日本を破滅から救うための経済学

著者 :
  • ダイヤモンド社
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本棚登録 : 105
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478014073

作品紹介・あらすじ

消費税だけでは30%近い税率でも財政再建できない!デフレスパイラル論はまったくの間違い。インフレこそが最も過酷な税である。厚生年金は2033年頃に破綻する。1ドル=60円台後半も不思議ではない。教育こそ最も重要な成長戦略。俗説を次々とくつがえす!野口教授の最新日本経済論。

感想・レビュー・書評

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  • 現在、円高が進んでるが、これが実は異常なことではないというのが、この本に書いてある。というよりも、本来ならもっと円高が進む方が自然とまで受け取れる書き方だ。これを読むと、確かに、日本という国はもう次のステージに行くしかないのかもしれないと思う。しかし、とても困難な道だ。ところで、この人の本を読むと、いつも思うが、自分があまりに経済学の知識がなくてがっかりする。とともに、とても勉強になる。たとえば今回は、「公共支出に向くサービスとそうでないサービス」を原理的に分ける方法を知った。たとえば教育はそれを受けた者のみならず、社会全体に役に立つ。こういう外部効果の大きいものは公共支出に向く。また、本人負担を拒否しても、その人を受益者として排除しづらいものも公共支出に向く。(徴兵なんかがそれにあたるのかな)この理屈で行くと、年金というのは公共でやるものではなく、民間が担うものだということになる。現在の年金の懸念に関する章はどうも腑に落ちないが、こういう原理的な話はそもそも知らないので、とても勉強になる。""

  • 図書館

  • 読んだ。

  • 10.11.06読了
    池田
    時間2.5H
    評価○

    デフレ、財政赤字、年金問題、税金・為替をどうすべきか、日本の方向性について、データーも添えながら、わかりやすく説明した本。

    以下読書メモ。

    デフレについては、工業製品(特に耐久消費財)の価格低下は今に始まったことではない。工業製品の価格低下の傾向に加え、エネルギーコストが一時上がっていたものが下落。サービスの価格はほぼ不変。
    物価が上がっても名目給与もおなじようにうごくわけではない。
    新興国からの安い工業製品の輸入で国内の物価が下落し、日本の場合、製造業の比率が高いため、全体の賃金がかなり下落している。
    物価水準は海外要因だけでは決まり、07年夏以降の円高で韓国、台湾からの影響で薄型テレビ、パソコンの価格低下。総需要の激減により、経済の産出量を激減させた。金融政策は産出量にえいきょうせず、購入支援策が効果を発揮した。
    財政。そもそも日本経済は長期的な衰退過程にある。04年からの寸円が例外。製造業に立脚する税体制は90年をピークに長期的な減少傾向にある。歳出構造を改革しないと、際限のない増税が必要。国債は、将来の税負担に転嫁されているだけで、経済成長が約束されていないなか、身の丈にあった財政にすべき。
    インフレは税である。インフレで借金の価値が減る。財政破綻で、インフレと通貨下落。
    デフレと円高が問題という人が多いが、本当に恐ろしいのは、円安とインフレ。インフレは急速に進行する。ギリシャはEUで共通通貨のため通貨を減価できない。
    国債は負担感を希薄化。納税の痛み。脱税の罪悪感の低さ。
    厚生年金は2030年ごろ破綻する。シミュレーションでは33年。経済想定が甘すぎる。運用利回り3.9賃金上昇2.1物価上昇1%を経済低位でおいているが、これさえ過大評価。清算しようにも不足額が多すぎる。1252兆円。
    消費税。インボイスなしの制度では。免税店業者や脱税など前段階の未納があっても控除される。生活必要剤の非課税のためにもインボイス必要。
    福祉目的税、無意味か危険か。制約つけて福祉目的を賄う為に増税されるのも危険。
    消費税⇨インフレ⇨名目金利上昇。
    為替レート。実行レートは格別の円高にはなっていない。09年11月末、ドル減価で韓国台湾(事実上ドルリンク)も減価したが、大まかにいえば中間に位置していた。
    07年までは購買力平価より大幅に円安。実質で円安のため輸出好調だった。
    為替レートは経常収支ではなく、資本取引による影響が大きい。かつては実需原則(資本移動に制約があった)。
    国際的な資本取引から取り残されている日本。90年代後半から資本取引のウエイトが増加していた。日本は資本取引額特に流入が少ない。低金利政策の影響も。円キャリー取引の発生が、円安を加速(バブル)。
    日本はのこの先。構造を変えないとお先真っ暗。世界の変化と日本の不変がこの20年。今、新しいことを始めるチャンス。ITコスト低下、大企業が弱っている。起業のチャンス。脱工業化。雇用は、量的には内需で確保。リーディングインダストリーの養成、新興国工業化のさらなる進展でも耐えうる付加価値の高いサービス産業。
    アメリカの脱工業化、サービス業で組織を離れて就業する形態=金融、教育、専門的職業での自営。
    教育。プロフェッショナルスクールが遅れている。人のグローバリゼーション。

    目次
    第1章 「デフレが停滞の原因」という邪教から目覚めよう
     1 デフレが諸悪の根源とされている
     2 二〇〇九年型デフレからの脱却は不必要であり不可能
     3 デフレに関する三つの典型的誤解
     4 長期的な物価下落の実態は相対価格の変動
     5 最近の動向と今後の見通し
    第2章 いまこそ必要なデフレの経済学
     1 デフレを考えるにはモデルが必要
     2 日本でのみデフレが深刻なのはなぜか
     3 総需要・総供給モデルによる経済危機の分析
    第3章 破滅への道を突き進む日本の財政
     1 制御不能に陥った日本の財政
     2 国債発行はなぜ問題なのか
     3 最もあり得るのは「インフレ税」による財政赤字の解消
     4 税と国債は違うものなのか
     5 納税の痛みこそ政治と財政の原点
    第4章 厚生年金は破綻する
     1 「一〇〇年安心」年金とは
     2 あまりに現実離れした経済想定
     3 厚生年金は二〇三〇年頃に破綻する
     4 年金改革は一刻も早く着手する必要がある
     5 厚生年金をいま清算することは、とてもできない
     6 非正規雇用の年金難民化がもたらす年金の危機
    第5章 消費税増税による財政再建は可能か
     1 消費税率引き上げ前にインボイスが必要
     2 福祉目的税は議会の自殺行為
     3 全額税方式という欺瞞
     4 消費税増税では財政再建できない?
    第6章 為替レートは何によって変動するか
     1 円高は国難か
     2 二〇〇七年までの異常な円安
     3 経常収支が為替レートを決めるわけではない
     4 資本移動が為替レートを決める
     5 投機的資本移動と為替レートの分析
     6 円キャリー取引の正体
    第7章 日本が進むべきは高度知識産業
     1 いまこそ日本経済を変えるチャンス
     2 アメリカにおける高度知識産業
     3 金融立国の前に金融貧国から脱却を
     4 教育こそ最も重要な成長戦略
     5 激減する日本の留学生と韓国の教育フィーバー
     6 日本を活性化する手段は人材開国

  • 数字、ファクト、ロジックで今の日本経済の問題点と処方箋を淡々と示した名著。金融政策の限界を論じた章が秀逸。「新自由主義」みたいなヒステリックなレッテル貼りはそろそろ止めて、是々非々の議論で日本を良くせねば、ね。

  • ・デフレの原因は供給側
    ・海外工業製品が供給曲線を下方へ
    ・08年経済危機から総需要曲線が左方へ
    ・新興国の安い工業製品⇒物価下落⇒流動性トラップ⇒利子率下げない⇒投資増えず

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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