金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478068403

感想・レビュー・書評

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  • ・お金が「他人ごと」で「お客様ごと」ではない金融機関
    ・お客様に提案した金融機関の担当者が「その頃には俺もお前もいない」から成り立ち得る無責任や利益相反、顧客不本位

    これらに対する批判本です。的を得ています。

  • 日本の金融行政にも影響を与えている英国人の教授によって書かれた本で、金融業界の問題点を鋭く指摘している。金融化が行き過ぎ、実体経済から離れて巨大化し複雑化したことを特に問題視している。それが非常に悪い形で示されたのが2008年の金融危機だが、「リーマンはシステム上で重要な金融機関であったかもしれないが、(経済的に)重要な企業ではなかった」と本質をうまく説明しているのには恐れ入る。また、「旅客機は乗客のコンセンサスに基づいて飛ぶわけではない」と表現し、金融主導の考え方がもたらす危険性を指摘している。そうした中で、「金融業界に横行する特権意識の強さ」や「金融業界に巨額の利益と報酬をもたらすからくり」に触れているが、「金融が存在するのは家計と企業に奉仕するためである」ことを忘れた金融業界へのいら立ちが読み取れる。オリジナルの題名は「Other People’s Money」。自分の懐が傷むことなく、他人の金を使って短期的に利益の最大化を目指す金融ビジネスへの警告であると言える。雄牛の寓話や牛乳屋で流動性の説明をしている箇所など、わかりやすい説明や洒落た比喩が随所にちりばめられており読み物としても面白い。

  • LSE教授にしてガバナンス論の権威による、金融の本質を問う本。端的に言って激烈な批判本。

    原題は”Other People‘s Money”、「他人のカネ」。これともうひとつの引用、「そのころには俺もお前もいない」、この二つで事実上本書は要約できてしまう。

    昔はそれなりに企業の目利き、という地味な役割を果たしていた金融が、単なる内輪の賭博、つまり同業同士のトレーディングに化けたひとつのきっかけとして、売っている人間自身が中身を知らない商品、すなわち証券化を激しくやり玉に挙げている。もうひとつ、お金を動かすことに対して手数料が生じる、という設計が壮大なアクションバイアスを呼ぶことも。そしてそれでも儲かることのひとつの原因として、規制が「少なすぎる」のではなく、「多すぎるにもほどがある」(序文より)からだと整理する。

    「Too big to failは要はToo complicated to failなだけで、しかもそれは仲間内のトレーディングが絡み合いすぎたからであって一般消費者には関係がない。金融機関を破綻させるな、という人は、その金融機関の提供するサービス(の質の高さ)を懐かしんでいるわけではなく、破綻の影響を残念に思っているだけである」。

    著者は言う。「われわれは金融を必要としている」(P338)。
    「業務範囲が絞られ」「建設的な目的を持ち」「それにふさわしいガバナンスを有し」「家計と企業に奉仕するための」機能(要は決済と資産の管理・・・)に、コーポレートガバナンスとスチュワードシップの設計で回帰することは可能だ、と。

    ・・・はい。
    で、ガバナンスが担保され、かつ無用な規制を外したときに、「業務範囲を絞り」続けることは企業にとって可能なのか、それは正しいのか。そんなこともふと思うのであった。

  • 原題の「他人の金」が本書の核心を表している。いつしか本分を忘れた金融業界が、他人の金で構築された複雑怪奇な伏魔殿で、仲介者が上前をはねる錬金術が金融の技巧として持て囃される。膨張の果てに世界を揺るがすクラッシュが発生してもなお、その倫理が改むるところが無く、搾取される側もそれを搾取と気付いていない。同じ事が今後起こらないと考える方が不自然で、それが邦題の意味にも込められているよう。平易な表現と分かりやすい論旨で書かれているので、金融の何たるかに慣れない読者も一度トライする価値のある一冊。掴みの為に巻末の短い寓話から読み始めるのも良い。

  • 本来の銀行業務は3%程度にすぎない。
    ケチャップ経済学=サマーズ=本体の価格を無視して投機ゲームをしている。
    本来ゼロサムなはずなのに、将来の損失を先取りしている。「そのころには俺もおまえもいない」ことで現在の利益を享受している。

    プレトンウッズはニューヨークからもワシントンからも遠いことから選ばれた。

    利益は情報の非対称性によるもの、と説明されているが、単に賭けをしているだけ。

    ブラックスワンによるリスクは何が問題なのかさえ分かっていないため、考慮されていない。

    効率的市場仮説の上に見逃している収益機会を探している。しかしその過程ではフォードやディズニーは生まれない。

    他人のお金でギャンブルをすることを禁止すること。

    オルタナティブと、他の資産を切り刻んだ資産の区別がつかなくなってきた。

    行く末に待つ命運からお金を前借したに過ぎない。そして返済日は気まぐれにやってくる。失われたのは他人の金。

    ボンジスキーム=ねずみ講と同じ。デリバティブの高収益も同じ。

    高いROEのためには、レパレッジを極度に高める必要がある。

    取引に対するトービン税が必要。
    預金取引をギャンブルから切り離す。
    大きすぎてつぶせない、は正しくは複雑すぎてつぶせない、に等しい。

  • リーマンショックとそれを引き起こした金融業界の欺瞞、怠慢に対してスチュアードシップ(受託者責任)に基づいた機関投資家のあるべき姿を規定した一冊。著者自身も指摘している通り、若干「時計の針を戻す」あるいは「古き良き時代の金融を取り戻す」類の施策にも思えるが、現在の金融(特に米国金融)が少なからず異常な進化を遂げてしまったのも事実であり、破壊的な変革が必要な時期なのかもしれない。

  • 東2法経図・6F開架 338A/Ka98k//K

  • 金融業界に属する身としては耳が痛く、襟を正すべき本。金融に夢を抱く人は読まないほうが良いでしょう。著者の示す金融の未来像(ナローバンクと専門金融機関?)は、まさに日本の過去の姿であり、なんとも言えない気持ちになります。

  • 投資銀行は、なんの富も生産していないということを、ずっと説明してくれるが、直観としてわかるが、具体的には、よくわからない。金融工学は用語からして、騙され感があって、ストンと来ない。長さのわりに、積み上がる理解ということがなかったのが残念です。

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著者プロフィール

ジョン・ケイ(John Kay)
イギリスを代表する経済学者のひとりであり、現在はオックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジ・フェロー。フィナンシャルタイムズ紙に長年コラムを執筆し、イギリス政府の依頼により証券市場改革案(ケイ・レビュー)をまとめたことでも知られる。財政政策研究所ディレクター等歴任。著書に『金融に未来はあるか』(ダイヤモンド社、2017年)、『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』(ダイヤモンド社、2018年)など。

「2023年 『強欲資本主義は死んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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