新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて
- ダイヤモンド社 (2017年6月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478069721
感想・レビュー・書評
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言わずと知れたアウトドアの最強ブランド。
その経営者の経営哲学がふんだんに書かれた本です。
仕事とレジャーの融合が、
どう社員の生産性に高めるのかという視点で、
日本でも以前かなり話題になった。
少なくない日本企業も、社員を遊ばせれば、
より生産性が上がるのではないかと考えた。
ただ、実際は、かなり表面的な「働き方改革」で終わった印象がある。
表面的なモノを模倣して、
自分達で、新たに作り変えるというのは、
日本企業が得意とする所だが、そこからは、決して哲学は生まれない。
よって、経営者と社員との「問題意識」の共有はできない。
日本の労働生産性は、先進国ぶっちぎり最下位だが、
経営者が、「どう人材を活用すれば、社員が幸せになり、会社の利益が上がるか」
その哲学を持ち合わせていない。
よって、経営者と社員との問題意識のずれが深刻化している。
利益を上げて、人件費を下げるのが、この20年の日本のやり方だが、
これは、企業の規模を上げるという、高度経済成長の論理と、全く変わらない。
結果、現在、多くの日本企業の日本人社員のモチベーションは世界的にて、
非常に低い。
本当に大事なのは、経営者と社員との、
「問題意識」の共有だと思います。
このパタゴニアは、この問題意識の共有が深い所まで、経営者と融合している。
その結果として、就業時間中に、サーフィンだと思う。
この意味で、哲学なき、モノマネは、百害あって一利なし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
パタゴニアがますます好きになる。
起業家精神について。それがなんたるか理解したければ、非行少年に学べ。
階段を一段飛ばしで駆け上がってしまうほどわくわくしながら出社できるようでなければならないし、思い思いの服を着た仲間に囲まれて仕事したい。仕事時間は柔軟でなければならない。いい波が来たらサーフィンにいきたいし、パウダースノーが降ればスキーにいきたいし、子供が体調を崩したら家で看病してあげたいからだ。仕事と遊びと家族の境目は曖昧にしていきたい。
2017. 9.30 -
パタゴニアについてはアンチだったが、一気に好きになった。すばらしいブランディング。気持ちよく働けるだろうな。
実際の商品でももう少し頑張って欲しい。 -
特に、アパレル、繊維関係等の職場で働かれている方に読んで頂きたいです。
読んだ事ある方もいらっしゃると思いますが。 環境問題への注目が以前よりも増していると感じる昨今ですが、「問題」ではなく、「危機」と捉えて行動していかないと、この現状は良くならないのかなと感じました。
僕の働いている会社も含め、「環境問題」に対して社会の流れに身を任せてるような企業、産業が自主的に、少しの代償を払ってでも行動できるようになって頂きたいです。
シュイナードさんの言葉をお借りして-
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いまは異常な時間です。この世界的な大流行がはっきりと示しているのは、私たちがやらなくてはならないことをはぐらかしていると結局は私たちが痛い目に合う、ということです。
私たちは世界的大流行が起こるのは以前から知っていました。そして何もしませんでした。私たちは地球温暖化について何 十年も知っていました。そして何もしませんでした。私たちが選 択しなければならないのは、行動することです。
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patagoniaのダウンジャケットは軽くて温かく、生地も丈夫でかれこれ10年ほど愛用している。本書を読み、私が持つダウンジャケット一着に、どれほどの思いが込められているのかを知った。経営理念にも感銘を受け、ますますpatagoniaのファンになった。我々消費者に対して、「自社の製品も含め服を買うな、良いものを選択して長く使え」という内容を広告にする企業はpatagoniaをおいて他にいるのだろうか。資源には限りがあり、余計なものを買わないことで、節約できるだけでなく地球環境を守ることにも繋がるのだと、イヴォン・シュイナード氏は述べる。私がこれまで生きてきた中で、本当に大切にして長く着た服は何着で、意味もなく買っては捨てた服は何着になるのだろうか。考えるだけで過去の自分の行いが恥ずかしい。今後無駄な消費を控えようと決心するよいきっかけになった。
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信じることを自分なりに進めてきたら連続的にいまの姿に至ってきたということのよう。それって素敵だなとまず思った。
前半で印象に残ったのは、
○いい波がきたらサーフィンに行く、あるいは子の体調が悪ければ看病するというように、仕事と生活の垣根をゆるくするというマインド(これこそ働き方改革だよなぁ)、
○Management by Absence(MBA):外から刺激をえてくるというトップの在り方、
○事業を広げすぎて失敗するという経験を踏まえてこその学び(挫折あってこそ)、といったところ。
後半は経営理念等が語られる。
○理念は規則ではなく指針(いろんな領域に共通して適用されうるもの)。それを社員ひとりひとりに伝えるべき。
○「最高の」物を作る。シンプルの極致、修理可能性、美しいか、等々。
○虚栄心や物欲や罪悪感に訴えるのでなく、事実と理念に基づいてPRする。時には「このジャケットを買わないで」とまで広告する。
○アウトドアを愉しむ人こそここで働くべき。働きやすさと多様性は大事。
…そういったことに加えて、「地球環境」は一番思いが強く、重要視しているうえに異質。
「行動していれば憂鬱にならずにすむ」とも書いていた。なるほどとも思ったが、そういうことなのか?とも思った。
いずれにせよ、指針みたいなことを示すのは大事。
また、皆伐や林道造成により土砂が川を埋めるという指摘は、一考に値する。 -
patagoniaの歴史から理念まで全てがわかるのが本書。やはり理念が根本にあって、理念に即した経営を続けることが、人気の理由なのだろう。
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CSRごっこではない本気の環境経営とはなにかをパタゴニア社の創業者が語る。これほど素晴らしい会社だと知らなかった。
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伝染する情熱
最後に勝つのは自然だ -
…私の役目は、社外に出て、新しいアイデアを持ち帰ることだったと言える。会社には、外に出て世間の温度を体感してくる人間が必要だ。だから、私は、新製品や新市場、新素材などのアイデアを見つけてはわくわくしながら帰社していたわけだ。ところがそのうち、世界がすごい勢いで変わっていくのを見るようになり、帰社すると環境や社会の荒廃について語ることが増えていく。
我が社も資源や能力の限界を超えていた。世界経済と同じように、持続可能な成長に頼ってしまっていたのだ。だが、問題がなくなることを祈って目をそらすなど、小さな会社に許されない。優先順位を再検討し、新たな方針を定めなければならない。ビジネスの進め方を根底から考えなおさなければならない。
私は、幹部を10人ほどアルゼンチンに連れて行き、本物のパタゴニアを、風の吹きすさぶ山々を歩きまわった。そして、荒野を歩きながら、なぜビジネスをしているのか、パタゴニアをどういう会社にしたいのかを検討した。10億ドル企業になるのもいいだろう。だが、誇れない製品を作らなければならないのでは意味などない。我々が一企業として環境にもたらしている悪影響を抑えるにはどうすればいいのかも検討した。我々が持つ共通の価値観についても話し合ったし、パタゴニアにどういうカルチャーがあるから、みんな他社ではなくパタゴニアに来たのかについても話し合った。
帰国後、我々は初めて取締役会を招集することにした。メンバーは信頼できる友人や専門家である。そのなかに、作家であり、熱心な環境保護論者でもあるジェリー・マンダーがいた。あるとき、我が社の価値とミッション・ステートメントをうまく言葉にできずにいると、昼食休憩でジェリーが姿を消し、完璧な文章を手に戻ってきた。
我々は、無軌道な成長により、それまで会社に成功をもたらしてくれた価値観が危うくなっていると感じていた。この価値観は、これさえあれば大丈夫というハウツーものの業務規定に書けるものではない。常に適切な問いを発し、適切な解答を得られる哲学的な指針、感覚的にぴんと来る指針が必要だ。我々は、これを「理念」と呼び、部門や職務ごとにひとつを掲げることにした。
あの日、ジェリー・マンダーが取締役会に示した文章が次のコラムである。
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大前提として、地球上の生命が危機の時代に直面しており、そのような時代であることから、今後は、生き残れるか否かが社会的に注目されるようになっていくと我々は考える。生き残れるか否かが問題にならなかったとしても、我々人間が体験する生活の質は問題になるはずだし、生物多様性や文化的多様性、生命を維持する地球の力が失われつつあるなど、自然界の悪化も問題になるはずだ。
このような状況にいたった根本原因は、企業社会の価値観など、我々の経済体制を支える価値基準にある問題となる企業価値としては、まず、拡大と短期利益を最優先とし、品質、持続可能性、環境および人類の健全性、地域社会の状態などを軽んじる姿勢が挙げられる。
当社は、このような点を的確に認識し、企業価値の優先順位を適切に調整するとともに、人類と環境、両方の状態を改善可能な製品を作っていける経営を基本的な目標とする。
このような変革を実現するため、我々は、今後、以下に掲げる価値を基準に経営の意思決定を行っていく。項目は重要なものから並べてあるわけではない。どの項目も重要度に違いはなく、総体として、環境および社会が直面している危機を和らげるため、経済活動において重視しなければならない価値観の「生態系」を構成するものである。
・当社における意思決定は、すべて、環境危機という文脈で行う。害悪をもたらさぬよう、できるかぎりの努力をすること。可能な場合には必ず、問題を減じる行動を選ぶ。改善は果てしなく続けるものであり、みずからの活動について評価や評価をくり返さなければならない。
・一番注意すべきなのは製品の品質である。ここで高品質の製品とは、耐久性が高く、天然資源(原材料、エネルギー、輸送など)をあまり消費せず、多機能で飽きがこない、用途に適していることから生まれる機能美があるものを指す。うつろいゆく流行は、我々が企業価値とするものでない。
・取締役会も経営陣も、健全な地域社会が持続可能な環境の一部であると考える。さらに、我々は地域社会の一部であるとも考える。すなわち、地域社会とは当社社員を含むものであり、また、仕入先や顧客をも含むものである。我々はこれらの関係すべてに責任を持つと自覚し、全体の利益を念頭に意思決定を行う。社員の雇用については、文化や人種による差別を避けつつ、基本的価値観が当社と同じ人物を採用していくものする。
・最優先とはしないが、企業活動においては利益を追求する。ただし、成長および拡大は当社の本質的価値に含まれない。
・事業活動が環境に与える負の影響を削減するため、我々は、総売上高の1%あるいは税引き前利益の10%のどちらか大きいほうを税金としてみずからに課す。本税の収益はすべて、元の地域社会と環境活動に寄付する。
・取締役会から経営陣、社員にいたる全社において、パタゴニアは、会社の価値を反映する意欲的な活動を推奨する。具体的には、他社が価値観や行動を見直すよう、企業社会に影響を与える活動や、環境や社会が直面する危機を解決しようと草の根活動や全国キャンペーンを展開する者を行動面や財政面において支援する活動などが考えられる。
・社内について言えば、まず、経営幹部は一体となり、透明性を高く保つものとする。 その一環として、「オープンブック」制により、プライバシーや「業務上の秘密」を侵さない範囲で意思決定の詳細を社員が知れるようにする。どのレベルの業務であっても、ざっくばらんな意見交換、協力的な雰囲気、できるかぎりの簡素化をうながすとともに、活力や革新性も求めていく。
会社は、1991年、意外なほどすばやく生まれかわった。たちまちのうちに焦点が定まり、地に足のついた会社となったのだ。その結果、成長は持続可能なレベルになった。お金は慎重に使うようになったし、よく考えて経営するようになった。そして、3年間、管理職の大幅削減、在庫管理の一元化、販売経路の集中管理化を進めた。この変革を実現できたのは、理念を明文化したことセミナーでパタゴニアのカルチャーを共有したからだ。一説によると、優れた投資家や銀行家は、成長企業のことなど、大きな危機をひとつ乗りこえるまで信用しないらしい。この話が本当なら、我々も、ようやく信用してもらえる段階に到達したことになる。
カミ博士の助言には従わなかったが、それでよかったと思っている。あのとき会社を売り、得た資金を株式市場に投資していたら、2008年の株価暴落でほとんどを失い、環境保護活動に寄付する資金などたいして残らなかったはずだ。ビジネスを続けていなければ、苦労のすえ、持続不可能な成長をめざしているという点でパタゴニアと産業経済全体がよく似ていると気づくこともなかったはずだ。
■我々の考える理念とは
ここで言う「理念」とは、我々の価値観をパタゴニアの各部門に適用できる形で表現したものである。具体的には製品デザイン、製造、販売・流通、マーケティング、財務会計、人材活用、経営指針、地球環境についての理念があり、ウェアのデザインから製造、販売にいたるプロセスをパタゴニアがうまく実現できるように書かれている。だが、ほかの事業にも応用できるはずだ。実際、建物の設計や建築について、我々は、ウェアデザインの理念を流用していたりする。
事業環境がどんどん変化していくというのに、なぜ理念を文書にして留め置くのだろうか。インターネット市場が広がっていく、NAFTAやGATTといった自由貿易制度の影響が大きくなる、技術革新でデザインや製造が大きく変わる、社員がどんどん入れ替わり、その構成も変化していく、顧客の好みやライフスタイルも移ろっていく――そのなかで、どうやってパタゴニアは理念を守っていくのか。
その答えは「我々の理念は規則ではなく指針である」だ。 進め方の基本となるものであり、理念は「石のように変わらない」が、その適用方法は状況次第で変わる。具体的なやり方は変わっていくかもしれないが、会社の価値観やカルチャー、理念はいつまでも変わらない。長く続く事業というのはそういうものだ。
パタゴニアでは、この理念を社員一人ひとりに伝えるようにしている。だから、全員、選ぶべき道がわかっており、上司の指示を待つことなく、自分で判断することができる。
同じ価値観を持ち、各部門の理念を知っているから、我々はひとつにまとまることができる。効率を高めることもできるし、コミュニケーション不足から混乱を生む愚を避けることもできる。
この10年間にも失敗はいろいろとあったが、道を見失って、ただぼうぜんと時を過ごすことはなかった。我々には理念があるからだ。これはおおまかな地図のようなもの。山の世界とは異なり、前触れらしい前触れもなく地形がどんどん変化するビジネスの世界において、ただひとつ、頼りにできるものである。
1.製品デザインー常に最高を目指す
・機能的であるか
・多機能であるか
・耐久性は高いか
・修理可能性
・顧客の体にフィットするか
・シンプルの極致か
・製品ラインアップはシンプルか
・革新なのか、発明なのか
・デザインはグローバルか
・手入れや洗濯は簡単か
・付加価値はあるか
・本物であるか
・美しいか
・流行を追っているだけではないか
・柱となる顧客を念頭にデザインしているか
・不必要な悪影響をもたらしていないか
2.製造ーコストより品質を優先する
3.販売・流通ー顧客と関係を結ぶ
4.マーケティングーメッセージを伝える
パタゴニアのイメージは、その創業者や社員がアウトドア好きであること、情熱的であること、そういう価値観から生まれる。実践的で明快に説明できるものもあるが、定型化はできない。それどころか、本物であることがイメージを支えているわけで、定型化したら台なしになってしまう。そもそも、パタゴニアが本物だと感じられるのは、イメージの構築など気にしていないからだったりする。公式なしでイメージを維持するには、そのイメージに恥じない行動を続けるしかない。つまり、我々がどういう人間でなにを信じているのかがそのまま現れているのが我々のイメージなのだ。なにがイメージの中核をなすのだろうか。我々は世間にどう見られているのだろうか。まず、なんといっても、世界一のクライミング用具を作る鍛冶屋という原点だろう。そこで働いていたのは自分を頼みとする自由思想のクライマーやサーファーで、彼らの信条や心構え、価値観からパタゴニアのカルチャーが生まれ、そのカルチャーからパタゴニアのイメージが生まれた。みずから使う人々によって作られた妥協のない製品、本物かつ高品質の製品というイメージが。
5.財務会計ー利益を目的としない
6.人材活用ー働きやすさを重視する
7.経営方針ー価値観を共有し挑戦する
8.地球環境ー企業として責任を全うする
→6つの環境理念
①よく吟味して暮らす
②自分自身の行動を正す
③罪を償う
④市民が主役の民主主義を後押しする
⑤善行をなす
⑥他社を動かす