春の消息

  • 第三文明社
4.14
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 33
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784476033694

作品紹介・あらすじ

東北各地の霊場を探訪した写真紀行。盛夏から晩秋、そして初冬へ──。作家(柳美里)と学者(佐藤弘夫)は、魂のゆくえを訪ねて、東北を歩いた。それは、大震災を経験した人々が待ち望む春を探す旅でもあった。
               *           *           
 本書は日本人の死生観をテーマに、福島県南相馬市在住の芥川賞作家・柳美里氏が、東北大学大学院の佐藤弘夫教授と共に、かつて飢饉・冷害・震災といった大災害に見舞われた東北各地の墓地、霊場、神社仏閣、有形・無形文化遺産などを探訪。
 第一部では、地域に残る生者と死者の交歓風景を、佐藤教授によるナビゲーションと柳美里氏によるエッセイを組み合わせて展開。
 ふたりは2016年夏から冬にかけて、青森県五所川原市の「賽の河原・川倉地蔵尊」や、「姥捨て伝説」の舞台となった岩手県遠野市のデンデラ野・ダンノハナを訪ねたり、中世には納骨儀礼の場であった宮城県の松島や福島県会津若松市の八葉寺を訪れた。さらに東日本大震災の被災地である福島県南相馬市や警戒区域である大熊町にも足を延ばすなど、東北各県で取材を重ねた模様を、佐藤教授による解説と、仙台在住の写真家・宍戸清孝氏による迫力ある写真で紹介。
 第二部には、佐藤教授と柳美里氏の対談を収録。生者と死者の織りなす独自の文化の形成と定着について読み解き、未来に向けた死生観・生死観を語り合うとともに、それぞれが体験した「東日本大震災」と、その後の日々についても考察を深める。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 学者と作家で死を理解したい方法が異なるところを、旅をして対話を重ねる中で、最適の表現が見つかるのだなと思いました。

  • 柳さんと佐藤さんが東北の霊場を巡りながら対談していく様を、訪れた場所の写真や紹介文を交えながら載せています。
    近代以前は、生きている人たちと死者、そしてあらゆるカミが共存していた。でも、近代以降は生と死の間に明確な境界が引かれ、死は、生活の中で可能な限り触れたくないと思われるものに変容していった。
    私たちが日常生きていく中で、引き受けずに済むならば直面したくないと思いがちな、死。でも、それは生の中に連続して置かれたものなのだと実感した。
    村上春樹とか、平野啓一郎の本の中でも同じようなことが書かれていたのを思い出した。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柳美里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×