ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478012840

作品紹介・あらすじ

プロフェッショナルとして知恵を絞れば絞るほど、消費者のこころを見失ってしまう「差別化の罠」。ビジネスマンの誰もが抱えるジレンマを共に考え、共に解決の方向を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 原著2010年、日本語版2010年8月発刊。
    平易な言葉で語られる差別化戦略に関する本。あっという間に読めた。

    第二部
    私たちの眼を奪うアイデア•ブランド
    世の流れの逆を行く「リバース•ブランド」
    既存の分類を書き換える「ブレイクアウェー•ブランド」
    好感度に差を向ける「ホスタイル•ブランド」

    P164
    魅力的なロイヤルティプログラムとは ー
    ○ 顧客に賞品を渡すのではなく、顧客が自分を丁重に扱ってくれた社員に賞を与えられる。

    P170
    差別化は、考え方なのだ。姿勢であり、取り組みであり、人とのかかわり方なのだ。目新しいだけの方法ではなく、重視し、尊重し、祝福できる方法で人とかかわることだ。

  • 最初ざっと読んだときは、いまいちわからなかった。
    二度目にぱーっと読んだときは、なんか心に引っかかると思った。
    三度目に読み、驚くべき開眼体験を得た。

    なぜ最初、まるで頭に入ってこなかったのか?
    たぶん、それは本書がマニュアルやコンセプトを語る本ではないからだ。
    読者に対して、
    「ブランドってそもそもお客さんにとってどう見えますか?」
    という問いを投げかけ、
    あえてそれを著者の強い主観をもって解きほぐしていくかたちなので、
    なかなか流し読みが効かないのである。
    言い換えれば、私の中でよく受け止めなくてはならなかった。

    しかし、その中身はとても価値あるものだと感じる。

    なぜ大半の企業・ブランドの「マーケティング」はうまくいかないのか。
    その理由を、著者は成熟しきった市場の中で
    「競争的な調和」をしているだけだから、と考える。
    「棚に並ぶシリアルはどれも同じに見える」という冒頭の一言。
    まさに、そうだと思う。

    家電量販店のテレビ売場に行くたびに、それらの機能に感心する一方で、
    企業間の差別なんて大してよくわからんなという感想を抱く。
    どれだけメーカーが「付加」「増殖」という視点で「ヨイモノ」を
    作っても、それがどれだけ魅力的なのかよくわからないうえ、
    本当に魅力的だった場合にはすぐに他社に真似される。
    その繰り返し。

    差別化を果たすには、競争を捨て去ること。
    挙げられたアイデア・ブランドの実例(著者のいう思索の枠組み)は、
    Google、IKEA、in-N-out・・・リバース(逆を行く)。
    AIBO、プルアップス、シルク・ドゥ・ソレイユ・・・ブレークアウェー
    (概念を変える)。
    ミニクーパー、レッドブル・・・ホスタイル(好感度に背を向ける)。
    などなど。
    そして、この複合系のブランドとして「Apple」を挙げている。
    ああ、なるほど。頷ける。強烈な相乗効果。


    私たちは消費者のときは極めて支離滅裂なのに、なぜ企業人になったときに
    妙に整然と分解して進めたくなってしまうのだろう?
    きっと、それがビジネスだと思い込んでいるからだ。
    新入社員も、管理職も。
    でも、世の中で「アイデア・ブランド」になったものは、きっと
    その「整然としたくなる欲望」に打ち克つことができたのだ。
    理由はいろいろとあると思うけれど。

    著者も書いているが同じブランドに対して絶賛する人がいる一方で、
    「ありえない」と感じる人がいるのも当然なのである。
    万人ウケを狙っていないこそ、アイデア・ブランドなのである。

    と思っていて、「ラーメン二郎」のことを想起した。
    水はコップに自分で入れろ、さっさと食べて出てくれ、という圧迫感。
    料理は油たっぷりで食べるとだいたい後悔する。
    しかし、なぜかそれに心惹かれる者が少なくない。
    本書を読んで、これは消費者が刺激を求めているからなのだろう、と
    考えるに至った。
    あとは通常のラーメン屋と差別化されている一方で、
    それぞれの二郎店舗ごとにも差別化されているのが面白い。
    チャーシューとか、麺の量とか、スープの味とか、店員とか。
    だから二郎愛好者たちは、いろいろな店舗に足を運んでしまうのだ。


    以下、心に残った部分の引用。

    p.7
    私は学生たちにマーケティングは、企業の機能の中で唯一、
    ビジネスと人が出会う場として企図された機能だと教えている。
    生身の人間は、世界をビジネスパーソンと同じようには見ていない。
    箇条書きで語りはしないし、世界をフローチャートでとらえることもない。
    世界をもっと有機的に見る。独特で予測不可能な存在であり、
    見事なまでに支離滅裂だ。

    p.80
    私が最も注目するブランドは、私の期待など眼中にない。
    期待と無関係なものを提供しながら、なおかつ期待に応え、
    これまでにない新たな現実を提供する。不思議なことに、
    市場の他の商品に比べて必ずしも優れているとは限らないが、
    差別化には成功している。顧客と特別な関係を築き、群れから抜きん出ている。
    本書で冒頭から述べているように、差別化を実現するためには、
    競争ではなく、競争からの完全な脱却が必要なのだ。

    p.81
    今日の激しい競争の中では、一匹狼でいるのはますます難しくなっている。
    偏った価値提案や、平均値から外れるようなポジショニング戦略で、
    リスクを負うのは並大抵のことではない。私もそのことは十分認識している。
    (略)
    破壊しながら、混乱させながらも、同時に何かを作り上げる。その過程で、
    まだ現実には存在していないものに生命を吹き込もうとしている。

    p.98
    2006年に発売された任天堂のWiiもまさに同じだ。当時、家庭用ゲーム機は
    激しい技術競争を繰り広げていた。任天堂は私たちが期待したものではなく、
    想像もしていなかったものを提供することで競争から抜け出す。
    驚くべき製品の登場だった。

    p.142
    消費に関して言えば、私がマインドレスネスの優勢を実感していることは、
    これまでの議論で明らかだろう。ショッピング街や店内を歩いていても、
    どのブランドも印象には残らない。
    ビジネスの世界では「順応」が標準になっている以上、その状況は
    これからも変わらないだろう。企業が調和ではなく競争に向かっているのに、
    結果は同じ。競争と順応は兄弟のように結びついている。
    理由は簡単だ。全員が同じ方向を目指して走らなければ、レースは成り立たない。
    一方、「競争的な調和」の渦から飛び出そうとするアイデア・ブランドは、
    マイノリティーであり続けるだろう。しかし、消費行動に活力を取り戻すには、
    彼らのような一風変わった非凡な存在が欠かせない。
    アイデア・ブランドは競争しようとはしない。他者との比較よりも、離脱に
    関心を持っている。したがって、私たちを魅了するにしても、激怒させるに
    しても、彼らは私たちを再びマインドフルな状態へと誘うブランドである。

    p.152
    簡単な仕掛けを探し、注目を引く曲芸をやってのけるブランドがいる。
    食堂で横転するような行動で、関心を得ようとする。しかし、結果的には、
    私たちはそういった無数のブランドを無視し、ダヴやハーレー、アップルを
    大切にしまいこむ。なぜなら、後者は波紋を呼ぶような方法、
    私たちに語りかけるような方法で逸脱するからだ。

    p.153
    フローリーの亡くなった夫リッチーがよく言っていた。歳を取らない秘訣は、
    動く標的であり続けることだと。私もますますこの意見に共感するように
    なっている。私たちは少しの安定と同時に、動きを必要としている。
    じっとしていると精神が鈍ってしまう。ときには子供時代のようにハメを外し、
    心を躍らせることも必要だ。
    (略)
    私はリッチーの言葉を何度も思い返した。動き、変化、違い…。
    静寂に囲まれているときには、それらこそが私たちの生活に活力を与えてくれる。

    p.159
    ビジネスの世界では、差別化がすべてだ。私たちの誰もがこのことを知っている。
    ビジネススクールでは差別化の重要性を教えこんでいるし、重役室では日々、
    差別化戦略が練られている。
    しかし私たちは、「違っている」ことの意味を忘れつつある。私もまた
    その一員だ。今日のビジネスにかかわりを持つ誰もが、何が「違い」に
    なり得るかを忘れている。差別化についての考え方は、どこかが間違っている。
    「差別化」というコンセプトを口では賞賛しながらも、実際には違いではなく、
    類似性ばかりが目立つブランドを生み出し続けているのだから。
    (略)
    ビジネスという帽子を被るや、私たちは「差別化」という専門用語を駆使して、
    あたかも意思疎通の欠如にはまったく気づいていないかのように語り始める。
    私たちがブランドについて語る方法と、人々が実際に体験する方法には
    何のへだたりもないかのように。消費者が、ビジネスパーソンの無理解を
    嘆くのも無理はない。「わが社のブランドは他社とは違います」と伝えてみても、
    企業も顧客もそうではないとわかっている。誰もが同じ流れの中を漂っている。

    私たちは、そんな自滅的な競争サイクルから抜け出せなくなっている。
    もっとはっきり言えば、競争力が私たちを殺そうとしている。

    p.166

    イノベーションは、既存の世界の延長線上にはない。少しの間、
    マーケティングツールを箱に仕舞い、それなしで浮かび上がってくるものを
    みつめてはどうか。
    周知のとおり、市場調査には次のような問題点がある。消費者は自社製品を
    どれほど気に入ってくれているか教えてくれるが、他社製品とどれほど
    違っているのかを語ってはくれない。ましてや、どうすれば消費者を
    驚かせられるかなど、聞き出せるはずもない。
    イノベーションを実現するには、市場調査から得られるデータの先にあるものを
    見なくてはならない。調査データは客観的かもしれないが、お粗末なほど
    不完全で、そこからわかるのは物語の半分だけだ。残りの半分を手にするために、
    私たちは自らの想像力を働かせなければならない。

    p.169
    もし本書を貫く一本の糸があるとしたら、それは消費や行動、文化の一貫性が、
    私たちの周囲で崩壊している、ということだ。あるブランドは、敵対的で
    あると同時に吸引力を持ち得る。人は、満足しながらも変化を求める。
    関係性は、いらだちを感じさせると同時に満ち足りたものになり、
    共生的であると同時に自由でもある。私たちは日々、その中で生きていて、
    すでにこのことを知っている。私は夫を愛しているが、腹を立てることも
    しょっちゅうだ。
    これが、実際、人の人たるゆえんだろう。ともに生きるために、内的一貫性は
    必要ない。私たちは、私たちにとっての真実が様々であり、整然とした
    秩序に従うには人生は短すぎると感じている。

    p.175
    差別化は手段ではない。考え方だ。姿勢であり、傾聴や観察、吸収、尊重から
    生まれる。それは何よりも、取り組みなのだ。そして、その取り組みを
    通して人々に伝える。「ええ、私たちはわかっていますとも」
    まだまだ多くのアイデア・ブランドが登場する。間違いない。

    ----------------------------------------------------------------

    以下参考になるまとめblogなど。

    http://www.keyis9.com/?eid=28
    過度に成熟したカテゴリーに関する消費者個人単位での
    セグメンテーションについてまとまっている。

    http://blog.isolibrary.com/archives/51610575.html
    全般。

    http://blogs.itmedia.co.jp/kichi/2010/11/post-e0e5.html
    IT製品での考え方。

    • qbominoさん
      tothefutureさんのレビュー自体が読み応えがありました。ラーメン二郎とアップル。興味深い対比だと思いました。
      読みたい気持ちにさせ...
      tothefutureさんのレビュー自体が読み応えがありました。ラーメン二郎とアップル。興味深い対比だと思いました。
      読みたい気持ちにさせていただきありがとうございました。
      2011/11/26
    • おひるねさん
      >qbominoさん
      あたたかいコメントありがとうございます。
      そう言っていただけると大変励みになります!
      >qbominoさん
      あたたかいコメントありがとうございます。
      そう言っていただけると大変励みになります!
      2011/11/29
  • ■メモ
    マーケティングにおいて競合他社との差別化を行うことで顧客のロイヤリティーを得ようとする企業が多いが、本当の意味で差別化出来ている企業は多くない。成熟市場において差別化を目指した結果、細部の競い合いになり、顧客からは違いがわからない異質的同質化となってしまっているケースが後をたたない。

    このような異質的同質化が起きてしまうのは何故だろうか。主な理由は2つ。1つは相違点を可視化すると人は長所ではなく、短所を埋めることに注力する。よって、競合他社と自社を比較し、自社の劣っている点をなんとか埋め合わせようとする結果、競合と似通った商品・サービスとなるのである。もう一つは個別行動をとっているように見えて同じ集団の中では同調行動をとってしまうという行動特性がある。感知能力と反応性がありさえすれば鳥の群れがそうであるのように個別に行動していても結果として皆規則的な動きを取る。

    同じカテゴリーに所属する企業が異質的同質化を図ることで、消費者は各企業の違いがわからなくなり、企業単位ではなくカテゴリー単位でロイヤリティーを持つようになる。

    上記を踏まえ、企業が異質的同質化に陥らず、真の意味で差別化を目指す為には完全な脱却が必要となる。具体的にはリバース(シンプル化)、ブレークアウェー(意味づけ)、ホスタイル(好感度に背を向ける)のブランドコミュニケーションが有効である。

    ■所感
    企業は如何に競合他社と差別化し、顧客に選択してもらうか躍起になっている今日において、実は異質的同質性に陥り、顧客からはその商品・サービス間の違いが認識されていない状況が生じているという点が新たな気づきだった。企業には差別化とは何か?について今一度考えた上でマーケティング戦略を構築することが求められると思う。

    以上

  • PDF
    消費者心理

  • なんかイマイチやった
    論証がほとんどなされていない。
    もともと,厳密な論証をやろうなんて著者は意図してないみたいだから,著者にとっては問題ないんだろうけど。

    以下はネタバレ。

    意味のない「差別化」をやめなさい,というのが本書のメッセージ。
    どの企業も喧しく「差別化」という言葉を口にして,差別化を実践しようとしてきた。そして失敗してきた。ほとんどの企業が行う「差別化」は,差別化になっていない。「差別化」の結果もたらされるのは,どこが違うのか消費者には見分けがつかない同じような商品群である。消費者が区別できないのならば,その差別化に意味はない。
    「差別化」をやめるためには,市場調査の数字に囚われて,他社と比較することをやめなければならない。他社と比較して,自社が劣っているところを伸ばそうとするのではなく,とんがればよいのである。
    どんがり方には,三つある。引き算―GoogleやApple―,我が道を行く―ハーレーやレッドブル―,そして変換―sonyのAIBO―である。

  •  本当の意味の「差別化」について書かれている本。
     原書のタイトルはDifferent。

  • どう他のものと差別化するのかを、具体例を交えながらわかりやすく書かれていました。

    やっぱIKEAとかすげーわ。
    知らないイノベーションを起こしてる会社やその法則もあり、刺激的でした。

    そんな違いを作りアクション出来るとこで働きたい。

  • 成熟産業における競争戦略のありかたについて、とても示唆に富む内容だった。

    成熟産業において、競争が激化しすぎると、通常の差別化戦略が無意味になってしまう飽和点のようなものに到達する。

    そのような市場における競争戦略は、
    世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」
    →任天堂のWii

    既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」
    →iPhone

    好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」
    →ベネトン

    である。

  • 流行りのハーバードの授業スタイル。でも、難しい話ではなく、マーケティングの基礎。ただ今までの教科書的なモノからは進歩させており、作者とともに考えながら進んで行く。マーケティングに携わる初心者にお奨め。

  • 平易に差別化戦略について説明している。「ストーリーとしての競争戦略」の後に。
    足し算や掛け算はやり易く説得しやすい。引き算や割り算は勇気がいるし、説得しにくい。カテゴリーを変え、大きく外すことも勇気がいる。

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