サブカルチャーを消費する:20世紀日本における漫画・アニメの歴史社会学
- 玉川大学出版部 (2021年12月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
- / ISBN・EAN: 9784472406010
作品紹介・あらすじ
20世紀、年少者たちは様々な方法で「家族」のなかに囲い込まれ、「消費社会」から遠ざけられていった。彼・彼女らは、漫画・アニメを大量に消費することで、大人たちを批判し、家族へ反抗した。「消費社会」を超える夢や妄想を受け止め、越えていくまったく新しいサブカルチャーの姿が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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圧巻。日本のサブカルチャーの歴史を語る論法として意表を突かれました。『日常生活を構成する原理として「消費」が追い払いがたい厚みをなしていくなかで、年少者に分けあたえられたこうした島宇宙のような商品市場の部分集合を、本書では「サブカルチャー」と呼んでおきたい。(P190)』その設定が本書の背骨。徹底的に商品としてのサブカルチャーをそれを受け入れる市場、つまり「こづかい」の変遷を丁寧に追うところから始まります。それが第一章の「映画を消費する」。第二章、第三章はジェンダーによる棲み分けが極端になされていて「戦争を消費する」では暴力を年長者への反抗の共感を顕在化し、「性差を消費する」では、バレエ漫画という狭い領域での家族との関係の変遷を通し、いかに漫画が〈消費社会〉の可能性と限界を示してきたかを例証していきます。最終章は「都市を消費する、年少者を消費する」。コミックマーケットを秋葉原をテーマに暴力と性愛の過激化によって年少者を排除していく現在の在り様を論じています。〈消費社会〉が〈戦後家族〉という中間層の増大とともにいかに広がってきたか、それがサブカルチャーというジャンルの歴史であり、逆にサブカルチャーの今から、今後〈消費社会〉がどうなっていくのかを考えさせるスタートラインの本でもあります。ベーシックインカムがもし導入されたとしたら、どんなコンテンツ生まれるか、なんて示唆、スゴイです。以前読んだ安彦良和「革命とサブカル」は第二章の流れにピシッとハマると思っていしまいました。
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序章 なぜ漫画やアニメが分析されるのか
第1章 映画を消費する―「サブカルチャー」の形成とミッキーマウスの誘惑
第2章 戦争を消費する―年少者の消費と戦記漫画の変容
第3章 性差を消費する―バレエ漫画の展開と「戦後家族」の結託
第4章 都市を消費する、年少者を消費する―20世紀のサブカルチャーの終焉と対抗的消費 -
映画、マンガ、アニメなどの大衆娯楽文化を、年少者の購買力の歴史的変遷と、現実への抵抗としてのサブカルチャーの視点から捉えた消費社会論。消費社会がメタバースに拡張し、消費のみならず「創造」もまずますパーソナライズしていく現代のその先を考える上のヒントを与えてくれる。読み応えのある大著である。
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東2法経図・6F開架:726A/Sa13s//K