世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478007280

作品紹介・あらすじ

偉大なNPOを偉大たらしめているものは何か?並外れたインパクトをもち、世界のしくみを変えつつある12の組織の研究からわかった、驚くべき行動原理。社会セクター版『ビジョナリーカンパニー』。

感想・レビュー・書評

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  • NPOマネジメント研究では有名な本ですね。NPOのコンサルを仕事とする前から持ってたのですが、ずっと積読しててやっと読みました。

    翻訳版の出版が2012年、元の調査自体は15年程前に行われたものとなりますが、今でも十分に読む価値のあるものでした。本書の帯には「ソーシャルセクター版ビジョナリーカンパニー」と記載されていますし、調査手法自体も同書から多くの示唆を受けているようです。ビジョナリーカンパニーではその後紹介された企業が影響力を失っているのではという指摘もありましたが、それでも組織経営の視点としての価値は保たれています。本書で紹介されているNPOの多くは現在でも大きな影響力を持っていますが、たとえこの先いくつかのNPOの影響力が減退したとしても本書の価値自体はある程度保たれるように思います。

    むしろ本書で指摘されている「偉大なNPOの6つの原則」は、この15年で益々求められる時代になってきているように思います。

    6つの原則とは、

    ①現場での活動と政策提言をどちらも行う
    ②市場の力を利用し、企業を巻き込む
    ③熱烈な支援者コミュニティを育てる
    ④NPO同士のネットワークを重視し、知見や権限を共有する
    ⑤環境変化に敏感で、事業の軌道修正を厭わない
    ⑥チームによるリーダーシップ。分権、育成の重視

    ①〜④は最近のキーワードでいうコレクティブインパクトにも関連する考え方だと言えますし、②の市場の力や企業との関係については企業側のSDGs等への関心の高まりも合わせてますます重要になっているように思います。

    少し読む際に注意が必要だと感じた点もいくつか。

    まず、本書でいう「偉大なNPO」が何を指しているのかという点。本書の調査では何段階かでNPOの選定が行われているが最初の段階で「その組織は、大きくかつ持続的な成果を全国的もしくは国際的に達成したか」が問われています。すべてのNPOが全国あるいは全世界的に共通する課題の解決に取り組んでいる訳ではないので、自組織の目指すところとの前提の違いには注意が必要。もちろん本書でも全国レベルでの課題解決を志向していなくても参考になる点はあるはずとフォローされていてそれはその通りだと思いますが、その場合6つすべての原則を志向しなくてもいいとは思うので見極めながら読んだ方が良いですね。

    注意点の二つ目。ビジョン・ミッションや理念を軽視した捉え方が誤解を招く可能性がある点。この手の調査研究本のセオリーとして原則を導き出す前に「業界でよく言われる話とは反する結果が出た」として通説の否定から入りますが、本書ではその中で「通説4 模範的なミッションステートメント:美しい理念の文言を紙の上に記しているのはほんのわずかだ。ほとんどの組織は、日々の活動に忙しくて文章にしている暇がない」と書かれています。

    これ、ビジョン・ミッションは重要でないという誤ったメッセージを発していて危ういのですが、むしろ本書をしっかり読んでいくと組織としてのミッションや使命、価値観がスタッフやボランティア、寄付者に根付いているかという点は各原則の解説で繰り返し繰り返し出てきます。使命の共有ができているかどうか自体が6つの原則の前提として必要だとすら言えます。実際通説4の記述も先ほどの引用の前に「いずれのNPOも、抑えがたい使命感や理想、価値観の共有によって導かれている。実際、組織の運営が不安定であっても、社会に影響を与えたいという強い願望を一人ひとりが持っているため、団結が保たれている」と書かれています。ここまで分かってて、要は「言葉尻だけ整えても意味がない」ということを言いたいがためにミッションステートメントは言われている程重要じゃなかったよ、なんていうのは自論を際立たせたいだけのように見えます。

    注意点三つ目。組織基盤の力。同じく「否定された通説」のトップバッターに「完璧な運営」が挙げられています。綺麗な戦略や計画の有無は影響力とは無関係だ、と。それはその通りだと思うのですが、そう言いつつ本書の最後には6つの原則と並んで「影響力を持続させるために」という章が設けられ、カネやヒトといった組織基盤の強化が重要である点が常識的に指摘されていますし、そもそも原則5の環境の変化への適応というのも要は「事業の見直しをできるだけの視座の高さとPDCAサイクルを回す力を持て」ということなので、その意味で組織基盤はやはり重要です。計画や組織という言葉の意味合いを官僚組織的なものとして捉えるな、というところで読み取るべきかと思います。

    否定された通説1や原則5に対してはロジックモデルの活用は有効だと感じます。コレクティブインパクト文脈では単線的なロジックモデルでは対応しきれないという指摘もありますし、実際そうだと思いますが、単独組織のパフォーマンス評価を試みる範囲では有効だと思いますし、ビジョンミッションに照らした事業の有効性判断や、特に「止めるべき・変えるべき事業はないか」という視点を持つという意味で良いフレームだと感じます。

    長くなったのでこの辺で。

  • NPO支援のプロフェッショナルである二人の著者が、NPOの支援現場で決定的に不足している”NPOのためのハウツー"を、偉大なNPOそのものを実例として徹底的に研究した、熱量高い意欲作です。

    著者たち専門家にとっても、”NPOの成功”を定義するのは難しい道のりだったようです。 民間企業の経営手法を当てはめた既存の評価基準ではなく、
    NPOの成功とは規模ではなく影響力である

    ということなど、通説を覆す様々な事実が発見されました。著者らは、新たな基準で"最も偉大なNPO”として12のNPOを選出、詳細に調査分析しました。その結果、

    ・政策アドボカシー(提言)とサービスを提供する

    ・市場の力を利用する

    ・NPOのネットワークを育てる

    など六つの原則を共通項として見出し、本著では、この原則一つ一つについて、豊富な実例とともに詳細に解説されています。

    政治・企業・個人・他NPOなど外部を巻き込む力、それこそが重要であり、変革を起こしたいと思う全ての団体、個人、企業が適応すべき原則であることを、本著を通じて納得することができました。

    ちなみに、本著の序文は、アメリカン・オンライン創設者であり、若い起業家を支援するケース財団の代表であるスティーヴ・ケースが寄稿しており、これまた非常によい文章でした。この序文のおかげで、NPO関係者だけでなく全ての人が「自分ごと」として本著を読み始めることができたのではないかと思います。
    詳細はブログで
    https://hana-87.jp/2018/08/18/books-highimpactnonprofits/

  • 久しぶりに巡り会った良書。

    奇抜な手法論ではなく、ごく当たり前のことも書いてあるが、それゆえ説得力がある。

    日本でも、今後ますます社会に対して重要な役割を担うNPOだが、その活動自体を客観的に正当に評価する指標は確立されていない。
    この本では、NPOが社会へ与える影響力に着目し、社会的影響力の強い全米12のNPOを取り上げ、そのエッセンスを6つの原則としてまとめあげている。

    6つの原則は、NPOだけでなく、一般企業や行政関係でも活用できる考え方であり、企業価値の中心が経済である営利団体に対しても新しい視点を提供してくれる。

    しかし、NPO先進国である米国の事例から導きだされた原則であるため、この原則を単純に日本に当てはめても難しいであろう。日本ではNPO自体の認知や活動のフィールドが広がらなければならないと感じる。

  • 社会セクターにおけるNPOの役割、リーダーシップと組織づくりについて。読めば読むほど、NPOに株式会社で経験を積んだ人がもっときてほしいと思う。これまでの経験を活かせるチャンスの塊。

  • NPO(非営利セクター)の経営指南書。MBA的な手法の導入ではなく、社会にインパクトを起こせるNPOにはどのような共通点があるのかをまとめてある。

    これを読んだからNPOが経営できますという本ではないが、きっとヒントを与えてくれる。

  • 【たくみ】
    読み中だけど、アメリカの大手NPOがなぜ成功しているか書いている良書。かなり勉強なります。

    貸し出しはもう少し待ってね!

  • 帯の通り、ビジョナリーカンパニーのNPO版。具体的事例への踏み込みが浅い。NPOを理解するとっかかりとしては良い。

  • ビジョナリーカンパニーのNPO版と呼ばれている本。フローレンスの駒崎さんのオススメにもあった。
    偉大なNPOを偉大たらしめる要因は何かというビッグクエスチョンに基づいて、本は進んでいく。
    研究対象の12の組織は、6つの原則すべてもしくは2〜3個用いているという答えから、1つ1つの原則について説明をしていくという内容。
    個別でいくとどれも大事だけど、一言でまとめると「協力関係」と「巻き込み力」。なぜそれらが必要なのか。理由は2つ。
    1つはNPOが解決したいのは社会問題だから。社会問題は文字通り、社会の問題だからNPO単体でどうにかなる問題ではない。だから、他者に影響を与えて、直接関心がない人までも巻き込みながら、同じ目的を持つ団体と競争するのではなく、協力してミッション達成に向けて動いていく。
    もう1つは、営利企業と比較して、NPO自身が少数精鋭の部隊で限られた資金で運営をする団体だから。すべてに万遍なくパワーをかけることは物理的にできない。なるべく多くの人に影響を与えて、少額のお金で大きな成果を生み出すしか活動を継続していく方法がない。

    この2つの理由が、偉大なNPOが偉大になるのに「協力関係」と「巻き込み力」が必要だという理由だと個人的には考える。

    本書でも紹介されているように、イメージとしては、てこの原理を思い出すとわかりやすい。
    事あるごとに読み返したい本。

  • 【選書者コメント】社会起業家のための一冊。社会貢献とキャリアをいっしょにする。

  • 2012年98冊目。

    一言で言えば、「『ビジョナリーカンパニー』の社会セクター版」である。
    社会に多大なインパクトを与える偉大なNPOの条件を、12の団体から見えた共通点として解説している。
    それらの中核を成すメッセージは、あとがきにあるこの言葉が端的に表わしている。

    「社会への影響力を高める六つの原則は、実は自分たちの組織そのものではなく、政府や企業、他のNPO、一般市民など社会のあらゆる部門を動員するそのやり方にあるのだという。偉大さとは、NPOが、組織の外の世界に対していかに働きかけるのかという部分に関係が深いのである。」

    組織外部をどこまで巻き込めるか。

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