利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478009697

感想・レビュー・書評

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  • ビジネス書を読んで初めて涙を流した。
    仕事を「天職」と定めることで地域貢献だと発送できることがすばらしい。「自分が動き自分が燃えなければ、人を動かし、人を燃え上がらせることはできない」その通り。。

    当時のそれ風に表現すると「アドボカシー・マーケティング」なんだろうけど、そういうタグをつけることで矮小化する気がする。「売り手オリエンティッド」に聞こえてしまうだろう。他人の付けた名前やフレームではなく、自らの信念に基づいて考え動かなければならないのではないかと思う。

  • 読みやすい本。当時では発送できない考え方、やり方に感心しました。

  • がんばった社長さんの一代記。

  • 以前、市長さんで全国的に有名になった鹿児島県阿久根市。人口は減り、これといって、目立った産業があるわけでもない、過疎化が進んでいる地域。
    そんな中で、オープンした超巨大スーパーが、毎年確実に成長を続けているという。なせ、そんなことが実現できるのか?創業者が語る。小売店はインフラだという考え方が印象に残った。

  • 著者は1997年に3月に過疎化と高齢化が進む、
    鹿児島県阿久根市に日本発の24時間営業の大規模小売店
    A-Zあくねを開店した㈱マキオの牧尾英二社長。


    従来の小売業の考えからは想像できない経営手法で
    取り組む姿勢は素晴らしい。


    醤油だけで300種類、全38万アイテムの品揃えなど
    この本を読んで一度見に行きたくなりました。

  • 一般的な小売業セオリーを全く無視した掟破りの成功哲学。でもやはり、お客様と現場がすべてであることには変わりない。


    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    【読書メモ】

    (AZの方針)

    ●品揃え:販売効率は一切追求しない。地域の人々の日常生活に必要なものは何でも揃えるフルラインナップ。POS管理もしない。

    ●価格:タイムサービス、日替わり特価などの特売は行わない。すべてのお客様に公平の安さを提供するため「エブリデイ・ロー・プライス」。チラシを打たなくても集客できる。

    ●仕入れ:地元の生産者、メーカー、卸業者を大切にして、地元の業者を最優先。無理な値引きは要求しない。バックマージンや裏取引も一切行わない。

    ●人材:競合店の視察はさせない。お客様と接し、自ら学び取ることで成長。マニュアルや研修もない。従業員の待遇は正社員もパートもアルバイトも変わらない。定年制度もない。

    :::::::::::::

    ●後発ゆえに、いまある小売業のモデルを追いかけてどこにでもあるような店を造るようなことはしたくないと強く感じていました。新規に参入するのだから、その逆をやろう。つまり、業界の先輩企業が排除してきた部分を追いかける、言ってみれば前例のない業態を創ろうとしたわけです。

    ●私どもの経営は「前例否定」、さらには「素人発想」で、小売業のあり方に疑問を投げかけるところから始まっています。

    ●何よりも、この町で暮らす人々の家事労働のお手伝いをしたいという思いが、その根底にありました。売れそうな場所で、売れそうな商品を販売するという発想は、供給する側に都合がいいだけだからです。

    ●徹底したローコスト・オペレーション。それが私どもの経営の根幹です。
    ・過疎地の利用と建築コストダウンの取り組み
    ・一人の従業員で通常のスーパーの3~4倍の売り場をカバー
    ・照明の明るさの工夫で電気代の節約
    ・チラシを廃止することで販売促進費を業界平均の20分の1以下に
    ・限定販売は行わない

    ●日々の生活に必要なスモール商品(低単価品)がメイン。耐久消費財ではなく、消耗品やパーツが中心。

    ●ワンフロア・ワンストップ・ショートタイム。二階はつくらない。

    ●24時間営業で安く売る。あくまで地域のお客様の利便性のため

    ●来客数とリピート率と買い上げ点数が生命線。

    ●他店を見ながら仕事をするのではなく、お客様を見ながら仕事をしようというのが、私どもの基本の姿勢です。

    ●バイヤーを置かないのは、毎日、商品を陳列して、お客様を接している売り場担当者こそが、売り場作りの答えを誰よりもよく知っているからです。お客様のニーズを肌で感じて、お客様の声を即座に売り場に反映できます。

    ●商品の前出しと数量管理を毎日つづけることが、売り場の担当者にとっては一番大切なこと

    ●従業員には、過去のことも未来のことも考えないで、いまのことを考えてくださいとよく話しています。先を見通すことは難しいけれども、日々の仕事の中でお客様の動きをじっと見ていれば、時代の変化がよくわかるはずです。そうやって毎日気づいたことを少しずつ売り場に反映させていくことが、結果的に時代の波に乗る早道ではないかと思います。

    ●自分が動き自分が燃えなければ、人を動かし、人を燃え上がらせることはできません。自分が変わり成長しなければ、人を変え、人を成長させることはできません。人を変えるより自分を変えることです。そうすれば自然に人も変わります。

    ●私が何より従業員に望むことは、売る立場でなく買う立場にたって仕事を続ける姿勢です。

    ●定例会議は一切開かない。会議に代表される管理社会的な縛りを会社経営に組み込んでしまうと、組織が内向きになり、お客様のほうを向かなくなってしまうからです。

    ●見方によっては、60歳を過ぎてから仕事に味が出てくる人もたくさんいます。小売業の先輩として、学ぶべきことも山ほどあります。それを、60歳になったら一律にやめさせるというのは、会社の一方的な都合でしかありません。

    ●お客様を優先して考えると、どんな商品にも、全国一律ではなく、地域にあった販売の仕方があるものです。

    ●無理な値引きはしない。仕入先もお客様だからです。仕事が終われば地域の生活者としてAZに来店される方も多いのですから、仕事上でも信頼関係を何より大切にしています。

    ●小売業は営利企業ではありますが、そこからもう一歩踏み込んで、地域の皆さんの生活に何か寄与するという発想を持てば、結果として利益は返ってくると思います。それは小売業に限らず、さまざまな業界や業種に共通する、あるいは日本社会にとって欠かせない視点ではないでしょうか。

    ●私は、人生は死ぬまで修行、死ぬまで完成もなく、死ぬまで役割ありと覚悟しており、暗くで苦を選び、明暗で暗を選び、損得で損を選び、修行を続けるまま人生を終われたらと願います。そうすることで、社会的な役割を果たせる気がしてなりません。

  • ● また、従来の小売業の常識では考えられないことですが、店内の空調は冷房のみで、暖房装置は最初から設置していません。気象庁の過去10年間のデータを調べてみたところ、温暖な気候の鹿児島県阿久根市で暖房が必要となる日は、年間でわずか2週間だけだとわかったからです。

    ● お客様を惑わすような目玉商品を用意して、宣伝広告費をかけてお客様の購買意欲をかきたてる。従来の小売業では当然のように行われてきましたが、こうした販売方法は売り手の一方的な都合に過ぎません。エブリデイ・ロー・プライスなら、チラシを入れる必要もないのです。

    ● 視察や取材に来られた業界の関係者がいつも驚かれるのが、醤油の品揃えです。醤油だけでも地場のメーカーを中心に約260点を揃えています。

    ● 24時間営業という利便性を売っている、そのかわり価格は安くできない、というコンビニの論理は、売る側の傲慢だと思います。

    ● 仕入れで心がけていることは、常に「適正な価格」で仕入れることです。必要以上に買い叩くのは、店舗にとっても結局はマイナスで、適正な価格で仕入れることが、メーカー、問屋、小売りの共存共栄の道だと思います。

  • ▼100文字感想▼

    効率を無視した牧尾社長の経営は、じつに日
    本的だと思った。本書の中で最も印象に残った
    言葉が「お客さんを向く」。地域の人から信頼さ
    れ、必要とされ、伸びるお店づくりの秘密満載。

    利益より大事なものが知りたいあなたへ!


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    ▼3つの共感ポイント▼ 

    ■人の命(時間)は限られています。日常生活の
     買い物は家事労働ですから、それぞれの人が
     空いている時間にいつでも用が足せるようにし、
     限られた時間を他のことに有効に活用してもら
     えたらという思いから、24時間営業に挑戦した
     (P14)

    ■人口が多いところに出店して、品揃えは売れ筋
     商品に絞り、回転率を上げる大手小売業の考
     え方は、消費者の視点から考えられたものでは
     ありません(P61)

    ■AZでは原則として、集客を目的としたチラシは
     配布していません(P70)

  • 鹿児島県の過疎地にある巨大スーパー「A-Z」の創業者・牧尾英二氏の著作。

    過疎地は土地が安い。だから巨大スーパーを展開するにおいてハード面では問題ないだろう。しかしソフト面はどうだろう?本当に客が来て、やっていけるのか?(実際はやっていけてる。なぜ?)それが本書を読む前の疑問だった。

    本書においては、A-Zは3つのリスクを抱えていると言う。

    立地リスク:過疎地にある

    商品リスク:普通のスーパーの約3倍の種類の在庫を抱えている(所謂死に筋商品が多い)

    運営リスク:従業は地元のパートが中心。さらに24時間営業!

    なぜそこまでリスクを背負うのか?
    それは、創業者に過疎地にワンストップで、ほしい時にほしいものが確実に手に入るインフラを整備する必要があるという信念があったからだ。

    だから利益第二主義なのだ。利益はビジネスを回すために最低限必要だが、最大目的は過疎地におけるインフラ整備なのだ。

    ところで、冒頭の疑問「利益は大丈夫なのか?」について
    本書によると、「商圏こそ狭いものの、来てもらう頻度を3倍にし、購入品目を3倍にすれば問題ない。そのためにはいわゆる死に筋商品を在庫として抱えることも必要」とのこと。

    小売の効率第一の申し子「POSシステム」の限界を提示している。
    共感の時代のはじまりだ。

    スーパーの詳細は
    http://www.liaison-q.com/company/orange2-09.html

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