業が倒産することは、珍しくなくなりました。
    リストラは今や当たり前となり、組織に依存して生きるというのが、
    かなりリスクな生き方になりました。

    日本は、超高齢化社会+人口減少社会+少子化+労働者数の減少という
    未曽有の社会に突入し、社会の様々なシステムが機能しなくなっています。

    橘氏の一連の著作は、個人が経済的合理的に生きるには、
    どうすればいいか、個人が国家や組織に依存せずに、
    どう生きればいいかという視点で書かれたものが多いですが、
    この著作では、個人の生き方をリスクヘッジする上での
    最適化する「生き方」を述べています。

    それが、自分の持っている資源(人間関係、能力、資産等)を、
    「好きなこと生きていく」、
    「得意なことで生きていく」へ投入するというやり方です。
    これが、最も個人を最適化できる生き方です。

    何かに依存することでしか安定を感じられない、そうでなければ、
    不安になるというのが、
    多くの日本人のメンタリティーです。

    以前は、会社が豊かになれば、個人が豊かになりました。
    今は、全くそうではありません。
    それは、世帯収入を見ると、はっきりします。
    94年比較で、2割以上収入が低くなっています。一方GDPは増加しています。
    一生懸命努力してきましたが多くの日本人は、貧しくなりました。
    今後は、もっとこの傾向が顕著に出てきます。

    以前まで美徳とされていた人生観や労働観が、全く役に立たなくなっています。
    それを認識する上で、橘氏の著作が一定の指示を受けるのは、非常に頷けます。

  • 幸福のインフラが、金融資産、社会資本、人的資本の3つで構成され、その構成割合で8つのタイプ(リア充、プア充、、、)と分けるのは極めてシンプルだが、その通り。各種専門家の研究内容をエビデンスとして採り上げるので、説得力あり。
    主張はシンプルで合理的。しかし、それを実現するためには政治による意思決定が必要。そこが一番の問題。すっきりした読後感とは裏腹に、一種絶望的な気分になる。

  • この本は幸福を研究しています。橘さんの悪魔的思考で幸福を考えている、というところが面白い。現代の、この日本という国で、どうやって幸福になることができるのか?それを3つの資本と3つの資産を使って考察しています。その結果、橘さんが最終的に提示する「幸福になる方法」というのは、とてもシンプルな答えです。確かになるほどねぇー、と思いました。だけど、それを書くとネタバレになるので書きません(笑)気になる方は本書を読んでみて下さいね。

    今回は、本書の中で面白いと思った考え方をひとつ紹介いたします。それは「幸福製造装置」という仮想モデルを使って、幸福を考えているところです。それによれば「幸福というアウトプット」を得るには、自分の中にある「幸福製造装置」に、3つの資産と資本、金融資産、人的資本、社会資本を材料としてインプットしなければならない、ということ。
    結果、出来上がる製品としての「幸福」の質と量は、インプットする量と、各自が持っている「幸福製造装置」の変換効率によって変わってくるということ。変換効率というのは同じ量と質の資本や資産をインプットしても、人によって幸福に感じる度合いは違ってくるということですね。これを変換効率と表現しています。

    この「幸福製造装置」の具体的な例を挙げてみると、例えば200円という金融資産を使って、缶ビールを買う。すると「うまいなぁ〜」という幸福を感じる。つまり、200円が「うまいなぁ〜」という幸福に変換された、ということですね。で、その「うまいなぁ〜」という幸福感の量と質は、同じ200円を使っていても、人それぞれ全く違ってくる、これが「変換効率」ですね。人によっても違うけど、同じ人でもタイミングによって、調子によっても変わってくる。このあたりは調整は難しい。

    だけどはっきりしているのは「幸福製造装置」にインプットするものがゼロならば「幸福」は出来上がらないということ。3つの資産と資本の話に戻りますが、金融資産とはそのままお金のこと。人的資本とは個人でいうと労働力や能力ですね。多くの人は労働という形で「人的資本」を労働市場に「投資」することによって、「お金」という「金融資産」を得る。それから社会資本というのは人とのつながり、などですね。

    話は脱線しますがこの3つを使って、橘さん言うところの「人生パターン」というのを分析しているところも面白い。

    例えば「プア充」と言われる人たち。マイルドヤンキーなんて言い方もしますね。地元で昔からの仲間と楽しく生きている人たち。彼らはそれほど収入も高くないけれど、結構、幸福度が高い。なぜなら、仲間のつながりという「社会資本」をたくさん持っているからなんですね。

    対して「リア充」と言われる方たちはどうか。たいてい趣味に、付き合いに「金融資産」を投資しているので、それほどお金はない、だけど、友人が多く「社会資本」が多い、加えて仕事も出来たりするから「人的資本」も多い。

    レアなパターンとしては「金持ちトレーダー」というのもいる。ひたすら部屋にこもって株やFXなどの投資に励んで成功している人たち。この人たちは、当然マーケットを読む能力と、自分をコントロールする意志力という「人的資本」をたくさん持っている、加えて成功しているわけだから「金融資産」も持っている。ところが、部屋にこもりきりで友達とは疎遠、ということで「社会資本」はあまり持っていない。

    最近現れたのが「ソロ充」という人たち。それほどお金もないので「金融資産」はない。しかし人付き合いを極力減らすことによって、つまり手持ちの「金融資産」を、自分の趣味や能力向上に振り向けることによって、広い意味での能力「人的資本」をたくさん所有する。変わり者っぽいですが、そうとも限らず、起業したばかりの人たちも、当然付き合いより仕事ということになるのでこのパターンに入る。

    と、その他にも、いくつかのパターンがあるのですが、それぞれが、それぞれにたくさん持っている、または持っていない資本と資産があって、それをどのように投資していくのか?ということが大事。で、問題は持っている資産や資本がひとつしかないと、それを失った際にはかなり危険、つまり幸福が製造できなくなる、つまり「不幸」になってしまう、ということ。

    上の例ですと、ソロ充は「人的資本」ひとつしかないので、例えば何らかの事情があって、仕事をすることができなくなった、つまり「人的資本」を失ってしまうと、他の資本に頼れない。また「プア充」はもしも、つながりから、追い出されてしまった、またはその集団が崩壊してしまった場合、他の資本がないから厳しい。ということで、やはり常に複数の資本と資産を持っておくようにしておかなくてはならない、ということ。

    おっと、ネタバレはまずい、とかいいつつ、ほぼほぼ、橘さんの結論に近づいてきてしまった(笑)ということで、このあたりで止めときます。でも、ここに書いている以外にも、悪魔的に面白い事がたくさん書いてありますよ(笑)

  • 日本人は幸福になろうと「強いつながり」を求めるが、その結果、(個人でなく)「間人」として人間関係の中に埋め込まれ、身動きが取れなくなる。そして長時間労働や過労死、過労自殺。

    日本は「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」の国際比較で57カ国中最下位。


    人生の土台となる3つの資本=資産。
    「金融資産」自由、
    「人的資本」自己実現、
    「社会資本」共同体、人間関係、繋がり

    幸福の製造装置(ブラックボックス)

    資本を一つしか持ってないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥る。

    「自由」とは「誰にも、何者にも隷属しない状態」のこと。そのためにはお金が必要。

    テレビ局の番組の政策方針。粉飾決算。不正燃費データ。。生活を会社に依存するサラリーマンであれば、会社の方針に従うのは(隷属するのは)当然かも。ただそれを「自由」とは言わないだけ。

    幸福の話をするには「限界効用の逓減」に触れなければならない。暑い日のビールの美味しさ(効用=幸福度)は1杯目が最高で、2杯3杯と追加していくと減っていく(効用の変化=限界効用)。これはお金にも当てはまる。日本では年収800万円(世帯年収1500万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる。お金がありすぎるてお金のことを考えすぎると不幸になる。

    資本主義ってなんだろう?資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」株式会社とは複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み。また株式会社の特徴は借金(融資など)で株主資本にレバレッジをかけること。

    マイナス金利の世界では、賢い人は利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する。すなわち「働く」こと。

    お金持ちの倹約のルール「同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい」これで自然と倹約することになる。

    収入は多ければ多いほどいい。でも同じ収入なら(あるいは多少少なくても)自己実現出来る仕事がいい。

    「知識社会化 + グローバル化 + リベラル化」の三位一体は知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会。そこから脱落した人の怒りは社会の保守化=右傾化を招き、トランプ現象となっている。

    企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけ。

    日本企業は本社採用と現地採用といった国籍差別や年功序列、終身雇用といった日本的雇用制度を取っている限り(グローバル化リベラル化に対応できず)負け続ける。
    サラリーマンは日本だけ。

    オンリーワンでナンバーワンの戦略。スペシャリストになるには、1)好きなことに人的資源の全てを投入する。2)好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。3)官僚化した組織との取引から収益を獲得する。

    世の中になぜ会社があるのか?それは「分業した方が効率がいい」から。

    「幸福」は社会資本からしか生まれない。

    人間関係には「愛情空間~5」「友情空間、イツメン~30(政治空間~150)」「貨幣空間~∞」

    日本の社会における「友だち」は厳密なルールがある。中学、高校の同じクラス。先輩、後輩とは違う。「友だち」は奇跡。

    「統治の倫理」(権力争い、武士道、国盗り、天下平定、勝者総取り、嫉妬、憎悪、殺人、敵を殺すことでより大きな権力を獲得する、戦争に駆り立てる血なまぐさい世界)と「市場の倫理」(お金儲けゲーム、商人道、一番にならなくてもほぼ裕福になればハッピー、信頼関係、契約履行、他人と協力)

    あなたは個人主義(欧米人型、かけがえのない自分)か間人主義(アジア人型、共同体の中の自分、他人の上から目線を不快に思う)か?

    日本的経営はアメリカ企業をも変容させた。ボスではなく同僚・仲間によるチェック(チームワーク重視)。製造業、レストラン、介護などの労働現場での生産性を上げた。

    「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切な人との小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できる。強いつながりを家族に最小化し、それ以外の関係は全て貨幣空間に置き換える。その上で一つの組織(伽藍)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとして人的資本(専門知識)を活かし、プロジェクト単位で気に入った仲間と仕事をする。

    本当の自分はどこにいるか。あなたの過去にいる。本当の自分は幼い頃に友達グループの中で選び取ったキャラなのかもしれない。大人になるということは子供時代のキャラを捨てることである。心の中に子供時代のキャラが残っていて、「見つけてよー」と訴え続けているのかも知れない。

    幸福な人生とは。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現すれば(金銭的不安から解放され)自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子供の頃のキャラを天職とすることで「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。

    ①金融資産は分散投資する。
    ②人的資本は好きなことに集中投資する。
    ③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。

  • 橘玲さんの本は、毎度世の中を今までにない視点で見ることを教えてくれる。しかも、裏付けをしっかりつけているので納得感も凄い。
     今回は“生命誕生のプログラム遺伝子の目的”から始まった。まるで『アマデウス』のようだ。

     この語りを細かに記憶にとどめるという姿勢はない(話しのネタとしては相変わらず宝庫)。頭の中を、刺激されながら通過したこの記憶さえあれば、そして橘さんのような囚われのない視界を持つ人たちの眺めている視線を借りて世の中を眺めることができれば、自分のが生きている世界が自ずと創られていく。それが本を読むことのひとつの目的なんだな。

  • お金は幸せじゃないけどあったほうが良い。
    でも、お金が幸せ、ないと生きていけない、と思った途端、不幸は始まっているのかもしれない。
    幸せになりたければ、不幸な人と縁を切れ、
    綺麗になりたければ、綺麗な人と仲良くなれ。
    確かにかなり理にかなっていると思った。
    毒舌なことも多々言う筆者ではあるけれども、これまたこの人も寄り添いながら真理を言う人で、素晴らしい一冊

  • 文章がシンプルで読みやすく、知的好奇心をとてもくすぐる。
    引用や過去の本の内容が多い。
    資本と資産を考える上でとてもオススメ

  • 経済学的な視点から幸福度を考える

    読んでいて、納得出来る部分もあったが、やや極論的な理論の展開をしている印象も受けた一冊。


  • 3つの資本は面白い。何となく、色々なケースが当てはまりそうな気にさせてくれる。他の本で読んだ内容の受け売りも多く、"There's nothing under the sun."とはよく言ったものだと実感。

  • 幸福になるために3つの資本(金融資産, 人的資本, 社会資本)のどれか2つ以上から恩恵を受けることであると説いています。お金で自由を、働くことによって自己実現を、人間関係から幸福を得ることができるとしています。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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