僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた

  • ダイヤモンド社
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感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478067307

感想・レビュー・書評

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  • 依存症に関する本。

    また、田代まさしが薬物絡みで逮捕されているけど、依存症は本人の意志が弱いからなるのではない。環境によりなるのだ。

    本書でもこう言う。
    ー 危険なドラッグに対する報われない恋に落ちるのは体ではない。物質や行動だけで決まるわけでもない。思考が、その物質や行動と、心理的な苦しみからの解放感とを結びつけて学んでしまうのだ。

    そして、依存症は「心理的な肯定ではなく強迫観念に促された愛」だという。薬物は好きではない。しかし、渇望してしまうのだ。

    環境を劇的に変えてあげなければ、彼はきっと一生薬物を断つことはできない。

    さて、この本は薬物への依存症というより、ゲームやSNSにのめり込む「行動嗜癖」のような依存症について、そういった人を産み出す「依存症ビジネス」について、メインに取り扱っている。
    と言っても、両者を明確に違うものとしているわけではない。むしろ、薬物への依存も行動嗜癖も同様のもの、そして、病のような特別なものではなく誰でも陥るもの、と論じているところが恐ろしい。

    だって、いつもなんとなくスマホいじっちゃうでしょ?
    それはもしかしたら依存症だからなのかもしれない。

    自分がさばく商品でハイになるな。まるで薬物売人の鉄則のようなことを、デジタルデバイスやSNSなどテクノロジーの開発者たちは肝に銘じている。

    巨額の富を得るために、それだけ依存性がある商品を売ることが求められているということだ。

    本書では、こうした依存症ビジネスが人を操る6つのテクニック、《目標》《フィードバック》《進歩の実感》《難易度のエスカレート》《クリフハンガー》《社会的相互作用》について、行動経済学に基づき、分かりやすく論じている。

    なるほど、目から鱗。
    こうして人は依存症に堕ちていく。

    依存症に立ち向かうための対策についても記述されているので、危機感を持つ人はぜひ。

    • やまさん
      たけさん
      おはようございます。
      いいね!有難う御座います。
      依存症は「心理的な肯定ではなく強迫観念に促された愛」だというは、ビックリで...
      たけさん
      おはようございます。
      いいね!有難う御座います。
      依存症は「心理的な肯定ではなく強迫観念に促された愛」だというは、ビックリです。
      やま
      2019/11/09
    • たけさん
      やまさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですよ。依存症を「心理的な肯定ではなく強迫観念に促された愛」と表現するのは一瞬「へっ?」...
      やまさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですよ。依存症を「心理的な肯定ではなく強迫観念に促された愛」と表現するのは一瞬「へっ?」っていう感じなんですけど
      自分がタバコやパチンコをやめられなかった時を思い返すと「なるほど!」と思います。全然美味しくないのに吸っちゃう。全然面白くないのにやっちゃう。
      今は両方やめましたけど、当時は追いつめられてました。
      依存症の怖いとこです。
      2019/11/09
  • 良著ながらタイトルで損をしている本で、勿体ないと感じました。(原題もですが、邦題の方がより残念。)
    行動経済学、マーケティング、心理学を専門とするニューヨーク大学の准教授による本著は、教育の本であり、仕事のアウトプットを高める本であり、水が高い所から低い所に流れるように怠けてしまう(私のような!)人間の性質を紐解き、「ではどうすれば良いのか?」という工夫にまで導いている本です。

    本著を読むと、依存症は当事者の心の弱さのみが原因でなってしまうものではないのだと感じます。
    古くはアルコールや薬物から始まり、直近ではソーシャルゲームやSNSに至る依存症の流れの中で、最近ではテクノロジーがそれを助長してしまっている。
    更に、最近の「ちゃんと目標を立てて、それを達成する」的な風潮が、その達成感に依存する人を生み出してしまっているという点は、この問題が一筋縄でいかないことを示しています。
    一方で、依存症に立ち向かうための解決策も3つ挙げられており、その中のゲーミフィケーションについては、優良事例だけではなく批判の声も整理されていて、仮に自分が取り入れるとしたら…?の思考実験にとても有用だなと感じました。

    本著ではウェアラブルやVRといったテクノロジーを扱いつつ、フロー体験、こんまりメゾットなんかにも触れており、タイトルを見た時の退屈な印象ではなく、世の中の多様な最新事例をベースに組み立てられ(もちろん過去の事例も重要なものがちゃんと盛り込まれた)、体系的に整理されたわかりやすい本でした。
    翻訳も非常に読みやすかったのですが、1か所だけ、「6桁の年収」はよくそのまま訳したなぁ…と。でも違和感を感じたのはそこくらいで、スムーズに読み進められました。

    ただ、スマホ依存にも触れている本なのに、どうしても読書中にスマホ見たりしちゃうんだよなぁ…(笑
    私自身の日々の暮らしにも、ゲーミフィケーションや行動アーキテクチャを取り入れる必要がありそうです。。

  • 依存症の具体例・要因・対策が書かれた本。

    現時点で個人的な依存症の兆候は無し。(強いて言うなら、Netflixのビンジウォッチング)今後何か依存症を患ったとき・依存させる何かを開発する機会がある場合に再読したい。

    行動アーキテクチャ・ゲーミフィケーションの理論で、生活習慣を良い方向に持っていくのに活用したい。もちろん諸刃の剣であることを念頭に置いて

  • 依存やめるために環境をかえる
    スマホを寝室に持ち込まない
    やめたいことは別の行動に置き換える


    依存は環境と学習で作られる

    意思でやめるのは難しい

    毎回報酬があるより
    ランダムにあるほうがやめられない

    3分の2の人が睡眠不足

    スマホ
    寝室に持ち込まない
    机の上に置いておくだけで
    会話などの集中力が落ちる

    依存させる共通点
    ポイント 
    バッチ
    リーダーボード

    やめるためには
    別のことをやる

    好きと欲しいは別

    目標追求は
    敗北と新たな目標の繰り返し

  • 行動嗜癖についての本。

    他人同士の被験者を同じ部屋にいれて会話する心理実験で、スマートフォンを横においたまま会話する場合と紙のノートを置いて会話した場合、スアートフォンが手元にあると打ち解けられない。
    スマートフォンのむこうに世界が広がっていることが頭にあるので目の前の会話に集中できない。

    マイクロソフトの実験から、ソーシャルメディアで過ごす時間が長い被験者はそうでない被験者に比べて集中して課題をこなす能力が低くなっていいたのだ。
    2000年に発表された平均的な人間の注意力持続時間は12秒。2013年には8秒になった。金魚の注意力持続時間は9秒。

    「addiction」は古代ローマでは「奴隷となる宣告を受ける」という意味。

    フロイトもコカインの中毒に苦しみ、使用をやめた。

    ゲームアプリ、フラッビーバードも依存者の増大で公開をやめた。

    ベトナムセンセ王では兵士の85%がヘロインの提供を受けたのに、帰国したら
    95%がヘロイン依存から脱出した。
    彼らが回復できたのは、依存症になった環境を離れたから。

    目標達成が人を動かす。これが依存症をひきおこす原因にもなる。
    ワーカホリックの会社員が稼ぎを増やす必要性がなくても遅くまで残業したがるのも、目標依存症患者の典型。

    「好き」と「ほしい」は違う。(そして、「好き」じゃないのに「欲しい」になっているのが依存。)

    仕事となると人間の停止規則が弱る。(あーわかる。)

    ツァイガルニク効果:人間は完了した課題より完了していない課題に心奪われる。未完了だと緊張状態が維持され、欲求もそのまま残る。
    これを応用したのがドラマのクリフハンガー。

    依存症をなおすため(もちろん軽度だけど)の方法もいくつかのっています。
    たとえばゲーミフィケーションを利用したりなどがのっている。
    ゲーミフィケーションの功罪についても記述がある。

    自分を、自分の思い通りに動かしたかったらよむといいです。
    (いろいろ反省します。)

  • アバタローさん
    著者は行動経済学や意思決定の心理学が専門
    デジタルサービスには薬物並に依存度が高くなるような6つの罠が仕掛けられている
    「時間術大全」と似た本だ

    〇行動嗜癖と言われるデジタル時代の依存症
    ・行動嗜癖は、この行動をとらずにいられないということ
    行動嗜癖は危険ドラッグに近い
    脳はドーパミンを出しすぎと出る量を減らすと強烈な枯渇感がくる、無限ループ、脳に耐性ができる
    何をやっても幸せに感じない
    それなしでは生きていけない廃人みたいな状態になる

    ・好きと欲しいは違う概念
    人間の意思決定というのは、好きではなく欲しいという気持ちに引っ張られる
    欲しいは好きより圧倒的にパワーがある
    暴走すると厄介な力、破滅しかねない
    ジョブズは子供にデジタル類を触らせなかった

    〇テクノロジー企業が設計した6つの罠
    1人間を操る目標という魔法
    目標達成をしたい、が組み込まれている
    いいねの数で一喜一憂
    2予測不能なフィードバック
    思いもよらぬ報酬で喜ぶ
    3段階的に進歩、向上していく感覚がある
    マリオ、階段状の設計
    4徐々に難易度を増していくタスクがある
    テトリス
    フロー体験の世界に引きずり込むことが可能
    その要素は、スキルレベルと難易度
    5解消したいが解消されていない緊張感がある
    クリフハンガー
    判断させることなく自動再生する
    6社会的な結びつきがあること
    インスタはSNSがあるだけで他のアプリを出し抜いた

    〇解決策
    環境をデザインする
    なくす、置き換える、まぎらわす
    ・なくす→アプリを削除、視界からスマホをなくす、距離をとる
    ・置き換える→目覚ましは時計に、お菓子を運動に
    ・まぎらわす→クリフハンガーが気になる場合、映像の場合終了の5分前で見るのをやめる、または次回を少しだけ見てやめる
    自分の意志で区切る

  • フィードバックを欲しがる気持ちは、大人も子供も同じ。

  • ・行動嗜癖の6つの要素
    1) ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること
    2) 抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で報われる感覚があること
    3) 段階的に進歩・向上していく感覚があること
    4) 徐々に難易度を増していくタスクがあること
    5) 解消したいが解消されていない緊張感があること
    6) 強い社会的な結びつきがあること
    ・人に行動を促したいなら、太刀打ちできない大きな目標ではなく、具体的でチャレンジしやすい小さな目標を与えるほうが有効なのだ。進歩している実感に励まされるし、ゴールラインが見えているほうが前に進みやすい
    ・ネットゲームでスペースキーは小さな動きではなく大きな動きに合わせる。物理的な感覚とデジタルの領域での感覚を連動させるのがマッピングの妙
    ・動機付けられた認知:外れが続いているってことは大当たりが近付いているサイン と認識させることではずれもポジティブに受け止めさせ続けさせる
    ・ダラー・オークション・ゲーム
    ・売れるもの、人気になるものを作ろうとするのではなく、好きになるために作ることがゲーム作りの根幹(宮本茂)
    ・ビギナーズラックには人を依存させる力がある。ビギナーズラックを体験したせいで、人は非現実的な野心を抱き、本来ならば熟練者にこそふさわしい高すぎる期待を抱く
    ・ほとんどの人間は、何もしないより何かをするほうがよいと考える。たとえそれがネガティブなことであっても。
    ・課題を片付けているという感覚や、自分がこれを成し遂げているんだという気持ちは、大きなモチベーションになる
    ・イケアの組み立て済みの収納ボックスを自分で組み立て作業をした被験者の提示した金額は、既製品を見ただけの被験者の金額に比べて63%も高かった
    ・スロットマシンの「惜しい」と「はずれ」に実質的な違いは何もないというのに「惜しい」を見せることで、大当たりはすぐそこだと思わせる
    ・現金ではなくクレジットカードを使うと、人は同じ商品が2倍高くても払ってしまう(停止規則の役割を果たさないため)
    ・自動再生により、「次のエピソードを見ない」という判断をする必要がある(オプトインオプトアウト)
    ・Facebookとインスタグラムでは予測の立たない刺激がエンドレスで続いている
    ・人間は肯定的なフィードバックばかりを受け入れたがり、否定的なフィードバックに対して過敏になる
    ・近づきやすい態度、穏やかな態度、子供の状況について知ろうとする態度、現実的な態度を取ることが親の態度として重要
    ・自己決定理論によると、人は3つの根幹的なニーズに関わる場合に自主的に行動を起こしやすい
    1) 自分の人生を自分の意志で進めたい(自律性)
    2) 家族や友人と確かな絆を形成したい(関係性)
    3) 周囲に影響力を持っていると感じたい(有能性)
    ・「○○を考えてはいけない」といわれたときに「そのかわりに何を考えていればいいのか」というのがわからない
    ・習慣を構成する3つの部品
    1) 合図(行動を促すもの)
    2) 儀式(行動そのもの)
    3) 報酬(これからも同じ行動を繰り返すよう脳に仕向けている見返り)
    ・自分以外の誰かを巻き込む報酬や制裁は、習慣形成において非常に効果が高い
    ・行動嗜癖に対するアプローチは排除するか、活用するかの2つ。活用して良い習慣にすることもできる
    ・体験そのものを報酬にする(英単語を学んでいるうちに、成果に応じて自動的にコメを寄付している)

  • 海外ドラマの一気見と、ソシャゲに抵抗できなくなっている学生の私にはぴったりの本だった。
    依存を正当化しているわけでもなく、よくある「ビジネスに食われるな」本でもないと思う。そこそこ分厚いし内容も盛り沢山だが、スマホ、買い物、運動など、何かしらやめられずにいて困っている人にはきっと体系的な理解が得られる。
    本気で生活を改善したいと思い、この本を選んだ自分を今は褒めたい。

  • フェイスブックやツイッターなどのSNS、ワールド・オブ・ウォークラフトなどのMMORPG、様々なものが人間の行動嗜癖(behavioral addiction)を惹き起こすように作られている。その力は強力で、頭の良し悪しに関係なく引き込まれてしまい、止めたいと思っても止められなくなる。我々は抗うことができない(『Irresistable』)。作る側の人は、例えば、スティーブ・ジョブズは、人にはiPadを薦めるが、自分の子どもには使わせない。『WIRED』の元編集長クリス・アンダーソンは家庭内のデバイスに厳しい制限時間を課している。この本を読んで、どこまで意図的なのか、悪意があるのかしらないが、巧妙に仕組まれた企業のサービスに恐怖心を覚えた。現代人はすべからく読んだ方が良い。
    本書は、依存症に立ち向かうための解決策として、1)予防はできるだけ早期に行う(子どもが幼い頃はスマホやiPadは与えない)、2)行動アーキテクチャ(例:物理的に遠ざける(スマホを寝床に持ち込まない等)、3)ゲーミフィケーションの3つを示す(3つ目は依存症への対処法というより、依存症を誘発する仕組みをよりよく使うという話だが)。自分にも無駄とわかっていながら、つい長時間費やしていることがあるので、本書のテクニックも利用して、コントロールしたい。ガーミンの時計を買おうと思っていたが、これも止めようと思う。
    本書で知ったフリーライス・ドットコムにアクセスして、食糧支援団体への寄付に協力できたことも一つの収穫。

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