経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478021620

作品紹介・あらすじ

経済を繁栄へと導くものは「天然資源」でも「勤労意欲」でもなく「信頼」だった!神経経済学を世界で初めて提唱した俊英が、信頼で経済が回るメカニズムを解き明かす!

感想・レビュー・書評

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  • サブタイトルにある「愛と共感の神経経済学」に惹かれ購入。社会や個人が幸福で繁栄の道をたどるのか、広い意味で貧しいままなのかを決めるのは、資源の有無や技術力、軍事力ではなく、互恵関係や信頼性だという。個人的経験に照らして考えても、不幸や出来事に見舞われている状況を見ると、それが映画であっても涙するし、一緒に成功を祝える仲間たちとは一生付き合いたいと思える。昨今求められるリーダー像もこう言った考え方に立脚しているものが多いのは、みな、薄々感じていたり求めていたりするからなのだろう。信頼性を構築するのに手っ取り早く実践できるのは、嬉しい時も悲しい時もハグ。フリーハグってなんじゃと思っていたけど、こういうことか。

    ところで表紙はクリムトの「接吻」。本書のエッセンスを象徴しているんだろうけど、この男女は実は崖っぷちに立っている。これも象徴なのか。

  • 利己的な行動を取る人間が多くいる市場は、いずれ廃れてしまう。

    一方、お互いを信頼し、向社会的行動を多く取る市場は繁栄する。なぜか?

    ここで筆者は「善循環」という概念を提示して、この繁栄のメカニズムを説明している。

    善循環とは、共感→道徳的行動→信頼→オキシトシンの分泌→共感とサイクルしていくメカニズムである。
    人は他人に信頼されてると感じると、オキシトシンの分泌量が増える。
    オキシトシンの分泌量が多いほど、より他人に共感するようになる。
    より他人に共感するようになると、道徳的行動をとるようになる
    道徳的行動をとることで、相手は自分を信頼する。
    また、オキシトシンが分泌されることで、ストレス軽減の作用のあるセロトニン、行動を強化するドーパミンが分泌され、より道徳的行動を気持ちの良く感じることとなる。
    この善循環が起きてる市場や社会では、人々は向社会的行動をとるので繁栄する。

  • 素晴らしい

  • 資料ID:21802994
    請求記号:331||Z
    オキシトシンとテストステロン、それぞれ協力と競争を促進するホルモン。経済の発展と人々の幸せはホルモンが決める!

  • 信頼を示せば自分も信頼して貰える
    共感 寛大さ 向社会 善循環
    ソーシャルメディアで善循環
    科学的に古代の社会の正しさが証明された

  • 机上だけでなく、体を張った実験がいい。
    人文科学もオキシトシンに効果あるのね。
    文学、芸術が好きでよかった。

  • 思い立ったが吉日、大切な人にハグをしよう。夫婦であっても、なにを今更と思うだろうけど、こんなに良いこと尽くめなら、しない手はない。さぁ、今日愛しいあの人が帰ってきたら恥ずかしがらずに、おかえりとぎゅっと抱きしめてみよう。

  • タイトルのうまさで技ありの本書、実証実験をとおして経済的繁栄のための異なるアプローチを模索する。「振り込め詐欺」が横行する現実社会に鑑みると理想主義的な視点だが、それは魅力的な理想像でもある。ところで「競争」がなければ我々が享受している革新的な技術はどれだけ具現化されていただろうか。

  • 人間の道徳的な行動のカギはオキシトシンという化学伝達物質。平均的に女性の方が多い。

    オキシトシンを増やすには、信頼を込めて人と接するだけでよい。それだけで相手はオキシトシンが急増する。

    自然界では、環境からのシグナルによって、リラックスして安全な事がわかるとオキシトシンが急増する。

    オキシトシンの分泌が促されると、今度は快感を生じさせるドーパミンとセロトニンが分泌される。セロトニンは不安を減らして気分をよくする効果があり、ドーパミンは目標志向行動や衝動、強化学習に関わっている。

    「共感」はオキシトシンレベルの上昇と直結している。

    信頼されるとオキシトシンレベルが上がり、より信頼される行動を取り始めるので、より信頼されるようになる。するとさらにオキシトシンレベルがあがり、さらに信頼される行動を取り始める。これを善循環という。

    母親は赤ん坊を目にしたり、匂いをかいだり、鳴き声を聞くだけでオキシトシンが上昇し、物の見方が暖かく母性愛に満ちたものに変わる。

    人間の脳は他者の快感や苦痛を自分自身のものであるように文字通り経験する。だから、人にしてもらいたい事を人にするのは自分の為でもある。

    人間の赤ん坊は、もともと他者を助ける傾向があり、たとえ相手が生き物でなくても優しくふるまうものを好み、そうしないものを嫌う。

    スポーツなどの友好的なゲームに参加してもオキシトシンが豊富な絆を結ぶ。

    オキシトシンの拮抗物質にテストステロンがある。女性よりも男性が10倍多く、筋肉量を増やし、骨の密度を高めるので、運動能力を著しく向上させる。持久力、攻撃性が増し、暴力と競争を司る。

    テストステロンレベルが高いほどオキシトシン反応が妨げられ、共感を経験し辛くなる。

    善循環が始まり、善に報いるだけでなく、悪を制裁する事によって向社会的行動を奨励する制度が最高の見返りをもたらす。

    男女の視点のバランスを上手くとる事が長期的には最善の結果をもたらす。

    長い間いつも必ず競争に勝っていると、テストステロン過多となり、特有の醜悪な男性的行動が強化される。

    人に好かれると組織で出世する助けになるが、トップに立つと嫌な人間に変わる。それは、視線を合わせる事によって伝え合う社会的な合図を捉える能力がテストステロンによって抑えまれるから。テストステロンレベルが高いトップが他人を評価する時に、固定観念や一般論に頼りがちな理由や、自分自身の失敗を正当化する理由の一端となっている。

    言葉はとても重要で、「パートナー」と言うだけで、「対抗者」と言った時の2倍以上の信頼レベルになる。

    集団の外側と内側の区別をつけるせいで共感が抑えられ、非常によくない場合があるのは、人間は群衆に従うとドーパミンが作動して集団浅慮や服従が快くなる事。

    社会には人口の5%が無条件非返礼主義者であり、彼らはオキシトシンが過剰に検出されている。受容体のオフのスイッチが働かず、機能障害を起こしている。(分泌すべき時に分泌できない。)

    エピネフリンとコルチゾールのどちらかが高まると、オキシトシンの分泌が抑えられ、善循環が阻まれる。


    eBayが他国に拡大する際、倫理規範や趣味の良し悪しの基準の翻訳が次第に問題になった時、彼らが考え出した基準は、「あなたは自分がしている事を堂々と母親に告げられますか?」だった。

    偉人とは童心を失わぬ人なり。

    移民は短期的には社会の信頼を減らすが、彼らが同化するにつれて解消される。問題は、あまりに激しい敵意に直面した移民が分離したままになる点にある。

    オキシトシンレベルを上げる方法として、1日8回ハグをする事。善循環はハグから始まる。

    誰かと会う時、「この訪問を最高に価値のある充実したものにする為には自分は何をしたらよいか?」を問う事。その場に完全に身を置き、相手に傾聴する。

    オキシトシンが支配する共感的な人間のつながりは、信頼と愛と繁栄のカギを握っている。共感的な人間のつながりこそが、我々の追い求める善である。

  • オキシトシンって出産のときからお目にかかり過ぎて身近な名前だったから読んでみたら思い当たるところが多くて。産後、前とくらべて考え方や感じ方が大きく変わってるなと思うことが増えたのでいろいろと腑に落ち。経済のお話は3割くらいで、人(と動物)の行動とホルモンの関係についてが殆ど。

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