未来の学校 ―テスト教育は限界か―

  • 玉川大学出版部
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784472303104

作品紹介・あらすじ

急速に進む「グローバル化」「ネットワーク化」「デジタル化」社会で必要とされる能力は、学校で広く行われているテストのための教育では身につかない──。現代、そして未来の社会で、本当に生き残るための七つのスキルとは。学校や教師の役割とは。アメリカのハイスクールの事例とビジネスリーダーのインタビューから考える。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年に刊行され、2017年に邦訳版が出たものを2022年の今読んでいるわけだけど、15年近く前のアメリカが抱えている状況は、昨今の日本の動き方に似ているなあと思う。

    暗記型のテストではなく、思考力や判断力を問うテストを。また、知識が不要なわけではないが、考えを養うスキルを育てるために知識を応用する授業の在り方に学校自身がシフトすること。
    そして、学力と経済の格差、教員の負荷と評価についても、重なってくる(まあ当然と言えば、当然なのかもしれないけど)。

    だからこそ、タイムラグを超えて今どうなっているかを知りたいのだけど、なかなかなー、原著で読む気にならない所が自分の弱い所である(笑)

    何を変えるのか、なぜ変えるのか。
    単に時流に乗るのではなく、全体を見ていかないと結局は中途半端なことになる。

  • パーカー社長「まずは的を射た質問ができることです」と答えた。「ビジネスは常に変化しており、エンジニアに求められる技術も急速に進化しています。専門的なことは我々が教えられますが、自ら問題解決をする、あるいは新しいことを学ぶために、彼らはどんな質問をすべきかを知っていなくてはなりません。良い質問をする方法や考える力は、教えることができません。的を射た質問をする能力が最も大事だと思います」(p.2)

     創造力とイノベーションは問題解決のための大事な要素であるだけではなく、製品やサービスを新たに開発したり改善する上でも大切である。今日の従業員に対しては、論理的思考力、問題解決能力、および情報へのアクセスと評価といった「左脳」のスキルの育成に加えて、好奇心、想像力、創造力といった「右脳」のスキルの育成も必要なのである。(p.44)

     好奇心とは「課題、状況、問題を受け止め、本質を見きわめること、すなわち問題の表と裏を理解し、組織的な見方ができ、物事を表面的にみるのではなく、なぜそのようになるのかに興味を持つこと」である。(p.45)

     21世紀にあって最も重要と思われる厳しさとは、労働、市民生活、生涯学習に必要な核となる能力を身につけていることである。学問を学ぶことは、能力を向上させる手段であって、それ自体が目標ではない。今日の世界では、もはやどのくらい知っているかではなく、知っていることで何ができるかが重要である。(p.129)

     教育にかぎらず、すべての職業において、働く者の孤立は改善の敵である。指導と学習を改善するための教員による協働は、真により良い結果を得る「唯一」の方法である。教員は、時間の使い方と、生徒が本当に大切なことをより多く学んでいることに対する責任を持たなければならない。(p.190)

     指導と学習については、歴史を振り返り、それぞれの時代が必要としたものは何かという観点から考えなければならない。たとえば1800年代においては、多くの人々の仕事は手仕事が主で、文字を読む必要はほとんどなく、学校には教室が一つしかなく、少人数の子どもを相手に教育が行われていた。しかしながら20世紀に入り、都市化と工業化が進行するにつれて、優れた指導と学習は、3Rs(読み・書き・計算)を多くの生徒を対象に組立ラインで「一括処理」することで成り立つようになった。そうすることで、地方の労働者と移民を新しい労働者として、そして市民として同化させたのである。これが今日の大多数の学校である。(p.300)

     インターネットの時代では、古い情報を記憶することよりも、問題を解決するために新しい情報を活用することが重要である。常に学び続ける自立した者にとって、特定の学問内容を機械的に暗記するよりも、増大し変化し続ける情報をどのように入手し分析するかを知っていることのほうがはるかに重要である。今日の生徒は、記憶したものを単に暗唱するのではなく、学んだものを新しい状況に適用することができなければならない。(p.301)

     教育とは、もはや生徒が文字を読めるようにすることではない。読んだ内容を論理的に考え、解釈し、実生活に結びつけるように教えることである。生徒に論理的検討と省察を求めるならば、私たちも自ら進んで同じことをしなければならない。この「学習の旅」は、子どもたちのニーズをより深く理解し、指導方法を改善し、私たちが生徒と我々自らに対して期待するものをより明確に定義するための共同の旅である。(p.326)

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著者プロフィール

ハーバード大学テクノロジー起業センター初代フェロー(イノベーション教育)、ハーバード教育大学院チェンジ・リーダーシップ・センター元共同ディレクター。米国各地のさまざまな学校や財団へのコンサルティングを行っており、ビル&メリンダ・ゲイツ財団シニアアドバイザーも務めた。高校教師、校長、教員養成大学での教授の経験も持つ。これまでに『世界の学力格差』(The Global Achievement Gap,未邦訳)など5冊の著書がある。

「2014年 『未来のイノベーターはどう育つのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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